死後事務委任契約で委任できることは広範囲に及びますが、何でも委任できるわけではありません。
受任者に委任できないこともあるため、事前に委任できること・できないことを把握しておくことが大切です。
この記事では、死後事務委任契約とは何か、委任できること・できないこと、注意点、依頼先などを解説します。死後事務委任契約でできないことを詳しく知りたい方は、是非参考にしてください。
(本記事は2024年3月11日時点の情報です)
- 死後事務委任契約では葬儀関連の手続き、行政手続き関連の対応などができる
- 生前に発生する手続き、相続・身分関係関連の事項などはできない
- 事前に親族に通知、契約内容の有効性を確認するなどの注意点を押さえておくことが重要
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、死亡後に必要な手続きを受任者に委任し、委任者が死亡後に実行してもらう契約です。
少子高齢化の昨今は単身世帯が増えており、死後事務委任契約の締結を検討する方が増えています。死後事務委任契約とは具体的にどのような契約なのでしょうか。
必要となるケース、契約の流れ、費用、身元保証契約との違いなどを詳しく見ていきましょう。
なお、死後事務委任契約の詳細は以下の記事もご覧ください。
死後事務委任契約が必要となるケース
死後事務委任契約が必要となる方は以下のような方です。
- おひとりさまで周囲に頼れる人がいない
- 身内が高齢、あるいは絶縁していて頼めない
- 家族や親族に負担をかけたくない
- 内縁関係や事実婚である
- 家族との関係が希薄である
上記のような方は、自身の死後に必要な手続きを行ってもらいにくく、死後事務委任契約を締結して自身の意向を踏まえた死後の手続きを進めてもらうことになります。
死後事務委任契約の流れ
死後事務委任契約を締結する場合は、不備なくスムーズに手続きを進めるためにも、手続きの流れを事前に把握しておくことが大切です。死後事務委任契約の主な流れは以下の通りです。
- 委任事項の選定
- 受任者の決定
- 死後事務委任契約書の作成
死後事務委任契約の流れについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
死後事務委任契約の費用
死後事務委任契約を締結する際は、以下のような費用が発生します。
- 死後事務委任契約書の作成料
- 死後事務委任の費用
- 公証役場の手数料
- 預託金
死後事務委任契約の費用について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
身元保証契約との違い
身元保証契約とは、家族に代わり身元を保証する契約です。身寄りのない高齢者が病院や施設などに入院・入所する際は身元保証人が必要となります。身元保証契約を締結することで、家族に代わって身元を保証してくれるため、万が一の事態が発生しても安心です。
身元保証契約と死後事務委任契約の大きな違いは、生前と死後のどちらに関与するかという点です。身元保証契約は身元保証人になる、病院や高齢者施設からの緊急連絡先などの生前の関与が大きい一方、死後事務委任契約は基本的に死後の事務手続きを行う契約なので死後の関与が大きくなります。
また、身元保証契約はサービスの利用を希望している間は料金が発生しますが、死後事務委任契約は契約を締結する際の一度だけであるという点でも異なります。
死後事務委任契約でできること
死後に関する手続きであれば何でも死後事務委任契約で締結できるわけではありません。トラブルを回避するためにも、死後事務委任契約でできることは何なのかを明確にしておくことが大切です。
死後事務委任契約でできるのは以下のような行為です。
- 葬儀関連の手続き
- 行政手続き関連の対応
- 各種契約や支払い関連の手続き
- 遺品およびデジタル遺品の整理
- 残されるペットの世話
- 関係者への連絡
それぞれを詳しく解説していきます。
葬儀関連の手続き
亡くなった場合は、以下のような葬儀関連の手続きが必要になります。
- 遺体の引き取り
- 火葬や葬儀に関連する手続き
- 埋葬またはお墓に関連する手続き
- 供養に関連する手続き
これらの葬儀関連の手続きについては死後事務委任契約に含めることが可能です。
行政手続き関連の対応
行政関連に関連する以下のような手続きについても死後事務委任契約に含むことが可能です。
- 健康保険証または介護保険証などの返還手続き
- 年金事務所への連絡
- 住民税や固定資産税などの税金の納付
期限が決まっているものもあるため、期限を明確にしておくことも大切です。
各種契約や支払い関連の手続き
水道・電気・ガスといったライフラインに関連する契約の解約、病院あるいは介護施設の利用料金の清算などの各種契約や支払い関連の手続きも死後事務委任契約に含むことができます。
また、賃貸借契約を締結して賃貸物件に暮らしている場合、解約手続きや鍵の返還、原状回復なども死後事務委任契約に含まれます。
遺品およびデジタル遺品の整理
亡くなった場合は、生前の家財がそのまま残ることになります。それらの遺品の整理も死後事務委任契約に含むことが可能です。
最近はSNSのアカウントの削除、パソコンやスマホなどに保存されている個人情報の抹消といったデジタル遺品の整理を希望する方も増えています。
残されるペットの世話
おひとりさまの中には、ペットと同居されている方も少なくありません。亡くなると、ペットのみが残されてしまいます。
死後事務委任契約には残されたペットの面倒を見てくれるように指示する、施設への引き渡しなどを盛り込むことも可能です。
関係者への連絡
死後事務委任契約を結ぶと、依頼者が亡くなった際に、あらかじめ指定した関係者へ死亡の連絡を代理人が行ってくれます。連絡先としては、親族や友人、職場の同僚などが考えられます。故人の意向に沿って、適切なタイミングで確実に連絡を取ることが可能です。
関係者への一報は、葬儀の日程調整や香典の準備など、故人を偲ぶ上でも重要な位置づけにあります。もしもの時に備えて、生前のうちに連絡先リストを整理し、死後事務委任契約に含めておくとよいでしょう。
死後事務委任契約でできないこと
死後事務委任契約には、以下のような内容を盛り込むことはできません。
- 生前に発生する手続きなどはできない
- 相続・身分関係関連の事項はできない
- 銀行口座解約や不動産処分はできない
それぞれについて詳しく説明していきます。
生前に発生する手続きなどはできない
死後事務委任契約は、基本的に委任者の死後に必要な手続きを委任するものです。そのため、生前に発生する手続きはできません。
生前に発生する手続きとして、生前の財産管理や身の回りのことについてなどが挙げられます。死後事務委任契約の対象外となるため、必要な場合は別途財産管理契約や見守り契約といった別の契約を締結しなくてはなりません。
相続・身分関係関連の事項はできない
遺産をどのような割合で分けるかという相続分の指定、遺産をどのような方法で分けるかという遺産分割方法の指定といった相続に関する事項、認知や遺言委執行者の指定といった身分に関する事項は死後事務委任契約に盛り込めません。
遺言書で指定する必要があるので覚えておきましょう。
銀行口座解約や不動産処分はできない
銀行口座解約や不動産処分は、委任者の死後に必要な手続きに含まれると考える方も多いでしょう。しかし、死後事務には含まれず、委任契約に盛り込むことができないので注意してください。
相続・身分関係関連の事項と同様、遺言書にて遺言執行者を指定する必要があります。
死後事務委任契約を締結する際の注意点
死後事務委任契約を締結する際は、トラブルを回避するためにも以下の点に注意が必要です。
- 事前に親族に通知しておく
- 契約内容の有効性を確認しておく
- 認知症など発症前の意思能力のあるうちに契約する
- 契約で定めた金額以上の支払いはできない
それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。
事前に親族に通知しておく
親族がいる場合は、自身の死後にいきなり受任者が死後に必要な手続きを始めるため、不審に感じる可能性が高いです。
親族とのトラブルを回避するためにも、親族がいる場合においては死後事務委任契約を締結する旨、その内容を親族にあらかじめ伝えておきましょう。
契約内容の有効性を確認しておく
委任契約は基本的に委任者の死亡によって効力を失います。そのままでは委任者が死亡した場合でも死後事務を進めることができなくなるので注意してください。
委任者の死亡後に死後事務を進められるようにするには、委任者の死亡によって死後事務委任契約が終了しない旨を盛り込んでおく必要があります。
認知症など発症前の意思能力のあるうちに契約する
認知症のように意思能力の低下が見られた場合は、死後事務委任契約を締結することができません。死後事務委任契約を締結するには、意思能力があるうちに契約することが必要です。
死後事務委任契約の締結を検討している方は、意思能力の衰えが見られる前に、なるべく早く契約を締結しましょう。
契約で定めた金額以上の支払いはできない
死後事務の履行において、契約に定められた以上の金額を拠出することはできません。
死後事務委任契約を締結した際の死後事務は、契約で定められた範囲でしか行うことができません。死後事務に必要な金銭や受任者への報酬などの金銭について事前に定めておく必要があるのです。
実際に要した費用が契約に記載されている金額以上の場合は支払いができません。そのような事態を回避するためにも、必要な死後事務を漏れなく記載し、各事務に必要とされる正確な費用を契約書に盛り込んでおきましょう。
死後事務委任契約を依頼できる先
死後事務委任契約の受任者は特に資格要件を求められません。そのため、基本的には誰に依頼しても問題ありませんが、資格がないとできない事務もあるので目的に合わせて依頼者を選びましょう。
死後事務委任契約の依頼先として、以下の4つが挙げられます。
- 友人・知人・親戚など
- 弁護士や司法書士
- 社会福祉協議会
- 民間企業
それぞれの依頼先を詳しく解説していきます。
友人・知人・親戚など
受任者には資格要件がないため、友人・知人・親戚などに依頼することも可能です。
身近な人物なので依頼しやすいというメリットがある一方で、専門家ではないことから自身の意向が反映されない可能性があるといったデメリットに注意してください。
弁護士や司法書士
弁護士や司法書士といった専門家であれば、手厚いサポートが期待できます。特に弁護士は遺言書の作成にも対応しており、死後事務委任契約以外のサポートも受けられます。
ただし、弁護士や司法書士に依頼した場合は費用が発生するため、費用負担がどのくらいになるのか事前に確認しておきましょう。
社会福祉協議会
社会福祉協議会とは、地域の福祉の増進を目指して活動する組織です。社会福祉協議会は各市町村に設置されています。
高齢者支援や障害者支援などの福祉サービスを提供しており、充実したサポートが期待できる一方、相続人がいない、一定以上の預託金を支払えるなどの一定の要件を満たさなくてはならず、必ずしも利用できるとは限らないので注意してください。
民間企業
単身世帯の増加によって需要が増加している昨今、各種サポートを手がける民間企業も増えました。クレディセゾンのグループ会社である「くらしのセゾン」もサービスを提供しています。
その分野に特化しているので手厚いサポートが期待できる一方、企業ごとにサポートに差がある点に注意が必要です。信頼できる民間企業を見つけられるかどうかが重要です。
入院・手術の保証人を依頼する人がいない場合におすすめのサービス
民間企業に依頼しようと考えているものの、どこにすればいいか悩んでいる方もいることでしょう。そこでおすすめするのが「くらしのセゾン」が提供する「ひとりのミカタ」です。
「ひとりのミカタ」をおすすめする理由は以下の3つが挙げられます。
- 提供元はクレディセゾンのグループ会社なので安心・万全のサービス
- 身元保証から死後事務手続きまで幅広いサービスを提供
- 要望に応じて選べる2つのプラン
それぞれの理由を詳しく説明します。
なお、安心できる身元保証サービスの選び方を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
提供元はクレディセゾンのグループ会社なので安心・万全のサービス
「ひとりのミカタ」を提供している「くらしのセゾン」は、日本の大手クレジットカード会社の1つ、セゾンカードでおなじみのクレディセゾンのグループ会社です。
経験豊富な専門士業事務所や専門のサービス会社と提携しており、安心・万全のサービスと言えるでしょう。
身元保証から死後事務手続きまで幅広いサービスを提供
もしもの時の入院や高齢者施設入居時の身元保証、緊急連絡先代行、終末期のエンディングサポート(死後事務手続き)まで幅広いサービスを提供しています。
また、毎日の暮らしの困りごとも解決する多彩な生活サポートサービスを提供しているのも強みです。
要望に応じて選べる2つのプラン
「ひとりのミカタ」では依頼者の要望に応じて身元保証中心の「エルダープラン」または「エルダープラン」にエンディングサポート(死後事務手続き)までカバーした「プラチナプラン」の2つから選択することが可能です。
「エルダープラン」では、入院または高齢者施設入居時の身元保証、病院や施設からの緊急連絡先、24時間365日電話健康相談といった毎日の安全と安心をサポートしています。
一方「プラチナプラン」では、「エルダープラン」に24時間見守り・駆けつけサービスと、死後に備えたエンディングサポート(死後事務手続き)を加え、終活をトータルサポートしています。
おわりに
死後事務委任契約を締結することで、自身の死後に必要な手続きを任せることができます。しかし、何でも任せることができるわけではありません。
そのため、事後事務委任契約の締結を検討している方は、できること・できないことが何かを事前に把握しておく必要があります。
また、死後事務委任契約を締結する場合はいくつか注意点があるため、トラブルを回避するためにも注意点も確認しておきましょう。