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税務調査官「この壺、高そうですね」→多額の追徴課税に!? 誰もがハマるかもしれない「相続財産時価評価」のワナ【税理士が解説】
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税務調査官「この壺、高そうですね」→多額の追徴課税に!? 誰もがハマるかもしれない「相続財産時価評価」のワナ【税理士が解説】

税務調査は「突然」「怖い」というイメージを持たれている方は少なくありません。しかし、あらかじめ対象になりやすい方や時期、注意すべきポイントがわかっていれば、対策は可能です。今回は、税理士でCFPの資格も持つ宮路幸人氏が、「申告漏れ」しやすい相続財産や評価方法、追徴課税を防ぐ方法について解説します。

きちんと申告したはずが…「税務調査」の対象になりやすい方の特徴

「税務調査」というと映画やドラマなどの影響で怖いイメ-ジがあるかもしれませんが、一般的な税務調査の場合、穏やかに丁寧に応対する職員が多いです。しかし、この「穏やかさ」に注意が必要です。

税務調査は被相続人の自宅で行われることが多いですが、その際には高級車や絵画の有無など、申告漏れ財産がないかさりげなくチェックされています。

また、税務調査はなごやかな雑談から始まることが多いのですが、「ワインが好きだった」「壺を集めるのが趣味だった」など、被相続人の生前の人となりや趣味などの話からヒントを得て、申告漏れが見つかるケースもあります。

国税庁の資料によりますと、相続税申告の対象者となる方は亡くなった方の9.3%と、おおむね10人に1人程度の割合です。しかし、相続税に関する税務調査を受けた場合、追加で相続税を支払う必要があった方の割合は87%と、非常に高い数字になっています。

このため、税務調査が入った場合、ほぼ確実に何らかの申告漏れ財産が見つかっているといえます。

では、そもそも税務署は、どのようにして調査対象者を選んでいるのでしょうか? 

調査対象になりやすい方の「3つの特徴」

一般的に相続税の調査対象者となりやすい方には、以下のような特徴があります。

1.被相続人、相続人ともに財産が多い
2.生前や死後に多額の現金が引き出されている
3.税理士に依頼せず自己申告を行った、または申告の必要があるのに相続税の申告をしていない

税務署もやはり効率を考えますから、相続財産額が多い方、すなわち追徴税額が多そうな方を優先的に調査します。ただし、財産が少ないからといって調査されないというわけではありません。

また、近年は新型コロナ流行の影響で税務調査も限られた範囲で行われていた印象がありましたが、5類感染症に移行しコロナ禍も沈静化してきましたので、今後は調査数が増加することが予想されます。

調査の対象となる相続人については、提出された申告書のほか、さまざまなところから情報を取り寄せます。銀行・証券会社はもとより、近年では相続人のSNSなどもチェックしているとされます。TwitterなどのSNS上で「相続で高級車をもらった」などと書き込んでいる方は要注意です。また、ご近所さんや利害関係者など第三者からの通報により情報が寄せられる場合もあります。

相続税の調査の時期は、一般的には相続が発生してから2~3年後に行われることが多いです。具体的には、被相続人が亡くなって10ヵ月以内に相続税の申告を済ませたあと、だいたい3回忌を過ぎたあたりが税務調査の時期の目安となります。

相続財産は「時価評価」? …財産の「評価方法」

相続財産は「時価評価」? …財産の「評価方法」

では、相続財産はどのような基準で評価されているのでしょうか。

相続財産の評価方法は、相続税法第22条により「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による」と規定されています。

「時価」と聞くと、とてもあいまいに思えてしまいますね。このため国税庁は、評価方法の統一を図るためより具体的な評価方法を「財産評価基本通達」によって定めています。

不動産の評価方法

たとえば土地については、実際に売買したときの金額がいちばん時価に近いものですが、評価したいからといって勝手に売却するわけにもいきません。

したがって、土地は原則「路線価方式」か「倍率方式」で評価額を算定しています。

路線価方式

路線価方式とは、主に都市部の土地評価に用いられる方法です。評価したい土地の平米数×その土地の前にある道路の路線価で計算します。たとえば自宅が100m2で、前の道路の路線価が30万円である場合、その土地の評価額は100m2×30万円=3,000万円となります。

倍率方式

一方、倍率方式は、固定資産税評価額×その土地が属する倍率で求められます。たとえば固定資産税評価額が1,000万円、倍率が1.1倍の場合、評価額は固定資産税評価額1,000万円×1.1倍=1,100万円となります。

※ 固定資産税評価額:総務省「固定資産評価基準」に基づき、各市町村が個別に定めている。

現金、家財、宝石などの「動産」の評価方法

指輪や宝石、骨董品といった市場価値がつくものの場合は、原則として「売買実例価額」「精通者意見価格」を参酌して評価されます。

「売買実例価額」は実際に売り出されているときの価格のことを指し、「精通者意見価格」とは専門家が鑑定した価格のことを指します。これは、たとえば骨董品であれば、信頼のおける骨董商に鑑定してもらい、鑑定書を作成してもらうと評価額として認められる可能性が高いです。

一般的な家庭の場合、財産的価値の高い動産を所有していることはそれほど多くないため、問題になることはあまりありません。しかし、高価な指輪や宝石などを保有している場合は、きちんと評価して申告しておく必要があります。

また、時計や絵画などの美術品、高級自動車などについても、保有している場合相続財産としてきちんと計上しておきましょう。

もし申告漏れが税務調査で指摘された場合、追加の相続税と過少申告加算税(悪質な場合は重加算税)、さらに延滞税を納めなければなりません。

相続財産は「時価評価」? …財産の「評価方法」

[図表]申告漏れ財産の金額の構成比の推移

出典:国税庁「令和3事務年度における相続税の調査等の状況

[図表]は、財産別にみた申告漏れの割合です。令和3年度をみると、申告漏れでもっとも多いのが「その他(41.6%)」となっています。その他のなかには家庭用財産なども含まれるため、指摘されることが多いことが読み取れます。

また、近年では電子マネ-やネット預金、ビットコインなどのデジタル資産といった “故人しか知らない財産”の申告漏れが増えています。被相続人のデジタル資産の有無についても、よく確認しておく必要があるでしょう。

相続があった場合、税務署は過去10年間の預金通帳の動きを調べますから、そこで大きな金額が動いている場合、「相続人の誰かに贈与しているのではないか?」「高額な資産を購入したのではないか?」と調査を進めることになります。

思わぬ追徴課税を発生させないために

思わぬ追徴課税を防ぐためには、どのような対策が考えられるでしょうか。もっとも大切なのは、故人の保有している財産をきちんと把握しておくことです。

また、被相続人が生きているうちにそれらを処分しておくというのもひとつの方法です。生前に処分した場合、宝石や貴金属は「譲渡所得」となりますが、課税対象となる譲渡所得は税法上「1個または1組の価額が30万円超のもの」とされているため、30万円以下であれば課税対象となりません。

30万円を超えていて売却益が出た場合でも50万円の特別控除がありますし、5年を超える長期譲渡であればその売却益は1/2として計算されますから、話し合ったうえで検討することをおすすめします。

まとめ

相続税の税務調査は怖いイメ-ジがあるかもしれませんが、必要以上に恐れる必要はありません。いちばん大切なのは、被相続人の財産を把握して正しい申告をすることです。なお、財産の数や金額が多い場合は、税理士に相談すると良いでしょう。