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ミドルシニアの【着物はじめ】~着物をはじめるのに最低限必要なものとは?
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ミドルシニアの【着物はじめ】~着物をはじめるのに最低限必要なものとは?

秋になりましたね。まだ少し暑い日もありますが、いよいよ着物の季節到来です。

ところで、着物を着るときに何が必要なのか知っていますか?着物を着るには、いくつかの道具が必要です。それ以外にも、あれこれ用意しなければならないものがあります。初期費用がバカにならないですよね……。

私は着付け教室に通ったことがありません。母はほとんど着物に縁がありませんでした。なので、“おさがり”の道具も、何が必要なのかを教えてくれる方も身近にいませんでした。

使う道具の名前を調べて覚えるところから、着物との付き合いが始まりました。おかげで余計なモノもたくさん買いました(涙)。

着物を自信をもって着られるようになるまでに、どれほど遠回りをしてきたことでしょう!

みなさんにはできるだけ初期費用を抑え、最短距離で着物を楽しめるように、最低限必要なものは何か、その選び方をお伝えしたいと思います。

着物、帯、じゅばん……他に何が必要なの?

着物、帯、じゅばん……ほかに何が必要なの?

着物と帯、じゅばんなど、着物を着るのに「必要となるもの」を一覧にしました。

着物を着るのに「必要となるもの」を一覧

これを全部揃えられれば一番ですが、全部揃えるのは費用もかかり大変なので、優先度を付けてみました。この優先度には、私の主観が含まれています。その判断基準は「旅行先で着物を着るときになかったら、困るかどうか」です。

ないと着物が着られないものは、着物初心者にとっても必需品といえるでしょう。なくてもなんとか着られるものは、初心者が慌てて買い足さなくても大丈夫だと思います。

  • ◎印:ないと困るもの
  • 〇印:別のもので代用が可能なもの
  • △印:なくても構わないもの

△印のものは、普段から私は使っていません。使っていた時期もあるのですが、なくても着られます。

〇印のものは、なければないで、なんとかなります。

帯板や衿芯は代替が利きます。帯板は、身体の前にくる帯の内側にシワが寄らないように挟み込む道具です。旅先にこれを忘れたときには、クリアファイルを帯幅に切って使いました。

衿芯は、衿元をきれいに整えるために使う道具ですが、コピー用紙を半衿の幅になるように畳んで使いました。

「着付け小物●点セット」は避けよう

「着付け小物●点セット」は避けよう

着付け道具は、これからの着物ライフには欠かせないものです。和装小物を扱う専門店に行くと、さまざまな着付け道具が売られています。初心者は、いったい何を買ったらいいのか迷うほどです。

インターネットどではよく「着付け小物●点セット」として、ひと通りのものがまとめられて、手ごろな価格で売られていますが、私はおすすめしません。

着付け道具のうち、

などは、和装小物店で、ある程度きちんとしたものを買ったほうが得です。

20年ほど前のこと、私もはじめに「着付け小物●点セット」を買いました。ところがこれがとっても使いづらかったのです。初心者だから使いづらいのかと思いましたが、この一式を持って着付けてもらいに行ったところ「使いづらい」と大変不評でした。

どういうわけだか、このセット内容が20年、あるいはそれ以上前からほとんど変わっていません。個人的な意見ですが、特に使い勝手が悪いのが、腰紐と伊達締め、帯枕です。

腰紐は着付けの要です。

"能作 箸置 結び"
腰紐

ある程度しっかりした生地(モスリンなど)のものでないと、着物を支えられません。しかしセットの腰紐は、モスリンのものであっても、生地にコシがないものが多いのです。

伊達締めは、長じゅばんや半じゅばんの衿元を決める幅広の紐です。

伊達締め
伊達締め

写真の右上からシャーリングのポリエステル製、正絹の伊達締め、ポリエステルの伊達締めです。

正絹(博多織)の伊達締めでじゅばんを締めると、衿元がきれいに決まりやすいのですが、セットの伊達締めはたいていポリエステル製で、つるつる滑って締まりません。

伊達締めの代わりに、伸縮性のあるマジックテープ付きの幅広ベルトが入っている場合があります。こちらは逆に滑りが悪く、胸元が圧迫されやすくて、私はかなり早い時期に使うのを止めました。

帯枕は、太鼓を背中に固定するのに欠かせない重要なアイテムです。

帯枕
帯枕

おすすめは、イラスト下のガーゼ袋で包まれた帯枕です。セットの帯枕にはイラスト中央のように、幅2㎝ほどの綿テープが付いていることが多いのですが、これで背中に帯を固定するのは大変です。

ある達人に教えていただいたのですが、帯枕の綿テープをはさみで切り落とし、使い古しのタイツを股のところで切り分け、片方の足の中に帯枕を入れて使うと、使い勝手が良くなるとのこと。

私は旅先で、ストッキングの片足の中に、薄手のフェイスタオルをおしぼりのように固く巻いたものを入れて代用したことがあります。綿テープの帯枕よりもお太鼓が背中に固定されて、よほど着付けやすかったのを覚えています。

リーズナブルにひと通りの着付け道具が揃っても、使い勝手が悪ければ着付けは上手くなりません。着付けが上手くならないと、着物を着るモチベーションも上がりません。

着物はじめの第一歩には、少々高くなってでも使いやすい着付け道具を揃えたほうが、その後も着物に親しみやすくなると思います。

履き物は“ジャストサイズ”を用意すべし

履き物は“ジャストサイズ”を用意すべし

パンプスなどで経験している方は多いと思いますが、足に合わないものを履くのは苦痛ですよね。足の痛みがトラウマとなって、着物を諦めた方も多いのです。下駄や草履、足袋は、ぜひ妥協せずにご自身の足に合ったものを選んでください。

足袋の“ごまかし方”

足袋は、お茶席やお稽古ごと、冠婚葬祭には欠かせませんが(その場合は白足袋が必須です)、それ以外の場所では、足袋の色や柄にTPOルールはありません。白足袋で清潔感を演出しても、色柄足袋で着物や帯とのコーディネートを楽しむのも自由。足袋ソックスでもOKです。

私自身、サイズが合わない足袋を無理やり履いて痛い思いを何度もしているのですが、冠婚葬祭やお稽古ごとでなければ、白足袋の代わりに「足袋カバー」でごまかす手もあります。

本来「足袋カバー」は、足袋の上に履いて汚れを防ぐためのものです。

しかし私は人前に立って挨拶しなくてはならないときに、足袋カバーで済ませたことが何度かあります。自分から白状しなければ誰も気づきません。もしもバレたら「足がむくんでいまして……」と苦笑いでもしておけば済むことです。

“履き物”は自分に合ったものを

なくて困るのは下駄や草履などの“履き物”です。最近、着物にブーツやスニーカーをコーディネートして楽しむ若い方も多いのですが、ミドルシニア世代にはハードルが高いですよね。

とりあえず草履や下駄を一足用意しておきたいのですが、サイズが合わない履き物では、ちょっとの距離を歩くのもしんどいものです。

「お母さんの若いころの草履」はやめましょう

「お母さんの若いころの草履」はやめましょう

よく、お母さんが若いころに履いていた草履を使っている方がいらっしゃいます。

ご自身に合った履き物を手に入れるまでの一時しのぎ、という方もいらっしゃるでしょうし、親が大切にしていたものを受け継ぎたい、という方もいらっしゃるでしょう。

その気持ちは痛いほどわかるのですが、それ以上に痛いのはあなたの足のはずです。

昔の草履は経年劣化しています。鼻緒や台が硬化してしまっているのです。しかも昔の鼻緒は細い。草履の台そのものも細幅です。当時は「おしゃれは“我慢”!」という風潮がありました。仮にあなたとお母さんと足の長さが同じであっても、窮屈なはずです。細くて硬い鼻緒が足に食い込むと、それはそれは痛いものです。

現代の鼻緒は太め

現代の鼻緒は、太めに作られています。台も昔のものに比べると幅広です。

履き物ばかりは、どんなに素敵であっても古いものはおすすめできません。新品で自分の足に合ったものをぜひ用意してください。できれば鼻緒を挿げてくれるお店で、自分の足に合わせてもらってください。

じゅばんの選び方

ところで、「じゅばん」にも種類があることをご存知ですか?

じゅばんの選び方

  • 1.    肌じゅばん…いわゆる“インナー”。汗や皮脂汚れから着物を守る働きがあります。
  • 2.    長じゅばん…肌じゅばんと着物の間に着るもの。身頃も袖も同じ素材(たいてい絹などの滑りのいいもの)でできています。ここに半衿を付けて着ます。
  • 3.    半じゅばん…上半身だけのじゅばん。役割は長じゅばんと同じです。
  • 4.    うそつき…身頃は木綿や麻など、袖だけが絹(またはポリエステル)でできている半じゅばん。袖を付け替えることができ、身頃が木綿や麻なので自宅で洗濯できます。(袖がポリエステルのものは、付けっぱなしでも洗えます)

“うそつき”だなんて、すごいネーミングですよね。

着物を始めたばかりの頃、私はこの名前に衝撃を受けました。誰がこんな名前付けたんでしょうね?

肌じゅばんは“インナー”

「こんなにじゅばんが必要なのか!?」と思ったみなさん、大丈夫です。こんなに要りません。必要なのは1の「肌じゅばん」と、2~4のどれかひとつです。

1の肌じゅばんは“インナー”ですから、和装用のものでなくっても大丈夫。

あなたのお手持ちの肌着、キャミソールやタンクトップで充分なので、△印を付けました。これからの季節なら、七分袖ぐらいのヒート〇ックのシャツでも構いません。

着物はいわゆる“抜き衣紋”に着付けます。このとき、抜いた衿元から見えないように、肌着はできるだけ背中部分の衿ぐりが大きく開いたものがおすすめです。

下半身には、裾よけかステテコを。

滑りのいい素材のものを選ぶと、足さばきが良くなって歩きやすく、風などで裾がめくれたときにも安心です。ペチコートでも代用できます。

長じゅばん・半じゅばんは“袖のサイズが大事”

長じゅばんや半じゅばんは、着物の袖の幅や丈と合っていないと具合が悪いものです。

女性の着物は、身頃と袖の縫い合わせの下が開いています。この部分を「振り」というのですが、サイズが合っていないとこの振りや袖口からじゅばんが飛び出したり、着物の袖の中でたわんでごわごわしたりしてしまいます。

マイサイズで着物を仕立てている方は、長じゅばんや半じゅばんの袖もそれに合わせて仕立てる(用意する)必要があります。

いただきものや、アンティーク、リユース品を着る場合には、着物の袖からじゅばんの袖が飛び出さないように工夫する必要があります。

“うそつき”を知っていますか?

そこで実力を発揮するのが“うそつき”です。

“うそつき”
引用元:https://item.rakuten.co.jp/kyoetsu-orosiya/10008737/

着物の袖のサイズに合わせたものを着ると、まるでちゃんとしたじゅばんを着ているように見えます。

長じゅばんを何枚も持つのは大変。絹の長じゅばんはプレタでも数万円します。その点、うそつきは身頃が木綿や麻ですから、安上がりです。

袖をファスナーやホックで留めたり、半衿部分がファスナーになっているものも販売されています。

ファスナー付
引用元:https://item.rakuten.co.jp/erihide/10000057/

気軽に着られるので、お金に余裕があれば一枚持っていてもいいと思います。

自分で袖と裾を作って付け替えるなら、絹の袖でも数千円程度で済みます。布で裾も用意すれば、歩いたときにチラリと裾から見えても素敵です。

手軽に着られる着物

おわりに

着物を着るために最初に揃えるべきものは、

  • 使いやすい着付け道具
  • 足に合った履き物
  • じゅばん

です。

特に着付け道具と履き物は妥協せずに選んでください。それ以外は、少しずつ揃えていけば大丈夫です。初期投資は、かけるべきところにはしっかりと、抑えられるところは抑えて、上手に着物をはじめてくださいね。