前回の記事では、「終活」という言葉を紐解きながら、「おひとりさま」にどのようなお困りごとがあるか、どのような準備をすべきなのかについて解説しました。
「終活」に含まれる準備について、前回以下のように述べました。
①医療やケア、老後の過ごし方を考えること
②お住まいや身の回りの物を整理すること
③お葬式、お墓の準備をすること
④財産の整理や相続の準備をすること
今回の記事では、この中の③のお葬式、お墓の準備から始まる、「死後の手続きをしてくれる人がいないかもしれない」という問題に焦点を当てて、おひとりさま向けサポートサービスの専門家が解説します。(全5回の連載の第2回です。)
第1回の記事はこちら
死後にしなければならない手続きとは
テレビや新聞、雑誌では近年、頻繁に、「死ぬのもお金がかかる」「死ぬのも簡単ではない」といわれるようになっています。終活という言葉が流行して、さまざまなことを考えておかなければならないくらいには、多くの手続きが必要になっています。
これらの手続きは、大きく下記の5つに分けることができます。
- お葬式、お墓への納骨、供養
- 病院・施設・住居の退居、入院費や利用料の清算、遺品の整理
- 行政・年金関係の手続き
- 公共料金・各種契約の解除、清算
- 遺産の相続手続き
上記のうち①~④が、いわゆる「死後事務手続き」といわれているものです。本記事では、これらの手続きの詳細と、事前にしておくことのできる対策について解説します。(⑤の遺産の相続手続きについては次回の記事で解説します。)
お葬式、お墓への納骨、供養
ご家族のお葬式に参列された経験のある方は特に、人が亡くなられてからお葬式を終えるまでの準備の大変さ、慌ただしさを容易に想像することができるものと思います。そのイメージのとおり、お葬式は死後の手続きの中でも最も急がなければならず、するべきことも多く、金銭的な負担も生じる手続きになっています。
人が亡くなられた場合、まずは医師が死亡診断書を作成します。ご逝去に立ち会ったり、亡くなった後に駆けつけたりした親族の方は、すぐに葬儀社に連絡して、お葬式の手配を依頼することになります。まずはご遺体を安置してから、悲しみにくれる間もなく葬儀社との打ち合わせをして、お葬式のプランや日取りを決め、お葬式に参列する人に連絡を取ります。お葬式の当日も、香典のお預かりや参列者のおもてなしに対応することになりますから、お葬式が終わってから、ようやく悲しみを実感したとおっしゃる方もいます。
遺される親族の苦労を慮り、「お葬式はいらない」「規模の小さいお葬式にしてほしい」とおっしゃる方も近年非常に増えています。ただ、お葬式の手配は自分ですることはできず、必ず誰かにしてもらわなければなりませんし、手配をする遺された方は慌ただしい中で葬儀社との打ち合わせを行うことになりますから、お葬式の規模や内容までゆっくり検討する時間を持つことが難しいのが実情です。
また、火葬のみだったり、規模の小さいお葬式だったりしても、打ち合わせは同じように必要です。もちろん、大きなお葬式を望まれる場合は、手配する方もより大変になります。そして、お葬式にかかった費用は葬儀の後にすぐに支払わなければなりませんから、どのような規模のお葬式でも遺された方には金銭的な負担が生じます。
自分の希望を叶えるためにも、遺される方の負担を軽減するためにも、まずはどのような規模のお葬式を望むのか、お葬式について知った上で検討することをおすすめしています。
お葬式には、例えば下記のような形式のものがあります。
- 一般葬…家族・親族の他に、縁のある方も参列する葬儀。
- 社葬…会社を挙げて執り行う葬儀。
- 家族葬…家族・親族などの身内を中心とした小規模な葬儀。
- 一日葬…お通夜を行わず、告別式と火葬のみとする葬儀。
- 直葬…お通夜も告別式も行わず、火葬のみとする葬儀。
一般的に、皆さまがお葬式に持つイメージは、開かれた大きな会場でお花が数多く飾られ、参列者の方を迎えてお見送りをする、一般葬に近いものかと思います。もちろん、このようなお葬式は現在も多く執り行われていますが、都市部では特に、遺された方の準備や費用面の負担が少なく済む、小さなお葬式が好まれる傾向にあります。新型コロナウイルスの流行も、ますますお葬式の規模を小さくしたといえるでしょう。
一般葬や社葬と比べて、家族葬は小規模であるというイメージを持たれている方は少なくないと思います。それは決して間違いではないのですが、家族葬でも参列するご親族や親しい方を迎えるための会場の設営やお花の飾りをしますので、手間も費用も必要に応じてかかります。
小さなお葬式を望まれる場合も、
「家族葬で、親しい方には一般葬と同じようにお見送りをしてもらいたいか」
「一日葬で、親族の負担を一日分減らしたいか」
「直葬で、火葬のみで送られることを望むか」
まで考えておかれると、お葬式を手配してくれる方にも正確に意向を伝えることができます。また、金銭的な負担についても予想がしやすくなります。もっとも、遺される方が遠方のご親族やご友人しかいらっしゃらない場合は、お葬式にかかる費用をどう用意すべきかという問題はやはりあります。
お墓については、先祖代々のお墓がおありの方は特に悩むことなく、そちらへの納骨を望まれるでしょう。遺される方とお話ができていれば問題はありません。
ただ、近年、遠方にあるお墓を負担に感じられたり、墓地使用料や檀家料を支払う方がいなかったりするご家庭も増えています。このような場合は、墓じまいをして遺される方がお参りしやすいお墓にお骨を移されたり、永代供養にすることのできる墓地や納骨堂の契約をされたりすると、納骨の後も周囲の方に負担や心配をかけることなく、供養をしてもらうことができます。
病院・施設・住居の退居、入院費や利用料の清算、遺品整理
亡くなられた場所によって、必要な手続きは異なりますが、
- 退居の手続き
- 費用の清算
- 遺品の引き取り
はどの場合でもしなければなりません。
病院で亡くなられた場合は、退院の手続き、遺品の引き取りは当日~翌日に行う必要のあるところが多く、費用の清算は計算が終了してから追って行うことが多いです。
施設で亡くなられた場合も、やはり退居の手続きと遺品の引き取りを行ってから、費用の清算をする形になります。施設では月額利用料のほか、訪問診療や訪問歯科、食事代の日割り計算をしたり、入居金からの戻り金があったりするため、清算は病院より時間がかかることが多いです。
ご自宅で亡くなられた場合は、賃貸の場合と所有物件の場合で異なります。
賃貸物件の場合は、遺品整理をしてから退去の手続き、家賃や敷金の清算をすることになります。家財道具を残したままでは明け渡しができないからです。所有物件の場合は、最も時間的な余裕がありますが、家財の整理に時間がかかることも多いため、形見分けが終わった後の遺品整理は業者に任せてもよいかもしれません。
行政・年金関係の手続き/公共料金・各種契約の解除、清算
行政・年金の手続きの多くは、下記のように明確な期限があります。
- 健康保険(死亡後14日以内) …被保険者資格喪失届を提出
- 年金(国民年金は死亡後14日以内、厚生年金は死亡後10日以内)…死亡届を提出
- 納税や還付金等の確認・手続き…住民税、固定資産税、高額療養費、介護保険料等
公共料金・各種契約には、期限こそありませんが、銀行の預貯金を解約するなどの相続手続きを始めると、引き落とし口座が使用できなくなるため、契約の名義を変更したり、解約したりする手続きは早いに越したことはありません。賃貸物件で契約している場合は、退去までに解約をする必要もあります。
これらも遺される人が、年金や各種契約の詳細がわからない状態で手続きを始める形になると、各所に電話をかけて調べたり、郵便が届くのを待ったりすることになります。加入している年金の種類や番号、契約しているサービスの名称や会社は、事前に伝えておくと安心です。
おひとりさまの場合~死後事務委任契約という方法~
おひとりさまの場合、これらの意向を誰にどう伝えるか?誰にしてもらうか?と、皆さま悩まれます。親族がいても遠方にお住まいですと、ご自身の希望を予め伝えておいて、何かあったときにその希望を実現してもらうことが難しい場合も多いのではないかと思います。
そのような方のために、「死後事務委任契約」があります。この契約を締結しておくことで、ご親族でない方に死後の手続きをすべて頼むことができます。
ご自分の考えを親族に伝えるように、専門家に伝えてください。伝えた内容は、「死後事務委任契約書」にすべて記載されます。この契約はご自身が委任者となり、専門家が受任者となる契約です。ご自身が亡くなった後に、専門家が死後事務受任者として、ご自身の希望のとおりに、すべての死後の手続きを行ってもらうことができます。
おわりに
ご逝去の後に何が行われるのかが具体的にわかると少し安心できるというご意見をよくいただきます。自分の人生の終わりについて、過度に恐れたり、暗い気持ちになったりすることなく考え始めるきっかけは、まず知ることから得られるのだと、私もお客様から教わりました。この記事が、あなたが終活をポジティブに始める、良いきっかけになれば幸いです。
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