健康な身体づくりに欠かせない栄養素であるタンパク質。このコラムでは、タンパク質の概要から体内での働きについて解説します。また、不足や過剰摂取によってもたらされる影響についてもご紹介。さらに良質なタンパク質や効率的な摂取方法、おすすめのタンパク質メニューについてまとめました。「なぜタンパク質が身体に必要なのか?」と疑問に思う方はもちろん、より効率良くタンパク質を摂取したい方はぜひ参考にしてください。
タンパク質とは?
人の身体の約15~20%を構成するタンパク質。水分を除くと、身体の重量の約半分がタンパク質となります。筋肉や臓器、皮膚や爪の主成分はタンパク質で構成されており、人の身体に欠かせない栄養素のひとつです。また、炭水化物や脂質と同じく、エネルギー生産に役立つ3大栄養素としても知られています。
タンパク質の主な働きは?
タンパク質の主な働きは次のとおりです。
- 代謝の機能を調整する
- 体内で物質を運搬する
- 自己免疫を高める
- 身体(髪の毛や爪、臓器・筋肉)などを構成する
- ホルモンや抗体などの身体の機能を調整する
- 脳の発達や機能を助ける
タンパク質は身体に入ると、アミノ酸に分解されて吸収されます。身体に吸収されたタンパク質はアミノ酸となり、必要なタンパク質へ再合成され、さまざまな機能を果たすのです。
タンパク質とはどんな食べ物に含まれている?
人だけでなく、動物の身体の構成に大きく関わるタンパク質。タンパク質は、牛や鶏、豚、さらに魚介類にも多く含まれています。また、卵や牛乳もタンパク質を多く含む食べ物です。
さらに、植物にもタンパク質が含まれています。なかでも多く含まれているのは、大豆などの豆類です。アボカドやアスパラガス、ブロッコリーなどの野菜にもタンパク質を多く含むものがあります。
タンパク質の1日の摂取量は?
人の身体に欠かせない栄養素であるタンパク質は、1日の食事摂取基準の推奨量と目標量が定められています。厚生労働省が定めるそれぞれの年代のタンパク質の1日の推奨摂取量と目標量は次のとおりです。2020年度版では、高齢者の低栄養予防やフレイル予防のために、50歳以上が目標とするタンパク質摂取の下限値が他の年齢区分より引き上げられました。
参照元:「日本人の食事摂取基準」策定検討会 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
なお、推奨量は1日の必要量に達すると推定される摂取量を意味し、目標量は生活習慣病予防のため目標とするべき摂取量を意味します。
タンパク質にも種類がある!一覧でご紹介
肉や魚、豆類や野菜など、私たちの身近な食材にたくさん含まれているタンパク質。タンパク質には大きく分けて「植物性タンパク質」と「動物性タンパク質」があります。
その名のとおり、植物性タンパク質は植物由来のもの、動物性タンパク質は動物に由来するものです。
植物性と動物性では、含まれる必須アミノ酸に違いがあります。そのため、しっかりと摂取していたつもりでも、必須アミノ酸が足りていなかったなどということも。タンパク質をきちんと摂取したい場合は注意が必要です。それぞれのタンパク質の特徴についてまとめました。
豆や小麦などに含まれる「植物性タンパク質」
植物性タンパク質は、大豆や小麦、野菜などに含まれます。日本人の食生活に欠かせない、米もタンパク質を含む食品です。
身近な食材ばかりですが、植物性タンパク質は必須アミノ酸が不足しているものが多い点が特徴です。身体に必要なタンパク質(必須アミノ酸)をバランスよく摂取するためには、複数の食品を組み合わせて摂取する必要があります。
肉や魚などに含まれる「動物性タンパク質」
一方、必須アミノ酸をバランスよく含んでいるのが動物性タンパク質です。肉や魚介類、卵や乳製品に含まれます。身体に必要なタンパク質である必須アミノ酸をバランスよく含んでおり、身体への吸収率が高いのが特徴です。
植物性タンパク質に比べて、単体でも必須アミノ酸を効率よく摂取できるといえます。
タンパク質不足で起こりやすい症状とは?
人の身体に必要不可欠なタンパク質。タンパク質が不足すると、人体にさまざまな影響を及ぼします。タンパク質が不足すると起こりやすいとされる人体への影響と、症状についてまとめました。
筋肉が衰えやすくなる
タンパク質の多くは筋肉に蓄積されます。体内のタンパク質が少なくなると、使われるのが筋肉内に蓄積したタンパク質です。
身体のエネルギーとして筋肉内にあるタンパク質を使用することで、筋力低下や衰えにつながります。また、タンパク質の不足による筋力低下は基礎代謝量を落とすといった影響もあるのです。
そのため、タンパク質が不足すると「階段の上り下りがしんどい」や「痩せにくくなった」といった症状が現れる可能性があります。
運動や認知機能が低下しやすくなる
タンパク質はアミノ酸で構成されています。アミノ酸は、神経伝達物質を作る重要な成分です。タンパク質が不足することで、神経伝達物質が不足し、運動や認知機能の低下につながる恐れがあります。
タンパク質の不足が続くと、「集中力がない」「ぼーっとしてしまう」といった症状につながることもあるでしょう。
疲れやすくなる
タンパク質の構成成分であるアミノ酸から成る神経伝達物質は、意欲を湧かせたり精神を安定させたりする役割もあります。タンパク質が不足すると、結果的に神経伝達物質が不足し、意欲低下や精神の乱れを引き起こすことも。
また、タンパク質の不足による影響は意欲の低下だけではありません。身体を構成するタンパク質が不足して機能が低下すると体調を崩しやすくなり「やる気が起きない」「疲れやすい」といった症状にもつながる可能性があるのです。
タンパク質の摂りすぎは腎機能に影響する?
身体に欠かせないタンパク質。しかし、タンパク質の過剰摂取は人体に悪影響を及ぼす恐れがあります。なかでも腎機能や肝機能への影響は、さまざまな年代で留意すべきポイントです。
タンパク質は体内で合成・分解を行います。その際にできるのが窒素です。窒素は肝臓や腎臓の働きによって体外に排出されます。タンパク質を過剰摂取することでできた窒素の排出量の増加が、肝臓や腎臓の負担が増えることにつながります。
肝臓や腎臓の負担は内臓疲労とも呼ばれ「身体がだるい」「疲れがとれない」といった症状として現れるのです。
また、タンパク質を摂取するために肉や魚を多く食べることで、カロリーオーバーを招いてしまうこともあります。さらに、動物性タンパク質の摂りすぎは尿路結石の原因にもなるため注意が必要です。
良質なタンパク質が摂れる食材とは?
体内では生成されない9種類の必須アミノ酸は食事からの摂取が必要です。必須アミノ酸をバランスよく含んでいるとされる、良質なタンパク質が摂れる食材についてまとめました。
クロマグロやカツオなどの「魚類」
魚類はタンパク質を多く含む食材の一つです。肉類と比べて消化しやすいため、おすすめの食材といえるでしょう。なかでも良質なタンパク質を摂取できるのが、赤身魚のマグロとカツオです。
マグロは、高タンパクであることはもちろん、赤身部分は脂肪分が少ないのもポイント。カロリーオーバーの心配なくタンパク質を摂取できるでしょう。また、身体の免疫や血管壁の収縮などに携わるDHAを多く含んでいるのも特徴です。
マグロより多くのタンパク質を含む魚がカツオです。カツオは、マグロと同じく高タンパクな食材。また、DHAも多く含み、栄養の宝庫ともいわれています。
気軽に摂取できるタンパク源としては缶詰がおすすめです。ツナ缶やサバ缶は料理の手間がなく、さらに安価で便利な食材といえます。ちょっとした副菜などで簡単に取り入れることができる、おすすめの食材です。
豚ロースや鶏むね肉などの「肉類」
肉にも多くのタンパク質が含まれます。中でもタンパク質を多く含んでいるのが、豚ロース肉や鶏むね肉です。
豚ロース肉および鶏むね肉は、他の部位に比べて低脂質・高たんぱくの食品。鶏むね肉は、脂質を多く含む鶏皮を取り除いて使用すると良いでしょう。
豆腐や豆乳など「豆類」
日本人の食卓に上りやすく、タンパク質の補給源としての役割を担っているのが豆類です。豆類は、大豆やインゲン、さらに豆腐・納豆などの大豆加工食品にも含まれます。
なかでも必須アミノ酸がバランスよく含まれるのが大豆です。水煮缶やレトルトパウチの蒸し大豆にも多く含まれますが、より多く含まれるのは乾燥大豆とされています。
また、納豆は納豆菌によりタンパク質分解酵素が生成されるため、消化が良く、タンパク質摂取におすすめの食材です。
プロセスチーズなどの「乳製品」
牛乳は9種類の必須アミノ酸をバランスよく含むため、良質なタンパク質を摂取できる食品とされています。その牛乳のたんぱく質を凝固したチーズは、タンパク質摂取におすすめの食材です。
チーズにはさまざまな種類がありますが、学校給食などでも目にするブロック状のプロセスチーズは、タンパク質を豊富に含んでいることで知られています。パルメザンチーズもタンパク質を多く含みますが、粉状のものをふりかけて食べるため、一度に多くの量を摂取するのは難しいでしょう。
タンパク質の効果的な摂り方とは?
どの栄養素も、他の栄養素とバランスよく摂取することが大切です。ここからは、タンパク質をより効率良く摂取する方法についてご紹介します。
タンパク質の吸収を高める食べ物と一緒に摂る
タンパク質には、一緒に摂取すると吸収を高めるとされる栄養素があります。それは、ビタミンB6とビタミンCです。
ビタミンB6はジャガイモやバナナ、玄米、ビタミンCは果物や小松菜、ピーマンなどに多く含まれます。
タンパク質を効率良く摂取したいときには、デザートにバナナや果物をプラスするだけでも効果的です。少し補うだけでもタンパク質の吸収率が高まります。
動物性タンパク質は年齢を重ねるほど重要になる
年齢を重ねると低下するといわれるのは基礎代謝量です。基礎代謝は筋肉量が増えれば増えるほど高まるとされています。そのため、基礎代謝量を上げるためには、筋肉を増やす良質なタンパク質を摂ることが大切なのです。
筋肉量のアップには、必須アミノ酸をバランス良く含む動物性タンパク質が役立ちます。なかでも、低脂質高タンパクの魚類は、年を重ねても摂取しやすいためおすすめです。
1日3食にバランス良く振り分ける
タンパク質は1度に吸収できる量が限られています。そのため、タンパク質を上手に摂取するには、朝昼晩と振り分けることも大切なのです。
朝食に卵と焼き魚、昼食に鶏むね肉、夕飯にマグロ…など、毎食摂取することを心がけましょう。バランス良く摂取することで、タンパク質を絶やすことなく補給できます。
タンパク質がたくさん摂れるメニュー例
ここからは、タンパク質が摂れるおすすめのメニューを紹介します。気軽に作れると人気のメニューをピックアップしました。
電子レンジでも作れる「ローストビーフ」
牛肉の中でも多くのタンパク質を含むもも肉を使用したローストビーフは、脂肪分が少なく低カロリーで高タンパクなメニューです。なかでも、電子レンジでも作ることができるローストビーフは作り置きにも便利です。
メインディッシュとしてはもちろん、サラダにしたり、サンドイッチにしたりとさまざまなメニューに応用できるのも魅力。ローストビーフを作り置きしておけば、3食まんべんなくタンパク質を補給できるでしょう。
缶詰を利用した「サバ缶パスタ」
サバ缶にもたくさんのタンパク質が含まれます。缶詰なら加熱する必要もなく簡単に調理ができるでしょう。茹でたパスタにサバ缶を和えたサバ缶パスタは、簡単にタンパク質を摂取できるメニュー。オリーブオイルをかけたり、お醤油をかけたり、レモンを絞ったりなど、好みの味にアレンジするのもおすすめです。
タンパク質ダイエットにも「豚バラ豆腐チゲ」
タンパク質を多く含む豆腐とビタミンBを含む豚バラ肉を組み合わせた豚バラ豆腐チゲもおすすめのメニューです。汁物は満足感も得られるため、タンパク質ダイエットにも適しています。
カロリーカットをしたい方は、豚バラ肉をロースに変えても良いでしょう。きのこ類を入れたり、卵を落としたりすると、他の栄養素も一緒に摂取できます。
おわりに
タンパク質は人の身体に欠かせない重要な栄養素です。タンパク質をしっかりと摂取することで、筋力アップや脳の機能の向上、自己免疫力のアップにもつながります。また、他の栄養素と組み合わせることで、より効率よくタンパク質が摂取できるでしょう。ご自身の身体のために積極的なタンパク質摂取を心がけてはいかがでしょうか。