手元供養は新しい遺骨の保管方法であるため、「良くないのでは?」というイメージを持つ方もいるでしょう。しかし実際は、手元供養に法的な問題はありません。むしろ、故人の遺骨を身につけて身近に感じられるというメリットがあります。
この記事では、「手元供養は良くない」という誤解を解消しつつ、メリットや残りの遺骨をどうするかなどについて解説します。手元供養を検討している方は参考にしてみてください。
この記事を読んでわかること
- 手元供養は法的に問題ない方法であり、「良くないこと」というのは誤解である
- 手元供養を行うことで遺骨を日常的に身につけられるため、故人をより身近に感じられる
- 日常生活や災害などで手元供養品を紛失するリスクに気をつける
- 手元供養で保管する以外の遺骨は、散骨を行ったり永代供養を活用したりして対応する
- 手元供養に関する疑問点を感じたらプロにお任せしましょう。
手元供養とは?種類や保管できる期限
「手元供養」とは、故人の遺骨をお寺や霊園に納骨するのではなく、さまざまな方法で遺族の手元に置いておく保管方法のことです。自宅で遺骨を保管することから「自宅供養」とも呼ばれています。従来のお墓への納骨とは異なるスタイルであり、故人や遺族の希望に合わせて遺骨を保管できます。
遺骨を残す方法は全骨安置と分骨安置の2種類
遺骨を手元供養で保管する方法は、主に以下の2種類です。
- 全骨安置
- 分骨安置
全骨安置とは、故人の遺骨をすべて自宅で保管する方法です。保管方法としては「骨壷のまま保管する」「粉骨して小さい骨壷に移し替える」のいずれかになります。そのまま骨壷で保管するとカビが生えやすいため、パウダー状に粉骨すれば衛生的といえます。粉骨はご自身でも行えますが、精神的に抵抗がある場合は専門会社に依頼しましょう。
一方の分骨安置とは、遺骨の一部を手元供養で残し、他の部分をお墓に納骨したり山や海に散骨したりする方法です。ただし、分骨安置の場合は「分骨証明書」が必要になるケースもあるため注意しましょう。「墓地、埋葬等に関する法律施行規則第五条」においても以下のように規定されています。
引用元:e-COV法令検索 | 昭和二十三年厚生省令第二十四号 墓地、埋葬等に関する法律施行規則 | 第五条
分骨証明書の詳しい内容については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:分骨証明書とは?発行にかかる費用や申請の方法について
遺骨はいつまでも残すことが可能
お墓への納骨は、基本的に四十九日法要のタイミングで行います。四十九日法要で納骨できなければ、一周忌法要に合わせることが一般的です。
手元供養の場合、とくに保管の期限はありません。故人の遺骨を手元に保管し続けたとしても、特別な問題は発生しないため安心してください。
遺骨の保管の仕方はさまざま
手元供養における遺骨の保管方法には、以下のように幅広い種類があります。
- 遺骨でペンダントやイヤリング、指輪などのアクセサリーを作る
- ミニ骨壷に遺骨の一部を入れる
- 写真立ての中に遺骨を入れる
- ぬいぐるみの中に遺骨を入れる
- 骨壷自体を自宅に安置する
- ミニ仏壇に納める
- 遺骨でダイヤモンドを作る
「アクセサリーにして日常的に身につけたい」「故人の写真と一緒に大切にしたい」など、遺族の希望に合わせて最適な手元供養の方法を選びましょう。
手元供養が良くないといわれるのはなぜ?
手元供養は、従来と異なる遺骨の保管方法として浸透しつつあります。しかし、新しい保管方法であるがゆえに、正しい認識が広がらず「手元供養は良くない」といわれることも多いです。「手元供養が良くない」といわれる主な理由としては以下が挙げられます。
- 法律違反だと誤解されている
- 納骨しないと成仏できないと思われている
- 遺骨を家にずっと置いておくことを不快に思う方がいる
法律違反だと誤解されている
お墓に納骨せず手元供養を行うことは、法的にまったく問題ありません。
確かに法律では、以下のように「墓地として認められた区域以外に遺骨を埋葬してはならない」と定められています。
引用元:e-GOV法令検索 | 昭和二十三年法律第四十八号墓地、埋葬等に関する法律 | 第四条
しかし、上記の法律で禁止されているのは、あくまでも「墓地以外に遺骨を“埋葬”すること」です。遺骨を自宅に保管することは埋葬に該当しないため、法的に問題ありません。法的に問題ないにも関わらず、手元供養は新しい保管方法であるため、「法律違反である」という誤った認識が広まっています。
納骨しないと成仏できないと思われている
個人の宗教や宗派にもよりますが、「遺骨をわけると故人の魂が成仏できない」という価値観を持っている方もいます。また、分骨をすると「あの世で故人は五体満足になれない」と考えてしまい、手元供養は縁起が悪いと捉えることもあるようです。とくに親族間で宗教観が異なれば、上記のような遺骨への考え方の違いから、手元供養に対して反対意見が出てもおかしくありません。
しかし実は、分骨自体は仏教において古くから行われてきた行為です。また、仏教の創始者であるお釈迦様自身も、遺骨を8つに分骨し弟子が多くの寺院に配布したという話が残されています。
このように、仏教において「分骨は悪」という考え方はありません。しかし、今までお墓に納骨するという方法が当たり前だった世代からすると、手元供養は受け入れ難い価値観なのかもしれません。
遺骨を家にずっと置いておくことを不快に思う方がいる
遺骨を家にずっと置くこと自体を不快に思う方もいます。とくに衛生面で「カビが生えないだろうか?」と心配になる方もいるでしょう。
確かに遺骨をそのまま骨壷で保管するとカビが生えやすくなり、衛生面でも良くありません。しかし、粉骨などで加工しアクセサリーやペンダントなど適切な形で保管できれば、衛生面を心配しなくても大丈夫です。
手元供養で遺骨を自宅に残すメリット
手元供養は、法的にも、仏教の考え方的にもなんら問題はない遺骨の保管方法です。実際に手元供養を行うことで、以下のメリットを実感できるでしょう。
- 亡くなった方を身近に感じられる
- 供養の費用を抑えられる
- お墓参りや管理をする必要がない
亡くなった方を身近に感じられる
手元供養を行うことで、故人の存在を身近に感じられるようになります。
手元供養では、故人の遺骨を使ってペンダントやアクセサリー、写真立てなどを制作します。こうした遺骨を使ったグッズは、出かける際に身につけたり日頃からバッグに入れたりすることが可能です。故人の遺骨を常に身につけておければ、遺族も大切な方を亡くした寂しさを癒して安心感を得られます。
供養の費用を抑えられる
手元供養を行うことで、法要などにかかる費用を抑えられます。
お墓に納骨する場合、以下のようにさまざまな面で費用が必要です。
- お墓を建てる費用
- 永代使用料(お墓を建てた土地に対する権利料)
- 寺院に支払うお墓の管理費用
- お墓参りの際の交通費
- お墓の修繕費
- 法要の費用
手元供養を行うことで「お墓を使わない」という選択肢も選べるため、上記のような永代使用料やお墓参りにかかる費用などを節約できます。お墓の所有年数が増えればトータルの費用も高くなるため、そうした負担を減らせる点は手元供養の魅力です。
お墓参りや管理をする必要がない
費用に加えて、お墓参りを含めた管理の手間がなくなる点も魅力です。
お墓に納骨した場合、定期的にお墓を訪れて掃除や花の取り替えなどを行い、管理する必要があります。しかし、「仕事が忙しく時間を取れない」「お墓までが遠い」などによって、なかなかお墓参りに行けないケースもあるでしょう。お墓の承継者自体がいなければ、そもそも管理できる方がおらず無縁仏に近い状態になるかもしれません。
手元供養であれば、そうしたお墓参りや管理にかける手間を削減できます。お墓参りの機会を取りにくい方や、お墓の承継者がいない方にもぴったりでしょう。
手元供養で遺骨を自宅に残すデメリット
手元供養を行うことは、法律や仏教の考え方と照らし合わせてもまったく問題ありません。むしろ「故人を身近に感じられる」といったメリットを実感できます。
とはいえ、新しい管理方法であるがゆえに以下のような問題点もあります。
- 紛失する可能性がある
- 親族から反対されやすい
紛失する可能性がある
手元供養では、遺骨をアクセサリーやペンダント、ネックレスなどに作り替えて所有するため、紛失のリスクがあります。日頃から身につけていても、うっかり出先に置き忘れたり家の中で紛失したりすることもあるでしょう。とくに引っ越しや地震など、大きな出来事が起きた際に紛失する可能性もゼロではありません。
故人の遺骨が詰まった手元供養品は、遺族にとって大切な物です。紛失して悲しい思いをしないよう、管理には十分気をつけましょう。
親族から反対されやすい
手元供養は、まだ浸透しきっていない遺骨の管理方法であるため、親族から反対される可能性があります。
上記で解説したように、手元供養に法的な問題はなく、分骨自体も古くからの慣習のひとつとして伝わっています。しかし、親族の世代によっては「お墓に納骨しないのは法律違反」「遺骨をわけたら故人が成仏できない」などの問題点を感じる方もいるでしょう。また、遺骨の管理者ご自身が亡くなった際に、手元供養の品物をどうやって保管するのか不安に感じる方もいます。
手元供養を行う際は、「法律違反ではない」「故人の魂は成仏できる」という旨を丁寧に説明し、親族の了承を得ましょう。相手の納得を得られないまま手元供養を行うと、親族との人間関係に影響を与える可能性があります。
手元供養で残った遺骨はその後どうする?
手元供養では、遺骨の一部を使ってペンダントやイヤリングなどを作り、保管することが一般的です。残りの遺骨は、以下のような方法で適切に対応しましょう。
- お墓に納骨する
- 海や山に散骨する
- 樹木葬をする
- 納骨堂などで永代供養する
お墓に納骨する
一般的な方法として、お墓への納骨が挙げられます。お墓で供養するのであれば、手元供養に抵抗のある親族がいたとしても納得してもらいやすいでしょう。お墓に納骨する場合は、手元供養に使う遺骨の一部(喉仏など)を火葬場で粉骨し、残りを骨壷に納めます。
お墓に納骨する場合は、費用や今後の管理の手間なども考慮しておきましょう。お墓を使う際は、寺院に支払う管理費用やお墓参りの交通費、修繕費などが発生します。そもそもお墓がない場合は建てる必要があり、建立には150万〜200万円程度がかかるため、ご自身の負担を考慮して検討しましょう。
海や山に散骨する
散骨とは、細かく砕いた遺骨を海や山などに撒いて供養する方法のことです。故人が生前に好きだった場所に撒くことで供養につながります。すでに手元供養のために粉骨してあるため、大きな手間もかかりません。
遺骨はご自身で砕いても問題ありません。ご自身で散骨を行う際は、遺骨を必ず2mm以下まで砕きましょう。客観的に見て「遺骨である」と認識されてしまうと、刑法190条に基づき死体損壊等罪と見なされる可能性がゼロではありません。また、地域によっては条例で散骨自体が禁止されているため注意が必要です。
故人の遺骨を砕くことに抵抗を感じる方は、専門会社に依頼しましょう。散骨を専門会社に依頼した場合の費用相場は、内容によって異なります。例えば、海に撒く海洋散骨の費用目安は以下のとおりです。
散骨の内容 | 費用目安 |
クルーザーを貸し切る | 200,000〜500,000円程度 |
他の遺族と合同で散骨する | 100,000〜200,000円程度 |
散骨作業も含めてすべて委託する | 50,000円程度 |
樹木葬をする
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木を墓標にして遺骨を納骨する方法のことです。墓標とする樹木には、もみじやオリーブ、桜など幅広い種類があるため、故人の好きだった植物の根元に納めるのも良いでしょう。樹木葬では小さいスペースを活用して納骨できるため、お墓のように大規模な建立が必要なく、費用も抑えられます。
樹木葬は大きく以下の3つに分類できます。
- 合祀墓タイプ:他の方の遺骨と混ぜて埋葬する
- 共同埋葬タイプ:遺骨を個別で骨壷や袋に入れたうえで、共有スペースに埋葬する
- 個別埋葬タイプ:故人専用の区画を設けて埋葬する
また、地域別で見た際の樹木葬の費用目安は以下のとおりです。
地域 | 費用目安 |
全国 | 700,000円程度 |
東日本 | 700,000円程度 |
西日本 | 600,000円程度 |
東京 | 800,000円程度 |
樹木葬の詳しい種類や特徴は、以下の記事でも解説しています。
納骨堂などで永代供養する
納骨堂や上記の樹木葬などを活用して、永代供養することも有効です。
永代供養とは、遺族に代わって霊園や寺院が遺骨を管理してくれる方法のことです。遺骨を一定期間にわたり個別で管理した後、合祀という形で他の方の遺骨と一緒に保管されます。上記で解説した樹木葬も永代供養のひとつです。他の方法としては、屋内の専用スペースに納骨する「納骨堂」も挙げられます。
永代供養では、遺族がお墓を管理する手間がかかりません。また、費用についても30万〜100万円程度で済むため、一般的なお墓を建てるより負担を抑えられます。
手元供養は良くない?と悩んだらまずは専門家に相談
このように、手元供養は法的にまったく問題がない方法です。むしろ故人の遺骨を身につけることで、大切な方を身近に感じられるようになります。
しかし、手元供養はまだ新しい考え方であるため「やっぱり良くないことでは?」「残りの遺骨はどうやって供養するのが適切なの?」など、疑問に感じることも多いでしょう。そうした手元供養に関する疑問や残りの遺骨の供養方法などで迷ったら、専門家に相談するのもひとつの手です。
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おわりに
手元供養は新しい遺骨の保管方法であるため、良くないイメージを持っている方もいるでしょう。しかし、実際は法的にもまったく問題がなく、「故人の魂が成仏できない」ということもありません。むしろ手元供養によって遺骨を身につけることで、日頃から故人の存在を感じ続けられます。
手元供養を行う際は、残った遺骨をどのようにするかも考えましょう。対処方法としては、お墓への納骨や散骨など、さまざまな種類があります。費用負担も変わってくるため、故人や遺族の希望を考慮しつつ選ぶことが大切です。