「終活」というと、家や車、お墓などの相続・管理について考える方が多いでしょう。もちろん、目に見える財産の管理は大切ですが、併せて進めたいのがインターネット上の情報を整理する「デジタル終活」です。インターネットでの情報管理が普及した近年では、「デジタル終活」の必要性が高まっています。
この記事では、デジタル終活のメリットや具体的な方法、注意点などをご紹介します。終活をお考えの方は、ぜひご一読ください。
この記事を読んでわかること
- 「デジタル終活」とは、インターネット上で保管している個人のデータを生前に整理すること
- デジタル終活をすると、個人情報の漏洩や金銭トラブルの防止ができる
- デジタル終活をする際は家族に伝えておき、相続などで困らないように対策をすることが大切
- デジタル就活にはアドバイザリーサービスや終活アプリが活用できる
デジタル終活って何?
デジタル終活とは、インターネット上に保管されているSNSや画像などのデータを生前に整理しておくことです。近年、スマートフォンやパソコンで個人情報を管理することが増えました。
デジタル終活をせずに亡くなった場合、残されたデータを遺族が処理しようとしても、IDやパスワードがわからず困ることがあります。
そのため、ご自身しかわからないようなデータや情報は、生前に整理しておくことが必要です。
デジタル遺品とは
スマートフォンやパソコンに入っているデータのことを「デジタル遺品」といいます。デジタル遺品には、電話帳、写真、動画、メモなどオフラインで登録されているデータの他、SNSアカウント、ブログなどのオンラインデータも含まれます。
また銀行口座アプリ、株式等の証券口座、電子マネーなど、相続に関するデータは「デジタル遺産」と呼び、こちらも生前整理が必要です。まずはデジタル遺品、デジタル遺産がどのくらいあるのか、確認すると良いでしょう。
デジタル終活が話題になっている背景
NTTドコモが全国の15歳~79歳を対象に行った「モバイル動向調査」では、2022年のスマートフォン所有率は93.5%でした。また、総務省が行った「通信利用動向調査」では、SNSを利用する個人の割合は50代では8割、60代では7割に達しています。
さらに、電子マネーなどの普及もあり、幅広い世代で多くの方がモバイル端末を使い生活していることがわかっています。このような背景から、誰もがデジタル終活を行う必要性があるといえるでしょう。
参照元:NTTドコモ モバイル社会研究所|2022年版|モバイル社会白書Web版|携帯電話の所有・利用状況、総務省|令和4年通信利用動向調査の結果(4P)
デジタル終活をするメリット
デジタル終活をすることで、得られるメリットは何でしょうか?ここからは、デジタル終活を行うメリットについて見ていきましょう。
個人情報の漏洩を防げる
デジタル終活をすることは、個人情報を守ることにつながります。例えば、インターネットショッピングでは住所やクレジットカード情報などを登録しますが、登録済みの個人情報をそのままにしていると、不正利用される可能性が高まるでしょう。
また、SNSのアカウントも、そのままにしておくと悪用されるリスクがあります。登録情報の削除などによって個人情報の漏洩を防げる点がメリットです。
金銭トラブルを防げる
デジタル終活は、亡くなった後の金銭トラブル対策にもなります。例えば、故人が定期購入していた商品があれば、契約を解約できず毎月お金がかかってしまうこともあるでしょう。
また、ネット銀行を利用していた場合は、遺族にパスワードを知らせていなければ、最悪の場合、財産を相続ができなくなってしまいます。
定期購入やネット銀行の管理に必要な情報は、メモをして貴重品と一緒に保管しておけば、家族が発見しやすいでしょう。
パスワードやログインIDなどが明らかになる
サービスやアプリの解約には、ログインIDやパスワードが必要です。しかし、ログインIDやパスワードは、その端末を使っている所有者にしかわからないことが多いでしょう。
そのため、遺族が故人の使っていたサービスを解約しようとしても、解約できないという問題が生じるのです。
そこで、事前にログインIDやパスワードの情報を家族に知らせておくなど、デジタル終活を行っておくと死亡後でも家族が対応できるメリットがあります。
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デジタル終活の手順
後々家族が困らないためにも、やっておくべきデジタル終活ですが、どのような手順で行うと良いのでしょうか?ここで、デジタル終活をスムーズに進めるための手順を説明します。
【1】所持しているデジタル遺品を書き出す
デジタル終活を行うためには、自分がどのようなデジタル遺品を持っているのか把握することが大切です。デジタル遺品を把握することで、デジタル終活の見通しが立てられるので、まずは普段使っているスマートフォンやパソコンなどを準備して、デジタル遺品を書き出してみましょう。
自分がよく使うサービスを確認したいときは、閲覧履歴や受信メール、ブックマークなどを見返すと確認しやすくなります。
【2】「残すもの」・「処分するもの」に分ける
デジタル遺品を書き出したら、次に「残すもの」「処分するもの」に仕分けます。仕分けのポイントは、今後のことを考えて行うことです。例えば、1年以上使っていない月額サービスは、残しても無駄に費用がかかってしまいます。
残したいものを無理に処分することはありませんが、本当に必要かどうかを判断し、適度に仕分けることが大切でしょう。また、誰にも見せたくないものを残したい場合は、パスワードでロックをかけておくと安心です。
【3】「残すもの」の情報をノートなどに残す
「残すもの」「処分するもの」に仕分けができたら、残すものの情報をエンディングノートに記載しましょう。具体的には、スマートフォンやパソコンのログインID・パスワード、使用しているサービス・アプリの名前とURL、アカウント名などを記載します。
とくに、ネット銀行やネット証券の口座情報など、お金に関することは優先的に記載しておくと、万が一デジタル終活を最後までできなかったとしても安心です。もしも、エンディングノートがない場合は、パソコンにフォルダを作成し、残すものの詳細を記載しておくのもひとつの方法ですが、パソコンのログインパスワードは別に明記する必要があります。
デジタル終活の注意点
ご自身の死後に家族に負担をかけないためのデジタル終活ですが、やり方次第では、結局遺族が困ってしまう可能性があります。そのため、デジタル終活で気をつけることを確認しておきましょう。
エンディングノートは誰が見てもわかるように記載する
エンディングノートに情報を記載する際は、誰が見てもわかるような配慮が必要です。
例えば、アルファベットを書くときは、小文字と大文字の違いや、数字と混同しやすい「O(オー)」「l(エル)」といった文字がわかりやすいように記載しましょう。
また、インターネットに詳しくない家族でも対応できるよう、ログイン方法なども記載しておくと安心です。
デジタル終活をしていることを家族へ伝えておく
せっかくデジタル就活をしていても、家族が知らなかった場合は、防止できていたはずのトラブルを回避できないことがあります。
そのため、デジタル終活を行っていることは、家族に知らせておくようにしましょう。また、パソコンやエンディングノートの置き場も一緒に伝えるようにしておくと、後に家族が探す手間がなくなりスムーズです。
重要な情報はそのまま記載しない
ログインIDやパスワードなど、重要な個人情報をエンディングノートに記載する際は、そのまま書くと情報漏洩の恐れがあります。そのため、「母の誕生日」や「電話番号の下4桁」のように、ヒント形式で書いておくと悪用を防げるでしょう。
定期的に更新をする
スマートフォンやパソコンを使っていれば、デジタルデータは日々増えていきます。そのため、情報は定期的に更新することが大切です。
例えば、使わなくなったアプリがあればエンディングノートから削除したり、新たに使い始めたサービスがあれば書き足したりします。デジタル終活がひととおり終わった後も、エンディングノートを定期的に見直し、こまめに情報を整理できると良いでしょう。
デジタル終活におすすめのサービス
デジタル終活は、自分で進める方法もありますが、デジタル終活をサポートしてくれるサービスを利用するのもおすすめです。自分でデジタル終活をするのを不安に思う方は、利用してみるのも良いでしょう。では、デジタル終活のサポートを受けられるサービスについて詳しく見ていきます。
デジタル終活アドバイザリーサービス
「デジタル終活アドバイザリーサービス」は、主にデジタル終活の進め方やデジタル遺品に関する対策などを教えてくれるサービスです。デジタル終活に詳しい弁護士などがアドバイザーとなり、デジタル終活セミナーを行うなど、終活希望者をフォローアップしてくれます。
例えば、「日本デジタル終活協会」では、エンディングノートの作成だけでなく保管サービスも行っています。
デジタル終活アプリ
デジタル終活をするなら、アプリを活用するのもひとつの手です。デジタル終活アプリには、資産情報を管理できるアプリやエンディングノートのアプリなど、さまざまあります。ここでは、2023年10月時点でのおすすめのアプリをご紹介します。
「100年ノート」
「100年ノート」では、自分の思いはもちろん、預金や財産、葬儀のことなど、あらゆることをアプリで記録しておけます。事前に情報公開したい相手を指名しておき、本人の死後、登録者からの開示請求によって情報を閲覧できるシステムです。
【主な特徴】
- シニアが使いやすいデザインと操作方法
- 音声や画像での記録も可能
- 遺言に関するさまざまなテンプレートがあり保管も簡単
情報共有 | 不可(利用者の死後、開示請求によって情報開示) |
動画登録 | 不可 |
月額料金 | 無料(アプリ内のサービスによっては課金あり) |
公式URL | https://100note.jp/site/pc/ |
「そなサポ」
「そなサポ」は、相続のために活用できる無料アプリです。資産の情報と一緒に継承者の情報も登録できるため、誰にどの資産を継承するのかがわかりやすくなります。また、利用者が元気でいることを知らせる「見守りサービス」の機能もあり、ひとり暮らしの方にも便利です。
【主な特徴】
- 相続させたい資産情報を画像でも登録できる
- 継承者を登録できる
- 見守りサービスが利用可能
情報共有 | 不可(利用者の死亡と継承者の本人確認後、情報開示) |
動画登録 | 可 |
月額料金 | 無料 |
公式URL | https://sonasapo.com/lp |
「楽クラライフノート」
「楽クラライフノート」は、持っているデジタルデータやログイン情報、資産情報などを管理できるエンディングノートのアプリです。アプリに登録している情報を家族と共有することもできるので、自分で管理することに不安を感じる方でも安心です。利用は有料ですが、使い始めの2ヵ月間は無料で利用できます。
【主な特徴】
- 家計の収支や保有資産をグラフ化できてわかりやすい
- 健康状態・介護・相続などに対する思いを記録できる
- 記録した内容を家族に共有できる
情報共有 | 可 |
動画登録 | 不可 |
月額料金 | 300円(税込) |
公式URL | https://lifenote.ntt-finance.co.jp/introduction |
「パスワードマネージャー」
デジタル終活には、IDやパスワードの保管ができる「パスワードマネージャー」というアプリもおすすめです。このアプリでは、大切な個人情報が厳重に保管されるので、IDやパスワードを忘れがちな方でも安心して利用できます。
また、スマホで設定しておけば、WEBサイトや他アプリのログイン時に、登録したIDやパスワードの自動入力が可能です。なお、アプリを利用する際はマスターパスワードでロック解除をしますが、指紋認証・顔認証でのロック解除もできるので、アプリ内の情報を誰かに見られる心配もありません。
【主な特徴】
- ID・パスワードは暗号化されて保存
- ID・パスワードの登録で、WEBサイトや他アプリのログイン時に自動入力が可能
- 安全性の高いパスワードを自動生成
情報共有 | 不可 |
動画登録 | 不可 |
月額料金 | 無料(アプリ内のサービスによっては課金あり) |
公式URL | https://www.trendmicro.com/ja_jp/forHome/products/pwmgr.html |
「ITAKOTO」
「ITAKOTO」は、家族に伝えたいことを動画にし「遺書動画」として残せるアプリです。動画を作成するとURLが発行され、URLを家族に送ることで動画の共有ができるシステムになっています。
利用は有料ですが、無料のお試しプランがあります。「動画でメッセージを残したい」「自分の死後に動画を見てほしい」という希望を叶えてくれるアプリです。
【主な特徴】
- 動画撮影はガイドつきだから簡単
- 動画をURLで送れるから受け手はいつ見てもOK
- 無料お試しあり
情報共有 | 可 |
動画登録 | 可 |
月額料金 | 120円(税込)~(プランにより異なる) |
公式URL | https://itakoto.life/ |
お手製「スマホのスペアキー」を作るのもおすすめ
デジタル終活をする際、スマートフォンのパスワードを残しておくために「スマホのスペアキー」を作成しておくのもおすすめです。作り方は簡単で、以下のように作ることができます。
- 名刺大の厚紙を用意する
- スマートフォンの特徴とパスワードを記載
- パスワードを書いた上に修正テープを3回ほど重ねる
この方法で作ると、お手製スクラッチカードが完成します。大切な通帳やパスポートなどと一緒に保管しておくと、ご自身が亡くなった後でも家族が見つけやすいでしょう。
デジタル終活を始めるタイミングは?
「終活」というと晩年に行うイメージがあるかもしれません。しかし、デジタル終活は年齢に関係なく、思い立ったときがベストなタイミングです。自分の所有するデジタルデータを把握することで、不要なアプリの存在にも気づけます。
また、パスワードやIDを残しておけば、忘れてしまったときにも安心なので、今からデジタル終活を始めても良いでしょう。
おわりに
個人情報をインターネットで管理するようになってきた近年では、デジタル終活は必須です。自分の死後に残された家族が困ることのないよう、保管しているデータをどうしたいか考え、整理しておく必要があります。また、パスワードやIDはヒント形式にしたり、スペアキーを作って残したり、個人情報を守るための工夫も大切です。サポートアプリもあるので、上手く使いながらデジタル終活を行っていきましょう。