子供のいない夫婦にとって、老後の生活や死後の手続きなどに不安を感じている方は多いのではないでしょうか。しかし、終活を適切に行うことで、そうした不安を解消することができます。子供がいない場合でも、夫婦でしっかりと話し合い、必要な対策を講じておくことが大切です。
この記事では、子供のいない夫婦が終活を行う上で外せないポイントや、遺言書作成の際の注意点などを詳しく解説します。おひとりさまにも参考になる内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
(本記事は2024年4月8日時点の情報です)
- 子供のいない夫婦は、老後や死後の不安を解消するために終活に取り組む必要がある
- 配偶者に先立たれた場合、財産の相続や介護の問題に直面するため、事前の対策が重要である
- 身元保証サービスや任意後見制度の利用、持ち物や財産の整理、相続対策、遺言書の作成などがポイントとなる
- 遺言書の作成では、夫婦それぞれが個別に作成し、遺留分に配慮しつつ公正証書で残すことが望ましい
子供のいない夫婦は終活が必要
子供のいない夫婦は、老後や死後のことを考えると不安になることが多いでしょう。もしもの時に備えて財産管理や相続対策をしたいけれど、誰に相談したらいいのかわからない。そんな夫婦にこそ、終活が必要不可欠です。
終活を通じて、老後の生活や介護、亡くなった後のことを事前に準備しておくことで、子供に頼ることなく安心して人生を全うすることができます。また、万が一の際に周りに迷惑をかけることもなくなるでしょう。子供のいない夫婦だからこそ、終活に取り組むべきなのです。
そもそも「終活」とは
終活とは、人生の終わりに向けて行う活動のことを指します。具体的には、以下が挙げられます。
- 身の回りの整理整頓、不用品の処分
- 医療や介護に関する意思決定(リビングウィル※作成など) 参考:(財)日本尊厳死協会
- 葬儀やお墓、納骨の方法の検討
- 相続や遺言に関する対策
- デジタル遺品の整理(SNSアカウントの削除など)
このように、残された時間を有意義に過ごすための身辺整理から、亡くなった後の諸手続きの準備まで、人生の最期に必要なことを幅広く指します。
子供がいない夫婦でも終活すべき理由
子供のいない夫婦は、「二人だけだから特に心配ない」と思っていませんか?しかし、実際にはさまざまなリスクが潜んでいます。老後や死後について、今のうちから備えておかないと、残された配偶者や親族に大きな負担をかけることになりかねません。
以下では、子供のいない夫婦が終活に取り組むべき理由を3つご紹介します。
配偶者が亡くなってもすべての財産を相続できるとは限らないから
「子供がいないから、どちらかが亡くなれば残された配偶者がすべての財産を相続できる」と思っている夫婦も多いのではないでしょうか。しかし、実際には子供がいなくても、配偶者が100%財産を相続できるわけではありません。
亡くなった人の親族(両親や兄弟姉妹)にも、一定の相続権があるのです。法定相続分は、以下の通りです。
- 配偶者と両親が相続人の場合:配偶者2/3、両親1/3
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
- 両親も兄弟姉妹もいない場合:配偶者がすべて相続
このように、亡くなった人の親族が健在なら、たとえ疎遠な間柄でも、配偶者以外に財産が相続されることになります。思いがけない相続トラブルを防ぐためにも、事前に遺言書を作成するなど、財産の分配方法を決めておく必要があるでしょう。
介護が必要になったときに頼れる相手がいないから
子供のいない夫婦の場合、介護が必要になったときに頼れるのは配偶者だけです。しかし、配偶者も高齢になると、いわゆる「老老介護」の状態に。お互いの健康状態によっては、介護が難しくなることも考えられます。
介護サービスを利用するにしても、子供がいないと話し合う相手がおらず、二人だけで決断しなければなりません。認知症などで判断能力が低下した場合はどうしたらよいのでしょうか。
こうした事態に備えて、元気なうちから介護に関する意思決定をしておくことが大切です。介護施設の見学や介護保険サービスの調査など、夫婦でよく話し合って、納得のいく選択をしておきましょう。
縁が遠い親族に迷惑をかけることになるから
突然のことで夫婦どちらかが亡くなった場合、残された配偶者の身寄りがなければ、亡くなった人の親族に連絡が行きます。実際に、以下のような事態はよくあることです。
「叔父が亡くなり、葬儀の手配を頼まれたが、疎遠だったので何もわからない」
「伯母が認知症になり、成年後見人になってほしいと言われたが、どうしたらいいかわからない」
このように、普段から付き合いのない親族にとって、葬儀の手配や財産管理、遺品整理などの対応は大きな負担となります。
「もしもの時は、誰にも迷惑をかけたくない」という思いがあるのであれば、元気なうちから信頼できる専門家に相談し、必要な手続きを任せられるよう備えておくことが大切です。
子供のいない夫婦の終活で外せないポイント
子供のいない夫婦にとって、老後の不安は尽きません。介護が必要になったときや、どちらかが亡くなったあとのことを考えると、途方に暮れてしまうこともあるでしょう。しかし、しっかりと終活に取り組めば、夫婦の安心な暮らしを維持することができます。
ここからは、子供のいない夫婦の終活で外せないポイントを紹介します。老後に直面するさまざまな問題に、計画的に備えていきましょう。
老後の生活をイメージした対策
子供のいない夫婦の場合、介護が必要になると、配偶者だけがその世話を担うことになります。しかし、配偶者自身も高齢となり、十分なサポートができなくなることが考えられます。
このような「老老介護」の状態に陥らないためにも、元気なうちから介護に関する対策を立てておくことが大切です。その選択肢のひとつとして、身元保証サービスや任意後見制度の利用が挙げられます。
身元保証サービス
身元保証サービスとは、身寄りのない人が病院に入院したり、介護施設に入居したりする際に、身元保証人となってくれるサービスのこと。身元保証人は、医療費や施設利用料の支払いの保証、入院計画書やケアプランへの同意など、さまざまな役割を担います。
入院や施設入居の際、多くの病院や施設で身元保証人の指定が求められます。子供のいない夫婦の場合、頼れる身内がいないため、身元保証サービスの利用を検討してみるのもひとつの手です。
任意後見制度
任意後見制度とは、認知症などで判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめ選んだ人に財産管理や介護サービスの契約などを任せることができる制度です。元気なうちに任意後見人を決め、公正証書で契約を交わしておきます。
将来、認知症になって判断能力が低下しても、任意後見人が本人に代わって預貯金の管理や介護サービスの利用契約などを行ってくれるため、配偶者の負担を大幅に減らすことができます。
持ち物や財産の整理
夫婦の片方が他界すると、残された配偶者がひとりですべての荷物の片付けをしなくてはなりません。思い出の品を処分するのは、精神的につらいものです。
また、預貯金や不動産、保険など、二人の財産を整理する作業も配偶者に委ねられます。特に、名義変更の手続きなどは煩雑なため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
日頃から不用品を処分したり、財産の情報を集約したりと、少しずつ整理を始めておくと、もしものときの負担を最小限に抑えられるでしょう。
相続対策の方法
子供のいない夫婦は、配偶者に円滑に財産を引き継ぐための相続対策が必要不可欠です。法定相続分に従うと、たとえ遺産の大半を配偶者に残したくても、両親や兄弟姉妹にも相続が発生してしまいます。
そこでおすすめなのが、生前贈与です。被相続人の生前に、配偶者に資産を贈与しておけば、相続財産を減らすことができます。ただし、贈与税がかかる点には注意が必要です。
また、生命保険の受取人を配偶者にしておくのも有効な方法のひとつ。死亡保険金は相続財産に含まれないため、スムーズに配偶者の手に渡ります。
遺言書の作成は必須
遺言書を作成しておくことは、子供のいない夫婦の終活において最も重要なポイントといえるでしょう。
遺言書がない場合、被相続人の財産は、法定相続分に従って配偶者と親族に分配されます。その際、相続人全員の合意が得られなければ、預貯金の解約や不動産の名義変更などが一切できなくなるのです。
一方、遺言書があれば、基本的には遺言の内容に沿って財産の分与が行われます。つまり、配偶者が、他の親族の同意を得ることなく、遺産を受け継ぐことができるのです。
万が一に備えて、公正証書による遺言書を作成しておくようにしましょう。
お墓の問題の解決
子供のいない夫婦にとって、お墓の問題は悩ましいものです。跡継ぎがいないため、先祖代々の墓を守り続けることが難しくなるからです。
近年は、「墓じまい」を選択する人が増えています。墓石を撤去し、遺骨を他の納骨施設に移すことで子孫の負担を軽減するのが目的です。
また、夫婦の終の棲家となるお墓についても、永代供養付きの共同墓や樹木葬など、管理が不要なお墓を検討するのがおすすめです。
死後事務委任契約の検討
「死後事務委任契約」とは、あらかじめ指定した人に、自分の死後の事務(葬儀や納骨、官公庁への届出など)を委任する契約のことです。
この契約を結んでおけば、万が一自分に何かあった場合でも、遺体の引き取りから諸手続きまですべてを任せることができるので安心です。
子供のいない夫婦の場合、身内に頼れる人がいないことも多いため、信頼できる専門家や業者と契約を交わしておくことを強くおすすめします。もしもの時に備えて、死後の手続き代行を依頼できる体制を整えておきましょう。
子供のいない夫婦の遺言書作成における注意点
子供のいない夫婦にとって、遺言書の作成は終活の要といえるでしょう。自分たちの財産を希望通りに配偶者に引き継ぐためには、遺言書の内容をしっかりと吟味し、法的な不備がないようにしなくてはなりません。
ただし、書き方によっては遺言書が無効になったり、思いがけないトラブルを招いたりすることもあります。そこで、遺言書を作成する際は、以下のような点に気をつけましょう。
夫婦でそれぞれ遺言書を作成する
夫婦の遺言といえば、ひとつの書面にまとめて記載する「夫婦共同遺言」を思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし、民法では、二人以上が同じ書面で遺言を作成することを禁止しています(民法第975条「共同遺言の禁止」)。
そのため、夫婦で遺言書を残す場合は、夫用と妻用の2通に分けて、それぞれ個別に作成する必要があります。ひとつの遺言書に二人分の記載をすると、その遺言書は無効になってしまうので注意しましょう。
相続の遺留分を侵害しない
遺言で配偶者に全財産を相続させると書いても、被相続人の両親には一定の取り分(遺留分)が保証されています。遺留分とは、仮に遺言で「全財産を妻に譲る」と書いていたとしても、両親には最低限相続する権利があるという考え方です。
子供のいない夫婦の場合、被相続人の両親の遺留分は、法定相続分の3分の1とされています。遺言の内容がこの遺留分を侵害しているとみなされた場合、両親や兄弟姉妹から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
遺留分に配慮しつつ、どのように遺産を分けるのかを事前によく話し合っておくことが大切です。
公正証書遺言にする
遺言書には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は、文字通り遺言者が自筆で書くもので、財産目録以外は代筆が認められていません。一方、公正証書遺言は、遺言者が公証役場で公証人に遺言の内容を述べ、公証人が公正証書として作成するものです。
自筆証書遺言の方が手軽に作れる一方で、書き方の不備で遺言が無効になるリスクもあります。特に、認知機能が衰えてきた高齢者の場合、自筆で書くのは難しいでしょう。確実に法的効力を持たせるためにも、公正証書遺言を選ぶのがおすすめです。
遺言執行者を指名しておく
せっかく遺言書を残しても、その内容を実現する人がいなければ意味がありません。そこで、遺言の内容を実行に移すための「遺言執行者」を指名しておくことが大切です。
遺言執行者は、遺言者が信頼する身内はもちろん、専門家に依頼することもできます。司法書士などの専門家なら、煩雑な相続手続きをスムーズに進められるので安心です。
なお、遺言執行者には、遺言の内容を実現するための権限が与えられます。遺言執行に必要な行為を、遺言執行者の判断で行えるよう、遺言書にしっかりと明記しておきましょう。
おひとりさまも同じように終活を
子供のいない夫婦の場合、もし配偶者に先立たれてしまうと、残されたパートナーはおひとりさまとなります。配偶者を亡くし、心の支えを失ったおひとりさまが、これからの人生に不安を感じるのは当然のことでしょう。
しかし、おひとりさまになったからといって、終活をあきらめる必要はありません。むしろ、これまで以上に備えを充実させることが大切なのです。
おひとりさまの終活を安心できるものにするコツ
おひとりさまの終活は、周りに頼れる人が少ない分、入念な準備が必要です。安心して終活に取り組むためのポイントは、次の通りです。
- 日頃から近所付き合いを大切にし、いざというときに助け合える関係を築いておく
- 体調の変化にいち早く気づいてくれる見守りサービスの導入を検討する
- 健康状態を把握し、適切なアドバイスをしてくれるかかりつけ医を決めておく
- 万が一の際に備え、医療や介護に関する意思表示(リビングウィル等)をしておく
- 葬儀社など終活に関わる事業者を事前にリサーチし、希望を伝えておく
- 財産管理や相続について、信頼できる専門家に相談しておく
おひとりさまの終活が大変なときは「ひとりのミカタ」にご相談を
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「ひとりのミカタ」の主な特徴は、次の3つです。
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- 身元保証からエンディングサポートまで、終活を総合的にカバー
- 日常生活の困りごとにも対応する豊富なライフサポートメニュー
おひとりさまの終活は、一人で抱え込まず、頼れる存在を見つけることが何より大切です。終活について不安を感じたら、まずは「ひとりのミカタ」に無料相談してみてはいかがでしょうか。
おわりに
子供のいない夫婦にとって、老後についてや配偶者と死別後の生活は大きな不安要素です。しかし、適切な終活を行うことでこれらの不安を解消し、安心して人生を過ごすことができます。遺言書の作成や相続対策、身元保証サービスの利用など、終活のポイントを押さえることが重要です。また、配偶者を亡くしたおひとりさまも、専門家のサポートを受けることで、安心して終活に取り組むことができるでしょう。