公開日:2022.07.13 最終更新日:2022.07.27

「グレイヘア」始めました~ムリせず自然で美しい歳の重ね方って?|第3回「いざ、グレイヘア!」の決意を萎えさせる「移行期」問題

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1.「グレイヘア」を体現する表紙の女性は誰に?

いよいよグレイヘアの本を作ることになったとき、最初に考えたのは「表紙に誰を起用するか?」でした。「グレイヘア」という新しい言葉とコンセプトを瞬時に伝えるために、表紙はとても重要です。

顔が知られた有名人であることや、人目を惹く魅力があることなど、希望条件はいくつかありましたが、一番大切なのは、もちろん「ハッとするほどグレイヘアが素敵」であること。でも当時、グレイヘアの女優さんやタレントさんはほぼいない状態で(近藤サトさんも、その頃はまだカミングアウトしていませんでした)、いきなりグレイヘア本の制作は暗礁に乗り上げてしまったのです。

「どうしよう……」と頭を抱えているときに、知り合いが持ちかけてくれた候補が結城アンナさんでした。

結城アンナさんといえば、若い頃、雑誌『anan』などでモデルとして活躍し、その後、夫婦で出演したカレーのCMの印象が強いですね。岩城滉一さんとのおしどり夫婦ぶりも有名です。子育てや介護が終わり、芸能活動を再開するというアンナさんにお会いすると、染めない髪色と笑ったときの表情ジワが優しい、いい歳の重ね方をした素敵な60代になっていました。手ぐしでかき上げたような無造作なアップスタイルのグレイヘアは、ため息が出るほど美しい!

グレイヘアという選択
結城アンナさんのグレイヘアが文句なく美しく、目を惹く表紙に。(2018年 主婦の友社)

2.加齢現象を受け入れることは、女性にとって大きな試練

久しぶりに人前に登場したアンナさんが与える「えっ、この美しい人は誰?」という衝撃は、名前が分かると「あ、あの結城アンナさん!?」という驚きに変わり、さらには「どうして白髪?」と疑問も湧き、「グレイヘア」という新しい言葉、そしてコンセプトの伝道師としてぴったりなキャスティングとなりました。

さらにアンナさんの表情には、現状を受け入れつつも、まだわずかにためらいやとまどいや不安が残る、微妙な心の揺れが現れています。

撮影の際に私がアンナさんやスタッフと共有したキーワードは「自己肯定感」でした。ひと言でいうと「グレイヘアになった自分を肯定する」ということなのですが、現実問題として、歳を重ねた自分の現状を受け入れ、肯定するのはなかなかむずかしいこと。特に女性は自分の加齢現象をなかなか認めたくないし、人からも老けて見られたくないから、多くの人は白髪を染めるわけです。シワやたるみなどを取る美容医療が人気なのも同じ理由です。

歳相応の「ありのまま」でいる覚悟を決めるとき、誰の心にもさまざまな葛藤が生じます。フォトグラファーの宮濱祐美子さんは、その迷いと決意、不安と希望が入り混じった一瞬の表情を見事に捉えてくれました。もし、この表紙がみじんの迷いもない、あっけらかんとした笑顔だったら、あれほど多くの人の心を捉えることはなかったでしょう。

アンナさんには表紙のほかに巻頭特集に登場していただき、グレイヘアになるまでの髪色にまつわるストーリーと現在の生き生きした暮らしぶりを紹介してもらいました。それはグレイヘアに興味津々の読者が、まさに知りたかった興味深い内容ばかりでした。

アンナさんの生き生きとした暮らしぶりは同年代の女性たちの憧れ。(『グレイヘアという選択』より)
アンナさんの生き生きとした暮らしぶりは同年代の女性たちの憧れ。
アンナさんの生き生きとした暮らしぶりは同年代の女性たちの憧れ。(『グレイヘアという選択』より)
(『グレイヘアという選択』より)

3.悩ましいのは「移行期間」のカオスな髪色

白髪染めをすることが「自分らしくない」と気づき、居心地の悪さを感じたアンナさんは40代後半で白髪染めを卒業。長かった髪をショートにし、約1年間ヘアマニキュアをしながら、全体が自分の髪色になるのを待ったそうです。もともと家にいることが好きだったので、人の目もそんなに気にならず、「これが自分の姿なんだから仕方ないじゃない」と受け入れ、乗り切ったのだとか。

そう、白髪染めをやめる決意をすると、いきなり立ちはだかるのが魔の「移行期」問題。白髪交じりの自分の髪色と染めていた髪色が混在する、美しいとはいえないこの時期をどう乗り切るかはかなりの問題です。特に最初の約3ヶ月、白髪が3~4cmくらい伸びるまでは、「この人、なんで染めてないの? もしかしたら何か事情があるの?」と周りをモヤモヤさせているのではないか、と人目が気になることこの上なし。まさか、「冷やし中華始めました」のように「グレイヘア始めました、私」とのぼりを立てて、言い訳しながら歩くわけにもいかず……。

電車で座っているとき、頭頂部に視線を感じたことが私も何度かありました。前に立っている人が、自分の頭頂部の白髪に注目していると思うと、いたたまれない気持ちになりました。

一番いい方法はスキンヘッドにして、染めた髪をなくすこと。そうすれば、移行期間ゼロでグレイヘアをスタートできます。でも、そこまで大胆になれる人はなかなかいないでしょう。現実的な方法としてはアンナさんのようにヘアマニキュアでうっすらと色をつけて白髪を目立たなくする、あるいはハイライトとローライト(部分的に髪を細い束にしてすくい、色を抜くところと色を入れるところを作る)を入れ、メッシュっぽくすることで生えてくる白髪が目立たないようにする(私もそうしました)、または全体を明るい色でカラーリングするなど、いくつか美容室でできる「ぼやかし」法があります。

部分的に目立つ白髪にはマスカラタイプ、ファンデーションタイプ、パウダータイプ、スプレータイプなど、さまざまなタイプの白髪隠し商品があります。また、髪に薄く色がつき、使わないでいると自然に色が抜けていく白髪対応のヘアトリートメントもあります。自分に合うタイプを見つけ、じょうずに使って乗り切れるといいですね。

ある同僚の女性はこの期間中、会社にウィッグをつけてきていて、ある日、こっそり会議室で外して見せてくれました。思っていたより白髪が多くて驚きましたが、定年退職したらウィッグをやめて自分の髪色で過ごすんだ、と嬉しそうに語ってくれました。

白髪まじりの自分の髪が混在して三毛猫のようでした。
白髪染めをやめて数か月の私の頭頂部。ヘナのオレンジ色っぽい染毛と、白髪まじりの自分の髪が混在して三毛猫のようでした。

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依田 邦代(よだ くによ) 編集者

1958年生まれ。大学卒業後、出版社に入社。雑誌編集長などを経て、2012年より書籍編集に携わる。シニア女性のライフスタイルにフォーカスした『OVER60 Street Snap』、『Madame Chic Paris Snap』、『グレイヘアという選択』、『古布を着る。』、『80代の今が最高と言える』(すべて主婦の友社)ほか、数々のヒット作を生む。『OVER60 Street Snap』、『グレイヘアという選択』シリーズはメディアで注目され、「グレイヘア」は2018年新語・流行語大賞にノミネートされた。グレイヘアブームの火付け役と呼ばれ、2018年11月に定年退職後はフリーランス編集者として執筆・講演等でも活躍。

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