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遺産を長男に独り占めにされた!どんなケースがある?どう対応すれば良いのか徹底解説

遺産を長男に独り占めにされた!どんなケースがある?どう対応すれば良いのか徹底解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続では遺産を独り占めしてトラブルになるケースが少なくありません。とくに多いのが、親と同居している長男が実家や預金などを独り占めしてしまうケースです。

この記事では、長男に遺産を独り占めされた、またはされそうなとき、他の相続人はどうすれば良いのか、対処法を紹介します。遺産相続における相続人の権利なども併せて確認しておきましょう。

この記事を読んでわかること

  • 法定相続人全員の同意がなければ長男が遺産を独り占めすることは許されない
  • 法定相続人には「遺留分」があり、最低限相続できる財産の割合が定められている
  • 独り占めされた遺産は、遺産分割調停・審判、遺留分侵害額請求、不当利得返還請求、不法行為に基づく損害賠償請求などで法的に取り戻せる
  • 遺産分割トラブルでは早い段階で専門家のサポートを受けるのがおすすめ
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長男の遺産相続の独り占めは許される?

長男の遺産相続の独り占めは許される?

親の遺産を誰がどのように相続するかは、民法で定められた相続人(法定相続人)全員の話し合いで決められます。そのため、法定相続人全員の同意があれば、長男が遺産をすべて相続することができ、独り占めも許されます。

しかし、長男以外に法定相続人がいて遺産を相続したいと主張した場合、法定相続人には遺産を相続する法律上の権利があり、長男の独り占めは原則として許されません

子どもの法定相続分は平等

民法では、誰が法定相続人になるかの優先順位(相続順位)、法定相続人ごとに相続する財産の割合の目安となる「法定相続分」が定められています。

相続順位

亡くなった方に配偶者がいる場合は常に法定相続人になります(民法第890条)。配偶者の他に法定相続人になる可能性があるのは、優先順位が高い順に、亡くなった方の「子ども」、「直系尊属(父母・祖父母など)」、「兄弟姉妹」です(民法第887条・第889条)。

第1順位子ども(養子も含む)※1
第2順位直系尊属(父母、祖父母)※2
第3順位兄弟姉妹※3

※1:子どもが相続発生時に死亡している場合、その子どもの直系卑属(子や孫)が法定相続人になります

※2:相続発生時に父母、祖父母ともに存命のときは、亡くなった方により世代が近い父母が優先して法定相続人になります

※3:兄弟姉妹が相続発生時に死亡している場合、その子ども(甥・姪)がいれば法定相続人になります

相続順位の高い方がひとりでもいれば、それより順位の低い方がいても法定相続人にはなれません。例えば、亡くなった方に子どもがいれば、親や兄弟姉妹がいても、子どもが法定相続人になります。配偶者は常に法定相続人になるため、このケースで亡くなった方に配偶者がいれば、配偶者と子どもが法定相続人です。

なお、子どもが相続発生時に亡くなっている場合でも、その子どもに子(亡くなった方からみて孫)がいれば、その子(孫)が法定相続人になります。これを「代襲相続」といい、このケースでも親や兄弟姉妹は法定相続人になれません。

同順位の方が複数いれば、その全員が法定相続人になります。

法定相続分

法定相続分の割合は次のように定められており、法定相続人が誰かによって変わります(民法第900条)。

法定相続人法定相続人
(法定相続分)
配偶者配偶者以外
いるいない配偶者
(1)
子ども配偶者
(1/2)
子ども
(1/2)
父母配偶者
(2/3)
父母
(1/3)
兄弟姉妹配偶者(3/4)兄弟姉妹(1/4)
いない子ども子ども
(1)
父母父母
(1)
兄弟姉妹兄弟姉妹
(1)

法定相続人になる子どもが複数いる場合、子どもひとりあたりの法定相続分は、上記の割合をその人数で割って求めます。

例えば長男、次男、三男の3人の子どもが法定相続人になる場合、子どもひとりあたりの法定相続分は、亡くなった方に配偶者がいれば6分の1️(=1/2×1/3)、配偶者がいなければ3分の1(=1×1/3)です。

法定相続分は、同順位の法定相続人間では平等であり、長男という理由で優遇されるということはありません

遺留分

亡くなった方の兄弟姉妹を除く法定相続人には、最低限相続できる財産の割合を定めた「遺留分」という権利があります。遺留分の割合は、次のように定められています(民法1042条)。

兄弟姉妹遺留分なし
直系尊属のみが法定相続人の場合法定相続分×1/3
それ以外の場合法定相続分×1/2

例えば、亡くなった方に配偶者がおらず、長男、次男、三男の3人の子どもが法定相続人になる場合、それぞれに6分の1(=法定相続分1️/3×1/2)の遺留分があります。

法定相続分はあくまで目安であり、必ずしも法定相続分のとおりに遺産を分割する義務はありません。遺言書があれば法定相続分よりも優先されます。また、遺産分割協議で話し合いがまとまれば、遺言書や法定相続分と異なる方法で分割することも可能です。

しかし、遺言書の内容に納得がいかない場合や、遺産分割協議で話し合いがまとまらないケースもあるでしょう。そのようなときは、遺留分を主張することで財産を相続できる可能性が高くなります。

長男が遺産を独り占めするケースとは?

長男が遺産を独り占めするケースとは?

長男が遺産を独り占めするケースには、次のようなものが考えられます。

相続人が長男しかいない

「長男に遺産をすべて相続させる」と遺言書に書いてあった

同居していた長男が遺産分割に応じない

相続人が長男しかいない

父親が亡くなったとき、すでに母親や祖父母も亡くなっており、兄弟もいない場合、長男が単独で法定相続人になります。

このようなケースでは、そもそも長男にすべての遺産を相続する権利があり、遺産を独り占めしたところで何の問題もありません。

「長男に遺産をすべて相続させる」と遺言書に書いてあった

遺言書に「長男に遺産をすべて相続させる」と書かれており、それを根拠に長男が権利を主張するケースです。

このケースでは、まず遺言書の有効性を確認しましょう。自筆証書遺言の場合、要件を満たしておらず無効になることも多いです。長男が遺産を独り占めしようと、遺言書を偽造している可能性もゼロではありません。もし遺言書を偽造していれば相続人の資格を失い、長男は遺産を相続できなくなります(民法第891条の5️)。

遺言書が無効であれば、その指示に従う必要はなく、遺産分割協議によって遺産の分割方法を決めます。

遺言書が有効であれば、長男が遺産をすべて相続します。ただし、兄弟姉妹を除く法定相続人には遺留分があり、長男に対して「遺留分」を金銭で請求できます

遺留分侵害額請求には、「相続開始と遺留分の侵害(※)を知ってから1年」の時効(民法第1048条)があるため、早めに対応しましょう(※このケースでは長男に遺産をすべて相続させる旨の遺言書の存在)。

遺留分侵害額請求は当事者間の話し合いで成立しますが、確実に証拠を残すためにも内容証明郵便で請求の意思表示を行いましょう。話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合は、家庭裁判所の調停手続きも利用できます。

同居していた長男が遺産分割に応じない

亡くなった親と同居していた長男が遺産分割に応じず遺産を独り占めするケースもあります。

長男が遺産分割の方法を知らない可能性もあるため、まずは「法定相続分」での分割が基本であることを伝えて、話し合いを試みましょう。

長男が実家に住み続けたいと希望し、不動産は分割できないと主張するなら、長男の財産から代償金を支払ってもらう方法があります。

当事者の話し合いで解決できなければ、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立て、裁判所に頼りましょう。調停では、調停委員が長男の意見も踏まえながら、解決案の提示や解決に向けたアドバイスをしてくれます。

話し合いがまとまらず調停が不成立になれば、自動的に審判手続きに移行します。審判になれば、原則として「法定相続分」どおりに分割され、長男の独り占めは認められません

預金を使い込み独り占めされてしまったら?すぐやるべき4つのこと

預金を使い込み独り占めされてしまったら?すぐやるべき4つのこと

話し合いもなく亡くなった親の預金を使い込み、気づいた時には独り占め状態になっているケースもあります。そんなときは、次のような方法ですぐに対処しましょう。

1.預金の入っている銀行口座を凍結

亡くなった親の預金を長男が勝手に引き出して使い込んでいる可能性があれば、すぐに銀行口座を凍結しましょう。法定相続人から銀行へ名義人である親が死亡したことを連絡すれば、口座はすぐに凍結されます。

長男が親と同居していると、生活費などに親の預金口座から日常的にお金を引き出しているケースもあり、とくに注意が必要です。

相続開始後に預金を引き出して使ってしまうと、相続を「単純承認」したとみなされ、「限定承認」はできなくなってしまいます(預金を引き出して使った本人は「相続放棄」も不可)。

2.預金の入出金履歴を確認する

口座を凍結したら、開示請求を行い、入出金履歴の明細を発行してもらいます。

入出金履歴の開示請求は、次のものを準備して銀行の窓口に出向く必要があります。請求は相続人のうちのひとりから可能で、全員の同意などは必要ありません。

  • 被相続人が亡くなったことが確認できる戸籍謄本等
  • (来店者が)相続人であることがわかる戸籍謄本・審判書等
  • (来店者の)実印・印鑑証明書(発行日より6ヵ月以内)
  • 被相続人の口座番号がわかるもの(通帳、キャッシュカードなど)
  • 発行手数料

※金融機関によって必要なものが異なる場合があるので、請求先金融機関へ事前にご確認ください

3.使い込みの有無をチェックする

銀行から入出金履歴を受け取ったら、使い込みがないか確認します。次のような場合、使い込みの可能性が高いといえます。

  • 被相続人(親)が亡くなった日より後にATMなどから出金がある
  • 一度にまとまった金額の引き出しがある
  • 数日にわたり連続して出金され続けている など

被相続人が亡くなる前の少額の引き出しや、口座振替などでは使い込みとはいえないでしょう。

4.使い込まれた財産を取り戻す

入出金履歴から預金の使い込みが明らかになったときは、取り戻すための手続きに移りましょう。

まずは当事者同士で話し合い、その場で返してもらえれば解決です。

長男が話し合いに応じてくれない場合、金額が小さければ、家庭裁判所の遺産分割調停で解決できる可能性があります。

金額が大きい場合は、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求など、訴訟が必要になります。訴訟になる場合は、弁護士に依頼しましょう。

実家の不動産などを独り占めされたら?

実家の不動産などを独り占めされたら?

長男が実家に居座り独り占めしている場合、長男にも権利があるため、すぐに出て行かせることはできません。

遺産分割協議・調停で分け方を決める

この場合、遺産分割協議や調停で実家の不動産の分割について決める必要があります。

長男が実家を取得して住み続けることを希望する場合は、他の相続人へ代償金を払う必要があります。

長男が代償金の支払いに応じない場合は、家庭裁判所で調停を申し立てましょう。

長男が代償金を支払えない場合は実家を売却し、各相続人が法定相続分の割合で売却代金を受け取れます。長男が売却したくないと主張しても、審判では競売命令が出るため認められません。

遺産を独り占めされたかも?相続に強い専門家にアドバイスをもらおう

遺産を独り占めされたかも?相続に強い専門家にアドバイスをもらおう

長男に遺産を独り占めされたかもしれない、あるいは独り占めされて自分たちでは対処できないという場合には、弁護士や司法書士など相続に強い専門家に相談しましょう。

相続の専門家に依頼できる内容

弁護士や司法書士など相続の専門家には、例えば次のようなことを依頼できます。

  • 遺言書の有無や有効性、遺産内容の調査など
    遺言書の有効性の判断や遺産内容の調査などは素人だけでは難しいケースもあります。早い段階で専門家に相談しておくことで、ミスが減り手続きもスムーズになるでしょう。
  • 遺産分割調停・審判の代理人
    感情的になりやすい親族同士の話し合いに専門家(弁護士)が入ることで、客観的で冷静な話し合いができ、合意に至りやすくなる効果も期待できます。
  • 遺留分侵害額請求のサポート
    遺留分侵害額請求のサポートを専門家(弁護士)に依頼すれば、遺留分の計算や裁判所とのやりとり、交渉などをスムーズに進められます。

専門家に依頼するメリット

遺産の独り占めのようなトラブルが生じている場合、解決には法的な知識・スキルが必須になります。自己判断で進めると、さらに問題が大きくなるおそれもあるため、早めに専門家に依頼してサポートを受けるのが賢明です。

また、相続は親族同士の話し合いになるため、感情的になって話がまとまらないケースも少なくありません。当事者の間に入り、第三者の視点で客観的、専門的なアドバイスをしてもらえる点は大きなメリットでしょう。

相続に強い専門家をお探しなら「セゾンの相続」がおすすめ

専門家に相談したいけど、誰に相談すればいいのかわからない方もいるでしょう。

セゾンの相続 相続手続きサポート」では、経験豊富な提携専門家のご紹介も可能です。戸籍の収集、相続財産の調査、遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更、預金の解約など、相続手続きを専門家に一貫してサポートしてもらえます。まずはお気軽にお問い合わせください。

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遺産を独り占めされる前にできる対策とは?

遺産を独り占めされる前にできる対策とは?

遺産相続でトラブルが起こったときの対処法は知っておくべきですが、事前に対策して、なるべくトラブルが起こらないようにすることがより大切です。ここでは2つの対策をご紹介します。

親に遺言書を書いてもらう

親が遺留分に配慮した内容で遺言書を作成しておけば、原則遺言書どおりの内容で遺産分割が行われるため、遺産の独り占めといったトラブルは回避できます。

遺言書が無効にならないよう、公正証書遺言で作成するか、専門家にアドバイスを受けて正確に作成すると安心です。

親の介護などは兄弟姉妹で分担して行う

親の介護を兄弟姉妹で分担して行うことも、遺産分割トラブル回避に有効です。

例えば、親の介護を長男に任せきりにしていると、財産管理も基本的に長男が行うことになり、私的な使い込みや遺産を自分がすべて相続すると主張される可能性は高くなります。親としても、介護してくれた長男に財産を残したいと思い、長男にすべての財産を相続させる内容の遺言書を残すかもしれません。

また、法定相続分や遺留分という法律上の権利はあっても、介護をしていないという負い目があると、あまり強く主張しにくいのも事実です。

介護を分担して行うことで兄弟関係が良好になり、遺産相続時の話し合いがスムーズになる効果も期待できます。遺産相続対策ではなくても、親のために子どもとしてできることは協力して行うべきでしょう。

おわりに

長男に遺産を独り占めされてしまったら、遺言書の有無を確認して、長男にその権利があるのかを確認しましょう。

遺言書がなければ、遺産分割協議または遺産分割調停・審判で、公正な分割を求められます。長男に財産すべてを相続させる旨の遺言書があっても、他の法定相続人には遺留分を請求する権利があります。

当事者間の話し合いでは解決が難しそうなら、早めに弁護士・司法書士など相続の専門家に相談しましょう。

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