健康診断は会社員の方であれば労働安全衛生法によって義務づけられ、自営業の方は任意で受けられます。また、より細かな検査を求めて人間ドックを受診する方もいます。しかし、診断結果を受け取ってもその見方に苦労した方も多いのではないでしょうか。
今回は健康診断結果の見方や各項目の基準値などについて詳しく解説します。基準値外だった場合、どんな病気の可能性があるかについても言及します。ぜひ、健康診断を受ける際の参考にしてください。
健康診断の結果表の見方
健康診断や人間ドッグなど身体の詳しい検査を受けた際は、結果表が返送されます。ご自身の数値に対して正常を示す基準となる「基準範囲」やそれを基に評価付けされる「判定区分」、画像検査の結果を示す「画像診断」や全ての検査結果から総評される「総合判定」があります。
全ての施設で採用されているわけではありませんが、これらの項目を正しく理解しておくと健康への理解を深めましょう。
基準範囲とは?
基準範囲はその名の通り各項目の正常値を示すものです。
基準範囲は将来重大な病気の起因となる可能性のある項目で、「予防医学的閾値」の観点から、リスクが高まる場合はそこを基準範囲としています。
そうではない場合は、健康な方のグループの95%が含まれる値の範囲を採用します。
健康の方のグループの5%が基準範囲で該当しないことになりますが、原理上は少し基準から外れていたとしても病気である可能性が高いわけではありません。
判定区分とは?
判定区分は検査結果と基準範囲を照らし合わせて、A~Eの5段階で評価付けしたものです。
日本人間ドック学会の判定区分は以下です。
A異常なし | B軽度異常 | C経過観察 | D要医療 | E治療中 |
今回の検査では異常はありません。 | 今回の検査で軽度の異常がありましたが、特に問題はありません。 | 病気に進行する可能性があります。次回の検診で経過をみましょう。再検査の指示があれば受診しましょう。 | 精密検査や治療が必要です。 | 現在療養中。 |
A~Bは安心ゾーンです。Cは要注意ゾーンであり、何らかの病気が進行している可能性が高いため生活習慣の改善を行います。また、項目によっては再検査を勧められる場合があります。
Dはすぐにでも医療機関を受診する必要がある判定で、Eは現在治療中であることを表しています。
画像診断とは?
画像診断は画像検査での読影によって発見した所見を表しており、胸部X線や超音波などの画像診断の検査結果が反映されています。
問題なければ「異常なし」と表記されますが、場合によってはさまざまな状態が表記されます。
悪性の可能性や、過去に病気を患った際の治療済の跡なども記載されるため注意して見るようにしましょう。
総合判定とは?
総合判定は各項目の検査結果を踏まえた上で総合的に判断される検査判定です。
各項目で特出した異常がある場合はそれを踏まえた記載があります。
また、事後指導の記載も書かれているため、再検査や受診の指示がある場合は必ず行いましょう。
身体測定に関する健康診断の結果の見方と基準値
身体測定では主に肥満のリスクを判断します。肥満は糖尿病や脳卒中など生活習慣病を引き起こす要因となるため、侮れない項目です。
BMIや腹囲について詳しく解説します。
BMIとは?定義は?
BMIは肥満度を判定する数値です。身長に対して体重が適正であるかで数値が上下します。計算式は以下です。
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
BMIが25.0を超える数値であると、生活習慣病になるリスクが正常な方に比べて2倍以上になります。
【BMIの基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
18.5~24.9 | - | 18.4以下、25.0以上 | - |
腹囲とは?定義は?
腹囲はメタボリックシンドロームの判定をするために行います。
メタボリックシンドロームは内臓脂肪症候群と呼ばれており、心臓病や脳卒中などを引き起こしやすいです。
男女では比較的脂肪の多い女性のほうが正常値が高く設定されています。
【腹囲の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 | |
男性 | 84.9以下 | - | 85.0以上 | - |
女性 | 89.9以下 | - | 90.0以上 | - |
血圧に関する健康診断の結果の見方と基準値
血圧は心臓から流れる血液が血管を押す力のことです。血圧には上の血液と呼ばれる収縮期と下の血液と呼ばれる拡張期があります。
どちらも基準値以内である必要があり、高すぎても低すぎても身体に及ぼす影響は大きいです。
血圧値とは?定義は?
血圧値は心臓から流れる血液が血管を押す力を数値化したものです。血圧が高い状態であると動脈硬化や心臓肥大が進行、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。
血圧が低い状態でも臓器や細胞が正常に動かない恐れがあり、精神的な症状が生じる可能性があります。
血圧値の基準値
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 | |
収縮期 | 129以下 | 130~139 | 140~159 | 160以上 |
拡張期 | 84以下 | 85~89 | 90~99 | 100以上 |
目に関する健康診断の結果の見方と基準値
目は緑内障や網膜剥離などの病気や、その他の病気による眼の障害がないかを検査します。どれだけ遠くのものを視認できるか確認する視力検査、眼球の形を維持できているかを確認する眼圧検査があります。
視力とは?定義は?
視力は遠くのものがどれだけ見えるかを測るものです。
目の中にある水晶体はカメラのレンズのような役割を持ちます。
近くのものがくっきり見えるのは水晶体が屈折することによって調整されているからです。
しかし、水晶体に異常があると、遠くがぼやける近視や両方ぼやける遠視などが起こります。
現在の視力検査では近視の状態が把握できます。
【視力の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
1.0以上 | - | 0.7~0.9 | 0.6以下 |
眼圧とは?定義は?
眼圧は眼球の中の圧力のことです。眼球の中は房水と呼ばれる液体によって圧力がキープされています。
しかし、そのバランスが崩れることで眼圧が上がってしまうことがあります。
眼圧が上がった状態は視神経に影響を及ぼし、緑内障に繋がる可能性があるため注意しましょう。
【眼圧の基準値】
眼圧の基準値は9~20mmHgです。ただし、緑内障と診断される方の約7割が基準値内にあるため、判定区分を設定していません。
耳に関する健康診断の結果の見方と基準値
耳は空気の振動を音として認識して脳に伝達する組織です。また、内部にある三半規管は身体の平衡感覚を司っています。
耳の聞こえ方を調べることで、音の伝わり方や内部にある障害を調べています。
聴力とは?定義は?
聴力は小さい音が聞こえるかが重要です。
最初は弱い音圧から検査して少しずつ音圧を上げていきます。
聴力に異常がある場合はメニエール病や聴神経腫瘍などの疑いがあります。
加齢による加齢性難聴や耳垢の詰まりで一時的に聞こえない場合もあるため、異常が見られても病気と決めつけることはできません。
【聴力の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 | |
1,000Hz | 30以下 | - | 35 | 40以上 |
4,000Hz | 30以下 | - | 35 | 40以上 |
呼吸機能に関する健康診断の結果の見方と基準値
呼吸は人間が生命を維持するのに不可欠な運動です。
%肺活量や1秒率を測ることで肺に空気を溜めて吐く力を検査します。
これらの数値が悪いと呼吸器系の病気の可能性があります。
肺活量とは?定義は?
肺活量は年齢や性別、身長から算出した想定肺活量に対しての実測肺活量の比率を調べます。
この値が低い場合は、間質性肺炎や肺線維症など肺組織を固くしてしまう病気の可能性があります。
①肺活量の基準値
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
80.0以上 | - | - | 79.9以下 |
②秒率とは?定義は?
1秒率は息を大きく吸い込んで最速で吐き出した際の1秒間当たりの吐き出す力を調べます。
この値が低い場合は慢性気管支炎や気管支喘息などの病気が疑われます。
③秒率の基準値
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
70.0以上 | - | - | 69.9以下 |
血液検査(肝臓系)に関する健康診断の結果の見方と基準値
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれており、無症状で病気が進行していきやすい臓器です。肝臓を調べる検査は血液検査を用います。
肝臓細胞内にある酵素が血液に逸脱するため、血液を調べれば、ある程度の肝臓の状態がわかります。
総たんぱくとは?定義は?
総たんぱくは血清中にある100種類以上のたんぱく質のことです。総たんぱくの値は高くても低くても異常となります。
この値が高いと慢性肝炎や肝硬変の可能性があり、低いとネフローゼ症候群やがんが疑われます。
【総たんぱくの基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
6.5~7.9 | 8.0~8.3 | 6.2~6.4 | 6.1以下、8.4以上 |
アルブミンとは?定義は?
アルブミンは血液中の2/3を占めるたんぱく質のことです。
アルブミンの値が低いと肝硬変や栄養失調が疑われます。
【アルブミンの基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
3.9以上 | - | 3.7~3.8 | 3.6以下 |
AST(GOT)と ALT(GPT)とは?定義は?
ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼと呼ばれ、肝臓などの臓器に異常が起きた際に増加します。
ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼと呼ばれ、肝臓に何かしらの異常がある際に反応しやすいです。
ASTとALTが共に高い値である場合は、急性肝炎や慢性肝炎、肝臓がんなどの可能性が高くなります。
ASTのみ高い値である場合は、心筋梗塞や筋肉疾患が疑われます。
【AST(GOT)と ALT(GPT)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 | |
AST(GOT) | 30以下 | 31~35 | 36~50 | 51以上 |
ALT(GPT) | 30以下 | 31~40 | 41~50 | 51以上 |
γ-GTPとは?定義は?
γ-GTPはたんぱく質分解酵素のひとつです。肝臓に異常が見られる際に数値が上がります。
この値が高い場合は、アルコール性肝炎や慢性肝炎、脂肪肝などが疑われます。
【γ-GTPの基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
50以下 | 51~80 | 81~100 | 101以上 |
ALPとは?定義は?
ALPはアルカリホスファターゼと呼ばれ、主に肝臓や胆道にある酵素のことです。
また、骨や小腸を含めた臓器に異常がある場合に数値が上がります。
この値が高い場合は肝障害や甲状腺機能亢進症、低い場合は遺伝性低ALP血症が疑われます。
【ALPの基準値】
ALPの基準値は38~113U/Lです。判定区分はありません。
血液検査(腎臓系)に関する健康診断の結果の見方と基準値
腎臓系の検査は主に尿検査で行いますが、クレアチニンは血中の残量でその働きを測ることが可能です。
腎臓の働きが悪くなると体内の老廃物の排出ができなくなり、むくみなどが起こってしまいます。
最悪の場合、腎臓病を引き起こす恐れもあります。
クレアチニン(Cr)とは?定義は?
クレアチニンは筋肉のエネルギーとなるアミノ酸の一種です。
本来腎臓で濾過され尿として排出されますが、腎機能が低下することで血液中に多く残ってしまいます。
なお、クレアチニンは男女で基準値が異なります。
【クレアチニン(Cr)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 | |
男性 | 1.00以下 | 1.01~1.09 | 1.10~1.29 | 1.30以上 |
女性 | 0.70以下 | 0.71~0.79 | 0.80~0.99 | 1.00以上 |
血液検査(尿酸)に関する健康診断の結果の見方と基準値
血液中にある尿酸値を測ることで痛風リスクが診断可能です。痛風は尿酸が血液中に溶け込むことで起きます。
つまり、排出できないほどの尿酸を溜め込む、とても危険な状態であることがわかります。
尿酸(UA)とは?定義は?
尿酸はタンパク質の一種であるプリン体の残骸です。本来は体内に一定量残した状態で尿と共に排出されるものです。
この値が高い場合は痛風や高尿酸血症、低い場合は腎性低尿酸血症が疑われます。
尿酸(UA)の基準値
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
2.1~7.0 | 7.1~7.9 | 2.0以下、8.0~8.9 | 9.0以上 |
血液検査(脂質系)に関する健康診断の結果の見方と基準値
血液検査によって血中の脂質を詳しく調べられます。脂質は生命維持に必要不可欠ですが、量が過剰であると動脈硬化の原因になる恐れがあります。
特に、LDLコレステロールの数値には注意してください。
総コレステロール(TC)とは?定義は?
総コレステロールは血液中に含まれる脂質のことです。細胞膜やホルモンを形成する上で必要ですが、多すぎると様々な弊害を生みます。
この値が高いと動脈硬化や脂質代謝異常、低いと栄養吸収障害や肝硬変が疑われます。
【総コレステロール(TC)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
140~199 | 200~219 | 220~259 | 139以下、260以上 |
この基準値は2018年4月1日改訂版のものです。2021年現在は総コレステロールよりもLDLコレステロールを優先するため、診断結果に表記されていません。
HDLコレステロールとは?定義は?
HDLコレステロールの役割は血液中の悪玉コレステロールを回収することです。
別名善玉コレステロールとも呼ばれています。
この値が低いと肥満や脂質異常症、動脈硬化が疑われます。
【HDLコレステロールの基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
40以上 | - | 35~39 | 34以下 |
LDLコレステロールとは?定義は?
LDLコレステロールの役割はコレステロールを肝臓から運び出し、全細胞に届けることです。
別名悪玉コレステロールとも呼ばれています。
この値が高いと脂質異常症やネフローゼ症候群、低いと甲状腺機能亢進症や肝硬変が疑われます。
【LDLコレステロールの基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
60~119 | 120~139 | 140~179 | 59以下、180以上 |
中性脂肪(TG)(トリグリセリド)とは?定義は?
中性脂肪は血中物質のひとつです。
食事で摂取した糖質が肝臓で中性脂肪に変換されます。
エネルギー消費が少なかったり摂取量が多すぎたりすると体内脂肪として蓄積されるため注意しましょう。
この値が高いと肥満や脂質異常症、低いと甲状腺機能亢進症や低栄養が疑われます。
【中性脂肪(TG)(トリグリセリド)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
30~149 | 150~299 | 300~499 | 29以下、500以上 |
血液検査(糖代謝系)に関する健康診断の結果の見方と基準値
血糖値やHbA1cの値を見ることで糖代謝系の異常が把握可能です。ブドウ糖は体内でエネルギーを迅速に運び出してくれますが、多量のブドウ糖を溜め込むと身体に大きな負担を強います。
この数値に異常があれば糖尿病や心臓病などの病気になる可能性が高まります。
血糖値(FPG)とは?定義は?
空腹時の血中ブドウ糖の濃度が血糖値です。
測定は3.5時間以上絶食をしたのち採血を行います。
この値が高いと糖尿病や膵腫瘍、低いと甲状腺機能低下症が疑われます。
【血糖値(FPG)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
99以下かつHbA1cが5.5以下 | ・100~109かつHbA1cが5.9以下 ・99以下かつHbA1cが5.6~5.9 | ・110~125 ・126以上かつHbA1cが6.4以下 ・125以下かつHbA1cが6.5以上 | 126以上 |
HbA1cとは?定義は?
HbA1cはヘモグロビン・エイワンシーと呼ばれ、血中のブドウ糖とヘモグロビンが結合したものです。
この値を調べることで過去数ヵ月の血糖値の平均が判明します。
この値が高いと糖尿病や腎不全、低いと肝硬変や溶血性貧血が疑われます。
ただし、糖尿病が疑われる場合は、HbA1cが6.5%以上で血糖値が126以上を示している状態です。
HbA1cの基準値
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
5.5以下かつFPGが99以下 | ・5.9以下かつFPGが100~109 ・5.6~5.9かつFPGが99以下 | ・6.0~6.4 ・6.4以下かつFPGが126以上 ・6.5以上かつFPGが125以下 | 6.5以上 |
血液検査(血球系)に関する健康診断の結果の見方と基準値
血液は全身を巡る体液です。そのため、各臓器や組織に異常がみられる場合は血液成分に顕著に表れます。
体内に酸素を供給する赤血球や血色素、病原菌を攻撃する白血球など健康な身体を維持するために必要となる項目が並んでいます。
赤血球(RBC)とは?定義は?
赤血球は血液成分の大半を占めています。赤血球の役割は肺で酸素を受け取り全身に運び出し、発生した二酸化炭素を回収することです。
骨髄で常に赤血球は作られ新しい赤血球に入れ替わっています。この値が高いと真性多血症、低いと貧血や胃潰瘍などが疑われます。
【赤血球(RBC)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 | |
男性 | 400~539 | 540~599 | 360~399 | 359以下、600以上 |
女性 | 360~489 | 490~549 | 330~359 | 329以下、550以上 |
この基準値は2018年4月1日改訂版のものです。
2021年現在は診断結果から赤血球の項目が削除されています。
血色素(Hb)(ヘモグロビン)とは?定義は?
血色素はヘモグロビンと呼ばれ、ヘム鉄とグロビンが結合したものです。全身に酸素を供給する役割を持ち、酸素の運搬量と血色素の量は比例します。
この値が高いと真性多血症、低いと鉄欠乏性貧血や腎不全が疑われます。
【血色素(Hb)(ヘモグロビン)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 | |
男性 | 13.1~16.3 | 16.4~18.0 | 12.1~13.0 | 12.0以下、18.1以上 |
女性 | 12.1~14.5 | 14.6~16.0 | 11.1~12.0 | 11.0以下、16.1以上 |
ヘマトクリット(Ht)とは?定義は?
血中に占める赤血球の割合がヘマトクリットです。
ストレスや喫煙、脱水などによってヘマトクリットが増加する場合があります。
この値が高いと真性多血症、低いと鉄欠乏性貧血や腎不全が疑われます。
【ヘマトクリット(Ht)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 | |
男性 | 38.5~48.9 | 49.0~50.9 | 35.4~38.4 | 35.3以下、51.0以上 |
女性 | 35.5~43.9 | 44.0~47.9 | 32.4~35.4 | 32.3以下、48.0以上 |
この基準値は2018年4月1日改訂版のものです。
2021年現在は診断結果から項目が削除されています。
MCV・MCH・MCHCとは?定義は?
赤血球・血色素・ヘマトクリットの値から赤血球の平均の大きさがMCV、赤血球1個あたりの平均血色素量がMCH、赤血球の平均血色素濃度がMCHCです。
MCVとMCHCが低い値の場合は、小球性低色素性貧血、MCVが高い値の場合は、大球性正色素性貧血、MCHが高い値の場合は、正球性正色素性貧血の可能性が高いです。
【MCV・MCH・MCHCの基準値】
MCV | MCH | MCHC | |
男性 | 82.7~101.6 | 28~34.6 | 31.6~36.6 |
女性 | 79~100 | 26.3~34.3 | 30.7~36.6 |
判定区分はありません。
白血球(WBC)とは?定義は?
白血球の役割は体内に入る病原菌を攻撃して守ることです。白血球は骨髄にある造血細胞で作られています。
血中の白血球の数を見ることで感染症や腫瘍の有無が判断可能です。この値が高いと慢性骨髄性白血病やがん、低いと急性白血病やウイルス性感染症が疑われます。
【白血球(WBC)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
3.1~8.4 | 8.5~8.9 | 9.0~9.9 | 3.0以下、10.0以上 |
血小板数(PLT)とは?定義は?
血小板の役割は出血を止めることです。
血管が破れた際に破れた箇所を血液凝固させて止血します。
この値が高いと血小板血症や慢性骨髄性白血病、低いと血小板減少性紫斑病や肝硬変が疑われます。
【血小板数(PLT)の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
14.5~32.9 | 12.3~14.4、33.0~39.9 | 10.0~12.2 | 9.9以下、40.0以上 |
尿検査に関する健康診断の結果の見方と基準値
尿検査は尿中の糖や蛋白などを調べることで、主に腎臓や肝臓などの病気の兆候を発見できます。また潜血の有無も重要で、潜血が見られれば結石や腎炎などの発見にも繋がります。
学校の身体測定などでも取り入れられている比較的ポピュラーな検査です。
糖とは?定義は?
糖は通常体内分解されるため、尿として排出されることはありません。
しかし、血糖値が高い場合は糖が尿として排出されることがあります。
なお、血糖値が正常値で尿糖が出た場合は、腎性糖尿であると考えられています。
陽性判定の場合、糖尿病や腎性糖尿、クッシング症候群が疑われます。
ただし、糖尿病は糖だけでなく血糖値やHbA1cの値なども考慮して診断されます。
【糖の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
(-) | (±)以上 | - | - |
蛋白とは?定義は?
蛋白は通常わずかな量が尿として排出されます。腎臓に障害がある場合は蛋白の量が増加するため注意が必要です。
発熱や運動後にも一時的に増えることがあります。陽性判定の場合は腎臓障害や尿路疾患が疑われます。
【蛋白の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
(-) | (±) | (+) | (2+)以上 |
潜血とは?定義は?
潜血は尿に血液が混ざることです。
通常は潜血はないため、潜血が見られた場合は尿道に異常があることがわかります。
陽性判定の場合は尿路結石や膀胱炎が疑われます。
ただし、月経中の女性は身体に異常がなくても陽性判定される場合があります。
【潜血の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
(-) | (±) | (+) | (2+)以上 |
便に関する健康診断の結果の見方と基準値
便は大腸の状態を把握できる重要なものです。検査方法は便をスティックで採取する方法が一般的です。
便潜血は重大な病気の兆候でもあるため、陽性判定があれば必ず精密検査を受けてください。
便とは?定義は?
便の検査では便の中に潜血がないかを確認しています。仮に大腸や消化器が出血している場合は便に潜血が見られるケースがあるようです。
陽性判定の場合は大腸がんや大腸炎が疑われます。ただし飲み込んだ鼻血や痔による出血でも陽性判定が出ることがあります。
【便の基準値】
A異常なし | B軽度異常 | C要経過観察 | D要医療 |
(-) | - | - | いずれか(+) |
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健康診断の結果を健康に活かそう
厚生労働省は日本の医療技術の高さから、現代を人生100年時代と呼んでいます。しかし、それを実行するには、一人ひとりが健康への関心を持たなければいけません。
健康診断や人間ドックは日頃行っている生活の答え合わせです。健康診断の結果は各項目の基準範囲やそれに伴う判定区分で構成されています。
また、全ての項目の結果を基に総合判定を行い、一人ひとりの健康を評価しています。結果が良ければ正しい生活習慣を継続し、悪かった場合は再検査を受けたり生活習慣を改めましょう。
結果が良い方もそれに満足することなく気になる生活習慣を見直してみるなど、より健康への意識を高めてください。今回紹介した各検査項目の概要や基準値を参考にして、健康に気遣った生活を送りましょう。
最近では、脳の異常を早期発見できる検査も進んでいます。脳の病気(脳血管疾患)は、日本人の死因として多い危険な病気といわれています。罹患し死に至らないケースでも、その後、介護が必要になるケースが多いです。自覚症状がない場合でも、定期的な脳のチェックで早期発見し対策することの重要性が増しています。