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相続税の確定申告は必要ない?!手続きの流れと必要書類について

相続税の確定申告は必要ない?!手続きの流れと必要書類について
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続に関して、確定申告が必要なケースと不要なケースがあります。相続に関しては原則として相続税の申告が必要ですが、法定相続人の数に応じた基礎控除額以下であれば不要です。このように、相続開始後は、さまざまな視点で税務について考える必要があります。このコラムでは、相続に関係する確定申告の有無や相続税との関係について解説していきますのでぜひご一読ください。

この記事を読んでわかること

  • 基本的に、相続手続きにおいて確定申告は不要だが、相続税の申告は必要となる場合がある
  • まず確定申告は所得に対して行うものであり、相続税の申告は相続した財産に対して行うものであるという区別が必要
  • 相続手続きで確定申告が必要となるケースとして、被相続人が所有していた賃貸物件を相続し継続的に家賃収入を得ている場合や、不動産を売却し換価分割した場合などがある
  • 相続に対する悩み事は複雑でわかりにくいことも多いため、税理士など専門家への相談も活用すべき
相続税申告サポート
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相続人としての確定申告は必要ないとは本当なのか?

相続人としての確定申告は必要ないとは本当なのか?

相続人で確定申告が必要ないケースについて解説します。

  • 基本的に相続手続きにおいては確定申告不要
  • 相続税の申告は必須
  • 準確定申告とは何か?

基本的に相続手続きにおいては確定申告不要

原則として、相続で多額に資産を受け取っても、所得税における相続人としての確定申告は基本的には不要です。なぜなら、遺産分割で取得することになった資産は所得には当たらないためです。

ただし、相続財産の売買等で利益を得た場合や、賃貸物件を相続して収入が発生した場合などには個人で生じた所得とみなされるため、所得税としての確定申告が必要になります。

相続税の申告は必要

相続で得た資産は相続財産になるため、相続税として申告が必要です。

相続税においては、さまざまな非課税枠が設けられています。遺産総額が非課税の範囲内に収まる場合や基礎控除枠の範囲内である場合などは、相続税の申告をしなくても、別途確定申告は不要です。ただし、被相続人の準確定申告が必要になる場合があります。

遺産総額が基礎控除額を超えない場合には相続税申告は不要です。基礎控除額とは「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

例えば、法定相続人が3人である場合は「3,000万円+600万円×3人」つまり4,800万円が基礎控除額となります。遺産総額が4,800万円以下である場合は、相続人は相続税の申告が不要ということです。

準確定申告とは何か?

準確定申告とは、被相続人の確定申告のことです。相続人は、被相続人にかわって生前の所得などについて確定申告をする必要があります。準確定申告の期限は、相続開始日の翌日から4ヵ月以内です。

準確定申告は、全ての被相続人で対象となるわけではありません。例えば大家として不動産の賃貸収入を得ていた場合など、別途納税が必要な場合は4ヵ月以内に準確定申告が必要です。準確定申告については、この後詳しく解説します。

準確定申告が必要なケース

準確定申告が必要なケース

準確定申告が必要なケースについて、次の6つについてご紹介しましょう。

  • 事業所得や不動産所得がある
  • 譲渡所得がある
  • 2ヵ所以上からの給与所得がある
  • 2,000万円以上の給与所得がある
  • 400万円を超える年金を受給している
  • 所得控除を受ける場合

事業所得や不動産所得がある

被相続人に事業所得や不動産所得がある場合は、相続人が準確定申告をする必要があります。ただし、被相続人の生前の所得に対し、売り上げから経費を控除した金額が480,000円以上である場合のみ準確定申告が必要です。

譲渡所得がある

被相続人に、不動産や株式の譲渡所得がある場合は準確定申告が必要です。ただし、次の計算式に当てはめて算出された金額がプラスになる場合のみ準確定申告が必要となります。

譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

株式に対する税率は、一律20.315%です。ただし、源泉徴収ありの特別口座であれば確定申告は不要です。

不動産の譲渡所得に関しては、所有期間が5年以下の短期所有と、5年超の長期所有によって税率が変わります。

  • 短期所有 39.63%
  • 長期所有 20.315%

2ヵ所以上からの給与所得がある

2ヵ所以上からの給与所得がある場合、年末調整をしていない給与に関して準確定申告が必要です。ただし、副業収入として200,000円以下の給与である場合は準確定申告が不要になります。

2,000万円以上の給与所得がある

2,000万円以上の給与所得がある場合、準確定申告が必要です。通常、会社員として給与所得がある場合には、勤務先の年末調整をもって所得税等の申告は済みます。

しかし、2,000万円以上の給与所得者の場合は年末調整の対象外となり、自身での確定申告が必要です。そのため、被相続人が2,000万円以上の給与所得者である場合は、相続人が代理で準確定申告をすることになります。

400万円を超える年金を受給している

公的年金は基本的に源泉徴収されていますが、被相続人の受給額が400万円を超えていた場合には準確定申告が必要です。

また、受給する年金額にかかわらず、年金以外の所得が200,000円以上ある場合には準確定申告が必要になります。

所得控除を受ける場合

被相続人の医療費や社会保険料、生命保険料において所得控除などの還付を受けたい場合は、準確定申告が必要。これらの控除を適用し税額を確定し、還付がある場合には適正に受け取る必要があるためです。

注意点として、相続発生後(被相続人の死亡後)に相続人が支払った医療費等の取り扱いがあります。この場合、被相続人のお金ではなく相続人のお金ということになるため、控除を適用させるためには相続人本人の確定申告が必要です。

準確定申告に必要な書類と手続きの流れ

準確定申告に必要な書類と手続きの流れ

準確定申告に必要な書類と手続きの流れについてご紹介します。

  • 準確定申告に必要な書類
  • 準確定申告の手続きの流れ

準確定申告に必要な書類

原則として、準確定申告に必要な書類は確定申告に必要な書類と同じです。

  • 確定申告書AまたはB
  • 被相続人の所得税および復興特別所得税の確定申告書付表
  • 被相続人の源泉徴収票
  • 収支内訳書または青色申告決算書
  • 被相続人の控除証明書
  • 被相続人の医療費の領収書
  • 他の相続人からの委任状(準確定申告用)

還付金が発生する場合で、相続人のうち代表者が一括で受け取る場合には、その他の相続人から委任状を取り寄せ提出する必要があります。

準確定申告の手続きの流れ

準確定申告の手続きの流れは次のとおりです。

  1. 代表相続人を決める
  2. 必要書類を取り寄せるなど準備し確定申告書を作成する
  3. 相続人全員が申告書に連署する
  4. 相続開始の翌日から4ヵ月以内に被相続人の最後の居住地を管轄する税務署へ書類を提出する(持参、郵送、e-Taxのいずれか)
  5. 相続開始の翌日から4ヵ月以内に納税する

相続人の確定申告が必要なケース

相続人の確定申告が必要なケース

相続人本人の確定申告が必要なケースについて解説しましょう。

  • 賃貸不動産などの収益物件を相続した
  • 相続した財産を売却して利益が出た
  • 死亡保険金を受け取った
  • 相続財産を換価分割した
  • 相続財産を寄附した
  • 未支給年金を受け取った

賃貸不動産などの収益物件を相続した

被相続人が所有していたマンションや駐車場などの賃貸不動産を相続した場合は、相続発生日以降、相続人の収入として確定申告を行う必要があります。

相続した財産を売却して利益が出た

相続した財産を売却して利益が出た場合には、翌年3月15日までに確定申告が必要。相続した財産を売却して利益が得たかどうかの計算方法は、下記のとおりです。

譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

死亡保険金を受け取った

死亡保険を受け取った場合、保険金の受取人と保険契約者(保険料負担者)が同じであれば所得税の対象となります。したがって、相続人は確定申告が必要です。

なお、一時金としてまとまった保険金を受け取った場合には一時所得、年金形式で分割して受け取った場合は雑所得になります。

相続財産を換価分割した

不動産を相続した際、不動産を売却して現金化し、その現金を相続人で分割するケースが換価分割です。換価分割によって相続人に利益が発生した場合、課税対象になります。

相続財産を寄附した

相続財産を寄附した場合、寄附先によっては寄附金控除の適用となるため確認しましょう。そのためには、所得税の還付申告をすることをおすすめします。

寄付金控除の適用を受けるかどうかは義務ではないため、寄附をした場合に確定申告を失念していても問題はありません。しかし、寄附をして寄附金控除の適用が受けられると相続人の税負担軽減につながるため、確定申告手続きを進めてメリットを享受した方が良いでしょう。

未支給年金を受け取った

未支給年金は相続人の一時所得になるため確定申告が必要です。一時所得には500,000円の特別控除があり、未支給年金を含めて1年間の一時所得が500,000円以下の場合は確定申告が不要になります。

相続人が行う確定申告で必要な書類と手続きの流れ

相続人が行う確定申告で必要な書類と手続きの流れ

相続人が行う確定申告の必要書類と手続きの流れについて解説しましょう。

  • 必要書類
  • 手続の流れと申告期間・期限
  • 手続きに困った場合は専門家へ相談を

必要書類

相続人が確定申告をする場合に必要な書類は次のとおりです。

  • 確定申告書AまたはB
  • 身分証明書類(マイナンバーカード、通知カードと運転免許証など)
  • 控除証明書(生命保険料、社会保険料など)
  • 源泉徴収票(給与、年金など)

この他にも、必要に応じて証明する書類の提出を求められる場合があります。自身の確定申告内容に応じて、書類を揃えましょう。

手続きの流れと申告期間・期限

確定申告の期限は、翌年の2月16日から3月15日までです。ただし、医療費控除のみ受ける場合など還付申告のみであれば、この期間以外でも手続きができます。還付申告の期限は翌年1月1日から5年間となっています。

正規の確定申告時期は、還付申告の手続きも殺到して還付金の振り込みが遅くなる場合があるため、還付のみであれば、確定申告期間以外の時期に申告すると良いでしょう。

税金のことで困った場合は専門家へ相談を

税金のことで困ったら、早めに専門家に相談することがおすすめです。「セゾンの相続 相続税申告サポート」では、相続に強い税理士と提携しており、実際に依頼するかどうかはまだ決めていない状態の相談先としても利用いただけます。初回の相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。

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おわりに 

原則として、相続で得た資産は、所得ではないため、相続で得た資産に対する確定申告は不要です。さらに、遺産総額が基礎控除額以下など一定の金額に満たない場合には、相続税の申告も不要となります。

一方、被相続人が所有していた賃貸物件を相続し、相続人が引き続き家賃収入を得る場合などは、相続人自身の確定申告が必要です。また、被相続人の準確定申告が必要となる場合もあり、相続に関連する税務の取り扱いは容易ではありません。手続きに困る場合には、早めに税理士など専門家へ相談し、必要に応じて手続きを依頼することもおすすめです。

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