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カワグチ家の「親子三世代物語」|第五話「孫を褒めることができない祖母の理由」
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カワグチ家の「親子三世代物語」|第五話「孫を褒めることができない祖母の理由」

こんにちは。イラストレーターのカワグチマサミです。

好きなものはゲーム、苦手なものは家事。9歳の息子と、夫と三人で暮らしています。

【カワグチ家親子三代物語】では、長い間、すれ違っていた親と向き合う話や、義理親との関係、私の息子と親とのエピソードなどを連載しています。

カワグチ家三世代紹介

母が久しぶりに家を訪れました。

実は母は冬に脳梗塞になり、奇跡的に回復をしました。

しかし、コロナ禍もあり、他にもいろいろな事情が重なり、なかなか会うことができませんでした。 

9歳になる息子のソウも、おばあちゃんが来てくれて嬉しそう。

 

だけど、母は会話をすることなく息子をただ見ているだけ…。

いつものことながら。

孫をじっと見つめる母
「よかったな」

母は、なかなか人を褒めることができません。

孫ががんばってるんやから、もっと気の利いたこと言ってあげてよ。

こんなふうに…!

そうくんめっちゃがんばったね!さすがやね!すごい!すごい!

ちょっと大袈裟だったかもしれないけど、

これくらいしないと母には伝わらないと思って。

ほらお母さん!こんな感じでもう一度!

そんな想いを込めて母の方を見ると、、

「エアコンやすなってる」

くうぅ。

私は息子のソウを褒めて育てたいと思っています。

なぜなら、

私は親に褒められたことがほとんどなかったから。

母とは仲が悪かったわけではありません。

だけど…

「お母さん100点とったよ」
「そうか」

頑張ったことを認めてもらえない。

それは小さい頃の私にとってはとても悲しいことでした。

だから、結婚して息子のソウが生まれたとき、

親に言われて嫌だったことは、絶対に言わないと強く決めました。

絶対に同じことは繰り返さないと誓った

息子が夢中になることを一緒に喜んで、褒めてあげたい。

そして自信を持って、好きなことをして生きていける人生を歩んでほしい。

だから私は小さい頃、親にされて嫌だったことを、子どもには絶対に繰り返さない。

そう強く、強く、決意したというのに…

お母さんは何も変わってない

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なんで孫を褒めることができひんの?

息子を通して気づく。

私は小さい頃、本当は母に褒めてもらいたかった。

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気まずい雰囲気になる中、母がボソリと答えました。

だって褒められたことないから、どうやった褒めたらいいんかわからん。

それはひとり言だったのかもしれません。

お母さんは褒められたことがないから、褒め方がわからん?

昔、母から昔、聞いたことがありました。

母の家族のこと。

祖母は優しい人だけど、朝から晩まで働いていたそう。

妹はのんびりやの母と違って、なんでもできる優秀な性格。

祖父はそんな母を許せない、厳しい人だったそう。

母方の祖母も、祖父も、叔母も、

私にとってはみんな優しくて、私を褒めてくれる人たち。

だけど、時代の価値観の影響もあって、母は褒められることが少なかったのかもしれない。

褒められたことがない、幼少期のお母さん
そっか。褒め方がわからんかったんや。

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いやいや、褒められて育ってない私が褒めとるやないか!

私が親に褒められてないのに、人を褒めることができるのは、

「自分で自分を認めることができるようになったこと」だと思います。

小さい頃からのイラストレーターになることは、母は反対したし、父は興味がありませんでした。

だから私は両親がいる家を出て、壁にぶつかりながらも、たくさんの仲間に出会い、夢を叶えることができました。

今もイラストレーターとしての自信はないし、落ち込むこともあるけど、

これまで頑張ってきた自分を認めることができました。

自分を褒めることができたから、人を褒めることができるのだと思います。

私自身が、変わったから。

だけど、お母さんは?

ほんとに何も変わってない?

私が私の道を進んでいる間に、母も母の道を進んでいるはず。

そのスピードが早くなくても。

母も私が知らない、大変なこと、悲しいこと、嬉しいこと、いろんな経験と、それだけの時間が流れている。

私が小さいときの母のままではないはず。

お母さん、ソウのこと好きやろ?

それなら…

母の目を見て、はっきり伝えよう。

それなら、ソウのこと褒めてあげて。
・・・・・わかった。
そうじゃないと、昔の私みたいにひねくれて何十年も仲悪くなるかもよ。
それはあかん!

母には珍しく、張り上げた声でした。

その声の大きさに、母の覚悟を感じました。

あの頃のひねくれ者の私が報われました。

母は息子を褒めると決めても、そう簡単に人は変わりません。

最初はサポートしてあげないと…!

はい、せーの。「そうくんがんばったね」

何度も息子を褒めるコールをしていると、母がまたボソリとつぶやきました。

私はあんたを褒めてないのに、あんたは子どもを褒めてんの?

ああ、それは……

いや、変わったんよ。大変やったんよ。

・・・・・・・・・・・・・・・

そうか

あ、なんか、小さい頃から言いたかったことを少し言えてスッキリしたかも。

それに…

この言葉は、母なりの私への褒め言葉なのかもしれない。

不器用だからわかりにくいけど。

小さい頃のいじけていた私も、少し満足したかな?

だいぶ遅くなったけど、一番褒めてほしかった人に褒めてもらえたよ。

100点もらってニッコリ

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ほんでママ仕事は?「忘れてた!」

ー以前こんなことがありましたー

まだ母とぶつかりあっていた頃…

もうそんなん言うんやったら切るで

私は、母と話すたびにぶつかっていました。

「ママまたおばあおばあちゃんとケンカしてんの?」

息子は、私の感情を読み取るのがうまい。

嘘をついたら、バレてしまう。

正直に話そうと思いました。

実はママ、昔おばあちゃんと仲悪かったんよ
でも今はちょっとはマシになったってことやんな。

息子のソウに言われて気づきました。

確かに…。昔と比べたら、まだお母さんもお父さんも少し変わったかも。

それに、今はパパやソウがいるでしょ?
うん。ママはすごく変わったと思う。

仲直りなんてまだ考えられないけど、息子の笑顔を見ていたら、いつか「普通に」話せる日くらいは、信じてもいいかもしれない。