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相続放棄の手続き方法は?必要書類や費用などもわかりやすく解説

相続放棄の手続き方法は?必要書類や費用なども分かりやすく解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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亡くなった方の財産について、一切の相続権を放棄する相続放棄。相続放棄をするには、どのような手続きが必要なのでしょうか。ここでは、相続放棄の基本を確認しながら、手続きをする際の必要書類、流れなどについて解説していきます。相続放棄にかかる費用についてもまとめていますので、相続放棄の手続きについて知りたい方はぜひお読みください。

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相続放棄の基本情報

相続放棄の基本情報

まずは、相続放棄の基本となる遺産相続についてご説明します。

遺産相続とは?

遺産相続とは、被相続人である故人が残した財産を引き継ぐことをいいます。相続するのは、預貯金・株式・不動産といったプラスの財産だけではありません。借金や住宅ローンなどの債権、つまりマイナスの財産も引き継ぐことになります。

遺産相続には、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの方法があります。すべての財産を相続するのが「単純承認」、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐのが「限定承認」。そして「相続放棄」は、全財産を放棄する方法です。

次に、民法第887条・第889条で定められている相続順位を見てみましょう。なお、同法第890条により、配偶者は常に相続人であるため以下の順位から省いています。

  1. 子、子がいない場合は孫、どちらもいない場合はひ孫
  2. 父母、父母がいない場合は祖父母
  3. 兄弟姉妹、兄弟姉妹がいない場合は甥姪

第1順位は、故人より後の世代の血族。これを直系卑属(ちょっけいひぞく)と呼びます。第2順位にあたる故人より前の世代の血族を、直系尊属(ちょっけいそんぞく)と呼びます。

子がいる場合に遺産相続をするのは、配偶者と第1順位の子。子が亡くなっている場合には、孫などが世代を飛び越えて相続する代襲相続(だいしゅうそうぞく)が行われます。また、子がもともといない場合に遺産相続をするのは、配偶者と第2順位の父母です。直系卑属と直系尊属がどちらもいない場合は、第3順位の兄弟姉妹に相続順位が回ってきます。

参考元:民法

相続放棄ってどんな手続き?

相続放棄とは、故人の財産に対して相続権を一切放棄することです。相続放棄の対象には、プラスとマイナス両方の財産が含まれます。

相続放棄をしない場合の順位は前述のとおり。しかし相続放棄をする場合、配偶者と第1順位の子が放棄したからといって、孫やひ孫が遺産相続をすることはありません。第2順位の父母に相続権が移ることになるのです。さらに父母が相続放棄をした場合には、祖父母ではなく第3順位の兄弟姉妹に相続権が回ってくる決まりになっています。

相続放棄の手続きをするメリット

メリットの1つ目は、借金の返済義務がなくなることです。故人にマイナスの財産があった場合、相続人は借金を引き継いで返済する必要があります。しかし、相続放棄をすることで返済義務がなくなるため、返済を迫られることはありません。

2つ目は、相続トラブルに巻き込まれずに済むこと。遺産相続の際は、分割割合など、親族間の関係性を悪化させるようなトラブルが起こることもあります。しかし、相続放棄をすれば、そのような心配は不要です。

尚、基礎控除額の計算式は、3,000万円+600万円×法定相続人の数(相続税法第15条)となりますが、このときの法定相続人の数には、相続放棄をした方も含まれます。そのため、例えば、法廷相続人のひとりが相続放棄をしても、基礎控除が600万円分減ることはなく、相続税の基礎控除額への影響はありません。

参考元:相続税法

相続放棄の手続きをするデメリット

相続放棄をすると、一切の遺産を相続することができません。故人が所有する家で生活している場合は、出ていかなければならなくなることもあるため注意が必要です。また、後から大きなプラスの財産が見つかったとしても相続できません。

生命保険金や退職手当金の非課税枠が使えないことも、デメリットのひとつです。相続放棄をしたとしても、生命保険金や退職手当金の受け取り自体は可能です。これらの非課税限度額の計算式は、500万円×法定相続人の数となっています(相続税法第12条)。相続放棄をしても、基礎控除額のときと同様に、非課税限度額への影響はありません。しかし、相続放棄をしている方は非課税枠が適用されないため、受け取った全額に対して相続税がかかります。

また、ご自身が相続放棄をした場合は、初めから相続する権利を有していなかった扱いとなるため、代襲相続は起こりません。これは、マイナスの財産ばかりの場合にはメリットになります。しかし、プラスの財産がある場合には、ご自身だけでなく、子などが引き継ぐこともできなくなります。

相続放棄が検討されるケース

相続放棄が検討される代表的なケースをご紹介します。

遺産相続により損害を被ることになる場合

前述のように、相続の対象となる遺産にはマイナスの財産も含まれます。マイナス分がプラス分を上回る場合、相続によって借金を背負うことになってしまうのです。このケースでは損害を被らないようにするために、相続放棄が積極的に検討されます。

相続トラブルを避けたい場合

遺産相続をすることになれば、他の相続人との話し合いや書類のやりとりが必要です。そのため、故人や他の相続人と疎遠となっている場合は、トラブルを回避する目的で相続放棄をすることも。また、遺産が少なくて分け合うのが難しいケースや特定の相続人に事業継承などの遺産を与えたいケースなどでも相続放棄が検討されます。

相続放棄の手続き期間

相続開始日は故人の死亡した日(民法第882条)、そして相続放棄の手続き期間は相続開始を知った日から3ヵ月以内(民法第915条)とされています。しかし、財産の把握に時間がかかって期間中の手続きが困難なケースなどでは、申請すれば期間を延長できることもあります。

相続放棄の手続きはどこで行う?

相続放棄の手続きはどこで行う?

相続放棄の申し立ては、家庭裁判所で行います(民法第938条)。準備した書類は、故人が生前住んでいた最後の住所地の家庭裁判所に提出しましょう。ご自身が生活している地域の家庭裁判所ではないため、注意が必要です。

相続放棄手続きの際の必要書類

相続放棄をする際に必要な書類は、以下のとおりです。

【必要書類】

  • 相続放棄申述書
  • 相続放棄する方の戸籍謄本
  • 故人の戸籍謄本・除籍謄本
  • 故人の住民票除票・戸籍附票
  • 収入印紙
  • 郵便切手

戸籍謄本などの申請時は、上記の他に印鑑や本人確認書類も必要となります。書類の詳細や取得方法についてご説明します。

相続放棄申述書

相続放棄申述書は、相続放棄のための申し込み書類です。この書類の提出をもって、相続放棄の審査が開始されます。書類の入手先は家庭裁判所、もしくは裁判所の公式WEBサイトからダウンロードすることも可能です。

相続放棄申述書は2枚になっており、1枚目には申述人(相続放棄をしたい方)と被相続人の情報を記入します。また、2枚目には相続開始を知った日・放棄の理由・相続財産の概略などの記入が必要です。記入例を確認しながら、間違いのないように記入を行いましょう。記入例は、裁判所の公式Webサイトで確認できます。

相続放棄する方の戸籍謄本

戸籍謄本は、戸籍に記載のあるすべての方の情報がわかる証明書で、氏名・生年月日・親子関係・本籍地・筆頭者・出身地などが記載されています。

法定相続人の死亡により相続権が回ってきた場合には、ご自身より相続順位が上位の方の戸籍謄本も必要になります。故人の兄が相続放棄をするケースを例に見てみましょう。

【例】

配偶者:死亡

直系卑属(子:死亡、孫:いない)

直系尊属(父母:死亡、祖父母:相続放棄)

故人の兄に相続順番が回ってきてその兄も相続放棄をする場合は、配偶者・子・父母の戸籍謄本が必要です。

戸籍謄本は、ご自身やその方の本籍地がある市区町村の役場の窓口で取得できます。遠方に住んでいる場合には郵送請求も可能です。

故人の戸籍謄本・除籍謄本

相続放棄をする方と故人の戸籍謄本が同一でない場合は、両方の戸籍謄本が必要です。ただし、戸籍謄本はその戸籍に記載されている全員の情報がわかる書類なので、配偶者や未婚の子などが相続放棄をする際は、戸籍謄本が同じであるため1通のみ用意します。

故人と同じ戸籍に他の方がいない場合、その戸籍は故人の死亡により戸籍簿から消えて除籍簿に移されます。この場合は、除籍簿に移された戸籍の謄本(除籍謄本)が必要です。

故人の戸籍謄本・除籍謄本は、故人が住んでいた最後の本籍地の役所で取得可能です。ただし、制限なく戸籍の取得ができるのは、直系尊属と直系卑属のみ。では、兄弟姉妹が故人の戸籍謄本を手に入れるときはどうすれば良いのでしょうか。

この場合は、故人の配偶者や直系血族に取得してもらう他、第三者請求により取得する方法があります。第三者請求では、権利行使の目的があることが証明できる場合に限り、戸籍謄本などの請求が可能です。ただし、自治体によっては異なる場合もあるので、戸籍謄本を取得したい役所に確認してみましょう。

故人の住民票除票・戸籍附票

死亡時の住所が登記簿上の住所と一致していない場合は、住民票の除票・戸籍の附票により住所のつながりを証明することが必要となります。住民票の除票とは、住民基本台帳から転出や死亡などにより除かれた住民票のこと。また、戸籍の附票には、戸籍が作成されてから除籍されるまでの住所の履歴が記録されています。

これらの書類の交付は、役所の窓口または郵送での請求が可能。故人と同一の世帯で生活していない場合は、第三者請求などの方法もあるので確認しましょう。

収入印紙

相続放棄をする際は、800円分の収入印紙が必要です。コンビニでは200円、郵便局では400円の収入印紙が手に入ります。800円分をそろえて、相続放棄申述書1枚目の右上に貼りましょう。

郵便切手は、家庭裁判所からの書類の郵送・返送に使われます。準備する郵便切手は、84円切手と10円切手を5枚ずつなど、家庭裁判所により内訳まで決められています。

どの郵便切手をどれだけ用意すれば良いのかについては、管轄の家庭裁判所のWEBサイト、または電話で確認してください。なお、郵便切手が余った場合は、書類と一緒に郵送され戻ってきます。

相続放棄手続きの流れ

相続放棄手続きの流れ

ここからは、相続放棄手続きの流れについてご説明していきます。

必要な費用を用意する

まず、手続きに必要な費用を用意しておきましょう。相続放棄の手続きにかかる費用を以下にまとめました。

【相続放棄手続きにかかる費用】

  • 収入印紙代:800円
  • 郵便切手代:400~500円
  • 戸籍謄本:1通当たり450円
  • 除籍謄本:1通当たり750円
  • 住民票除票:1通当たり300円
  • 戸籍附票:1通当たり300円

必要となる書類の種類や数にもよりますが、3,000~4,000円程度で足りるケースが多いでしょう。ただし、多くの方の戸籍謄本が必要になる場合や、故人の住所のつながりを示す必要がある場合などは、この費用内で収まらないこともあります。

必要書類をそろえる

相続放棄をするときは、前述のようにさまざまな書類が必要です。戸籍謄本などを郵送請求する場合には、1週間程度かかることもあります。手続きの期間が決まっているため、早めに準備を始めましょう。

必要書類をそろえたら、相続放棄申述書に記入して捺印します。記載内容に不備があると相続放棄が受理されないため、記入例を参考に正しく記入しましょう。

書類を家庭裁判所に提出する

記入した相続放棄申述書を、戸籍謄本などとともに家庭裁判所に提出します。提出先は、故人の最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所。どこの家庭裁判所でも良いわけではないため、注意が必要です。提出方法としては、直接持参または郵送があります。郵送の場合は、家庭裁判所に書類が到着した日が受付日となるため、余裕をもって送るようにしましょう。

家庭裁判所から届く照会書に回答し返送する

書類に不備がなければ、家庭裁判所から1~2週間程度で照会書が送られてきます。照会書は、相続放棄の意思を確認するために送られてくる質問状です。質問項目に答えて家庭裁判所に返送しましょう。

相続放棄が認められるかどうかは、照会書の回答内容により決まります。回答する際は、申述書に記載した相続開始を知った日と同じ日付を書くこと、相続放棄がご自身の意思に基づくものであると明記することが重要です。相続放棄が却下されてしまうと、再度の申し込みはできません。慎重に回答しましょう。

相続放棄申述受理通知書を受け取る

照会書の回答に問題がない場合は、照会書の回答から1週間~10日程度で相続放棄申述受理通知書が送付されます。この通知書は、相続放棄が認められたことを意味します。

相続放棄は自分で行う以外にプロに依頼する方法も

相続放棄は自分で行う以外にプロに依頼する方法も

手続きをスムーズに進められるか不安な方、手続きに時間を割くのが難しい方は、弁護士や司法書士に依頼すると安心です。相続放棄申述書の作成だけでなく、戸籍謄本や収入印紙などの準備、さらには提出まで多くの過程を依頼できます。

司法書士の場合、書類の署名捺印をご自身で行う必要はありますが、多くの手間を省けることは間違いないでしょう。裁判所から届く照会書については、司法書士には回答方法の助言、弁護士には代行をしてもらえます。

弁護士と司法書士のどちらに手続きを依頼すべきか迷う方もいるでしょう。相続財産に借金がない場合や、債権者が銀行・信用金庫・クレジット会社などの場合は、どちらに依頼しても良いでしょう。

ただし、司法書士が取り立て交渉できるのは、1社当たりの元金が140万円以下の場合です。140万円を上回る場合や、債権者が個人・ヤミ金などの場合は、弁護士に依頼して債権者と交渉をしてもらう必要があります。

相続放棄の手続きを依頼するときの費用は、事案や事務所により異なりますが、司法書士では35,000~80,000円程度、弁護士は100,000円前後です。

おわりに

ご説明してきたように、相続放棄の手続きをする際は複数の書類を用意する必要があります。しかし、手続きには期限があり、いつでもできるものではありません。相続開始を知った日から3ヵ月以内に手続きができるよう、早めに動き始めることが大切です。

もしご自身で手続きするのが難しそうであれば、プロに依頼するのもひとつの手です。費用はかかりますが、手間と時間を大幅に省けるでしょう。

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