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声の老化を予防するためにできる6つのこと

声の老化を予防するためにできる6つのこと
神尾 敬子 声楽・ピアノ・音読講師

執筆者
神尾 敬子 声楽・ピアノ・音読講師

東京音楽大学音楽学部声楽科卒業。イタリアオペラ、フランス及びドイツ歌曲を学ぶ。
虎ノ門病院、東大医科研附属病院、日本音楽療法学会全国大会、アジア・太平洋地域国際エイズ会議にて招待演奏。アレキサンダー・テクニーク、加藤メソッド(呼吸法)等々を習得、音楽講師、ヴォイストレーナーとして活躍中。
また、ナレーションの神様、矢島正明氏にドラマティックリーディングを師事。朗読会開催の要請にも応じている。

ご自身の「声の老化」に気付いている方は多いようです。加齢に伴い、声も老化していくのは、自然なことともいえますが、しかし、いつまでも若々しい声の方もいますよね。そんな方は明るく健康的で知的に見えることは事実です。

近頃はYouTubeやTikTok、ClubhouseというようなSNSの流行から、若い方でも、声を気にする方は少なくありません。声が老化する原因は何か、いつまでも若々しい声を維持するにはどうしたら良いか、そのためにできることをお伝えいたします。

声の老化はなぜ起こるのか

声の老化はなぜ起こるのか

姿勢の悪さ

加齢により、姿勢は猫背に、巻き肩になりがちです。現代は、スマホの見過ぎもあり、皆さん猫背になっています。この状況では、肺がストレスを受け、より良く働くことができません。何より、声の源は、吐く息(二酸化炭素)なのです。まずは正しい姿勢を心掛けましょう。

浅い呼吸

我々はみな、生命維持のために呼吸をしています。その吐く息(二酸化炭素)を使って、声は作られます。この吐く息がしっかりしたものであってこそ、しっかりした声になります。『息も絶え絶え(たえだえ)』では、若々しい声にはなりません。呼吸を見直すことも、若々しい声のためには、基本といえるでしょう。深い呼吸は、自律神経も整えてくれますし、良いことばかりです。

唾液の減少

声を出す事は、多くの水分を必要とします。声帯は粘膜で覆われているため、口を開けることで、口内の水分も奪われていきます。そのため、唾液はとても必要なのですが、残念ながら加齢に伴い唾液の量は少なくなってしまうのです。たくさん声を使うと「声が枯れる」といわれますが、まさに水分が少ないことを意味しています。これでは、若々しい声にはなりません。唾液の分泌が良くなると、口中衛生環境も良くなり、嚥下しやすくもなり、免疫力もアップ!良いことづくしです。

声を出す機会の減少による筋肉の衰え

世界的に『核家族化傾向の進み』は、止まりません。家族間で会話が減り、人々の交流も減り、声を出す機会が減っています。そして昨今のコロナ禍におけるマスク生活は、口を動かすという行為に対して、ストレスを与えています。まず会話の機会の減少が声の老化を進める原因になっているように思われます。

参照元:平成18年版少子化社会白書(内閣府)第1‐5‐4表 世帯類型別構成割合の推移およびコラム

また大きな声を出す機会も減りました。農耕民族であった古の人々は、共同作業によって遠くにいる仲間に情報を伝達するため、声を多く使ってきました。対して、インドアな生活時間が多くなった現代人は、大きな声を出す機会も少なくなっています。意志の伝達は、メールやラインに変化しました。

また、趣味として大人気の「歌うこと」、カラオケなども、最近は楽しみにくくなってきていますね。

会話の減少、大きな声を出す機会の減少により、声を出すための筋力が低下しているのです。それらの各種筋肉が、弱く、細くならないような生活を心掛けたいものです。

メンタルの不調

声ほど、気持ちが反映されるものはありません。元気な方は元気な声、弱っている方は弱々しい声になってしまいます。電話の声で、相手の健康状態を察する経験をされた方は多いのではないでしょうか?

物価上昇、家族の問題、健康問題など、悩み事を挙げるとキリがありません。声にとっても、いつも前向きでポジティブな感情を持ち続けることは、重要といえるでしょう。日々の、些細な出来事に幸せを感じながら、明るいメンタルを保ち続けることは、大事だと思います。

歯並び、口臭、歯の黄ばみなどが気になって、大きく口を開けられない方は、いませんか?これも、老化した声になってくるひとつの原因です。

「声の仕事」をしている方々はなぜ変わらない声を保てるのか

テレビ局のアナウンサーの方が、高齢になっても声が変わらないことに気付く方も多いでしょう。また、長年続くテレビアニメのキャラクターに、声を吹き込んでいる声優の方々も、何十年も変わらない声を維持しています。80歳を超えた声優の方が、小さな男の子の声をあてていたり、若い女性の声を演じている事はよくあります。

なぜ、この方たちが、変わらず声を維持できているかといえば、ひとえに日々のトレーニングの成果といえるでしょう。毎朝の発声訓練や、人気アナウンサー、人気声優であるが故の仕事量をこなす事で、この声を維持しているのです。

今も続く、国民的テレビアニメの中で、長年、お父さん役を演じていらした声優さんは、70歳を超えてからボイストレーニングをはじめられ、その結果、オペラの中の、テノールのアリアを歌えるほどになってしまいました。そして、亡くなる数日前まで変わらぬ声で、優しく家庭的な、日本のお父さんの声を、あてていらしたのでした。

やはり私たちも、日々の生活の中での少しの心掛けが、これからのご自身の声のためにとても大事だと思います。

声の老化を予防するためにできる6つのこと

では具体的に、若々しい声を保つために、日々どんな事を心掛ければ良いか、6つのことを提案してみます。

姿勢を良くする

姿勢を良くする

良い姿勢とは、立っていても座っていても、仙骨を立てて、両肩は肋骨の上にのっている状態。胸を張りすぎる必要はありません。右の肩先から、左の肩先までの距離が、長く保てるように腕がおりた状態が良いでしょう。肩先が前方に来ていては(巻き肩)、肺にストレスを与えてしまいます。

正しい呼吸法

まず、ゆっくり息を吐きます。ゆっくりと肺の中にあるすべての二酸化炭素を吐き切るつもりです。吐き切ったところで、身体を緩めたら、自然と肺が膨らみ、そこに新しい酸素が取りこまれます。これを、ゆっくり繰り返します。

 

取り入れられた酸素は全身を巡ります。当然、脳にも巡り、認知症の予防にもつながるでしょう。

唾液腺の刺激

三大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)をマッサージしてみましょう。

三大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)をマッサージ
  1. 耳の前、上の奥歯あたりを指4本でぐるぐるマッサージします。(耳下腺の刺激)
  2. 指をそのまま下におろし、顎先までをクックッと押してマッサージします。(顎下腺の刺激)
  3. 顎先の下を親指でクックッと上方向に押します。(舌下腺の刺激)

口内に、唾液が出てくるのがわかると思います。唾液の分泌は声のためにも、嚥下にも、口腔内衛生の点からも、とても良いのです。

意図的に声を出す機会を作る

以前に比べて、声を出す機会は格段に減りました。コミュニケーションはラインやメールに変わっています。意識的に、声を出す機会を作りだしていきたいですね。

人と会話をする

対面が難しければ、電話やZoom(オンライン会議ツール)などであっても、意識的に人と会話の機会を作りましょう。

音読をする

新聞や雑誌、好きな詩や、本など声に出してみましょう(話し相手がいなくても大丈夫です)。黙読とは全く違う世界が広がります。脳の活性化にもなります。

歌う

歌うという事は、会話や音読よりも広い音域を使います。つまり、より多くの筋肉を使うことになります。口の開け方も違ってきますし、声帯(これも筋肉)の使い方も、会話や音読の時とは違います。息も、多く使う事になりますし、健康にも良く、どこかスッキリとして、精神的にも良いと思います。

メンタルを向上させる

日々の、さもない事に喜びながら、心配し過ぎずに、楽しい事を見つけて過ごしましょう。不満や愚痴というのは、そもそも良い響きの声にはなりません。

歯のメンテナンス

歯の治療は、声にとって重要です。メンテナンスを怠らないようにしましょう。定期的にかかりつけ歯科医を訪れ、歯のクリーニング、口臭チェックなど、口腔内を衛生的に保つ事も意識して行って下さい。

おわりに

ぜひ、ご自身の声を録音してみて下さい。今はスマホで簡単に録音ができます。そして、ご自身の耳で確かめながら、いつまでも若々しい声を保っていただくと良いと思います。

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