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普通養子縁組は相続税対策になる?相続人の範囲やメリット・デメリットを紹介

普通養子縁組は相続税対策になる?相続人の範囲やメリット・デメリットを紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続税が課税される件数の割合は年々増加し、令和3年度には8.8%までに上りました。終活の一環として、相続税対策を検討される方も多いでしょう。相続税対策として普通養子縁組も有効な手段となります。

そこで本記事では、普通養子縁組のメリットやデメリットを解説します。本記事を読むことで、普通養子縁組の概要がわかり、スムーズに相続税対策を検討できるでしょう。

参照元:財務省 | 「相続税」と「贈与税」を知ろう | P2

この記事を読んでわかること

  • 普通養子縁組は、養親が20歳以上かつ養親と養子の合意などの条件を満たす必要がある
  • 相続税の基礎控除額や生命保険金の非課税限度額があがるなど、相続税対策としてのメリットが多い
  • 普通養子縁組のデメリットとして、遺産分割協議のトラブルが発生し、相続税額が2割加算される可能性がある
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普通養子縁組とは?

普通養子縁組とは?

養子縁組とは、血縁関係に関わらずに親子関係となれる制度であり、民法で定められています。養子縁組が成立した日から、養子は実子と同じ立場になります。

養子縁組の種類は、普通養子縁組と特別養子縁組の2つです。養子縁組の種類によって、実の親と親子関係が異なるため、縁組する際には注意しましょう。本章では、普通養子縁組の概要や特別養子縁組との違いについて解説します。

普通養子縁組とは?

普通養子縁組とは、「実親と親子関係が継続する」制度です。一般的にイメージされる養子縁組は、普通養子縁組の制度を指します。養子は養親が死亡した場合だけでなく、実親が死亡した際も法定相続人とみなされます。また、養親と養子は相手をお互いに扶養しなければなりません。

普通養子縁組をするためには、主に以下の要件を満たす必要があります。

  • 養親が20歳以上
  • 養親と養子の合意が必要
  • 養親・養子に配偶者のいる場合は、配偶者の合意が必要
  • 義親に配偶者がおり、未成年者を養子にする場合は、夫婦ともに義親になること

ただし、養子が15歳未満の場合は、養子の法定代理人となる親権者等が本人に代わって合意します。

参照元:法務省 | 養子縁組について知ろう

特別養子縁組とは?

特別養子縁組は、普通養子縁組とは異なり、実親との関係が消滅する養子縁組です。養親が死亡した場合は法定相続人になりますが、実親が死亡しても法定相続人にはなりません。特別養子縁組をするための要件は、以下のとおりです。

  • 養親は配偶者がおり、夫婦共同で縁組が必要
  • 養親の一方は25歳以上、もう一方は20歳以上
  • 養子の年齢は15歳未満
  • 実親の合意が必要

実親による虐待やネグレクトなど、養子の利益を害している場合、実親の合意は不要です。

参照元:法務省 | 養子縁組について知ろう

実子のように法定相続人になれる?

養子は法定相続人とみなされ、実子と同じ割合で相続ができます。

もし遺言書のない相続が発生した場合、法定相続人が全員集まって遺産の分け方を話し合いで決定します。この遺産分割協議にも、養子は参加可能です。

ただし、民法では遺言書があった場合でも、遺言書で遺産分割協議が禁止されておらず、法定相続人と受遺者の全員が合意していれば、遺産分割協議できる場合があります。受遺者とは、法定相続人以外で遺産を相続する方です。

代襲相続ができる

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来相続人であった子や兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合、孫や甥姪が変わって相続する制度です。

養子縁組の場合も代襲相続はできますが、生まれた時期によって異なります。養子縁組の後に生まれた養子の子どもは、実孫と同じように代襲相続人となります。しかし、養子縁組前に生まれた養子の子どもは、代襲相続人とはなりません。

養子縁組は、縁組をした日から実子と同じ立場になります。養子縁組時の連れ子は、親族関係を結ぶ前に生まれているため、代襲相続させる必要がないという考え方に基づいているためです。

養子縁組をすると相続税対策になる?

養子縁組をすると相続税対策になる?

相続税対策として、普通養子縁組をする方も少なくありません。普通養子縁組を検討する前に、ご自身の法定相続人と相続における養子の人数上限を確認し、どのように縁組をすれば相続税対策となるのかを確認しましょう。

本章では、法定相続人の順位と養子の上限人数を解説します。

法定相続人の順位

養子縁組で相続税対策をする際は、法律で定められた法定相続人を確認しましょう。法定相続人は必ず配偶者が含まれ、他の法定相続人は相続順位によって異なります。法定相続人の順位と被相続人(亡くなった方)の関係は、以下のとおりです。

相続順位被相続人との関係
第1順位子ども(亡くなっている場合は孫)
第2順位父母(亡くなっている場合は祖父母)
第3順位兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥姪)

第2順位は、第1順位に当たる関係性の方がいない場合に法定相続人になります。また、第3順位は、第1順位と第2順位の関係性に当たる方がいない場合に、法定相続人として遺産を受け取れます。

例えば、被相続人に配偶者がおり、子どもがいない場合の法定相続人は、配偶者と被相続人の父母です。もし、被相続人の父母が亡くなっていた場合は、代襲相続が発生し、祖父母も法定相続人になります。

相続における養子の上限

民法上は養子の人数に制限はありませんが、相続において上限が定められています。養子縁組を無制限にできた場合、相続税逃れのために養子制度が悪用される可能性があるためです。相続における養子の上限数は、以下のとおりです。

  • 養親に実子がいる場合は1人
  • 養親に実子がいない場合は2人

ただし、実の親との親子関係が消滅した特別養子縁組や連れ子を養子にした場合は、実子として扱われるため、相続における上限はありません。

養子縁組で相続税対策をするメリット

養子縁組で相続税対策をするメリット

養子縁組で相続税対策を行うと、以下の税金のメリットがあります。

  • 相続税の基礎控除額が増額する
  • 生命保険金の非課税限度額が増額する
  • 死亡退職金の非課税枠が増額する
  • 各相続人が納める相続税の税率が下がる

それぞれの税金のメリットを解説します。

相続税の基礎控除額が増額する

相続税の課税対象となる遺産額は、以下の計算式で求められます。

  • 相続税の課税対象=相続財産-相続税の基礎控除額

相続財産は預貯金や不動産、株式などが含まれます。非課税枠となる基礎控除は、以下のとおり法定相続人の人数によって異なります。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数

法定相続人が1人増えるごとに、基礎控除額が600万円あがります。基礎控除額が増えるほど課税される相続財産が減少し、相続税も減少します。

ただし、養子の人数は養親に実子がいる場合は1人、養親に実子がいない場合は2人までの制限があり、無制限に増やせないため注意しましょう。

なお、相続税を計算する際の基礎控除額は、法定相続人に分配する前の遺産総額で計算しますが、相続税の金額は納税者である法定相続人ごとに求めます。

生命保険金の非課税限度額が増額する

相続税の基礎控除とは別に、亡くなったことを原因として受け取る生命保険金には、相続税がかからない非課税枠があります。

生命保険の非課税枠=500万円×法定相続人の人数

非課税枠を計算する際の法定相続人の人数は、相続放棄をした方も含まれます。相続税の基礎控除と同様に、養子の人数に上限があるため、縁組を考える際は注意しましょう。

この生命保険金の非課税枠を超えた金額は、相続税の課税対象となります。ただし、生命保険金の非課税限度額を超えたとしても、相続税の基礎控除以下であれば課税されません。受け取った保険金の額に応じて、この非課税枠は法定相続人に分配されます。

死亡退職金の非課税枠が増額する

死亡退職金の非課税枠が増額する

定年退職前の会社員・公務員が亡くなった場合、死亡退職金が受け取れる場合があります。死亡退職金は受け取る名称に関わらず、被相続人が亡くなった後3年以内に支給金額が確定したものです。

そのため生前に退職し、支給金額が亡くなった後3年以内に決定したものも死亡退職金に含まれます。また現物で支給されたものも、死亡退職金の対象です。

死亡退職金は、生命保険金と同様に以下の計算式で求めます。

  • 死亡退職金の非課税枠=500万円×法定相続人の人数

法定相続人が増えるほど、節税効果が高くなります。

各相続人が納める相続税の税率が下がる

それぞれの法定相続人が納める相続税は、一人ひとりの法定相続分の遺産に税率をかけて求めます。一人ひとりの法定相続分の遺産の金額は、相続税の基礎控除額を引いたものです。

なお、法定相続分と異なる割合で遺産を相続したとしても、各相続人が納める相続税は法定相続分の割合で計算します。

1人当たりの法定相続分に応じた金額と課税率は、以下のとおりです。

1人当たりの法定相続分に応じた金額課税率控除額
1,000万円以下10%0円
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

参照元:国税庁|No.4155 相続税の税率

1人当たりの相続税を計算する際は、受け取る遺産から控除額を差し引いて計算します。実際に養子が増えた場合の課税率の変化を考えてみましょう。

例えば、相続税の基礎控除額を指し引いて残った3,000万円の遺産を、子ども2人で分ける場合の課税額を求める手順は以下のとおりです。

まず、子ども1人当たりの法定相続分は以下の式で求められます。

3,000万円÷2人=1,500万円

1人当たり1,500万円を相続するため、課税率は15%、控除額は50万円です。実際の相続税額はそれぞれ「1,500万円×15%-50万円=175万円」です。

一方、養子がひとり増えた場合は、実子2人とともに合計3人で遺産を分割するため、1人当たりの法定相続分は以下の式で求められます。

3,000万円÷3人=1,000万円

1人当たり1,000万円を相続するため、課税率は10%、控除額は0円です。実際の相続税額はそれぞれ「1,000万円×10%-0円=100万円」です。

このように、法定相続人が増えると1人当たりの法定相続分が減少し、相続税率が下がる場合があります。

先述の相続人が2人の場合の相続税の総額は175万円+175万円=350万円ですが、養子をひとり迎えた場合の相続税の総額は100万円+100万円+100万円=300万円となり、50万円相続税が減額となります。

さまざまなケースがあるので、きちんと計算をしましょう。

相続税対策を目的とした普通養子縁組の事例

相続税対策を目的とした普通養子縁組の事例

相続税対策を目的とした普通養子縁組は、以下の事例が一般的です。

  • 普通養子縁組で孫を養子にする
  • 普通養子縁組で子の配偶者を養子にする
  • 普通養子縁組で再婚した連れ子を養子にする

それぞれの事例について解説します。

普通養子縁組で孫を養子にする

相続税対策のために生前にまとまった財産を孫に渡すと、贈与税がかかってしまいます。財産を確実に受け継ぐために、孫と養子縁組をする選択肢があります。

なお、孫と養子縁組をする場合は、家庭裁判所の許可は不要です。ただし、孫が未成年者の場合は親権者である親の承諾が必要となります。また、養子または養子の親が外国人の場合は家庭裁判所の許可が必要となるケースも少なくありません。

家庭裁判所から許可を得た後に、役所で本籍地または住所がある場所の役所で養子縁組の届出を提出すると、手続きが完了します。役所によって許可の証明である審判書謄本の他に、戸籍謄本や本人確認書類を求められることがあります。届出の前に、役所に必要書類を確認しましょう。

普通養子縁組で子の配偶者を養子にする

普通養子縁組で、子の配偶者を養子にする事例も少なくありません。子の配偶者を養子にする理由の多くは、同居し、献身的に介護してくれたためです。

なお、介護を理由として相続財産を受け取れる制度は養子縁組だけでなく、特別寄与制度があります。特別寄与制度とは、被相続人の介護や世話などを無償で行った法定相続人以外の親族が、法定相続人に対して寄与度に応じた金銭を要求できる権利です。

ただし、特別寄与制度が利用できるのは親族に限られているため、内縁の妻や夫は請求できません。

特別寄与料の請求は、相続の開始日または法定相続人を知った日から6ヵ月以内、あるいは相続開始の日から1年以内に限られています。特別寄与料は、法定相続人の強い抵抗を受けやすく、話し合いがまとまらず裁判に発展する可能性があります。

特別寄与を考えるより、普通養子縁組をした方が確実に資産を渡せ、また相続税対策となるでしょう。

普通養子縁組で再婚した連れ子を養子にする

再婚した配偶者に連れ子がいる場合は、その子どもとは血縁関係がないため、連れ子には相続権がありません。連れ子を法定相続人にするには、養子縁組をする必要があります。

連れ子を養子とすると、実子の相続割合が減ってしまいます。亡くなった後に、実子と連れ子の相続割合でトラブルになるケースも少なくありません。遺産分割でもめないように、養子縁組前に親族に合意を取るか、遺言書の作成を検討しましょう。

相続で想定される養子縁組のデメリット

相続で想定される養子縁組のデメリット

相続税対策の養子縁組はメリットが多い一方で、遺族内で遺産分割のトラブルになる可能性があります。本章では、養子縁組前に押さえておきたいデメリットを解説します。

  • 実子が相続財産の減少に対して不満を持つ場合がある
  • 相続税に2割加算が適用される場合がある
  • 代襲相続は養子縁組時期によっては認められない
  • 相続税対策の養子縁組は認められない場合がある

相続対策の養子縁組が招くそれぞれのトラブルや注意点を解説します。

実子が相続財産の減少に対して不満を持つ場合がある

遺産分割の実子と養子の取り分は同じであり、実子から不満が出ることもあるでしょう。

例えば、実子がひとり、養子がひとりの場合、養子が増えることにより実子がもらえていたはずの取り分が半分に減ってしまうため、実子から不満が出るケースも少なくありません。

また、法定相続人が増えることで、人間関係が複雑になり、遺産分割協議でもめやすくなります。例えば、複数の孫がいるにもかかわらず、ひとりだけ孫養子を迎えていた場合に、他の孫や孫の親である子どもから不満が出ることもあるでしょう。遺産分割が進まずに、裁判に発展することも考えられます。

相続税に2割加算が適用される場合がある

養子を迎えて相続税の基礎控除を増やしたとしても、被相続人との関係性によって、相続税額が2割加算されるケースがあります。

相続税に2割加算が適用される対象者は、以下のとおりです。

  • 被相続人の配偶者・父母・子ども(1親等)以外の親族
  • 被相続人の孫のうち代襲相続人ではない孫

被相続人の配偶者・父母・子ども以外の親族とは、兄弟姉妹や甥姪を指します。兄弟姉妹・甥姪に2割加算される理由は、相続することの偶然性が高いためです。

孫へ相続する場合、通常のケースなら親から子ども、子どもから孫へ2回相続するタイミングで、相続税が課税されます。しかし、孫を養子にした場合の相続は1回で済み、相続税を1回免れることになるため2割加算されます。

もちろん、法定相続人ではない第三者を養子にした場合も2割加算の対象です。

代襲相続は養子縁組時期によっては認められない

養子縁組した養子が亡くなった場合、縁組後に生まれた孫は代襲相続ができます。しかし、養子縁組する前に生まれた孫は代襲相続が認められません。

養子縁組では縁組をした日から、養子と実子が同じ立場になります。養子縁組時の連れ子は、親族関係を結ぶ前に生まれているため、代襲相続させる必要がないとみなされるためです。

相続税対策の養子縁組は認められない場合がある

税務署に相続税対策のための養子縁組だと判断された場合、法定相続人とみなされないケースがあります。法定相続人にみなされない明確な基準はありませんが、亡くなる直前の養子縁組は、税務署から否認されるケースが一般的です。

万が一否認されてしまった場合、相続税の基礎控除が養子ひとりにつき600万円減少するだけでなく、相続税の申告をやり直さなければなりません。新たな手続きに時間がかかり、相続税の申告期限に間に合わないと、延滞税や過少申告加算税などの税金を追加で支払う必要があります。

相続税のトラブルを防ぐために、あらかじめ専門家へ相談するのがおすすめです。「セゾンの相続  相続税申告サポート」は、相続税のお悩みについて専門家がトータルサポートします。対面だけでなく、オンラインでの面談も無料で受け付けているため、足を運ばずに相談できます。

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おわりに 

普通養子縁組するには、養親が20歳以上かつ養親と養子の合意が必要です。相続における養子縁組は、相続税の基礎控除額や生命保険金の非課税枠が増えるメリットがあります。各相続人が納める相続税の税率も下がるため、節税手段として有効です。

しかし、養子を増やしたことにより、元々の法定相続人の相続分が減ることに不満を抱き、遺産分割協議が進まないことが考えられます。また、税務署から養子縁組を否認されて、余計な税金を支払わなければならない可能性があります。相続税対策で普通養子縁組を考えている方は、まず専門家に相談しましょう。

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