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50代独身…定年退職後も「快適なおひとりさま生活」を維持したい人のための事前対策
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50代独身…定年退職後も「快適なおひとりさま生活」を維持したい方のための事前対策

人生100年時代といわれて久しいですが、50代を迎えると、人生の折り返しの半分を過ぎたことを意識する場面も増えてくるのではないでしょうか。さらに近年では「おひとりさま」も増加傾向であり、単身の老後の生活となれば、さまざまなことが頭をよぎるのではないかと思います。

将来、おひとりさまが快適な老後生活を送るために注意すべきポイントを見ていきましょう。

住む場所の問題…賃貸と持ち家、どっちがいい?

住む場所の問題…賃貸と持ち家、どっちがいい?

最初に思いつくのは自宅についてです。自宅を所有している方もいれば、賃貸にお住まいの方もいらっしゃると思います。どちらが良いのかは、個々人のライフスタイルや価値観もあり、結論は人によって異なるでしょう。

司法書士である筆者はどちらかといえば賃貸派ですが、さまざまな相続や生前の相談をうけると、どちらもメリット・デメリットがあるように感じます。

賃貸は「借りられないリスク」への対処が必要に

賃貸の場合、年を重ねたひとり暮らしだと「部屋を借りられないリスク」を考える方が多いでしょう。もちろん、このリスクはゼロにはなりませんし、逆に、大家側がリスクを回避しようとするのも致し方ないと思われます。

ただ、昨今は家賃保証会社も、独居の方の万が一の孤独死をカバーするような賃借人加入の保険も増えています。そもそも、今後は大きな視野でみれば空き家戸数も増えていく流れですので、保険等に加入し、大家側のリスク低減に協力してくれる入居者であれば、部屋を借りられないという可能性を減らすことができるのでは、と筆者は考えています。

持ち家は「高齢となってからの売却手続き」に負担も…

持ち家の場合は、上記のような不安を抱かなくてすむというメリットがあります。ただし、マンションのような集合住宅では、築年数が経過するとともに、管理費や修繕積立金の額がかなり高額となるケースが見受けられます。

とくに昭和50年代に建設された集合住宅は、おおむね築半世紀を迎えます。固定資産税などの計算に用いる法定の耐用年数は切れるわけですが、戸数の多いマンションのような集合住宅では、一斉建替えなどは所有者大半の同意を得ることができず現実的ではなく、進んでいるとは思えないのが現状です。築古のマンションにおいては、こうした問題も今後顕在化してくるのではないかと思われます。

また自宅を所有しているおひとりさまの場合、高齢となってひとり暮らしが困難になり、老人ホーム等に入居することになれば、売却して換価することも必要になるでしょう。

筆者も不動産売却の現場に立ち会うことが増えてきましたが、前述のようなマンションについては、比較的売却の手間が少なく、残置物の撤去程度の準備で済みます。

一方、土地付きの戸建てとなると、諸費用や手間も多く掛かります。親から引き継ぎ代々住んでいるような一戸建ての建物の場合、隣地などとの確定測量をしていないケースも珍しくなく、測量費用に数十万の費用と数ヵ月の時間、さらにマンションと同様の残置物の撤去はもちろん、売却の条件によっては、建物解体などの作業も負担する必要が発生します。こうした処分にかかる諸経費も一度試算してみると良いかと思います。

それ以前に、自分が認知症等を患えば、こうした不動産の処分行為自体ができなくなってしまうという点も、潜在的なリスクかもしれません。

老人ホームへの入居に伴う「保証人」の問題点

老人ホームへの入居に伴う「保証人」の問題点

終の棲家として選択されることの多い老人ホームですが、これは、特養のような施設から、有料老人ホームまでさまざまです。筆者は司法書士としての成年後見人業務で、被後見人の方の老人ホーム入居に立ち会うこともありますが、意外と皆様が困るのが「身元保証人」の引き受け先です。

老人ホームの大半は、賃貸住宅のような賃貸借契約を交わすので、通常の賃貸借契約と同様に「身元保証人」を求められることが多くあります。

ただ、通常の居宅の賃貸借契約と異なる点として、家賃や入居利用料などの「経済的保証」、そして、いつかは来るであろう入院等のための「緊急連絡先として保証人」の2つがあります。通常の居宅の賃貸借契約の保証としては、前者の家賃の「経済的保証」がほぼ全てでしょうし、家賃保証会社なども昨今はだいぶ増えてきました。

ただ、老人ホーム等へ入居する場合は、後者の「緊急連絡先として保証人」を重視します。

ほとんどの老人ホームでは医療行為はしないことが原則ですので、入居者様が病院に搬送された場合、搬送されたという連絡と、病院への付き添いの依頼の電話をすることになります。しかし、おひとりさまの場合、誰を緊急連絡先としての保証人にすべきか、頭を悩ませるところになります。

昨今、こうした「老人ホーム入居のための身元保証人」を専門とする業者も増えてきました。ただし、こうした会社は通常の家賃保証会社のように多数あるわけではなく、選択肢も限られています。ごく一部には身元保証の対価として、通常の保証料のほかに、相続財産の寄付遺贈を求められたなどの話も聞くこともあることから、保証会社については慎重に選択する必要があるかもしれません。

相続人のいないおひとりさまの「遺産」はどうなる?

相続人のいないおひとりさまの「遺産」はどうなる?

おひとりさまの方は、自分が亡くなったあとの相続財産の処分方法についても検討が必要です。

「たぶん大丈夫」「●●さんに頼んである」といった認識は、おおむねトラブルの原因になります。そもそも口頭だけの指示や約束で、相続の処理が終わることは日本の民法上ありえません。そのため、遺言や家族信託等による対策が必須となります。

特に「独身(死別含む)」「子どもがいない」「兄弟姉妹も甥姪もいない」と条件がすべて揃った方の場合、相続財産は貰い手のないまま、宙ぶらりんになってしまいます。自動的に国庫に入ることは、決してないのです。

このような方が、自宅不動産を「所有」していた場合、売却の手間は数年単位でかかってきますし、実際のところ、誰も手続きすることなく、放置されている不動産も多くあります。マンションなどの集合住宅の場合、このような状態となった部屋が出てしまい、管理組合が対応に苦慮するケースもしばしばみられます。

幸せな老後や晩年を迎えるため、元気なうちから対策しておこう

幸せな老後や晩年を迎えるため、元気なうちから対策しておこう

以上、おひとりさまが年を重ねていくことで考えられるリスクや注意点について、司法書士としての観点からまとめてみました。

この記事は読者を50代前後と仮定していますので、こうしたリスクや現実に直面するのはまだ10年~20年先かもしれません。しかし、人間は確実に年を取りますし、相続法などの民法が数年間でドラスティックに変化することは考えにくいといえます。

おひとりさまの場合、人生選択の自由を享受できる反面、どうしても日本古来の家族制度を根幹とした「老齢期の見守り」「見取り」を誰が負担するのか、という問題がついて回ります。

誰しも自分で自分の死後の後始末はできません。他人の迷惑を考えると、どうしても自助努力が不可欠となるのが現状です。幸せな老後や晩年を迎えるためには、身体や頭が元気な50代のうちから、少しずつ考えて準備することが必要かもしれません。