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相続人が遺言を拒否するとどうなる?拒否したい場合に確認すべきことや断れないケースも紹介

相続人が遺言を拒否するとどうなる?拒否したい場合に確認すべきことや断れないケースも紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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遺言書の内容を知った時に、思っていたものと違う。その不動産を受け取っても管理できない…。不公平な気がする。など納得できない時どうすれば良いのでしょうか。変更できるなら変更したい。と思っている方へ、遺言書の内容と異なる分け方ができる場合とできない場合の解説と、どうすれば良いか具体的な方法を説明します。

この記事を読んでわかること

  • 納得できない遺言書と異なる分け方ができる場合とできない場合
  • 納得できない遺言書を拒否する方法
  • 遺言書の内容を知った時に、まずやること
  • 遺産を譲り受ける方の中に相続人以外がいた時の対処方法
遺言サポート
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相続人が遺言を拒否するとどうなる?

相続人が遺言を拒否するとどうなる?

遺言で財産を相続することになった相続人は、その内容を拒否することができます。

拒否の方法は、大きく分けて2つあります。

ひとつは、相続自体を放棄する「相続放棄」です。相続放棄をすると、相続する権利を放棄することになり、財産も負債も全て相続しません。また、代襲相続等も発生しません。

もうひとつは、遺言書の内容に従わないことです。この場合、相続は承認したことになりますが、遺言書の内容と異なる方法で財産を分割することができます。

相続人全員の合意があれば、遺言書の内容にかかわらず、遺産分割協議を行うことができます。ただし、遺言書で遺産の分割を禁止する趣旨の内容があった場合は、協議を行うことはできません。また、遺言執行者が選任されている場合は、遺言執行者の同意も必要です。

遺言執行者がいるケース

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する手続きをする方のことです。遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利と義務があります。その中には、相続財産の管理も含まれます。

相続人は、遺言執行者が選任されている場合、遺言の内容と異なる遺産分割を行うことはできません。そのような行為は、民法で無効とされています。遺言の内容と異なる遺産分割を行うには、相続人全員の同意だけではなく、遺言執行者の同意も必要です

関連記事:「遺言執行者とは?決め方や業務内容について解説

遺言書の内容が納得できず拒否したい場合に確認すべきこと

遺言書の内容が納得できず拒否したい場合に確認すべきこと

遺言書の内容が納得できない場合に即座に拒否するのではなく、まずは以下3つのことを確認しましょう。

  • 遺言書そのものが無効か有効かを確認する
  • 無効の場合は遺産分割協議を行う
  • 有効の場合は遺言どおりに配分するのが原則

遺言書の内容によっては無効となり、法定相続分での相続や遺産分割協議で分割方法を決めることになります。

遺言書そのものが無効か有効かを確認する

遺言書は、有効にするために決められたルールに従って作成する必要があります。遺言書の種類によっても、そのルールは異なります。例えば、自筆証書遺言には以下のようなルールがあります。

  • 氏名を自筆で書く
  • 遺言者本人が添付の財産目録を除く部分について全文を自筆で書く
  • 作成した日付を正確に自筆で書く(〇〇年〇〇月吉日など、いつかわからない場合は無効となります)
  • 印鑑を押す(実印である必要はありません)
  • 訂正する場合は印を押して欄外でどこを訂正したかを書いて署名する

これらのルールに則っていない場合は、無効となる可能性があります。また、自筆証書遺言で「自筆証書遺言書保管制度」を利用していない場合や、秘密証書遺言であった場合は、家庭裁判所で「検認」という手続きを行う必要もあります。

検認とは、遺言の存在や内容を相続人に知らせること、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認を行った日についての遺言書の内容を明らかにすることで、遺言書の偽造や変造を防止するために家庭裁判所で行う手続です。遺言書が有効か無効を判断する手続ではありません。

遺言書が有効であるかどうか確認するには、まずは遺言書の種類と作成ルールを確認しましょう。ただし、封印してある自筆証書遺言は検認前に開封しないように気をつけてください。検認前に開封してしまうと、法律違反となり5万円以下の過料を科されることもあります。

また、他の相続人から「遺言書を自分に有利なように削除したり、書き換えたりしたのではないか」などと、あらぬ疑いを掛けられることに繋がりかねません。誤って開封してしまった場合は、すぐに家庭裁判所へ相談し、指示に従いましょう。ちなみに、検認前に開封することで遺言書が無効になるということはありません。

誤って開封したことで相続人の権利を失うことはありません。ただし、自身に都合の良い相続とするために、故意に遺言書を隠す、破棄する、改ざんする、差し替えるなどの行為を行った場合は、相続人の権利を失うことになります。

無効の場合は遺産分割協議を行う

無効の場合は遺産分割協議を行う

遺言書が無効となった場合は、遺言書の内容に関係なく、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。遺産分割協議とは、相続人全員が話し合って、分割方法を決めることです。遺産分割協議は、法定相続分に従う必要はありません。相続人全員で納得できる分割方法を自由に決めることができます。

遺産分割協議を行うには、相続人全員の同意が必要です。相続人全員が一堂に会して話し合う必要はありません。電話やメールなどで意見を交換することもできます。ただし、最終的には、相続人全員が遺産分割協議書に署名押印することで、協議が成立します。遺産分割協議書は、以下のような方法で作成できます。

  • 1通の遺産分割協議書を作成し、相続人全員が持ち回りで押印する方法
  • 相続人の人数分の遺産分割協議書を作成し、それぞれが押印する方法(この場合は、「遺産分割証明書」といいます)

どちらの方法でも、遺産分割協議書の内容は同じでなければなりません。また、遺産分割協議書には、相続人の氏名、相続財産の内容、分割方法、協議日などを記載する必要があります。遺産分割協議書の作成には、専門家の助言を受けることもできます。遺産分割協議書は、相続人の権利義務を確定する重要な書類ですので、注意深く作成しましょう。

有効の場合は遺言どおりに配分するのが原則

遺言書が有効な場合、相続人は遺言書の内容に従って遺産を分割することになります。しかし、相続人全員が合意すれば、遺産分割協議を行って内容を変更することもできます。

ただし、遺言書の内容を知っている相続人に不利益な分割に同意させるのは難しいでしょう。遺言書の内容が遺産分割協議に影響を与える可能性が高いです。もし遺産分割協議で内容を変更したい場合は、以下のような合理的な理由を相続人に説明する必要があります。

  • 不動産は共有すると管理が困難になるので、共有しない方法で分割したい
  • 遠方の物件を相続する相続人がいるので、別の物件に変更した方が管理しやすい
  • 他の相続人と比べて財産価値が低い相続人がいるので、公平な分割にしたい

以上の文章は、内容はそのままに読みやすく整えたものです。文章の構成や表現を工夫して、要点を明確にしました。

相続人が遺言を断ることができないケース

相続人が遺言を断ることができないケース

前述の通り、遺言書で遺産の分割を禁止する趣旨の内容があった場合は、遺言内容と異なる分割を行うことはできません。

その他の場合に、遺言内容と異なる分割ができないケースをご紹介します。また、各ケースについて、遺言内容と異なる分割を行うことができる可能性についてお伝えします。

相続人全員が遺産分割協議の合意が取れない

前述の通り、遺言書が有効である場合、相続人全員の合意がなければ、遺産分割協議による分割はできません。

全員の合意なので、ひとりでも反対した場合は成立しないことになります。反対している場合は、話合いで理解してもらうことができますが、そもそも連絡がとれない場合や、行方不明、生死不明の場合も考えられます。

行方不明であっても、死亡が確認されなければ相続の権利を持っていますので、その方の同意も当然必要となります。

行方不明の場合は、「不在者財産管理人の選出」や「権限外行為の許可」を家庭裁判所に申請を行う、生死不明の場合は、失踪申告の申立てを行うなど、状況にあわせてさまざまな手続きを行うことで遺言内容と異なる分割を行える可能性はあります。

遺言執行者が同意しなかった

遺言執行者が選任されている場合は、相続人全員の合意で遺産分割協議が成立したとしても、遺言執行者の同意がなければ遺言書の内容が優先されます。

遺言執行者が相続人の中にいる場合は、理解を得やすいと思いますが、遺言執行者が相続人以外の第三者であった場合、基本的には、相続人全員で決めた内容を尊重してくれるとは思いますが、明らかに遺言者の意思に反する内容であった場合は、同意してくれない場合も考えられます。

遺言書の中には、作成から長い年月が経っている場合もあります。作成当初は妥当であった内容でも、相続開始時点では状況が変わっていることもあります。

第三者が遺言執行者の場合で理解が得られない場合は、そういった事情に疎い場合も考えられますので、状況や事情、遺言者(被相続人)の近年の思いなども説明することで理解を得やすくなるかもしれません。

第三者へ遺贈する旨の遺言があった

第三者へ遺贈する旨の遺言があった

遺言によって自分の財産を誰かに譲渡することを遺贈といいます。遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。包括遺贈とは「財産の3分の1を遺贈する」などのように、割合で遺贈することをいい、特定遺贈とは、「△△市〇〇の土地と建物を遺贈する」などのように、特定の財産を遺贈することをいいます。遺贈は、相続人であるかどうかに関係なく行うことができます。

この遺贈の相手が全員相続人であった場合、遺言の内容が相続人全員にとってバランスを欠いていたり、特定の相続人にとって不都合な場合などであれば、ここまでに話したように相続人全員による遺産分割協議で遺言と異なる内容で遺産を分けることができます。また遺贈を拒否することも可能です。

しかし、故人(被相続人)の財産の全部または一部を、相続人以外の「第三者」例えば故人が生前にお世話になっていた介護者や内縁の妻や夫などへ遺贈する場合は、相続人全員の合意があったとしても、その第三者への遺贈は拒否できません。

このような第三者への遺贈は、おそらく世の中の多くの相続人が拒否することでしょう。このケースにまで遺言より相続人全員による遺産分割協議が優先すると、事実上遺言の意味がなくなってしまいます。

もちろん、この遺贈が不平等な遺言によって相続人の遺留分(遺言によっても奪うことのできない権利です。主張すれば最低限もらえる遺産の一定割合の留保分があります。)を侵害している場合は遺留分侵害額請求をして遺留分の取り戻しを請求することは可能です。

ただし、遺留分侵害額請求権には時効があり、「相続が開始したこと」「遺留分が侵害されていること」の両方を知ってから1年と相続が開始してから(被相続人が亡くなってから)10年となっていますのでご注意ください。

第三者への遺贈があった場合、受遺者(遺贈を受ける方)が遺贈を放棄した場合は、相続人全員で遺産分割協議による分割ができます。包括遺贈の場合は、相続放棄と同じ方法で家庭裁判所に対して遺贈放棄の申述書を提出する必要がありますが特定遺贈の場合は、放棄する意思表示を行うことで成立します。しかし、後々のトラブルを防ぐために内容証明郵便など記録に残るかたちにしておく方が望ましいです。

包括遺贈の場合の受遺者は、相続人ではない第三者であっても遺産分割協議への参加が可能です。この場合は、第三者である受遺者も含めて遺産分割協議を行い同意してもらえれば、遺言書と異なる分割方法にすることが可能です。ただし、第三者である包括受遺者は、相続税の他に所得税がかかることがあるので注意が必要です。

おわりに

遺言書の内容と異なる分割をすることは、相続人全員の合意があれば可能です。しかし、それは必ずしも簡単ではありません。相続人の状況や意見はさまざまです。遺言書は被相続人の最後の意思です。相続人は遺言書を尊重しながら、合理的な分割を目指すべきです。

遺言をはじめ、相続にはさまざまな知識が必要になります。「もっと早く知っておけば良かった・・・」とならないように、専門知識を学ぶことは非常に重要だと思います。もしも、相続や遺言で困っている場合や、知りたいことがある場合は、専門家へ相談してみるのもひとつの手段です。

セゾンの相続 遺言サポート」は、遺言書作成に強い司法書士と提携して、遺言に関するお悩みを無料で相談できるサービスです。遺言書があれば、故人の希望どおりにスムーズに遺産が承継されます。遺言書の作成は、相続人の間のトラブルを防ぎ、円満な相続を実現するために重要です。ぜひお気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

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