「敏感肌」がどのような状態か具体的に説明できる方は少ないのではないでしょうか。「私は敏感肌なのか知りたい」「対策したい」などとお考えの方は、敏感肌について正しく理解することが大切です。
また、毎日の誤ったスキンケアが原因で症状が出ていたり、アレルギー反応を起こしていたりする場合、早めに対処しないと悪化してしまう可能性があります。
そこでこのコラムでは、敏感肌の基本的な知識から、原因と対処法まで分かりやすく解説します。ぜひ、ご自身の肌の状態と照らし合わせながらご覧ください。
敏感肌とは?肌の状態や主な症状について
皮膚科学的には敏感肌の定義はありません。そのため、捉え方はさまざまあり、乾燥している肌や、物理的な刺激に弱い場合も敏感肌といえます。具体的な皮膚の状態や症状を説明しますので、参考にしてみてください。
肌の状態
敏感肌は皮膚のバリア機能が弱まっている状態を指します。バリア機能とは、表皮の一番外側を覆っている薄さ0.02mmの角質層が肌内部の水分を閉じ込め、外部からの刺激をブロックする働きです。肌を刺激から守り、保湿をするのは「三大保湿因子」といわれる、以下の3つの成分です。
- 皮脂
- 天然保湿因子(NMF)
- 細胞間脂質(セラミド)
皮脂は、肌表面に膜を作ることで水分の蒸散を防ぎ、潤いを閉じ込めます。
化粧水などから補給された水分や保湿成分を、肌に取り込むことができるのは天然保湿因子(NMF)が作用しているからです。水溶性のため水分と結合しやすく、質層内に蓄えておくことで、肌の潤いを保つことができます。
細胞間脂質は水分を抱え込み、さらに蒸発させない役割を併せ持っていることから、バリア機能の核といわれます。細胞間脂質の約50%がセラミドでできており、作り出せる量に個人差が生じる成分です。
これら3つの保湿成分が減少すると、バリア機能が弱まり、肌が敏感な状態になります。
主な症状
敏感肌と感じる時に見られる症状には、以下のものがあります。
- 乾燥する
- ヒリヒリする
- 赤みが出る
- ニキビや湿疹ができる
- 痒みがある
- 特定の季節で肌荒れする
- 物理的な刺激に弱い
特に乾燥を訴える方が多いようです。化粧品を塗った時や洗顔をしたあとに、肌がヒリヒリしたり、つっぱるような感覚があったりします。また、物理的な刺激に弱いのも敏感肌の大きな特徴です。
乾燥肌との違い
敏感肌でも「乾燥する」という症状が見られるため「乾燥肌」との違いについて疑問に思うのではないでしょうか。
皮膚科学では、それぞれの肌質に対する定義はありませんが、乾燥肌は名前のとおり「乾燥している肌」を指します。敏感肌は、外部からの刺激に反応してトラブルが起きることやアレルギー物質がかかわるのに対し、乾燥肌はそれらの要因がなくても乾燥してしまう状態です。
しかし、乾燥肌と敏感肌は併発する傾向があります。乾燥した状態が続くと赤みや痒みが起きやすく、アレルギー反応を繰り返すと症状がより悪化していきます。どちらもバリア機能が低下している状態なので、修復するためのケアが重要です。
敏感肌になる原因
敏感肌になる原因は多くありますが、主に外から刺激を受ける「外的要因」と、身体に関係する「内的要因」に分けられます。また、特定の季節になると敏感肌の症状が出る場合についても説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
外的要因
外部からの刺激で敏感肌になる原因は以下が挙げられます。
- 空気の乾燥
- 紫外線
- 不適切なスキンケア
- ほこりやハウスダスト
- 金属・衣服
空気の乾燥は肌の潤いが奪われる直接的な原因となるため、特に気をつけるべき項目です。冬の外気だけではなく、夏場はエアコンでの乾燥や紫外線も敏感肌の原因となります。季節に関わらず乾燥する場面は多くあるので、保湿を重視したスキンケアなどで日々の対策が必要です。
スキンケアをする際にゴシゴシと強い力を加えるのも、角質層の表皮を傷めてしまう原因になります。
また、化粧水などを使用した時ピリピリする感覚がある場合は、製品が肌に合っていないかもしれません。ご自身に合わないスキンケア製品を使い続けると肌荒れの悪化や、アレルギー反応を起こす可能性があるため、早めに使用を中止した方が良いでしょう。
衣類との摩擦も、肌に刺激を与えることがあります。普段着ている服を肌当たりの良い、綿100%の素材などに変えてみるのがおすすめです。
内的要因
体調の変化で敏感肌を引き起こすことがあります。内的要因として挙げられるのは以下の4つです。
- 生活習慣の乱れ
- ストレス
- 女性ホルモンの影響
- 年齢による肌の変化
生活習慣として、睡眠不足や不規則な食生活などが敏感肌を引き起こします。
生理前や生理中は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が少なくなり、肌のバリア機能が低下します。妊娠中や更年期も女性ホルモンの影響を受ける時期です。また、年齢を重ねると、真皮のコラーゲンやエラスチンが減少することでお肌のハリや弾力が落ち、肌が敏感になることもあります。
内的要因を改善するために、食事などの生活習慣を見直すなどしてみましょう。
季節別の要因
特定の季節になると肌が敏感になる場合は「季節性敏感肌」かもしれません。季節性敏感肌は、主に「アレルゲン」が原因となります。アレルゲンが多く発生する春は特に注意が必要です。
- 花粉
- ほこり
- PM2.5
- 黄砂
春はスギやヒノキなどの花粉シーズンとなる上、ほこりやPM2.5などの大気汚染物質が増加する季節です。肌に付着したアレルゲン物質を身体の免疫機能が異物と判断し、アレルギー反応として炎症が起こります。赤みが出たり、いつものスキンケア製品が合わなかったりと、トラブルが起き始め敏感肌となります。
春以外にも、夏はイネ科の植物の花粉や高温多湿によるカビの発生、秋はブタクサや動物の毛の生え変わり時期なので、1年中あらゆるアレルギーに警戒が必要です。
外出時にはマスクをし、帰宅後はアレルゲンが肌に付着しているのを落とすため、しっかりと洗顔や入浴をしましょう。使用しているスキンケア製品を、敏感肌用などの肌に優しいタイプに変えてみるのもおすすめです。
原因はひとつではなく、いくつかの要因が関係していることも多いです。良かれと思ってしていることが逆に悪く作用している場合もあります。日常生活や、スキンケアに注意して、悪化要因を減らしていきましょう。
敏感肌の4つの対処法
敏感肌対策では、ご自身が行っているスキンケアや生活習慣について見直すことがポイントです。症状が悪化している時はこの章で紹介する、皮膚科を受診する目安も参考にしてみてください。
正しいスキンケアを行う
スキンケアを行う前に手を清潔にします。クレンジングや洗顔は使用量を守るのが基本です。量が少ないと汚れが落ちなかったり、肌の負担になったりします。こすらず、よく泡立てて優しく洗いましょう。
泡を落とす際は、35〜38℃のぬるま湯で、流し残しのないようにします。洗顔が終わってからの肌の水分量は5分程度で減少し始めるため、特に乾燥しやすい状態です。洗顔後はそのまま放置せず、5分以内を目安に保湿をするよう心掛けましょう。
敏感肌の方が化粧品を選ぶ際は、以下の表示がある製品がおすすめです。
- 敏感肌向けの低刺激性
- 保湿成分入り
- パッチテストやアレルギーテスト済み
保湿成分は主に「アミノ酸」「セラミド3」「スクワラン」の3つです。三大保湿因子であるセラミドはバリア機能を作る重要な成分なので、スキンケアでも積極的に補給しましょう。
反対に「オーガニック」や「香料」は注意しておきたい表記です。オーガニックや自然派などは肌に優しいイメージですが、基準や定義がなく、各メーカーや商品ごとに成分が異なります。香料もさまざまな成分が混合されており、原材料の具体的な表記がない場合があるので、どちらも適切な判断が重要です。
生活習慣を整える
敏感肌の症状がある時は、生活習慣の見直しが欠かせません。改善すべきポイントは以下の5つです。
- 食事
- 睡眠
- 身の回りの清潔さ
- 飲酒・喫煙
- ストレス
睡眠中に分泌される成長ホルモンは、ターンオーバー(肌代謝)を促進させます。ターンオーバーが滞ると、古い角質が肌に残り肌荒れの原因となるので、質の良い睡眠が大切です。枕カバーなどの寝具は、肌に直接触れるので清潔に保つようにしましょう。
喫煙は、コラーゲンや肌のターンオーバーを促すビタミンCを破壊します。過度の飲酒では、体内でアルコールを分解するために多くの水分を消費します。肌の潤いを保つ水分まで奪われ乾燥につながるので、お酒やタバコはほどほどにしておくのがおすすめです。
そして運動をするなど、ストレスを溜めこまない規則正しい生活を心掛けましょう。
食生活を見直す
お肌に必要な栄養素は主に3つあります。
ひとつはアミノ酸からできている「タンパク質」です。タンパク質には肌のターンオーバーが改善される効果を期待でき、取り入れることでバリア機能が高まります。また「鉄分」は肌の新陳代謝を上げ、老廃物を排出する作用があるので、ハリやしわの予防にも効果的です。「ビタミン」は、ターンオーバーを促進させることや抗酸化作用があるため、肌の老化に関わる活性酸素を除去できます。
タンパク質 | 肉、魚、乳製品、卵、大豆など |
鉄分 | 海藻、カツオ、レバー、ひじき、ほうれん草、小松菜など |
ビタミン | 緑黄色野菜、アボカド、かぼちゃ、赤ピーマンなど |
脂肪や糖質の多い食べ物を控え、3つの栄養素をバランス良く摂取することを心掛けてみてください。
皮膚科を受診する
赤みや湿疹、腫れなどの症状がある場合は、皮膚科を受診しましょう。アレルギーが疑われる場合は皮膚科でパッチテストを行うことで、化粧品に含まれる成分からアレルギー反応を起こすものが発見されることがあります。「化粧品が合わなかった」で済まさず、症状が悪化する前に受診することをおすすめします。
アレルギーが疑われる場合以外でも、「症状が改善しない」「気になる症状がある」という方は専門医に相談してみましょう。
おわりに
敏感肌は、皮膚のバリア機能の低下により起こります。まずは、ご自身の敏感肌はどのような原因で起きているかを見極めましょう。バリア機能を高めるために、スキンケアや生活習慣を見直すことが大切です。症状が気になる時は、迷わず皮膚科の受診を検討してみてください。
たくさんの方が敏感肌に悩まれています。敏感肌は健康的と病気の中間の状態といえるので、セルフケアがとても大切です。ストレスの多い世の中ですが、毎日のケアで健やかなお肌の維持を目指しましょう。