親の土地を兄弟で相続する際にもめるケースは少なくありません。では、どのような場合にもめてしまうのでしょうか。また、土地を兄弟で相続する際には注意点も多いので、あらかじめ把握した上でスムーズに手続きを進めたいところです。
この記事では、親の土地を兄弟で相続する際にもめる主な理由や注意点、土地を兄弟で相続して分割する方法などについて解説します。兄弟間での土地の相続トラブルを避けたい方はぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 土地を兄弟で相続する際には遺言書の有無や生前の関係性などでもめるケースが多い
- 土地を含む遺産相続には5つのステップがある
- 土地を兄弟で相続して分割する場合、共有分割・現物分割・換価分割・代償分割の4つの方法がある
- 兄弟で土地を相続するときには共有分割や境界確定、売却費用に注意が必要
土地を兄弟で相続する際にもめる理由は?
土地を兄弟で相続する際にもめる主な理由は以下のとおりです。
- 遺言書が作成されていない
- 財産を不動産が占めている
- 寄与分を主張する者がいる
- 特別受益を指摘する者がいる
それぞれなぜもめるのか具体的に見ていきましょう。
遺言書が作成されていない
遺言書が作成されていない場合、相続人である兄弟間で遺産分割協議を行う必要があります。
遺言書があれば、そこに記載されている内容は遺産分割協議よりも優先されるため、遺言書どおりに遺産を分配するだけで終わります。しかし、遺言書がない場合は遺産分割協議を行い、相続人である兄弟間で遺産の分配方法について話し合わなければいけません。
例えば、被相続人の生前から仲の良くない兄弟がいる場合は、感情的になって話がうまくまとまらずトラブルに発展する可能性があります。
財産を不動産が占めている
相続財産のほとんどが不動産の場合、うまく分割できずにもめるケースも多いです。
不動産は現金と異なり、細かく分割して相続することができません。例えば、相続人のひとりが単独で不動産を相続したくても、不動産の価値分の現金や有価証券がなければ、他の相続人よりも受け継ぐ財産が多くなってしまう可能性があります。
相続する財産の価値がひとりだけ突出して高くなると、他の相続人から不満が出てトラブルに発展しかねないため注意が必要です。
寄与分を主張する兄弟がいる
寄与分とは、亡くなった方の財産の増加や維持に特別な貢献をした相続人に対し、財産を多く相続させることです。ただし、寄与分は特別な行為にしか認められません。
例えば、亡くなった親の介護を行っていた相続人が寄与分を主張するケースは多いですが、仕事をやめて実家に戻り、長期にわたって献身的に介護していたなどの特別な行動が必要です。
介護した側からすると特別に献身的な行為をしたと思うため、他の兄弟との話し合いをまとめるのが難しくなる可能性があります。
特別受益を指摘する者がいる
特別受益とは、特定の相続人が亡くなった方から生前に遺贈や贈与を受けたことをいいます。特別受益を受けていた場合、受けていた分の金額を相続財産から差し引くのが一般的です。そのため、特別受益を受けた相続人がいる場合、他の相続人が特別受益を指摘して相続財産の分配を調整しようと考えるのは当然かもしれません。
しかし、指摘を受けた相続人が納得するとは限らないため、相続人によっては特別受益を認めずもめてしまうことがあります。
親の土地を兄弟で相続するときの注意点
親の土地を兄弟で相続する際にもめやすいケースを踏まえて、特に注意すべき点は以下のとおりです。
- 共有分割のままにしない
- 境界の確定を正確に行う
- 土地の売却費用を話し合う
相続のトラブルを回避するためにも、あらかじめ確認しておきましょう。
共有分割のままにしない
共有分割は多くの場合、あくまで遺産分割協議がまとまらないときの保留手段と考える方が良いでしょう。
共有分割にした場合、不動産を共有名義で相続することになります。ただし、共有名義の不動産は共有者全員の同意がなければ売却など重要な事項を決定したり実行したりできません。そのため、不動産の処分方法で意見が分かれてもめる可能性が高くなります。
共有名義の土地を相続した後に売却すると共有者同士で口約束をしても、ひとりがのちに拒否すれば売却できません。売却できなければ固定資産税が課税されたり、維持管理費が必要になったりします。
境界の確定を正確に行う
現物分割をするときには、境界の確定を行わなければなりません。土地を分割する際には分筆を行いますが、その際に各共有者が取得すべき部分が図面によって客観的に特定される必要があるため、境界を確定した測量図面を作成して裁判所に提出する必要があります。
境界を確定した測量図面を作成するためには、土地家屋調査士に確定測量を依頼しなければならず、300,000~400,000円程度費用がかかります。
また、確定測量と分筆を行うまでに2~3ヵ月程度かかります。早めに手続きを開始しないと相続税の納税時期に間に合わなくなることもあるため、注意してください。
土地の売却費用を話し合う
土地の売却にかかる費用は、相続分の割合に応じて各相続人が支払います。しかし、この認識がないと誰が売却にかかる費用を払うのかでもめる事態に陥りかねません。売却にかかる費用の分担についてはあらかじめ話し合っておきましょう。
また、土地の売却金額も相続人全員で決めておく必要があります。しかし、土地の相場を把握するのは難しく、相続人で売却金額を決めるのは容易なことではありません。
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土地を兄弟で相続して分割する方法
続いて、土地を兄弟で相続する際の具体的な分割方法は以下の4種類です。
- 共有分割
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
どの分割方法を利用するか判断するためにも、それぞれのメリット・デメリットを把握しておきましょう。
共有分割
共有分割とは、ひとうの不動産をすべての相続人が共有名義で相続する方法です。
共有分割については、メリットよりもデメリットが大きいため前述の「親の土地を兄弟で相続する注意点」の「共有分割のままにしない」で詳しく解説しています。
現物分割
現物分割とは、不動産を物理的に分けて分割する方法です。
現物分割が利用できるのは、分筆により物理的に分けられる土地のみです。土地を分筆すれば、相続人全員がそれぞれ単独で土地を所有できます。
しかし、土地の価値を同等にする分筆はなかなか難しく、相続する土地の価値に不公平が生じるケースが少なくありません。土地の分筆方法によって間口の広さや形状、大きさが異なり、価値が変わるからです。
土地を現物分割して相続する場合は、分けた後の土地の価値に注意してください。
換価分割
換価分割とは、不動産を売却し現金化して相続人で分配する方法です。換価分割をすれば1円単位で財産を分配できるため、相続人間でトラブルになりにくい方法といえるでしょう。
ただし、不動産を売却するのにはある程度時間がかかります。売却までの期間が長くなると相続税の納税期間に間に合わなくなってしまう可能性があるので、注意してください。
代償分割
代償分割とは、相続人のひとりが不動産を相続し、他の相続人の財産と差額が出てしまった場合、差額を不動産相続人が払う方法です。
例えば、兄が評価5,000万円の不動産を相続し、弟が3,000万円の現金を相続したとしましょう。このケースでは2,000万円の差額が出るため、兄が1,000万円の自分の資産を弟に渡して調整します。
代償分割はトラブルになりにくいですが、不動産を相続した方に自己資産がないと難しい方法です。
土地を含む遺産相続の流れ
兄弟間で土地を相続する際の注意点や分割方法が分かったところで、改めて一般的な相続手続きの流れを確認しておきましょう。
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人を確定させる
- 相続財産を把握する
- 遺産分割協議を行う
- 相続登記を申請する
それぞれの流れについてあらかじめ確認し、スムーズな相続につなげてください。
遺言書の有無を確認する
遺産を相続するときには、まず遺言書の有無を確認します。遺言書の内容は遺産分割協議よりも優先されるため、協議前に見つけておかなければいけません。
遺言書の種類は、次の3つです。
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
- 自筆証書遺言
公正証書遺言の場合、公証人のもとで作成した遺言書なので公証人役場に確認すれば有無がわかります。
しかし、秘密証書遺言や自筆証書遺言の場合、相続人が探して遺言書があるかどうか確認しなければいけません。
相続人を確定させる
遺言書を探しても見つからなかった場合、基本的には法定相続分に応じて遺産を分配します。法定相続分について詳しく見ていきましょう。
法定相続分とは
法定相続分とは、民法に定められている相続するときの遺産を分ける割合を指します。法定相続分は、次の表のとおりです。
相続順位 | 法定相続人と法定相続分 | |
第1順位 | 配偶者 1/2 | 子 1/2 |
第2順位 | 配偶者 2/3 | 親 1/3 |
第3順位 | 配偶者 3/4 | 兄弟 1/4 |
法定相続には順位が設定されており、配偶者は常に法定相続人になります。これに対し、親は被相続人に子がいない場合だけしか法定相続人にはなれず、兄弟は子も親もいない場合にしか法定相続人にはなれません。
例えば、配偶者と兄弟2人で法定相続する場合の法定相続分は、次のとおりです。
- 配偶者:3/4を相続
- 兄弟:1/4を2人で分けるためそれぞれが1/8ずつ相続
法定相続分は相続人が誰か、また相続人の数によって変動する点に注意してください。
相続財産を把握する
法定相続分を理解したら、次に相続財産がどれくらいあるのか把握しましょう。相続財産には、不動産や現金、有価証券などプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。プラスの財産だけでなくマイナスの財産の有無も調べる必要があります。
マイナス財産の状況によっては相続放棄も検討すべきです。相続放棄は相続開始の3ヵ月以内が期限ですので注意が必要です。
遺産分割協議を行う
相続財産を確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。ひとりでも遺産分割協議に参加していなかった場合は、話し合いをやり直さなければならない点に注意してください。
遺産分割協議が整ったら、遺産分割協議書を作成し相続人全員が署名・捺印します。捺印は実印です。遺産分割協議書には相続人全員の印鑑証明書も添付しなければなりません。
なお、相続税の申告・納税は被相続人の死亡を知ったときから10ヵ月以内に行う必要があります。そのため、遺産分割協議を早く終わらせないと相続税の納税に間に合わない事態に陥りかねません。
相続税の納付期限を過ぎると利息に当たる延滞税がかかる可能性があるので、相続税の相続人の確定や相続財産の把握、遺産分割協議は早めに終わらせておきましょう。
相続登記を申請する
遺産分割協議書が作成できたら、法務局へ不動産の相続登記を申請します。
相続登記を申請する際の必要書類は、以下のとおりです。
書類名 | 入手先 | 備考 |
戸籍謄本 | 相続人の本籍の自治体 被相続人の本籍地の自治体 | 相続人全員のもの 被相続人の出生から死亡までのもの |
住民票の除票 | 被相続人が住所登録していた自治体 | 被相続人のもの |
住民票 | 相続人が住所登録している自治体 | 不動産を取得した人のもの |
固定資産評価証明書 | 相続する不動産の所在を管轄する自治体 | 相続で取得した不動産のもの |
収入印紙 | 郵便局や法務局 | ― |
登記申請書 | 申請者が作成 | 法務局に備え付けられている書類 |
返信用封筒 | 郵便局など | 法務局の指定する金額の切手も必要 |
遺産分割協議書 | 申請者が作成 | ― |
印鑑証明書 | 相続人が住所登録している自治体 | 相続人全員分が必要 |
上記の表は遺産分割協議を行ったときの相続登記に必要な書類です。遺言書があったときの登記申請には異なる書類が必要になるため、注意してください。
おわりに
親の土地を兄弟で相続する際にはさまざまな手続きを踏む必要があります。相続税の申告・納税までの期限は被相続人が亡くなったことを知ってから10ヵ月と決められているため、時間的余裕があまりありません。しかし、親の土地を兄弟で相続する場合、寄与分や特別受益、分割方法などでもめることも多く、遺産分割協議が難航するケースも多いです。
兄弟間で土地の相続やその後の売却をスムーズに進めるためには、司法書士などの専門家に相談しつつ進めることも大切です。
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