カワグチ家の「親子三世代物語」|第二話 距離を置いていた母が脳梗塞で倒れた話

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カワグチ家の「親子三世代物語」|第二話 距離を置いていた母が脳梗塞で倒れた話

【カワグチ家のご紹介】

カワグチ家三世代紹介

こんにちは。イラストレーターのカワグチマサミです。

昨年の年の瀬、母が脳梗塞になりました。

私は電話で母から知らされました。

昨年の年の瀬、母が脳梗塞になりました。
みたいって・・・他人事じゃないねんで!!

母は、ずっとこんな感じなのです。

自分自身に興味がないといいますか…。私は、家を出て自立できるよう、山あり谷あり崖から落ちたりしながら、イラストレーターを目指したので、自分の人生に対してやる気のない母を見ると、何とも言えないもどかしい気持ちになりました。

さらにコロナ禍になり、私の執筆も重なり、母と会うことはしばらくありませんでした。

でもどこかで、この状況に安心していました。会えば、いつもぶつかってしまうから。

以前にも母は入院したことがありました。もう10年以上も前。私が実家を離れ、フリーランスのイラストレーターとして独立したころ、母の持病である糖尿病が悪化したのです。

歩けなくなるほど血糖値が上がり、視力も下がって、合併症の可能性もあるからと、緊急で入院することになりました。

私は、何度も何度も、母に言い続けました。小さい頃から、ずっと、ずっと。

心配したり、

このままじゃ体がこわれちゃうで

冷静に話したり、

合併症になったら動けへんくなってしまうで?

それでも聞いてくれず、感情のまま怒ったり

いい加減にしてよ!

それでも、母はいつも

はいはい

返事をするだけで、行動にうつすことはありませんでした。

退院したあとも、甘いものをたくさん食べ、運動もしませんでした。

何度、言っても聞いてくれない。約束しても、守ってくれない。

何年、何十年も……。

私が結婚して、家庭を持ってからも、息子の前で言い合いになることがありました。

ママは、なんでおばあちゃんに怒るの?
そうだよね。怒っちゃダメだよね。

息子の前で、母に怒りたくない。そんな姿を息子に見せたくない。

それに、もう、疲れてしまいました。

何度言っても、自分の思いが伝わらないことに。

そのタイミングで、コロナ禍になり、母と自然に会うことが減っていったのです。

そんな矢先の、母からの電話。脳梗塞のお知らせ。

私は久しぶりに母と父と病院に行きました。

父も、小さい頃から会えばぶつかる関係だったので、二人で会うことはありませんでした。

私たち家族は、母の病院で、約2年ぶりに再会しました。

すぐに手術をしましょう

その時、私は父の方を見ました。父は私と同じく固まっていました。

母は、脳梗塞のせいか、無表情で何を考えているか分からない様子でした。

父、母、私の三人はただただ先生の話を聞いていた

私は看護師さんに言われるがまま、手術や入院の準備にとりかかりました。

冷静な自分がいました。

だって、私は驚かない。

この未来を予想していたから。

母がいつかこうなるのをどこかで分かっていたから。

病気なのに治す気がなくて、好き勝手してるから。

「自業自得」。

「仕方ない」。

そう理解してる。

分かってるのに・・・・・・・。

モヤモヤモヤ

納得できていない自分がいました。

不安、悲しみ、後悔、諦め、いろんな気持ちがごちゃごちゃ混ざり合う。

その行き場がなくて気持ち悪い。

未来を予想できても、感情は別。

容赦なく湧き出るものなんだと知りました。

いくら予想しても、その未来が当たっても、後悔はしてしまう

そんな私の横で、母は、投げ捨てるように言いました。

まあ人生こんなもんやろ
何それ

母は、諦めてる。頑張ろうとしない。

自分の人生を他人事のように扱う。

何か言わなくちゃ。

そんなことないよって。

でも、何を言ってもまた否定されそう。

そう思ったら、何も言えなくなる。

母は、変わらない。

周りがどれだけ心配しても。

例え、脳梗塞の手術がうまく行っても、昔のように変わらないかもしれない。

ちゃんと生きようとしてくれない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ーそれから一週間後ー

母の手術の日。

コロナ禍の影響で、家族でもオペ室の近くで待機することができませんでした。

私は実家で、病院からの連絡を待ちました。

しかし、手術が終わる予定になっても電話はかかってこない。

不安の中、1時間、2時間、過ぎようとしたとき、ようやく病院から電話がかかってきました。

手術は無事に終わりました。回復するかどうかはお母さん次第です。
そうですか・・・

脳梗塞が見つかったときの母の言葉を思い出す。

まあ人生こんなもんやろ

・・・・・・・・・・・・・・。

お母さん本当に人生そんなもんなの?

私は…そうは思わない。

本当は…。

お母さんと普通に話してみたい。

ケンカばかりの思い出が多すぎる。

いつか、怒らずに、穏やかに、会話をしたい。

ご飯を食べたりお出掛けしてみたい。

だからちゃんと生きて欲しい

・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。

これが私の本当の気持ちだったみたい。

だから、お母さんが自分の身体を大切にしてくれないことに

私はイライラしたんです。

自分の身体を大切にすることは、そのまま自分自身を大切にすることだから。

それから三日後、私は息子のソウを連れて、母が入院している病院に行きました。

しかし、感染対策のため母の部屋に行くことはできませんでした。

そこで、看護師さんにお願いして、離れた場所から母にテレビ電話をかけることにしました。

PLLLLLLL

!!!

画面に映ったのは…

あ・・・う・・・・

見たことがないくらい弱った母の姿でした。

目の焦点があっていない。

言葉もたどたどしい。

寝たきりのまま動けない。

手術前より、ひどくなっているように見えました。

私が不安そうにしている様子が伝わったのか、看護師さんが答えてくれました。

看護師:大丈夫、聞こえてますから、お話ししてください!

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

私は、画面越しの母が聞き取れるようにと、ゆっくり話しました。

お母さん手術おつかれさま
一緒に出かけたりしたい

それから深呼吸して……。

スゥ

ハァ

お母さんのこと大切だからね

私は母に、この言葉を絶対に伝えないといけないと思っていました。

母は、何を考えているのか分からない表情でした。

でも、泳いでいた瞳が、一瞬、私の方を捉えてくれました。

言えて良かった。

あまり長電話をしてはいけないと思い、電話を切ろうとした瞬間

息子のソウが私の電話をとって、

おばあちゃーん!元気?!
いやいや、元気ちゃうやろ!

私と息子のやりとりを画面越しに聞いていた母は、

ゆっくりと、小さな声で

あ・・・い・・・が・・・と

と、答えてくれました。

少し、笑ったようにも見えました。

看護師さんにお礼を言って、私は電話を切りました。

母の意識が戻るまで、ずっと考えていました。

なんで、お母さんは自分の命に対して適当なんだろう?

父に怒鳴られ続けて、

働いた先でもうまくいかなくて、

学校でもいじめられていたらしいし、

祖母は優しい人だけど仕事が忙しくて遊んでもらった記憶はあまりなく、

妹は自分と比べようがないくらい立派な人で、

祖父は父以上に厳しい人だった。

だから、きっと、お母さんは

母:自分のことを大切に思ってくれる人なんていない

って、思ってるんじゃないかと、私は思ったんです。

だから、伝えようと決めました。

「あなたのことが大切なんだよ」って。

その言葉が、どこまで母に伝わるかわからないけど。

ー母が入院して二週間ー

母は、手術が予想以上に難航したため予定の退院日より延長になりましたが、無事に退院することができました。

久しぶりに会った母は…

はーマジで死ぬかと思った

目に力があり、言葉もスラスラと話せるようになりました。私と電話をしたときは、手術後の薬の影響で、頭がぼんやりしていたみたいです。

流石にあの様子は焦りました。

退院後、実家に向かう帰り道、お弁当を買うことにしました。駅前にできた、美味しくて人気のお惣菜やさん。

このお弁当のご飯、小盛りにできるかな
さすがにな、もう、ちゃんとする
いろんなところ行きたいし。連れてってくれるんやろ?

それは、母が手術の後、私が電話越しに母に話したこと。

一緒に出かけたりしたい

意識が朦朧とする中、聞いてくれてたみたいです。

正直、母に対して、もどかしい気持ちが全てなくなったわけではありません。長い親子の付き合いの中で、許せないこともある。忘れられないことだってある。

だけど、

数十年変わらなかった頑固な母が、やっと、ようやく、変わったことは、受け入れてあげたい。

ここで受け入れなかったら、私たちは、一生変わらないから。

そう思えるのは、私が一番、変わったからかもしれない。

みんなで行こ!

後日談ー

退院1ヶ月検診後、母は後遺症もなく、回復していると医者から言われました。

私はお祝いに母とランチに行きました。

回復して良かったな~!脳梗塞って医者に言われたときはもうダメかもぅって思ったけど

私:また他人事!自分の人生を大切にして!

母:違う。びっくりしたと思うけど…。

脳梗塞中やから分からへんねん。

私:そんなもんなんや。

母:マジで頭が回らへん。でも、あんたが心配してくれてたのはわかった。

お父さんも。今まで家事なんてしたことなかったから、びっくりした。

私:そこびっくりするんかい。

母:びっくりしてあの世から戻ってきたんかもしれん。

私:あはは。それはよかった!

母は、2年前から、手や足に痺れがありました。

その時間は長くはなく、2、3分ほど。他にも、頭がぼーっとして、すぐに言葉が出なかったり、詰まるなどしたらしいです。その様子は私も本人から聞いていました。

でも、年のせいだと思って、二人とも気にしていなかったのです。

この頃から脳梗塞の症状は進んでたのです。

たまたま、糖尿病で定期検診を受けていたから、気付くことができました。もし、そのタイミングで気付けていなかったら、脳梗塞はもっとひどくなって、取り返しがつかないことになっていたかもしれません。

病気はゆっくり進行することがほとんどです。徐々に自分の身体が変わっていく。本人は気付きにくい。だから、本人はもちろん、周りの人も家族や大切なひとが「おかしい」と思ったら、病院に連れて行ってあげてください。

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