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自己破産は相続に影響する?遺産分割協議や相続放棄における注意点

自己破産は相続に影響する?遺産分割協議や相続放棄における注意点
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続人の自己破産は、タイミングによって遺産相続に大きく影響します。遺産相続や自己破産手続き申し立ての時期の前後によって結論が変わってくるため、タイミングを見極めなければなりません。また、自己破産を理由に単純に相続放棄を強いたり相続金をゼロにしたりすることは問題になるケースもあるため、注意が必要です。

この記事では、自己破産が相続に与える影響について詳しくご紹介します。

この記事を読んでわかること
  • 相続人の自己破産が遺産分割協議や相続放棄に与える影響
  • 遺産分割協議に破産管財人が参加することの影響
  • 自己破産前に相続放棄する場合に注意すべき事項とタイミング
相続手続きサポート
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遺産相続できるかは破産手続きの時期による

自己破産後に遺産相続できるかは破産手続きの時期による

原則として、自己破産の経験の有無が相続権や相続分に影響することはありません。ただし、自己破産手続きの時期によっては、自己破産した人の手元には相続財産が残らない、あるいは遺産分割協議に参加できなくなる可能性があります。

自己破産すると債権者にその人の財産が分配されますが、債権者に分配されるのは破産手続開始決定時点で所有していた財産に限られます。

自己破産手続きの時期による遺産相続の可否をまとめると、以下の表のとおりです。

時期遺産相続の可否
自己破産手続きの申し立て前相続財産を取得できるが、申し立て時に残っている分は債権者に配当される
自己破産手続きの開始決定前相続財産は債権者に配当される
自己破産手続きの開始決定後相続財産はすべて自己破産者に配当される

自己破産手続きの申し立て前

裁判所に自己破産手続きを申し立てる前に相続が発生した場合、一般的な遺産相続と同様に相続分の財産は相続人がすべて取得できます。

ただし、相続後、相続財産で借金を全額返済できず自己破産しなければならなくなった場合、自己破産手続きの申し立て時に残っている財産は債権者に配当されます。

自己破産手続きの開始決定前

裁判所に自己破産手続きの申し立てを行うと、早くて当日、遅くとも1~2ヵ月以内に破産手続き開始決定がなされます。

そして、破産手続き開始決定の時点で所有している財産は、生活に必要な最低限の物と99万円以下の現金以外は「破産財団」に組み込まれ、すべて債権者への配当の対象となります。

破産財団とは、破産手続きを行う上で、「破産管財人」が管理・処分する権利を有する財産のことです。

破産管財人とは、破産手続きにおいて破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者です。破産手続き開始決定と同時に、裁判所が選任します。自己破産者や主要な破産債権者と利害関係のない弁護士が選任されるのが一般的です。

自己破産手続きの申し立て時にすでに遺産分割協議が終わっていて、相続する遺産が確定している場合、自己破産者の手元に相続財産が残っていれば債権者への配当対象になります。例えば、自己破産者が500万円の預金を相続した場合、100万円を使って手元に400万円残っていれば、その400万円は債権者に配当されます。

相続財産が手元に残っていなければ原則として配当対象にはなりませんが、相続額が大きいと裁判所から使い道を説明するよう求められる可能性があります。特に、相続発生時期が自己破産手続き申し立て時期に近い場合は、高額な相続財産の行方を説明できなければ財産隠しを疑われる可能性があるでしょう。

一方、自己破産手続きの申し立て時に遺産分割協議が終わっていない場合は、自己破産者はその遺産分割協議に参加できず、破産管財人が参加することになります。

なお、自己破産者の財産を処分する場合、破産管財人は裁判所の許可を受けなければなりません。

自己破産手続きの開始決定後

自己破産手続きの開始決定後に遺産相続が発生した場合は、一般的な遺産相続と同様に、自己破産者が相続分の財産をすべて取得できます。

破産手続き開始決定後に得た相続財産は、破産手続きとは関係ない新しい財産として扱われ、破産財団には組み込まれないからです。

例えば、相続財産が500万円であった場合、その500万円は破産財団に組み込まれず、すべて自己破産者が取得できます。

自己破産手続きの種類

自己破産手続きの種類

自己破産手続きには、主に「同時廃止」「管財事件」「少額管財事件」の3種類があります。ここでは、同時廃止と管財事件について、違いを表にまとめました。

種類同時廃止管財事件
適用されるケース・所有財産が20万円未満
・免責許可事由に当てはまらない場合
・所有財産が20万円以上
・免責不許可事由(※1)に該当する可能性がある
・債務額が5,000万円以上
・自己破産者が法人の代表や個人事業主の場合
破産管財人の選任なしあり
予納金(裁判所に納付する費用)官報公告費用と郵券等(1~2万円程度)同時廃止時の費用+追加の実費+破産管財人の人件費(最低約21万円~)
財産の没収の有無なしあり
原則として、一定以上の価値がある財産は換価対象(※2)
裁判所への出廷の必要必要な場合あり債権者集会が開かれるため、最低1回は出廷が必要
手続きにかかる期間申立書提出から免責まで2ヵ月程度申立書提出から免責まで順調にいって3ヵ月以上

※1 ギャンブルなどによってできた借金、財産隠し、虚偽の報告など、自己破産で借金の返済が免除されないと判断される場合
※2 例:車、保険の解約返戻金、預金、貴金属など

遺産相続後の自己破産手続きは管財事件に該当するため、時間も手間もかかります。破産管財人が選任され、手続きも煩雑になり、費用も同時廃止に比べて高くなりがちです。

遺産分割協議に破産管財人が参加することの影響は?

遺産分割協議に破産管財人が参加することの影響は?

前述のように破産管財人とは、破産手続きにおいて破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者です。破産手続き開始決定と同時に、裁判所が選任します。

自己破産手続きの申し立て時に遺産分割協議が終わっていない場合は、遺産分割協議には破産管財人が代わりに参加します。その場合であっても、遺産分割は法定相続分に基づいて進められるため、他の相続人への影響は原則としてありません。仮に法定相続分通りでなくても、一般常識の範囲内であれば多少偏りがあっても問題はならないでしょう。

ただし、自己破産者への遺産相続分を故意に減らしたりゼロにしたりすると破産管財人によって否認される可能性が高いので、注意が必要です。

相続放棄する場合の注意点

相続放棄する場合の注意点

管財事件になると、自己破産手続きの負担が大きくなります。また、できれば相続人以外に相続財産を没収されたくはないでしょう。こうした事態を回避するためには、自己破産手続き開始決定の前に「相続放棄」するのもひとつの選択肢です。

相続放棄すれば相続権そのものを失うため、相続財産を取得できません。そのため、破産管財人が遺産分割協議に介入することもないのです。他の相続人も相続財産を失うことなく、すべて相続人の間で分割できます。

自己破産手続きの開始決定後は相続財産は配当されない

自己破産手続きの開始決定後に遺産を相続した場合、一般的な遺産相続と同様に、自己破産者本人が相続分の財産をすべて取得できます。相続財産が破産財団に組み込まれることはないため、債権者へ配当されません。

もちろん、他の相続人と同様に相続分について相続放棄や「限定承認」の手続きができます。限定承認とは、相続財産に借金などマイナスの財産がある場合、預金などプラスの財産からマイナスの財産を差し引いて残りがあればその分だけ相続する手続きです。

自己破産後は、個人信用情報に履歴が一定期間履歴が残るため、クレジットカードやローンでお金を工面することが難しくなります。相続財産は堅実に使うことをおすすめします。

相続放棄は相続開始を知った日から3ヵ月以内という期限がある

相続放棄には期限があるので、注意してください。基本的には、「相続開始を知った日から3ヵ月以内」に家庭裁判所へ申述(相続放棄の申し立て)しなければなりません。この期間を過ぎると、相続放棄は受け付けてもらえなくなります。

遺産相続が発生し自己破産する可能性がある場合は、専門家に相談するなどして早めに判断し、相続放棄の申述を行う必要があります。

相続手続きの専門家に相談する

自己破産が絡む相続手続きは、遺産相続の時期、遺産分割協議や相続放棄などが関係するため複雑ですし、タイミングを見極めなければなりません。状況に応じた対応が必要ですが、判断するのは難しいのが実情です。

トラブルなく遺産相続を進めるためにも、迷った時には専門家に相談することをおすすめします。

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親が生存しているなら早めに自己破産に踏み切るのもあり

親が生存しているなら早めに自己破産に踏み切るのもあり

自己破産手続き開始決定後であれば、いつ遺産相続が発生しても自己破産は影響を及ぼしません。自己破産手続き開始決定は、1~2ヵ月程度かかる場合もありますが、多くは当日から2週間以内になされます。そのため、自己破産を検討中の場合、親が生存しているなら相続発生と重ならないように、早期に自己破産手続きの申し立てをするのが賢明です。

ただし、借金の原因や所有財産の多寡によって自己破産手続き開始決定に時間がかかりそうな場合は、申し立てのタイミングを熟慮した上で判断する必要があります。

自己破産手続きの開始決定後の取り下げには注意

自己破産手続き開始の申し立てを行った場合でも、開始決定前であれば裁判所に申し立ての取下書を提出することで、申し立ての取り下げができます。開始決定前に親が亡くなって遺産相続が発生する場合でも、取り下げは可能です。

ただし、一度申立てを取り下げた後、相続財産でも借金が返済できずに自己破産の必要が出てきた場合、再度申し立てを行うことは難しいのが実情です。取り下げるか否かについては、専門家に相談し、慎重に検討してから判断してください。

おわりに 

相続人の自己破産が遺産相続に影響するかどうかは、遺産相続の時期や自己破産手続き申し立ての時期に大きく左右されます。破産管財人が遺産分割協議に介入してくる、相続放棄のタイミングを考慮しなければならないなど、注意すべきことは少なくありません。

自己破産が絡む相続手続きは非常に複雑ですので、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。

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