更新日
公開日

葬儀費用に故人の貯金を充てられる?故人の口座からの引き出し方法や注意点を解説

葬儀費用に故人の貯金を充てられる?故人の口座からの引き出し方法や注意点を解説
セゾンのくらし大研究 編集部

執筆者

セゾンのくらし大研究 編集部

豊かなくらしに必要な「お金」「健康」「家族」に関する困りごとや悩みごとを解決するために役立つ情報を、編集部メンバーが選りすぐってお届けします。

金銭的な負担も大きい葬儀。「葬儀の費用に故人の貯金を充てたいけど、どうすればいいのか。そもそもやっていいのか…」と、不安に思うかもしれません。この記事では、葬儀費用に故人の貯金を充てるための方法や注意が必要なポイントについて、分かりやすく解説します。

これから葬儀を行うことになりそうだけど金銭的な不安があるという方、今のうちに子どもへの負担をなるべく軽くしたいと考えている方にも、参考になる情報をまとめています。

(本記事は2024年7月23日時点の情報です)

この記事を読んでわかること
  • 故人の預金から葬儀費用を充当することは可能。ただし注意するべきポイントはある。
  • 故人の預金は凍結されるが、預貯金仮払い制度や遺産分割協議の完了で引き出すことは可能。
  • 凍結される前に引き出しても罪には問われないが相続人間のトラブルに注意。
  • 葬儀費用を準備するために生前から準備をすることができる。必ず親族での話し合いは必要。
相続対策サポート
相続対策サポート

故人の預金は葬儀費用に充てられる

故人の預金は葬儀費用に充てられる

葬儀のためには、どのくらいのお金が必要になるのでしょうか。株式会社鎌倉新書が2022年に行った「第5回お葬式に関する全国調査」では、葬儀費用の総額の平均は110.7万円とされています。しかし、この値はコロナウィルス流行の影響を受けてそれ以前より大きく減少したものであり、2020年の調査では、総額の平均は184.3万円でした。今後の動向次第では、そのような水準に戻っていく可能性があります。

このように、葬儀にはかなりの金額が必要ですが、故人の預金から葬儀費用を充当することが可能です。遺産から葬儀費用を捻出することで負担は小さくなりますが、そこにはいくつか注意しておくべきポイントがあります。以下では、どのような注意点があるかを説明していきます。

参照元:鎌倉新書「第5回お葬式に関する全国調査」

亡くなった方の預金に関して知っておくべき4つのポイント

亡くなった方の預金に関して知っておくべき4つのポイント

故人の預金を葬儀費用に充てることはできますが、そのためにはいくつか知っておくべき項目があります。

ここでは、主なポイントとして、次の4つを解説します。

  • 亡くなったことが銀行に伝わると本人口座は凍結される
  • 故人の預金を葬儀費用に充てると相続放棄できないケースがある
  • 葬儀費用は全額が相続税控除の対象になるわけではない
  • 凍結前の口座から預金を引き出す場合の注意点

亡くなったことが銀行に伝わると本人口座は凍結される

死亡した方の口座は、銀行によって凍結されます。銀行は相続人及び家族からの連絡、新聞のお悔やみ欄、残高証明書の取得申請などをもとに口座名義人の死亡を確認したうえで凍結を行い、その場合は預金の引き出しや預け入れ、引き落としができなくなります。

仮払いという仕組みや相続の手続きを利用することで死亡後に預金をおろすことはできますが、手続きには1週間から1ヵ月を要するため、葬儀の費用を払うには間に合わないことがあります。

故人の預金を葬儀費用に充てると相続放棄できないケースがある

極端に高額な葬儀を故人の預金を使って行うと、相続放棄が認められなくなる可能性があり、注意が必要です。相続放棄とは、故人の遺産の引き継ぎを拒否することです。亡くなった方に多額の借金があった場合などに利用されることがあります。

相続放棄をするにもかかわらず故人の財産を使用した場合、通常は相続放棄ができなくなりますが、葬儀費用や死亡保険金などについては例外として遺産の使用が法律で認められています。

しかし、あまりに豪華な葬儀を行って多額の預金を使用すると、財産の利用が認められず、相続放棄が認められなくなってしまうことがあります。相続放棄を行う場合、葬儀は最低限の規模で行うようにしましょう。また、後から「財産の使用」にあたる預金の使用を行っていないことを証明するために、領収書や明細書などを必ず保管しておきましょう。

葬儀費用は全額が相続税控除の対象になるわけではない

葬儀に使った費用は相続税の控除がされますが、一部控除の対象にならないものがあります。ご遺体を搬送し火葬するための費用、通夜・葬式の費用(飲食費や僧侶へのお布施を含む)、埋葬・納骨にかかった費用など、通常の葬儀で必ず発生する費用は相続税控除の対象となります。

一方で、葬儀に直接かかわらないような費用は、控除の対象外とされています。最も代表的な例は、香典返しや墓地・墓石の購入代金、初七日・四十九日の法要の費用といったものです。葬儀にかかるお金がそれぞれ相続税控除の対象になっているのか、そうでないのかをあらかじめチェックしておく必要があるでしょう。

凍結前の口座から預金を引き出す場合の注意点

故人の預金を葬儀費用に充てることをあらかじめ決めている場合、暗証番号などが分かっていれば凍結前の口座から預金を引き出すということも考えられますが、この行為は本来認められていないものです。

バレてしまった場合、罪に問われることはありませんが、相続をめぐって親族間でトラブルになり、民事訴訟を起こされた場合は責任を問われることがあります。このようなリスクを避けるために、やむを得ず預金を凍結前に引き出す場合は以下のことに注意しましょう。

相続分の範囲内の金額にとどめる

まず重要なポイントは、引き出す方が相続する金額を超えない範囲で引き出しを行うことです。他の相続人の相続分を勝手に引き出して葬儀に充てた場合、相続人同士のトラブルに発展する可能性があります。自身の相続分の範囲内で引き出すことで、「自分の取り分を相続の前に受けている」ということになり、他の相続人との揉め事を避けることができます。

領収書などの明細を控えておく

故人の預金を使った際は、領収書や明細書を必ず控えておくようにしましょう。故人の遺産を葬儀と関係のない用途に使っていないことを他の相続人に伝えるための証拠が必要だからです。故人のお金を何にどのくらい使ったのか分からなければ、トラブルが発生してしまうこともあります。

葬儀費用の領収書や明細書は相続税控除の際にも必要となるので、確実に保管しておくことが重要です。領収書や明細書がもらえない場合は、使った金額や日付・目的をメモすることは最低限行っておきましょう。

葬儀と関係ない使い道はしない

葬儀と関係のない用途(自分の生活費、葬儀に関係ないものの購入)に引き出した預金を使った場合、遺産の分割が難航したり、民事訴訟を起こされたりする可能性が高まります。引き出しを行う場合は、葬儀に関係するもののみにお金を使うようにしましょう。

葬儀費用を故人の貯金からまかなうには?

葬儀費用を故人の貯金からまかなうには?

ここでは、葬儀費用を故人の貯金から充当する方法を、口座に関するポイントをおさえながら解説します。

葬儀費用を立て替えて相続分から捻出する

相続人による相続手続き(遺産分割協議など)が終われば、故人の口座の凍結を解除することができます。お金に余裕がある場合は、相続人が葬儀の費用を立て替えておき、凍結が解除された後で相続分から費用を捻出するという方法をとることをおすすめします。

先にも挙げたように、口座凍結前に預金を引き出す際は相続人同士のトラブルが発生しないよう、様々なことに注意する必要があります。相続の前に自分のお金で葬儀費用を立て替えておくと、トラブルに発展するリスクは低くなります。

預貯金仮払い制度を利用する

本人が死亡し、凍結された口座でも預貯金仮払い制度を利用することで、預金を引き出すことができます。葬儀費用を立て替えるのに十分な財産がない場合はこの方法を使うことで負担を抑えることができます。本人確認書類や被相続人と相続人双方の戸籍謄本、引き出す人の印鑑証明書などを持って銀行で手続きを行えば、相続人同士での話し合いを必要とせずに個人の預金を引き出すことができます。

引き出せる金額には上限があります。ひとつの金融機関につき、以下の二つのうち低い方が上限金額となります。

  • 150万円
  • 被相続人の預貯金×3分の1×引き出す方の法定相続分

金融機関ごとに手続きを行うことができるため、この方法をうまく使うことで凍結された口座から葬儀費用に充てるお金を引き出すことができます。

葬儀費用に必要な金額のみ遺産分割協議を行う

預金の仮払い制度では葬儀代が足りない場合は、親族間での話し合いができるのであれば、葬儀費用に必要となる銀行の預金についてのみ遺産分割協議を先に行い、財産の取り分を決めることでお金を引き出すことができます。

預金の分配について相続人全員で合意したうえで、協議で作成した「遺産分割協議書」のコピーや戸籍謄本、印鑑証明書を銀行に提出することで口座の凍結を解除し、引き出しが可能となります。

この方法を使用した場合は、後日、他の遺産についての遺産分割協議を改めて行うことになります。

あわせて読みたいおすすめ記事

葬儀費用で困らないために生前にできる対策

葬儀費用で困らないために生前にできる対策

ここまで、葬儀費用を故人の預金から充当する方法について説明しましたが、預貯金仮払い制度などを利用しても、どうしてもお金を引き出すまでには時間がかかります。ここでは、生前からできる備えについていくつか紹介します。

生前に預金から葬儀代として引き出しておく

本人の預金を葬儀代に充てることが決まっていれば、生前に預金から葬儀代を引き出しておくことで死亡後に遺族が預金の引き出しを行う必要はなくなります。その場合、家のタンスなどに多額の現金が保管されることになり、お金を狙われて犯罪に巻き込まれてしまう危険性がある点には注意が必要です。

また、家族の誰かが保管したお金を勝手に使いこんでしまうというトラブルが発生する可能性もあります。現金の保管は十分注意したうえで行うようにしましょう。

互助会や葬儀信託で葬儀費用を準備しておく

互助会や葬儀信託といったものを利用することで、葬儀費用を用意しておくことも可能です。互助会とは、葬儀社に毎月一定の掛け金を積み立てて葬儀費用を用意する仕組みで、特定の葬儀社で葬儀を行うことで積み立てた掛け金が返金され、葬儀が割安になるというメリットがあります。

家族が互助会への加入を知らず、指定外の葬儀社で葬儀を行ってしまった場合はお金が返ってこないので、加入の際は家族に話しておく必要があります。葬儀信託では、銀行に葬儀費用を信託することで葬儀後に銀行から葬儀社に代金が支払われます。

このような仕組みを活用することで、後からご遺族による預金の引き出しを行わずに葬儀費用を故人のお金から充当することができます。

生命保険や葬儀保険に加入しておく

生命保険や葬儀保険に加入して葬儀費用を用意するという手段も有効です。生命保険の場合、葬儀を行う方を受取人とすることで、死亡保険額を葬儀代に充てることができます。死亡保険額の受け取りは、保険会社に死亡届のコピーを送ることで通常1週間以内に行うことができ、葬儀の代金を支払うタイミングにも間に合います。

葬儀保険はその名の通り葬儀に特化した保険であり、死亡保険金が少ない分、高齢であったり持病を持っていたりしても加入できる場合があるというメリットがあります。

生前に相続について話し合いをしておく

上記のような方法をとる場合と、本人の死亡後に手続きを行う場合のどちらにおいても、生前に親族で相続について話し合いをしておくことで、後々のトラブルを防ぎ、スムーズに葬儀費用の準備を行うことができるでしょう。親族が全員集まるタイミングを見計らって、早めに相談しておくことが重要です。

相続に関する悩みや相談は「セゾンの相続 相続対策サポート」へ

相続に関する悩みや相談は「セゾンの相続 相続対策サポート」へ

葬儀代も含めて、相続に関しては考えなければならないことや思わぬ落とし穴が多く、何かと大変です。どのように進めたらいいか分からない場合などは、「セゾンの相続サポート 相続対策サポート」へのご相談をおすすめします。

セゾンの相続サポート 相続対策サポート」では、相続に強い司法書士との連携のもとで、生前対策から相続後の手続きまで、幅広く最適なプランの提示を受けることができます。葬儀費用に故人の預金を使用する場合の方法は多種多様で、どの手段を使えばいいか分からなくなってしまうかもしれませんが、専門家のサポートで、家族の状況に合った最適な方法を選ぶことができます。まずは無料の相談やセミナーで、分からないことを専門家にご相談してみてはいかがでしょうか。

セゾンの相続 相続対策サポートの詳細はこちら

相続対策サポート
相続対策サポート

おわりに

葬儀は短期間に多くの支出を伴う大変な行事です。残された家族になるべく負担をかけたくない、できるだけ充実した葬儀にしてあげたいなど、葬儀の費用について早くから考えて、家族で相談しておくことは大切なことです。この記事では、葬儀費用に関して、故人の預金を利用するための様々な方法や注意点を紹介してきました。家族や親族の背景や状況に合った手段を選び、準備を進めるようにしましょう。

よく読まれている記事

みんなに記事をシェアする