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借地権割合とは?借地権売却の流れや注意点も解説

借地権割合とは?借地権売却の流れや注意点も解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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借地権は土地を借りる権利で、関連する取引には多くの制約が伴います。借地権の特性を理解し、借地権割合の意味を把握することで、借地権の資産価値を理解し、計算ができるようになります。また、借地権を売却するには、法的な制限や権利義務、慣習を知る必要があります。本記事では、借地権の初歩から、売却に必要な手続きや注意事項をわかりやすく解説しますので、トラブルを未然に防ぎ、売却をスムーズに進めるポイントを理解できます。

この記事を読んでわかること

  • 借地権、借地権割合、借地権価格の調べ方や計算方法を理解することで、おおよその借地権価格を求めることができる
  • 借地権の売却方法や地主への対応のポイントをつかむことができる
  • 借地権の正確な知識と手順を理解することで、借地権に関連する取引を円滑に進めることが重要
相続不動産の有効活用
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借地権割合っていったい何?

借地権割合っていったい何?

借地権とは、他人の土地を使用する権利のことを指します。これには資産価値が存在し、相続財産として扱われます。借地権の特性や借地権割合の意味や調査方法を理解することで、資産価値を自らの計算で導き出すことが可能になります。

借地権割合とは

「地上権」は、他人の土地において工作物または竹木を所有するため、その土地を使用する権利です(民法265条)。地上権は「物権」に分類されるため、地上権者は強い権利を有しています。具体的には、地上権を譲渡したり、土地を第三者に転貸したりする際には、地主の承諾は不要です。

「賃借権」は、他人の物を使用収益する権利です(民法601条)。賃借権は「債権」に分類されるため、物権である地上権に比べると、借地権者(賃借人)が有する権利は弱いものとなっています。具体的には、賃借権を第三者へ譲渡したり、土地を第三者に転貸したりする際には、地主の承諾が必要です。

借地権は、他の相続財産と同じように相続されます。そのため、相続財産とみなされるので、相続税の課税対象になります借地権を相続する際には、一般的に名義変更料を地主へ支払う必要はありません。しかし、中には名義変更料を求めてくる地主もいます。

ここで地主との対応を誤ると、借地権の譲渡を拒否されるなど、理不尽な対応をされる可能性がありますので、知識と経験のある不動産会社に相談しながら進めましょう。

借地権割合とは、土地の評価額のうち、借地権が持つ権利の割合のことです。

借地の権利が全体の何割に当たるのかを示すのが借地権割合です。相続税や贈与税を課税するために、国が定めた割合で、実際に借地権や底地権の取引の際にも、この路線価格に記載されている借地権割合をベースに評価されるのが一般的です。地価が高いエリアほど借地権割合が高くなる傾向があり、住宅地では6~7割、商業地で8~9割程度が一般的です。

借地権割合の調べ方

国税庁が運営する「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で、路線価と借地権割合を調べることができます。財産評価額を調べる上では欠かせないサイトです。

まず、サイトを開いたら、上段の年度が最新の年度が選択されているかを確認します。次に調べたい都道府県を地図上でクリック、次画面で路線価図をクリックします。

該当する住所を選択して、目的の場所の路線価図を出します。地図上の道路沿いに、数字とアルファベットがセットで記載されていることを確認します。

数字が路線価、アルファベットが借地権割合です。アルファベットが示す割合は、A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%となっています。

借地権の相続税評価の計算方法

調べた路線価、借地権割合から借地権の評価額が計算できます。路線価の記載数字が400であれば、土地の1平方メートル当たりの価額は40万円となるので、これに面積をかけて、土地の評価額を出します。

次に借地権の評価額を計算します。路線価の右にあるアルファベットで確認してください。

400Dと記載されている場合、評価額40万円で借地権割合が60%となりますので、計算式は次の通りとなります。

  • 40万円×250平方メートル=1億円:土地の評価額
  • 1億円×60%=6,000万円:借地権の評価額

この計算は土地が整形地であることを前提としていますので、あくまで概算の評価額を求めるための方法です。

借地権を売却する方法は?

借地権を売却する方法は?

借地権は他人の土地を利用できる権利なので資産価値があります。借地権は最終的に地主に返却するものだと誤解している方は多いですが、借地権は売却することができます。

ただし、売却する際には地主の承諾を得て、譲渡承諾料等を支払う必要があります。これらの手続きを円滑に進めるための要点を解説します。

借地権を売却するには

借地権を売却する際、地主の承諾を得ることが前提になります。承諾を得られない場合には、借地非訟といわれますが、裁判所へ借地権の譲渡の許可を求めることになりますので、費用も時間も労力も奪われます。

地主の意向を慎重に確認し、良好な関係を維持することを意識して手続きを進めてください。

借地権の売却方法

地主へ売却

はじめに、借地権を売却する意向を地主に伝えます。地主が購入を希望し、条件が合えば、地主に対して借地権を売却することになるでしょう。

誤解があるケースとして、借地権を地主に無償で返すつもりの方がいますが、借地権は通常、資産価値があるものと理解するべきです。地主だけでなく、第三者にも売却可能なものという観点から進めましょう。

第三者へ売却

借地権を売却する場合には、地主から借地権の譲渡承諾を得る必要があります。その際には一般的には譲渡承諾料を地主に支払います。概ね借地権価格の10%前後が一般的ですが、地主によって譲渡承諾料の金額は違いますので、注意が必要です。

等価交換して第三者へ売却

等価交換とは、価値の等しいものを相互に交換することです。この性質を利用して、地主と借地人が不動産を完全所有権にするため、土地の一部を分筆して、それぞれ一部分の底地権と借地権を相互に交換します。

借地権の一部分を地主に返還、底地の一部分を借地人に譲渡して、完全所有権の土地を作り、この部分を売却します。借地権だけ、底地権だけだと換金性は低いですが、完全所有権の土地にすることで、土地利用の制約は無くなり、換金性は大幅に上がります。

借地権と底地権をあわせて第三者へ売却

地主に底地権を売却する意向がある場合には、売りたい借地権と地主の底地権を合わせて完全所有権として売却することで、土地利用の制約が無くなり、換金性は大幅に上がります。

借地権売却の手順

借地権売却の手順

借地権を売却するには、知識と経験のある不動産会社のサポートが不可欠です。多くの不動産会社に査定を依頼して、単純に査定額が高い不動産会社に売却の依頼をするにはリスクがあります。

借地権の売却には、専門知識と経験のある不動産会社を選ぶことが重要です。なぜなら、地主への対応を誤ると、承諾を得られず、売却できなくなる場合があるからです。借地権売却の手続きの流れを把握して、知識や経験のある不動産会社を見極めましょう。

査定を依頼する

はじめに、複数の不動産会社に査定を依頼し、市場価格を掴みます。借地権の場合、売主や買主だけでなく、地主との交渉も必要となります。

特に地主への対応が適切でないと、借地権の譲渡承諾を得られない可能性もあります、その場合、借地非訟といいますが、裁判所へ借地権の譲渡の許可を求めることになるので、費用も時間も労力も奪われます。

それゆえ、最終的には借地権や底地権に関する知識と経験が豊富な不動産会社を選ぶことが必要です。査定を依頼した不動産会社が借地権についての知識を欠いているようであれば、他の不動産会社を探すことをお勧めします。

地主の承諾を得てから売却活動

地主に譲渡承諾を得るために、はじめに地主が借地権を購入する意向があるかどうかを確認します。

購入する意思がないことを確認した上で、初めて第三者への売却したい意向を伝え、譲渡承諾料、更新料、建て替え承諾料、今後の地代、新しい賃借人の融資申し込みの際に求められる書類等に地主の協力が得られるかなどを確認した後に、売却活動をスタートさせます。

売買契約を結び借地権譲渡承諾書を作成

買主を見つけたら、まず地主に連絡して、借地権売買価格を基に譲渡承諾料、更新料、建替承諾料、滞納地代などを計算してもらうか、これらの計算や手続きを不動産会社から地主に提案してもらうことが必要です。

地主への支払いや地主に発行してもらう書類、そして今後の手続きについて、買主と地主双方に理解をしてもらった上で、売買契約を締結してください。借地権譲渡承諾書は、通常、地主へ譲渡承諾料を支払ったタイミングで受け取ります。地主から発行してもらうその他の必要な書類についても同様です。

これらが得られない場合、買主の住宅ローンの融資が受けられないことにもなりかねないので、慎重に注意して進めてください。

借地権の引き渡し

買主が決まったら売買契約書や土地賃貸借契約書を作成し、地主と買主に諸条件を確認した後、借地権売買契約と土地賃貸借契約を締結します。

譲渡承諾料は、一般的には契約締結、売買代金の支払いと同時に支払います。売買対象に建物がある場合には、土地の借地権の譲渡と同時に、建物の所有権を新所有者へ所有権移転登記の手続きを行い、引き渡しが完了します。

借地権を売却する際の注意点

借地権を売却する際の注意点

借地権の取引は、通常の不動産取引とは異なり、売主と買主だけでなく、地主も利害関係人として関与します。

このような複雑な領域では、地主を含む三者間の微妙な交渉が求められ、それには知識と経験が必要となります。適切に話をまとめ上げるためには、基本的な知識を身につけるとともに、専門家の助けを上手く借りることが重要となります。ここではそのための注意点をお伝えします。

必ず最初に地主に報告すること

はじめに、借地権を売却する意向を地主に伝えます。第三者へ売却するつもりであっても、地主が購入する意向があるかを確認する必要があります。

これまでの賃貸借契約における関係から、最初に地主へ伝えることが適切な手順とされています。手順を誤り、地主が不快感を覚え、譲渡承諾をしてもらえないなどのトラブルを避けるための配慮です。地主に購入の意向が無ければ、第三者への売却の話がスムーズに進められます。

地主との交渉は不動産会社を介して行う

借地権を売却する場合、地主との交渉を自分で行うのは避けた方が良いでしょう。借地権に関連する権利関係は複雑であり、地主、そして買主との間の調整が必要となります。これにはコミュニケーション能力だけでなく、法律や不動産に関する深い知識と経験が必要です。

さらに、地主一人ひとりの不動産や法律に関する知識レベルは異なりますし、その性格によっても交渉の進め方が変わるため、経験と専門知識がある不動産会社へ依頼しなければ、高い確率で失敗します。

査定は複数の不動産会社に依頼する

査定は複数の不動産会社に依頼する

複数の不動産会社に査定を依頼して相場を確認します。しかし、やみくもに多くの不動産会社に査定の依頼をするということは、しつこい営業活動を容認することにもつながるので注意が必要です。相場を確認するだけでなく、借地権の相談を行い、その不動産会社の知識と経験も必ず確認しましょう。

プロに相談して進める

不動産取引は多岐に渡ります。特に借地権の取引では専門知識と経験が必要で、これには相続に関する知識も含まれます。従って、借地権や相続に関する深い知識と経験を持ち、かつ誠実に対応してくれる不動産会社を選ぶことを強く推奨します。

セゾンの相続 相続不動産の有効活用」では、経験豊富な提携専門家のご紹介も可能です。相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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借地権売却は場合によって税金がかかる

譲渡所得税は、不動産売却による利益に課される税金です。借地権譲渡によって生じる譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を引いた額で計算します。

取得費は、購入価格に諸費用を加えたもので、借地権の場合、借地契約料や更新料、増改築の承諾料などが含まれます。地代は含まれません。譲渡所得税の税率は所有期間によって異なります。

  • 所得税30.63% + 住民税9% = 39.63%(短期譲渡所得)
  • 所得税15.315% + 住民税5% = 20.315%(長期譲渡所得)

おわりに

借地権は、不動産の中でも特に複雑な分野といえます。専門家の助けを借りずに進めたり、経験が少ない不動産会社に依頼したりすると、地主から譲渡承諾が得られないなどの問題が生じ、裁判所に借地権の譲渡許可を求める事態にまで発展する可能性があります。

これには費用、時間、労力が奪われます。借地権に関する知識と経験は必須であり、専門家から適切なサポートを受けながら進めていくことをお勧めします。

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