40代や50代になると両親の介護が必要になり、仕事との両立に難しさを感じて介護離職する方も多くいます。しかし介護離職をして介護に専念することで、新たな問題を抱えるケースも。介護離職をしないためには、介護休業制度や、介護支援サービスを活用していくことが大切です。介護離職の現状や、介護離職することで抱える問題点、そして仕事と介護を両立する方法を紹介しますので、参考にしてください。
- 仕事と介護の両立が難しくなって介護離職する方は、働き盛り世代である「55~59歳」が最も多い
- 介護離職すると生活費や再就職への不安、心身のストレスといった新たな問題を抱える
- 介護休業制度を利用すると、通算93日の休暇を取得でき、介護体制を整える期間にあてられる
- 取得した休業期間の間、介護休業給付を申請すれば休業開始前67%の給付を受けられる
介護離職の現状
最初に介護離職の現状を把握するために、概要や介護離職をする以下の理由などについて、詳しく解説します。
- 介護離職とは
- 介護離職者の現状
- 介護離職の理由
介護離職とは
介護離職とは、家族が要介護状態になった際、介護に専念するために退職することを意味します。一般的に40代や50代になると、両親の介護が必要になってくることも。この年代は勤続年数の長い従業員や、管理職など企業において重要な役割を果たす方が多い傾向にあります。これから高齢化が進み、団塊世代が70歳代に突入したことで、さらに介護離職率は高くなるでしょう。
介護離職者の現状
厚生労働省が2021年に行った雇用動向調査によると、離職者約717.3万人のうち、介護離職者は約9.5万人でした。年代別の結果では、男女ともに「55~59歳」が最も多いことがわかります。男性は約2.4万人、女性は約7.1万人と女性が男性よりも多いです。
介護の状況は家庭によってさまざまですが、多くの場合、介護者となるのは配偶者か子どもです。要介護者の配偶者も高齢であったり、要介護者が複数いたりすると、子どもの協力は必要不可欠に。
女性が多い理由は、女性は男性よりも収入の低いケースが多く、経済面への負担を考えて女性の介護離職者が多くなっているからだと察せられます。
参照元:公益財団法人生命保険文化センター|リスクに備えるための生活設計|介護離職者はどれくらい?介護離職をしないための支援制度は?|1年間に約9.5万人が介護等を理由に離職
介護離職の理由
2019年に行われた労働者調査において、介護離職の理由で59.4%と最も多かったのは「仕事と『手助・介護』の両立が難しい職場だったため」でした。この結果は、介護と仕事を両立させるための制度やサービスを知らない、あるいは利用せずに介護離職を選ぶ人が多いことも示唆しています。
介護は1人に負担が集中しがちです。介護だけでも大変な負担なのに、仕事と両立させるのは相当な負担です。そのため、介護者となった方は心身の疲労により、介護離職を選んでしまうのだと考えられます。
参照元:令和元年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業|労働者調査 結果の概要令和2年3月|調査結果の主なポイント|(2)介護離職者の状況10P|PDF14枚目
介護離職の問題点
介護離職をして良かったと感じるのは一時的で、あとから後悔するケースがほとんどです。なぜなら、生活費や再就職への不安、心身の負担といった新たな問題を抱える場合が多いからです。
問題点を具体的に説明します。
収入がなくなり経済的に不安になる
介護離職をして安定した収入が途絶えることで、経済的な不安が常につきまといます。ご自身で介護をするので、介護サービスにかかる費用を節約できる面はありますが、収入がなく減る一方なので、貯蓄があっても想像以上に減るスピードが早いと感じる方は少なくありません。
退職金や年金などを大きく減らし、無収入のため貯蓄も難しくなり、生涯に受け取れる収入を相当減らすことになります。
心身の負担につながる
介護離職をすると、精神面・肉体面・経済面それぞれで負担が増します。2020年に行われた労働者調査によると、介護離職後に精神面・肉体面それぞれで負担が増したと答えた方は50%超、経済面においては70%近い割合でした。
離職して収入が減ることで、以前より利用する介護サービスを絞ることにもつながります。そうした場合、介護者と過ごす時間も増え、社会的に孤立し、精神的に追い込まれてしまいます。介護を頑張れば頑張るほど、介護期間を長引かせ、心身の負担も増えるという悪循環に陥り、介護殺人や家族心中などの事件に発展するケースもあるのです。
参照元:労働者調査 結果の概要(11P)
再就職が困難なケースが多い
中年の方が介護離職すると、正社員での再就職は難しいケースがほとんど。介護離職によって仕事をしない期間が長引くことで、再就職への意欲が低下する側面もあると考えられます。
介護離職後、無職のまま老後生活に突入する方も珍しくありません。介護生活が落ち着いても、自分の老後生活に関して、経済的に大きな影響を与えることになります。
介護離職しないために利用できる支援制度
介護と仕事の両立を支援するために、仕事を一定期間休業できる制度があります。これは国によって定められた制度で、労働者の権利です。これらの制度を知り、正しく休業期間を取得して、介護体制を整える期間にしましょう。
介護休業制度
介護休業制度とは、2週間以上に渡って介護を必要とする家族がいる際に、介護するために休暇を取得できる制度です。
対象者 | 対象家族を介護する男女の労働者 |
対象家族 | 配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫 |
対象家族の状態 | 2週間以上の期間にわたり常時介護が必要な状態 |
日数 | 対象家族1人につき、通算93日(3回を上限に分けて取得可能) |
申請方法 | 休業開始2週間前までに事業主に書面で申し出る |
勤務時間短縮等の措置 | 申請により以下1つ以上の措置が受けられる短時間勤務フレックスタイム制時差出勤介護サービス費用の助成 |
法定時間外労働の制限 | 所定労働時間を超えての労働や、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をしない |
深夜業の制限 | 申請を受けた会社側は、深夜(午後10時~午前5時)に労働させてはいけない |
以下に該当する方は対象外なので注意しましょう。
- 入社1年未満
- 申出の日から93日以内に雇用期間が終了する
- 1週間の所定労働日数が2日以下
介護休業制度で確保した期間は、介護するためだけに使うのではありません。ケアマネージャーと相談しながら、今後の計画を立てたり、施設を探したりするなど、介護体制を整える期間にしましょう。
介護休業給付金
介護休業給付とは、介護休業制度を利用することで経済的支援が受けられる、雇用保険給付のことです。
対象者 | 原則として、介護休業を開始前の2年間に、雇用保険に加入している時期が12ヵ月以上あること。 |
給付額 | 休業開始前の給与水準の67%※休業中の給与によって変動あり※上限額・下限額あり |
申請方法 | 介護休業終了の次の日から2ヵ月後の月末までに、ハローワークで書面を提出する。 |
受給開始日 | 介護休業の終了後 |
給付金が受け取れるのは介護休業終了後になりますが、支援を受けることによって経済的不安を軽減できます。
介護休暇
介護休暇とは、要介護状態にある家族の介護や、お世話をするために取得できる「単発の休暇」です。書面での申請が必要な介護休業制度とは違い、介護休暇は比較的簡単な手続きで取得できます。
日数 | 対象家族1人に対し年間5日(2人以上の場合は年間10日) |
取得単位 | 1日または時間単位 |
申請方法 | 口頭での当日申請が可能(会社によっては書面あり) |
1日や半日で突発的な休暇が取得できるため、以下のような際に活用するのがおすすめです。
- 要介護者の通院の付き添い
- 自治体の手続き
- 介護士やケアマネージャーとの面談
介護者の負担を軽減できる在宅介護支援サービス
在宅介護での介護者の負担を軽減できる、在宅介護支援サービスはさまざまな種類があります。
在宅介護を介護者ひとりで行うのは、介護者にとって大きな負担となります。ぜひ在宅介護支援サービスを取り入れ、安心できる介護生活にしましょう。要介護度によって、受けられるサービスや利用頻度が異なるため、ケアマネージャーと相談しながら適切なサービスを選ぶと良いでしょう。
訪問型サービス
訪問介護はホームヘルパーが利用者の自宅に訪問して、入浴や排せつ、食事などを行ってくれるサービスです。自宅内に限らず、病院等への移送や買い物などの支援も受けられます。
その他にも以下のような訪問型サービスがあります。
- 訪問看護
看護師が自宅に訪問し、医師の指示のもと医療的処置や健康状態の観察等を行います。 - 訪問入浴
専用の浴槽を用いた入浴介助を行います。 - 訪問リハビリ
専門職が自宅に訪問し、医師の指示のもとリハビリテーションを行います。
通所型サービス
通所型サービスは自宅から出て、施設で短時間あるいは短期間、介護やリハビリなどが受けられるサービスのこと。デイサービスやショートステイなどがあります。デイサービスは日帰りで、ショートステイは連続して30日まで泊まることが可能。
ショートステイは一定期間介護から解放されるため、利用者の家族にとって自分の時間を持つ機会となり、介護負担の軽減を図ることが可能。また介護者の出勤日にしたり、介護施設を探す期間にしたりすることもできます。
施設への入所を拒む要介護者にもおすすめのサービスで、少しずつ介護サービスに慣れ、要介護者が「思ったよりも悪くない」などと施設への抵抗を減らすことにも役立ちます。
住環境を整えるためのサービス
介護保険を利用して、段差を解消したり手すりを設置したりし、要介護者や介護者が暮らしやすいように自宅設備を改善できます。住環境を整えることで要介護者の自立を促し、介護者の負担軽減にもつながります。
手続きに時間を要する場合もあるため、検討される際は早めにケアマネージャーや地域包括支援センターに相談しましょう。
介護離職で後悔する前にできること
介護離職で後悔する前にぜひ立ち止まって、仕事と介護が両立できる方法を探しましょう。まずは公的機関に相談することで、その後も継続的に相談しやすく、状況の変化があってもすぐに対応してもらえます。
公的機関に相談する
介護をひとりで行うのは負担が大きく、誰であっても困難です。まずは以下のような公的機関に相談しましょう。
- 地域包括支援センター
- 自治体・社会福祉協議会等の相談窓口
- 医療機関
代表的な介護の相談窓口は地域包括支援センターです。介護に詳しい資格を持った専門職が、個人に合った提案をしてくれます。相談することで問題点が明確になり、どのような支援が必要なのか把握可能。
介護施設への入所を検討する
自宅での介護が難しいと感じている場合は、ケアマネージャーと相談して、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの介護施設への入所も検討してみましょう。
地域や施設によっては申込みから入所まで時間がかかる場合もあります。気になった施設があれば、早めに申し込んでおきましょう。
しかし、適切な施設を見つけ申し込みから入所までのプロセスは時間がかかることがあります。そのため、早めの行動が推奨されます。
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おわりに
仕事と介護の両立が難しいと感じ、介護離職をする方が増えています。その反面、介護離職した多くの方が後悔しています。介護に専念することによって経済面・肉体面・精神面の負担が増すからです。介護離職をして後悔する前に、介護休業制度などの支援制度を利用し、介護体制を整える期間にあてましょう。
今回紹介した支援制度や介護支援サービスを活用し、仕事をしながら、心に余裕のある介護生活を送ってください。
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