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人間ドックの基本検査項目は?日帰りと2日ドックの違いやオプションの種類も解説

セゾンのくらし大研究 編集部

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「人間ドックではどんな検査を受けるの?」「日帰りと2日ドックの違いは?」「それぞれの検査で何が分かるのか?」と、人間ドックの検査項目に関する疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

人間ドックではさまざまな検査を受けることになるので、何を調べているのか知っておくことが重要です。このコラムでは、人間ドックで必ず受ける基本の検査項目や、日帰りと2日ドックの違いについて解説します。

また、日本人間ドック学会が公表しているオプション検査も紹介するので、受診する際の参考にしてみてください。

【1日ドック】人間ドックで必ず受ける基本の検査項目

日帰りの人間ドックで受けられる検査は多種多様です。ここでは、基本の検査項目について説明します。「どのような疾病に関わるのか」「何を調べるのか」をわかりやすくお伝えしていきますので、検査への理解を深めましょう。

身体測定

身体測定では、下記の4つを調べます。

  • 身長
  • 体重
  • BMI
  • 腹囲

BMIは、国際的に使われている体格指数で、下記の式で計算可能です。

体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

下記の表にBMIと肥満度の判定をまとめたので、ぜひ計算して自身の肥満度をチェックしてみてください。

BMI肥満度の判定
18.5未満低体重(やせ)
18.5以上25未満標準体重
25以上30未満肥満(1度)
30以上35未満肥満(2度)
35以上40未満肥満(3度)
40以上肥満(4度)

腹囲は、メタボリックシンドローム診断の必須項目となっています。男性で85cm以上、女性で90cm以上の腹囲があると、メタボリックシンドロームが疑われるので要注意です。

心肺や視聴覚の検査

心肺や視聴覚は、血液や尿といった検体を採取するのではなく、医師などが患者に接して検査されます。人間ドックで実施されている心肺や視聴覚の検査項目は、下記のとおりです。

  • 血圧測定
  • 心電図
  • 心拍数
  • 眼底
  • 眼圧
  • 視力
  • 聴力
  • 呼吸機能

血圧は、あらゆる疾病に関わる重要な指標です。加齢や生活習慣によって高血圧になると、下記の疾病リスクが高まります。

  • 脳血管疾患
  • 心臓病
  • 腎臓病
  • 動脈硬化

脳血管疾患や心臓病は日本人の死因の上位となっているので、特に注意が必要です。血圧が高めな方は、大事になる前に生活習慣を見直すようにしましょう。

心肺や視聴覚の検査では、呼吸機能も調べられます。呼吸機能に問題がないかどうかは、下記の3項目で判定されます。

  • 1秒率
  • %肺活量
  • %1秒量

タバコを吸う方は、呼吸機能が落ちやすい傾向があります。喫煙によって肺の機能が低下し、1秒率の値が70%未満になると慢性閉塞性肺疾患(COPD)が疑われます。

慢性閉塞性肺疾患は、息が吐き出しにくくなるのが特徴です。思い通りに呼吸ができなくなると、慢性的に苦しさを感じることになってしまいます。

呼吸機能の低下が気になる方は、できる限り早く禁煙を目指しましょう。

X線・超音波

人間ドックで実施されているX線・超音波の必須項目は、下記の3つです。

  • 胸部X線
  • 上部消化管X線
  • 腹部超音波

胸部X線は、正面と側面の2方向から撮影した画像を確認する検査で、下記のような肺や心臓の病気を早期発見するのに役立つ可能性があります

  • 肺がん
  • 肺結核
  • 肺炎
  • 心筋梗塞
  • 心臓弁膜症
  • 拡張型心筋症

上部消化管X線は、食道から十二指腸までを撮影します。バリウム液を飲む必要がありますが、がんや潰瘍を発見できる重要な検査なので、定期的な受診をおすすめします。

上部消化管X線で確認できる胃がんは、早期発見できれば高い生存率で完治できることがわかっています。

腹部超音波は、下記の臓器をターゲットにした検査です。腹部超音波によって対象の臓器に発生したがんを見つけられるだけでなく、胆石も発見できます

  • 肝臓
  • 脾臓
  • 胆のう
  • 膵臓
  • 腎臓
  • 腹部大動脈

血液中に含まれる成分の検査

人間ドックで受けられる血中成分の検査は、17項目もあります。項目の分類と検査で確認できる血中成分をまとめた表を、下記に示します。

肝臓系検査総蛋白アルブミン
総ビリルビン
AST
ALT
γ-GTALP
脂質系検査総コレステロール
HDLコレステロール
LDLコレステロール
Non-HDLコレステロール
中性脂肪
腎臓系検査クレアチニン
eGFR
尿酸検査尿酸
糖代謝系検査血糖(空腹)
HbA1c

肝臓系検査では、主に肝炎や肝臓がんといった肝臓の異常や栄養障害の有無を確認します。脂質系検査は、脂質異常症や動脈硬化などの脂質が密接に関わる疾病の発見に効果的です。

動脈硬化は日本人の死因の上位を占める心疾患や脳血管疾患に関わる疾病なので、特に注意が必要です。

腎臓系検査では、腎臓の機能が低下していないかを確認します。腎臓の場合、機能が低下していても気付きにくいので、定期的な検査がおすすめです。尿酸検査は、血中の尿酸量をチェックします。

尿酸の数値が高いと痛風や尿路結石のリスクが高まるため、数値が高めの方はビールや魚卵などを避けるようにしましょう。

糖代謝系検査は、糖尿病リスクの指標になっています。空腹時の血糖値とHbA1cによって糖尿病と診断されることもあるので、生活習慣が乱れてしまっている方は要注意です。

血球の検査

血球に関する検査項目は、下記のとおりです。

  • 赤血球
  • 白血球
  • 血色素
  • ヘマトクリット
  • MCV
  • MCHC
  • 血小板数

赤血球の数だけでなく大きさや濃さも調べることで、あらゆる貧血の診断に役立ちます。貧血は、下記のようにさまざまな種類があります。

  • 鉄欠乏性貧血
  • ビタミンB12欠乏性貧血
  • 葉酸欠乏性貧血
  • 再生不良性貧血
  • 溶血性貧血

貧血の種類によって治療法が異なるので、複数の検査を組み合わせて赤血球を検査し原因を突き止めるのが重要です。

白血球は、体内に侵入した細菌やウイルスを排除する役割があります。そのため、白血球数が増えると細菌やウイルスへの感染が疑われます。また、炎症や腫瘍の発生によっても白血球数が増加します。

白血球数だけでは体内のどこに異常があるかまではわかりませんが、非常事態のサインとして有効です。血小板には、ケガなどによって体外に流れ出る血液を固め、止血する役割があります。

そのため、血小板数が少ないと血液が止まりにくくなってしまいます。反対に血小板が増えすぎると血栓ができやすくなってしまうので注意が必要です。

炎症の検査・血液型判定

炎症の検査として、CRPが調べられます。CRPとは、体内に炎症や組織の損傷があると血液から多く検出されるたんぱく質の一種です。CRPで炎症があることが分かれば、精密検査を受けて特定部位の病気を発見できます。

また、HBs抗原の検査も基本項目のひとつです。HBs抗原は、B型肝炎ウイルス感染から2~3ヵ月経つと血液から検出されます。

低確率ではありますが、B型肝炎ウイルス感染によって肝臓の機能が急に低下してしまうことがあるため、定期的に検査を受けることが重要です。ちなみに、HBs抗原と血液型判定は、申し出れば省略可能です。

尿検査

尿を調べるときは、一般検査と尿沈渣が行われます。一般検査では、尿に下記のような成分が含まれていないかどうかを確認します。

  • 潜血
  • 尿糖
  • 尿蛋白
  • 尿ウロビリノーゲン

基準値は項目によって異なりますが、どれも出てこない方が健康といえます。ウロビリノーゲンとは、肝臓や腸内細菌によって生成される物質です。

尿中に排泄されるウロビリノーゲンを調べると、肝臓や胆のうの異常を確認できます。尿沈渣とは尿を遠心分離し、沈殿物を顕微鏡で見る検査です。主に、下記のような固形成分が観察されます。

  • 赤血球
  • 白血球
  • 尿酸結晶
  • 細胞
  • 細菌

これらの固形成分は、あまり多く検出されない方が好ましいです。基準を超えるほど多く検出されると、腎臓の疾病が疑われます。

検便

検便では、便に血液が混ざっていないかどうかを検査します。2日分の便を検査するので、人間ドックを受診する日までに2回の採便が必要です。検便の結果、潜血が確認された場合、下記のような原因が考えられます。

  • がん
  • ポリープ

消化管が傷ついて出血すれば、便に血液が混じります。また、大腸にポリープやがんがある場合でも出血し、便潜血が陽性になるので要注意です。

問診・診察

人間ドックでは、問診や診察が行われます。問診では「どのような自覚症状があるか」「体調に関して不安に感じることがあるか」などが問われます。

また、職業や家族歴も問診票への記入を求められますが、疾病リスクを探るのに重要なので、正直に記載しましょう。診察では、医師が直接患者に触れたり聴診器で異常音の有無を確認したりして疾病の発見を目指します。

診察だけで特定の疾病を診断するのは難しいですが、心臓弁膜症や下肢静脈瘤などを見つける手がかりになります。

【2日ドック】1日ドックと異なるポイント

2日ドックの検査項目は、1日ドックとほぼ変わりません。血糖値の検査の内容だけが異なるので、どのような違いがあるか解説していきます。

また、オプションが加わることで2日ドックになるケースもあります。2日ドックの主な特徴を紹介しますので、受診の際の参考にしてみてください。

血糖値検査の内容が異なる

日帰り2日ドックの検査項目で1日ドックと異なる点は、血糖値検査のみです。日帰りの場合は空腹時血糖の測定が実施されますが、2日ドックでは75gブドウ糖負荷試験が行われます。75gブドウ糖負荷試験とは、ブドウ糖が75g入ったサイダーを飲み、血糖値の変動を見ていく検査です。

空腹時とサイダーを飲んでから60分後、120分後に血糖値を測ります。75gブドウ糖負荷試験は安静な状態で行う必要があるので、開始してから2時間は動けません。

他の検査を並行して行えないため、1日ドックに組み込めない事情があります。

オプションが加わることが多い

オプションが加わることで、2日ドックとなる場合があります。必須の検査項目だけではカバーできない部位の異常を発見するには、オプションを追加するのが有効です。

人間ドックでよく実施されるオプションは、下記のとおりです。

  • 胸部CT検査
  • 喀(かく)たん細胞診検査
  • 骨密度測定
  • 上部消化管内視鏡
  • 大腸内視鏡
  • 心臓ドック
  • 脳ドック

オプションは特定の箇所を詳しく検査できるので、気になる部位のある方は活用してみてください。人によって必要な検査が異なるので、ご自身に合った選択ができるようになりましょう。

人間ドックのオプションについて、詳しくは『人間ドックで受けた方が良いオプション検査は?年代別の上手な受け方を紹介』をご覧ください。

日本人間ドック学会が公表しているオプション検査

日本人間ドック学会が公表しているオプション検査は6種類あります。その中で、男女共通の検査は以下の3種類です。

  • 上部消化管内視鏡
  • PSA
  • HCV抗体

上部消化管内視鏡とは、通称「胃カメラ」と呼ばれる検査です。​​小型カメラのついた管を口あるいは鼻から挿入し、食道から十二指腸に異常がないか確認します。上部消化管内視鏡は、対象部位の炎症をチェックできるだけでなく、胃がんの発見にも役立ちます。

PSAは前立腺に異常がないか確認できる検査で、前立腺の「がん」「肥大症」「炎症」を発見できます。特に前立腺がんは転移しやすいので、定期的にPSAを確認することで早期発見でき、大事になる前に治療できます。

HCV抗体の検査では、C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかのチェックが可能です。C型肝炎ウイルスが体内に留まり続けると、慢性肝炎になってしまいます。進行すると肝硬変や肝臓がんになることがあるので要注意です。

女性特有の疾病である乳がんや子宮がんに関わる検査には、下記の3種類が該当します。

  • 乳房診察+マンモグラフィ
  • 乳房診察+乳腺超音波
  • 婦人科診察+子宮頸部細胞診

乳がんの検査は、乳房診察にマンモグラフィまたは乳腺超音波を組み合わせます。マンモグラフィと乳腺超音波のどちらが適しているかについては、おおよそ年齢によって選択可能です。

40歳未満の方は乳腺が発達していることからマンモグラフィでは乳がんを見つけにくいため、乳腺超音波を受けるようにしましょう。

おわりに

人間ドックではさまざまな検査を受けられ、体に異常がないかどうかを確認できます。項目ごとに発見できる疾病が異なるので、何を調べる検査なのか知っておくことが重要です。

検査について医療機関の方が説明してくれますが、自身の健康に関わることなので、ある程度は知識を身に付けておきましょう。検査項目に関する知識が深まれば、人間ドックの結果によって、自身の身体がどのような状態なのか分かるようになります。

また、オプションを選択する際にも役立つ知識なので、人間ドックを受診する前に検査項目ごとの役割を確認してみてください。

最近では、脳の異常を早期発見できる検査も進んでいます。脳の病気(脳血管疾患)は、日本人の死因として多い危険な病気といわれています。罹患し死に至らないケースでも、その後、介護が必要になるケースが多いです。自覚症状がない場合でも、定期的な脳のチェックで早期発見し対策することの重要性が増しています

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