妊娠中は赤ちゃんとママの健康のため、栄養バランスの整った食事を心掛けたいですね。しかし、どんな栄養をどのくらい摂れば良いのか、食べて良いものや悪いものなど、分からないことも多いのではないでしょうか。
そこで、今回は妊娠中のママの食生活について、おすすめの食べ物や控えたい食べ物を栄養素ごとにまとめました。この記事を読めば、妊娠中に何をどれくらい食べたら良いかの目安が分かり、不安の多い妊娠生活において少し不安を取り除くことができるでしょう。
今後妊娠を希望する方や現在妊娠中の方、またそのご家族の方は、ぜひ参考にしてください。
1.妊娠中の食べ物はいつから気にするべき?
「妊娠中は控えた方が良いものを食べた翌日に妊娠発覚!」
そんなママも少なくありません。分からなかったとはいえ、お腹の赤ちゃんに悪い影響があったら…と不安になりますよね。では、妊娠中はいつ頃から食べ物に気を付けたら良いのでしょうか?
実は、妊娠初期はそこまで食事バランスや内容を気にしなくても大丈夫だといわれています。なぜなら、胎盤ができあがるまでの間、赤ちゃんは「卵黄のう」という器官から栄養を摂っているためです。お腹の赤ちゃんがママから栄養をもらい始めるのは、胎盤ができあがる妊娠5ヵ月(妊娠16週)頃とされています。そのため、妊娠5ヵ月頃まではママの食事が赤ちゃんに影響を与えることは少ないでしょう。妊娠初期はつわりで思うように食事を摂ることができないケースも多いので、無理に「赤ちゃんのために栄養を摂らなければ!」と焦らなくても大丈夫です。
個人差はありますが、妊娠中期に入るとつわりが治まり、食欲も出てくる時期になります。この頃から、しっかりと食事ができるようになったタイミングで食生活の管理を始めると良いでしょう。
2.妊娠中に摂りたい食べ物はこちら!おすすめをピックアップ
妊娠中期(妊娠16~27週)になると胎盤が完成し、ママの食事内容が赤ちゃんの発達に影響を与えやすくなります。この時期の食事で意識したいのが、栄養バランスです。
具体的にどのような食べ物を選べば良いか、理由と合わせてご紹介しましょう。
2-1.葉酸を含む食べ物
葉酸は、妊娠中特に意識して摂取したい栄養素のひとつです。妊娠初期には赤ちゃんの脳や神経管が形成されるため、中期〜後期には赤血球を作るために多く必要になります。妊娠を希望している段階から積極的に摂り入れることも良いといわれています。
成人女性に推奨される一日あたりの葉酸摂取量は240マイクログラムです。妊娠を希望する女性や妊娠初期の女性は、さらに400マイクログラムの葉酸摂取が必要です。サプリメントだけに頼らず、食事からもしっかり葉酸を摂り入れたいですね。
<葉酸が豊富な食べ物>
- ほうれん草
- ブロッコリー
- 枝豆
- 納豆
- いちご
2-2.たんぱく質を含む食べ物
たんぱく質は、赤ちゃんの身体を作る主成分です。20代女性のたんぱく質摂取の推奨量は一日あたり50g、妊娠中期はさらに+5g、妊娠後期は+25gの摂取が推奨されています。
<たんぱく質が豊富な食べ物>
- 肉
- 魚
- 卵
- 大豆
タンパク質はビタミンB群やビタミンD、糖質などの栄養素と一緒に摂取することで、効率よく体内に吸収することができます。
2-3.貧血対策となる食べ物
貧血は、妊娠中のマイナートラブルのひとつ。ママが貧血の状態だと、赤ちゃんに十分な酸素や栄養を届けられなくなってしまうため、注意が必要です。貧血予防には、鉄分を多く含んだ食べ物を積極的に摂りましょう。一日あたりの鉄分の推奨摂取量は、妊娠初期で9.0mg、妊娠中期・後期は16mgとされています。また、葉酸やビタミンB12も、貧血予防に効果的とされています。
<貧血対策に適した食べ物>
- レバー(※1)
- 赤身の魚
- 大豆
- ひじき
鉄分単品での摂取は身体への吸収率が低いため、緑黄色野菜などのビタミンCを含む食べ物と一緒に摂ると良いでしょう。
(※1)レバーは、鉄分・葉酸の他、ビタミンAも豊富なため、摂取量に注意が必要です。詳しくは「4.とり過ぎ注意!妊娠中に気を付けたい食べ物や飲み物」をご確認ください。
2-4.骨を強くする食べ物
カルシウムは、赤ちゃんの歯や骨のもとになる大切な栄養素。食事からの摂取量が不足すると、お腹の赤ちゃんはママの骨からカルシウムを摂り込みます。その結果、ママの身体がカルシウム不足になり、骨粗しょう症のリスクが上昇してしまうこともあります。また、カルシウムが足りていないと、イライラしたり、こむら返りなどのマイナートラブルを引き起こしたりします。成人女性の一日あたりのカルシウムの推奨摂取量は650mg。妊娠時や授乳時も推奨摂取量に変わりはありません。
<骨を強くする食べ物>
- 牛乳
- チーズ
- ちりめんじゃこ
- イワシ
カルシウムと一緒に摂りたい栄養素がビタミンD。ビタミンDは、体内へのカルシウムの吸収をサポートしてくれます。カルシウムを摂る際は、ビタミンDが豊富なしいたけや、サケ、サバなどの食材と合わせて摂取すると良いでしょう。
2-5.便秘対策となる食べ物
妊娠中、便秘に悩むママは多いでしょう。妊娠中の便秘の原因は、ホルモンの影響や大きくなった子宮に腸が圧迫される影響といわれています。便秘対策には、食物繊維や乳酸菌を多く含んだ食べ物が効果的です。食物繊維は便の量を増やして排便を促し、乳酸菌は腸内環境を整えてくれます。妊娠時一日あたりの食物繊維の推奨摂取量は18g以上とされています。
<食物繊維が豊富な食べ物>
- 干ししいたけ
- きくらげ
- そらまめ
- おから
- 押し麦
- ライ麦パン
- 昆布(※2)
- 茎わかめ
<乳酸菌が豊富な食べ物>
- ヨーグルト
- 納豆
- 漬物
- 味噌
(※2)海藻類は食物繊維の他にもヨウ素も豊富なため、摂取量に注意が必要です。詳しくは「4.とり過ぎ注意!妊娠中に気を付けたい食べ物や飲み物」をご確認ください。
3.妊娠中に避けたい食べ物や飲み物もチェック
妊娠前は何気なく食べたり、飲んだりしていたものでも、妊娠中のママやお腹の赤ちゃんにとっては悪影響があることもあります。
ここでは、妊娠中に避けたい食べ物と飲み物をまとめました。
3-1.アルコール類
妊娠中から授乳が終わるまでは、アルコール類の摂取を控えましょう。本来、お腹の赤ちゃんに有害な物質は胎盤内で食い止め、赤ちゃんまで届かないようになっていますが、アルコールは胎盤を通過してしまうためです。
<アルコールがお腹の赤ちゃんに与える影響>
- 胎児性アルコール症候群
- 発達遅延
- 中枢神経障害
- 先天性疾患
また妊娠2週目までに、アルコールの過剰摂取をした場合、流産のリスクが上がるという研究結果も出ています。
3-2.食中毒のリスクがある食べ物
妊娠中は、普段に比べ食中毒にかかりやすいとされています。中でも気を付けたいのが「リステリア菌」です。リステリア菌とは、食中毒の原因となる細菌の一種で、ナチュラルチーズや食肉加工品、魚介類加工品に含まれている可能性があります。
健康な一般成人であれば、軽い胃腸炎や無症状で済む場合が多いでしょう。しかし、妊娠中はリステリア症(リステリア菌により発症する症状)になるリスクが通常の20倍にも跳ね上がります。万が一発症してしまうと、母体だけでなく、赤ちゃんにまで悪影響を与えかねません。妊娠中は、リステリア菌を含む可能性のある食べ物は控えた方が良いでしょう。
<リステリア菌を含む可能性がある食べ物>
- 輸入品の非加熱ナチュラルチーズ(モッツアレラチーズ、カマンベールチーズ、リコッタチーズなど)
- 生ハム
- スモークサーモン
3-3.寄生虫を含む可能性がある食べ物
食品のなかには寄生虫を含む可能性があるものがあります。特に気を付けたいのがトキソプラズマです。トキソプラズマは、加熱されていない生の肉類などでみられる寄生虫です。妊娠中、ママがトキソプラズマに感染すると、お腹の赤ちゃんが「先天性トキソプラズマ症」になる可能性があります。
<先天性トキソプラズマ症の症状>
- 子宮内胎児発育不全
- 未熟児
- 肺炎
- 心筋炎
- 肝脾腫
- 黄疸
妊娠期間中は生肉を避け、しっかりと火を通して食べることで、先天性トキソプラズマ症を予防できます。以下のような食べ物は、妊娠中は食べるのを控えましょう。
<トキソプラズマを含む可能性がある食べ物>
- 生ハム
- 生ユッケ
- サラミ
- レアステーキ
4.摂り過ぎ注意!妊娠中に気を付けたい食べ物や飲み物
ここからは、妊娠中、摂取量に気を付けたい食べ物・飲み物を紹介します。
過度な制限は必要ありませんが、摂り過ぎには注意しましょう。
4-1.塩分が多い食べ物
妊娠中は、塩分控えめの食生活を心掛けましょう。妊娠中の塩分の過剰摂取は、むくみや高血圧の原因になる上に「妊娠高血圧症候群」を引き起こす場合があるためです。妊娠高血圧症候群は、お腹の赤ちゃんの成長を阻害し、重症化すると流産のリスクも高まります。特につわりの時期は「他の食べ物は無理でも、ジャンクフードなら食べられる!」というママもいますが、ジャンクフードなどの加工食品には塩分が多く含まれているため、ポテトフライなら細切りではなく太いタイプのものなど、少しでも塩分を控えられるものを選びましょう。
成人女性の塩分摂取量の目安は一日あたり6.5g。一方で、調査によると実際の塩分摂取量は、平均8g以上と大幅に上回っているのだそう。塩分量を気にせず食事を続けていると、塩分の過剰摂取につながります。以下のような食べ物は食べ過ぎないようにしましょう。
<塩分が多い食べ物>
- ジャンクフード
- 加工食品
4-2.カフェインを含む飲み物
コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、妊娠中のママが摂り過ぎると流産のリスクが上がったり、お腹の赤ちゃんの発育不全を引き起こしたりする可能性があります。日常的にコーヒーや紅茶を愛飲している場合は無理にやめる必要はありませんが、量を減らしたり、ノンカフェインの飲み物で代用したりするなど工夫しましょう。WHOのガイドラインでは、妊婦のコーヒーの摂取量は一日あたり3~4杯までが推奨されています。
<カフェインを含む飲み物>
- コーヒー
- 紅茶
- エナジードリンク
- 煎茶
- ウーロン茶
- ほうじ茶
参照元:
https://www.euro.who.int/__data/assets/pdf_file/0020/120296/E73182.pdf
4-3.水銀を多く含む食べ物
魚には、良質なたんぱく質やDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などの栄養素が豊富に含まれています。しかし、一部の大型魚類の中には、水銀が取り込まれていることもあります。
ママが水銀を多く含む魚を過剰に摂取してしまうと、赤ちゃんの中枢神経の発達に影響を与える場合があります。魚を食べる際は、種類と量を意識しましょう。
<特に水銀量に注意が必要な魚>
- 本マグロ(黒マグロ)
- メカジキ
- キンメダイ
- メバチマグロ
以上の魚は、1週間あたり約80g(刺身1人前程度)を摂取量の目安にしましょう。
また、水銀量がどうしても気になるけれど、魚を食べたい場合は、以下の魚がおすすめです。
<水銀量に特に注意が必要ない魚>
- サケ
- アジ
- サバ
- イワシ
- サンマ
- タイ
- ブリ
- カツオ
- ツナ缶
参照元:
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/100601-1.pdf
4-4.ヨウ素を多く含む食べ物
ヨウ素は、甲状腺ホルモンの主な材料であり、身体に欠かせない栄養素のひとつです。しかし、過剰摂取した場合、お腹の赤ちゃんの甲状腺機能が低下するとされています。
ヨウ素が多く含まれるのは、主に昆布やわかめなどの海藻類です。妊婦の一日あたりの平均必要量は170 マイクログラム、上限は一日あたり2,200 マイクログラムとされています。ヨウ素は、摂り過ぎにも、不足にも気を付けましょう。
<ヨウ素を多く含む食べ物>
- 昆布
- わかめ
参照元:
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4al.pdf
4-5.ヒ素を多く含む食べ物
無機ヒ素は、過剰摂取すれば中毒症を起こす有害な物質です。妊娠中のママが過剰摂取すると、赤ちゃんに奇形や脳障害を起こす危険性があります。中でも注意したい食品がひじき。ひじきは、他の食べ物に比べて無機ヒ素が多く含まれていますが、鉄分・ミネラル・食物繊維など、妊婦に必要な成分も多く含まれています。ひじきによる健康被害が起こりうるのは、一日あたり4.7g以上のひじきを毎日食べ続けた場合です。
「毎日、過剰にひじきばかりを食べ続けない」「ひじきの戻し汁は捨てる」などを、日頃から心掛けましょう。
参照元:
https://www.mhlw.go.jp/topics/2004/07/tp0730-1.html
4-6.ビタミンAを多く含む食べ物
ビタミン A は、赤ちゃんの発達に欠かせない栄養素です。妊婦にとって重要な栄養素であり、20~30代女性の場合一日あたり650~750マイクログラムRAEのビタミンAの摂取が推奨されています。一方で、ビタミンAの過剰摂取は、赤ちゃんの先天奇形のリスクを高めるという報告もあります。一日あたりのビタミンAの上限量は2,700マイクログラムRAEです。
ビタミンAの過剰摂取による健康被害の原因は、主にレバーの食べ過ぎやサプリメントの過剰摂取です。「貧血気味だからと頻繁にレバーを食べ過ぎる」「常用のマルチサプリメントに、実はビタミンAがたくさん含まれていた」ということがないよう気を付けましょう。
<ビタミンAを多く含む食べ物>
- レバー
- うなぎ
参照元:
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf P183、P212
5.妊娠中のダイエットは医師の指導の下で
「つわりが終わり、つい食べ過ぎてしまう…」と、妊娠中の体重増加に悩むママは少なくありません。しかし、妊娠中に自己判断での過度なダイエットは禁物です。
5-1.妊娠中のダイエットは赤ちゃんへ影響する可能性がある
妊娠中、体重が増え過ぎると、ママが妊娠高血圧症候群になったり、赤ちゃんが巨大児になったりするリスクが高まります。一方で、体重増加量があまりに少ないと、赤ちゃんの発育を妨げ、低出生体重児になってしまうことや、切迫流産や切迫早産のリスクも高まります。
5-2.妊娠中のダイエットは医師に指摘されてから
妊娠中の適切な体重増加量は、妊娠前の体格によって異なります。まずは、自分に必要な体重増加量を知ることが大切です。体重が増えたからといって、自己判断で無理なダイエットを行わず、医師から減量が必要と指摘された場合のみ、指導に基づいて調整を行いましょう。
おわりに
妊娠中は、たんぱく質・鉄分・カルシウム・葉酸・食物繊維など、さまざまな栄養素の摂取が意識的に必要となります。これらの栄養素がしっかりと含まれている食べ物をチョイスして、バランスの良い献立を心掛けると良いでしょう。また、何気なく食べていた食べ物の中にも、妊娠中は控えた方が良いものもあるので注意しましょう。
そして、妊娠中の食事で気になる点や不安な点があれば、かかりつけの産婦人科医に確認・相談しましょう。