「人間の身体にはミネラルが欠かせない」と聞くことがありますが、ミネラルとはどのような成分なのか知らない方も多いのではないでしょうか。実は、ミネラルには多くの種類があり、働き方もさまざま。このコラムでは、ミネラルについての説明や種類、効果などについてご紹介していきます。ミネラルの摂取過剰・不足で起こる健康トラブルについても解説していきますので、健康に生活していくための参考にしてください。
ミネラルとはどのようなもの?
ミネラルとは具体的にどのような成分なのでしょうか。具体的な効果と合わせて解説していきましょう。
そもそもミネラルとは?
ミネラルとは人間の身体を構成する主な4元素である酸素、炭素、窒素、水素以外の総称です。ミネラルは体内でつくることができないため、食べ物やサプリメントから摂取する必要があります。人体の構成要素はほとんどが酸素や炭素などの4元素で占められており、ミネラルの割合は5%程度。ただし、わずかな量であっても、ミネラルが人体に与える影響は大きく、生きていくうえで必要不可欠な要素です。
ミネラルには種類がある!
人間が生きていくために必要な「必須ミネラル」は16類あります。そのうち、厚生労働省から1日の摂取量が100mg以上と定められている「主要ミネラル」は、以下の7種類です。
- カルシウム
- カリウム
- ナトリウム
- マグネシウム
- リン
- 塩素
- 硫黄
一方、1日の摂取量が100mg未満に設定されているミネラルは「微量ミネラル」と呼ばれ、以下の9種類が該当します。
- ヨウ素
- 亜鉛
- 鉄
- 銅
- クロム
- セレン
- コバルト
- モリブデン
- マンガン
それぞれの種類が互いに影響しあうことがあるため、上記のミネラルをバランスよく摂取することが大切です。
ミネラルの効果とは?
では、ミネラルにはどんな効果があるのでしょうか。主なミネラル成分の効果について解説します。
- カルシウム
カルシウムは骨や歯を構成する成分で、体内に最も多く含まれています。また、神経や筋肉の興奮を調整する働きがあります。
- カリウム
カリウムはナトリウムを排出し、体内の浸透圧を調整します。また、神経・筋肉の動きにも関わりがあり、phバランス(水素イオン濃度指数)を保つ働きをします。
- ナトリウム
ナトリウムは食塩として摂取されることが多く、細胞外液(細胞の外の体液)の浸透圧を調整します。また、筋肉や神経の動きに働きかける機能もあります。
- マグネシウム
マグネシウムは、骨や歯を丈夫にしたり、代謝を助けたりする機能があります。また、マグネシウムは脳や神経にも存在し、神経の興奮を抑える働きをします。
- 塩素
塩素は胃液の成分となり、体液の浸透圧調整や消化を助ける働きがあります。汗や尿となって体外に排出されるため、過剰摂取してもあまり心配はいりません。
- 硫黄
硫黄はアミノ酸と結合して髪の毛や皮膚、爪などを作る働きをします。また、ビタミンB群とともに代謝に働きかけ、有害ミネラルが体内に貯まるのを防ぐ役割を担います。
- ヨウ素
ヨウ素のほとんどは甲状腺に存在し、新陳代謝を促すホルモンの構成成分となって働きます。他にも、ヨウ素は身体の発育を促す働きも有しています。
- 亜鉛
亜鉛は脳や骨、腎臓、肝臓、血液などに多く存在し、さまざまな代謝に関わっています。また、たんぱく質と合成し、発育を促す役割があるため、子どもの発育に欠かせない成分です。
- 鉄
鉄の多くは赤血球の材料となり、全身に酸素を運ぶ働きを促します。鉄の摂取は貧血の予防に役立ちます。
- 銅
銅の半分は骨や筋肉、肝臓、血液などに存在する成分です。赤血球の形成を助けたり、脂質や糖の代謝を促したりするなど、身体を守る働きをしています。
特に不足しがちなミネラルとは?
ミネラルは身体の中で成形できない栄養素であるため、意識して食品から摂取しなければ不足してしまいます。なかでも、不足しがちなミネラルの種類は、カリウムやカルシウム、鉄、亜鉛が挙げられます。
次に、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を参考に、各ミネラル摂取量の目安を男性・女性ごとにご紹介します。ご自分にあてはめながら読んでみてください。
カリウム
カリウムの摂取推奨量は、18歳以上の男性は2,500mg、女性は2,000mgと定められています。20歳以上の男女の平均摂取量は2,350mgとなっているため、やや不足傾向です。ただ、カリウムはさまざまな食品に含まれている成分であるため、一般的な食生活を送っていると不足しすぎることはありません。
カリウムが不足する原因は、過度な食事制限やダイエット、嘔吐、下痢、大量発汗などです。また、抗がん剤や抗生物質などの薬によって体外にカリウムが排出されることも原因になります。
もし、カリウムが不足していると分かったときは、食生活を改め、取り入れる食品や調理法を改善する必要があります。
カルシウム
カルシウムの摂取推奨量は、18~29歳男性で800㎎、女性で650㎎。30~74歳の男性で750mg、女性で650mgと定められています。しかし、カルシウムの平均摂取量は20歳以上の男性で503mg、女性は494mgとなっており、摂取推奨量が十分に摂取できていません。
カルシウムが不足する原因はいくつかあります。1つ目は、カルシウムの体内への吸収率が悪いこと。2つ目は、火山灰が多く含まれる日本の国土は、カルシウムの含有量が少なく、野菜や飲み水にもカルシウムがあまり含まれていないこと。3つ目は、日本では欧米の料理と比べて乳製品を摂取する料理が少なく、魚をあまり食べない食生活に変化したことです。そのため、日本人はカルシウム不足になりやすい傾向があります。
鉄
鉄の推奨量は18~64歳の男性は7.5mg、月経のない18~64歳の女性は6.5mgとなっています。月経の時は推奨量が4~5mg増えます。鉄の摂取量の平均値は男女ともに上回っていますが、月経のある女性は不足しがちです。
鉄不足の原因は、鉄を含む食品をきちんと摂取できていないためです。過度な偏食や鉄の吸収を妨げるコーヒーやアルコールの過剰摂取、鉄の吸収を促すビタミンCの不足も関係しています。そのため、鉄が豊富に含まれる食品を摂取するだけでなく、鉄の吸収を妨げない食事にも気を配ることが大切です。
亜鉛
亜鉛の摂取推奨量は18~64歳の男性が11mg、女性が8mgと定められています。亜鉛は肉や魚に多く含まれているため、動物性たんぱく質が不足している人は亜鉛が不足しがちです。また、ダイエットや偏食も亜鉛不足の原因になります。高齢になると食欲が減り、亜鉛摂取量が不足することがあります。なかには、糖尿病やパーキンソン病などの病気の治療薬が亜鉛の排出を促してしまい、亜鉛不足を引き起こすケースも。
亜鉛が含まれた食品を摂取していても、コーヒーやオレンジジュースなどの吸収を妨げる食品を摂取していると、亜鉛不足になる可能性があるため注意しましょう。
摂りすぎに注意したいミネラルとは
摂りすぎに注意したいミネラルには、ナトリウムやマグネシウム、リン、セレンがあります。なぜこれらのミネラルを摂りすぎてしまうのでしょうか。
参照元:厚生労働省「国民健康・栄養調査」
ナトリウム
日本人はナトリウム、つまり塩分を摂りすぎる傾向にあります。ナトリウムの目標量が、18歳以上の男性で7.5g、女性6.5gであるのに対し、日本人の摂取量は10.1gとなっており、男女ともにナトリウムを過剰摂取していることが分かります。
日本人のナトリウム摂取量が多い理由は、和食に欠かせない醤油や味噌などの調味料には、多くのナトリウムが含まれており、必然的に日本人はナトリウムを摂取してしまいがちだからです。また、濃い味付けを好み、塩や醬油などの調味料を加えすぎることも、原因のひとつだと考えられます。
マグネシウム
マグネシウムは新陳代謝に必要な成分です。摂取推奨量は、30~64歳の男性で370mg、女性で290mg。65~74歳以上の男性の推奨量は350mg、女性は280mgと設定されています。1日の平均摂取量は247.1mgであるため、通常の食事で摂取しすぎることはほとんどありません。
しかし、注意すべきはサプリや薬での過剰摂取です。マグネシウムを摂りすぎた場合、通常は尿として排出されますが、腎機能が低下していると、吐き気や血圧低下などの症状が出ることがあります。また、下痢を引き起こすこともあるので要注意です。
リン
体内に多く含まれるリンは、エネルギーを作る働きをします。また、骨や歯を形成する働きもあります。リンの1日当たりの摂取目安量は、18歳以上の男性で1,000mg、女性で800mg。耐用上限量は男女ともに3,000mgです。リンを摂取しすぎると、腎機能を低下させたり、カルシウムの吸収を妨げたりすることがあります。リンは食品添加物に多く含まれているため、コンビニのお弁当やインスタント食品などを頻繁に食べる方は注意が必要です。
セレン
セレンは抗酸化反応を起こし、がんや老化から身体を守る働きがあります。一方で、セレンは毒性が強いため、摂取量には注意しなければなりません。セレンの1日当たりの摂取推奨量は、18~74歳の男性で30μg、女性で25μgです。75歳以上の男女も18~74歳の男女と推奨量は同じですが、男性の耐溶上限量は400μgと18〜74歳男性の450μgより50μg低くなっています。
セレンは魚介類や肉類に多く含まれているため、一般的な食生活で不足することはありません。過剰摂取になる原因は、食事やサプリです。セレンを摂りすぎると、髪の毛が抜け落ちたり、爪が変形したりすることがあります。最悪のケースでは、心筋梗塞の原因にもなるため、サプリを飲むときは十分に気をつけましょう。
ミネラルの摂りすぎや不足でどのような影響が起こる?
ミネラルの摂りすぎや不足により、身体にはどのような影響が出るのでしょうか。
- カルシウム
カルシウムの1日摂取推奨量は、男性18~29歳は800mg、男性30~74歳が750mg、男性75歳以上が700mgです。女性18~74歳は650mg、75歳以上は600mgと定められています。カルシウムが不足すると、骨粗しょう症や高血圧などを引き起こすことがあります。
- カリウム
カリウムの1日摂取推奨量は、18歳以上の男性、女性ともに2,500mgです。カリウムが不足すると、体がだるくなったり、食欲不振を引き起こしたりする場合があります。
- ナトリウム
ナトリウムの1日目標量は18歳以上の男性で7.5g、女性で6.5g未満と定められています。ナトリウムを摂取しすぎると、高血圧や胃がんなどの原因になるケースがあります。
ミネラル摂取におすすめの食品・食材とは?
ミネラルを上手に摂取するためには、食事のバランスが大切です。ここでは、ミネラルを多く含むおすすめの食品・食材を紹介していきます。次の表を参考に、不足しがちなミネラルを補う参考にしてくださいね。なお、ミネラルはミネラルが体内に多く存在する多量ミネラルとわずかに存在する微量ミネラルに分類されます。
【多量ミネラルを多く含む食品】
カルシウム | 水菜、干しエビ、厚揚げなど |
リン | 小魚、大豆製品、乳製品など |
カリウム | ホウレン草、昆布、大豆、アボカドなど |
ナトリウム | 食塩、味噌、醤油など |
マグネシウム | 納豆、アーモンド、カシューナッツなど |
硫黄 | 卵、肉類、にんにくなど |
塩素 | 食塩、醤油、梅干しなど |
【微量ミネラルを多く含む食品】
マンガン | ごま、玄米、抹茶など |
クロム | ひじき、こしょう、青のりなど |
セレン | かつお節、イワシ、カレイ、ホタテなど |
モリブデン | 枝豆、レバー、落花生、大豆、きな粉など |
コバルト | のり、煮干し、貝類など |
鉄 | レバー、厚揚げ、ひじき、青のり、切り干し大根など |
亜鉛 | 豚レバー、牡蠣、牛もも肉など |
銅 | 魚介類、レバー、ココア、きな粉など |
ヨウ素 | 海藻類、イワシなど |
ミネラルを摂取するときはココがポイント!
ミネラルを摂取する際には、吸収率を高める組み合わせを考えることや、サプリを活用することも重要です。食事のバランスを考えるのと同時に、下記の内容にも気を配ると良いでしょう。
吸収率を高める組み合わせで摂取しよう
ミネラルには、もともと体内に吸収されにくいものや他の成分によって吸収が阻害されるものがあります。そのため、吸収率を高める成分の組み合わせで摂取するのがおすすめ。ミネラルの吸収率を高めるのは、ビタミンです。野菜や果物に含まれるビタミンCは、鉄の吸収を助けます。また、魚やきのこ類に含まれるビタミンDはカルシウムやリンの吸収を高めてくれます。
サプリを活用しよう
必要なミネラルを食事で補うのが難しい際は、サプリメントを飲む方法もあります。ただし、サプリメントを用いる際には、過剰摂取にならないようにするのが大切です。厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に、耐容上限量が示されているため、サプリを飲むときの参考にしましょう。また、サプリは薬と併用すると、薬の効果を弱めたり強めたりする場合があるため、薬を常用している方は医師との相談が必要です。
おわりに
今回は、健康な身体作りに欠かせないミネラルの種類や効果、おすすめの食品などについてご紹介しました。バランスの取れた食生活を意識していなければ、ミネラルは不足してしまいがちです。ミネラル不足や過剰摂取はがんや高血圧、免疫力の低下などのトラブルを引き起こす可能性があります。このコラムを読んで「ミネラル不足かもしれない」と思った方は、今回紹介した食品や摂取方法を意識して、食生活を改善していきましょう。