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自筆証書遺言の検認は不要・必要?手続きの流れや必要書類を紹介

遺言書
セゾンのくらし大研究 編集部

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遺言には3つの種類があり、そのうちのひとつに自筆証書遺言があります。自筆証書遺言とは、自分で作成する遺言書のことで、費用をかけずに作成できるというメリットがあります。

原則として、自筆証書遺言は家庭裁判所で検認を行わなければなりません。検認を行わずに遺言書を開封するとペナルティが科される場合もありますので注意しておきましょう。

今回は自筆証書遺言の検認の必要性と、手続きの流れについて解説します。

この記事のまとめ

自筆証書遺言とは自分で作成する遺言書のことで、誰にも知られることなく、費用をかけずに作成できます。また何度も書き換えができるというメリットがあります。相続が開始したときに自筆証書遺言が見つかった場合は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。ただし、「自筆証書遺言保管制度」を利用した場合は、家庭裁判所の検認は不要になります。今回は検認の内容と手続きの流れについて詳しく解説します。検認の際に必要となる書類や手数料などについても記載していますので、内容についてひととおり理解しておきましょう。検認に関して不安がある際には、専門家に相談することも大切です。

相続手続きサポート
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民法によって自筆証書遺言の検認は定められている 

民法

自筆証書遺言の検認は、その遺言書の状態や内容を確認したうえで保存する手続きをいいます。

遺言書の検認については民法にも規定されています。

【民法1004条 遺言書の検認】
1.遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2.前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3.封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

また、検認を受けずに遺言書を開封した場合、50,000円以下の過料が科されることになります。

家庭裁判所にて検認を終えたら「検認済証明書」が発行されます。この「検認済証明書」は以下に記載する各種相続手続きの際に必要です。

  • 証券口座などの名義変更手続き
  • 相続登記の手続き
  • 預貯金などの払い戻しや解約手続き

検認はいつまで?

検認には期限は設けられておらず、民法の条文にも「相続の開始を知った後、遅滞なく」とされています。遺言書を保管している方や、遺言書を見つけた場合は、速やかに家庭裁判所に対して検認の申し立てを行うようにしましょう。

検認しないとどうなる?

検認を行わないまま、遺言書を開封した場合は50,000円以下の過料が科せられます。また、不動産の相続登記や、預貯金の払い戻し、株式の名義変更など手続きが進まず、相続手続きに支障をきたす恐れがあります。

検認の申し立てにかかる費用はいくら?

検認の申し立てに必要な費用は、遺言書1通につき収入印紙800円、そして連絡用の郵便切手代です。郵便切手代については念のため、事前に家庭裁判所へ確認することをおすすめします。

検認を専門家に依頼する場合は別途費用が発生しますが、これについては後述します。

自筆証書遺言の検認が不要なケースもある

自筆証書遺言であっても、家庭裁判所の検認が不要となるケースもあります。令和2年7月よりスタートした「自筆証書遺言保管制度」を利用した場合は、家庭裁判所の検認は必要ありません。

ちなみに「自筆証書遺言保管制度」とは、作成した遺言書を法務局にて保管してもらえる制度で、保管している遺言書の閲覧や、保管申請の撤回、住所などの変更届出などが行えます。法務局では原本を保管する他、内容を画像データ化して保管するため、どこの法務局でも内容を閲覧できます。

被相続人が保管制度を利用しているか確認したい場合は、被相続人の死後、相続人や遺言執行者など一定の範囲の方が「遺言書保管事実証明書」の交付請求を行うことで確認できます。交付請求は全国どこの法務局に対しても行えます。

自筆証書遺言保管制度について詳しく知りたい方は、「自筆証書遺言の保管制度に関するメリット・デメリットをわかりやすく紹介」の記事をご確認ください。

封印がされていない自筆証書遺言の検認は必要・不要?

遺言書

封印がされていない自筆証書遺言であっても、それが必ず無効となるわけではありませんので、家庭裁判所の検認が必要です。

検認手続きの流れ

自筆証書遺言の検認は、以下の流れで進みます。

検認の申し立てに期限はなく、遺言書を保管している方もしくは遺言書を見つけた方が、相続開始を知った後、遅滞なく行うこととされています。

また、実際に家庭裁判所に検認の申し立てを行い、検認が終了するまでには1ヵ月程度の期間を要します。また、必要書類などの準備期間を含めると余裕をもって2ヵ月程度は見ておく方がいいでしょう。

申し立てができる人の要件

検認の申し立ては誰でもできるわけではなく、次のいずれかが行います。

  • 遺言書の保管者
  • 遺言書を発見した相続人

申立先の確認

検認の申立先は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所です。管轄の家庭裁判所を調べたい方は、最高裁判所のWEBサイト「裁判所の管轄区域」よりご確認下さい。

必要書類を準備

申し立てに必要な書類は、主に以下の3つです。

書類名入手場所
申立書遺言書の検認の申立書 | 裁判所よりダウンロード可能
遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本市区町村役場

申し込みを行い家庭裁判所から連絡を待つ

裁判所

必要書類を家庭裁判所に提出したら、後日裁判所から相続人全員に対して検認期日通知書(検認を行う日を通知する書類)が送られてきます。ちなみに申し立ては郵送でも問題ありません。

検認日には、申立人は遺言書および印鑑を持参しましょう。

また、検認期日には申立人以外の相続人にも出席してもらう必要がありますが、出席はあくまでも任意です。出席しなかった相続人に対しては、後日家庭裁判所から検認が行われたことを通知する書類が届きます。

検認に出席し検認済証明書を申請

検認期日は申立人の出席が必要です。そして相続人たちにも立ち会ってもらいながら、裁判官が申立人から提出された遺言書を検認します。封がされた遺言書は開封のうえ、遺言書を検認します。

封がされている遺言書は家庭裁判所にて相続人などの立会いの下で開封しなければならない決まりになっています。

検認が終ったら、検認済証明書の申請を行います。申請には遺言書1通につき150円の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。

自筆証書遺言の検認に必要な費用・手数料

自筆証書遺言の検認には、以下の費用がかかります。

内容費用
司法書士報酬30,000円~50,000円
戸籍謄本の取り寄せ450円~750円(郵送の場合ば別途切手代が必要)
申し立ての費用800円(遺言書1通につき)
連絡用郵便切手家庭裁判所に確認
検認済証明書申請手数料150円(遺言書1通につき)

司法書士報酬は、検認だけを任せたいなら報酬だけで済みますが、他の作業も一任したい場合は、書類代理取得報酬などが追加で10,000円~30,000円程度発生します。

司法書士に依頼するメリット・デメリット

司法書士に依頼することで報酬が発生する点がデメリットですが、申立書の作成や戸籍謄本の準備などは非常に時間がかかります。しかも相続人全員の戸籍謄本を取り寄せるとなると、相続人の人数によってはかなりの労力になるでしょう。それらの作業を司法書士に依頼することで、申し立てまでの時間を短縮できますし、その分その後の相続手続きを早く進めることができます。

相続放棄の申し立ては相続の開始を知った日から3ヵ月が期限となっており、遺言書の内容によって相続放棄をするかどうかを決める場合であれば、司法書士に依頼して早めに検認期日を迎えられるようにすることをおすすめします。

相続手続きで悩みがあるときは

相続

相続手続きには、さまざまなものがあり、相続人だけで手続きを行うには限界があります。

費用は発生するものの、司法書士に任せることでスムーズに手続きが進むほか、多忙で多数の役場で書類を取り寄せるのが難しい方や、相続人の中に疎遠な人がいるなどのケースでは、司法書士に相続手続きを依頼することで、悩みを解決できます。

相続手続きで悩みがある方は、ぜひ「セゾンの相続 相続手続きサポート」にご相談ください。経験豊富な提携専門家のご紹介も可能です。

セゾンの相続 相続手続きサポートの詳細はこちら

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おわりに

自筆証書遺言は自分で作成でき、何度でも書き換えられる点がメリットですが、法的な要件を満たしていなければ無効になるというデメリットがあります。また、自筆証書遺言は亡くなった後にすぐに開封できるわけではなく、開封するためには家庭裁判所の検認を申し立てる必要があります。

申し立てには費用が発生する他、最終的に開封できるまでに1ヵ月程度の時間がかかるため、自筆証書遺言に拘るなら、自筆証書遺言保管制度を利用するようにしましょう。自筆証書遺言保管制度では法務局に遺言書の原本が保管され、さらに家庭裁判所の検認が不要になります。

自筆証書遺言は家庭裁判所の検認を受けたからといって有効になるわけではないことも知っておきましょう。遺言に関して不安な点がある場合は、専門家に相談し、アドバイスをもらうことも大切です。

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