テレビなどでよく耳にする「抗酸化」という言葉をご存知でしょうか。漢字の意味から何となく良い意味で、美容などで欠かせない作用であることをイメージしている方もいるでしょう。
そこで、抗酸化はもちろんのこと、抗酸化と合わせて知っておきたい活性酸素についてもご紹介し、身体が酸化するとどうなるのか防ぐ方法はあるのかなども解説。抗酸化力に長けた栄養素やおすすめの食事メニューについても見ていきましょう。
抗酸化とはいったい何?
抗酸化とは具体的にどのようなことをいうのでしょうか?まずは抗酸化とはどういうことなのか、またセットでよく用いられる活性酸素や酸化の意味・原因についてもご紹介します。
まずは活性酸素について知ろう
人間の身体は酸素を取り入れることでエネルギーを生成していますが、反対に活性酸素もつくっています。活性酸素によって酸化が起こることで人間の細胞を傷つけ、シミやしわ、がん、糖尿病などの生活習慣病を引き起こすこともあります。
酸化とは、切ったりんごをそのまま放置しておくと、断面が茶色に変色する現象と同じことで、この現象が身体の内外で起こっていると考えるとわかりやすいでしょう。他には、鉄がさびていく現象も酸化のひとつです。つまり、酸化が起こると皮膚や身体内の劣化が進んでいくということです。
抗酸化の意味は?
次に、抗酸化の意味について見ていきましょう。抗酸化という漢字は、「酸化にあらがう」と読めるように、体内にある活性酸素から身体を守ろうとする作用のことを指します。簡単に言えば、身体が酸化するのを抑えることです。
通常であれば、活性酸素がつくられたとしても体内の酵素によって分解されるため心配する必要はありません。しかし、活性酸素がたくさんつくられたり、分解する力が弱まっていたりすると、活性酸素が身体にたまり身体へダメージを与えるようになります。
ただ、体内にある酵素だけが活性酸素を無毒化できるわけではなく、抗酸化物質を取り入れることで無毒化することも可能です。人間の体内には尿酸やメラトニンなどの抗酸化物質がありますが、抗酸化作用のある食べ物を摂取することでも抗酸化作用を高めることができるでしょう。
抗酸化力が低下する原因は?
もともと体内に備わっている抗酸化作用は、加齢との関係が深く、20代をピークに低下します。活性酸素も加齢とともに増え、ストレスや飲酒、喫煙、紫外線なども活性酸素を増加させる原因となっています。
つまり、年齢を重ねると抗酸化力が低下するにもかかわらず、活性酸素は増加していくばかりという状況に陥る可能性が高いのです。
身体が酸化すると何が起こる?
活性酸素が身体に悪影響を与えることがわかりましたが、具体的にはどのようなリスクが考えられるのでしょうか?考えられるリスクは主に以下の3つです。
お肌の老化が進んでしまう
身体の酸化は体内だけの問題ではありません。皮膚、すなわちお肌でも起こります。お肌が酸化すると、シミやしわ、乾燥、くすみなどのトラブルを引き起こすでしょう。本来は外的刺激からお肌を守るためにたんぱく質やDNAがありますが、活性酸素がこれらの働きを低下させるためにお肌の老化が進んでしまうのです。
お肌の酸化には、紫外線や喫煙、大気汚染物質、ストレスなどが原因の活性酸素の影響が大きいでしょう。活性酸素が増加するとお肌の酸化が進むだけでなく、免疫機能を低下させることもあります。それによって、アトピー性皮膚炎を発症する可能性も否定できません。
お肌のアンチエイジングを気にしている方は、抗酸化力の高いものを食事に取り入れたり、抗酸化作用のある成分が含まれている基礎化粧品を使ったりするのがおすすめです。
生活習慣病の原因にもなる
活性酸素の生成が高まり身体に蓄積されると、生活習慣病を引き起こすこともあります。お肌の老化と同じように、免疫機能を低下させることで病気を悪化させる可能性があるでしょう。
また、活性酸素がDNAを傷つけることで細胞を働かなくさせ、がん細胞を作るきっかけとなることも。生活習慣病を引き起こす原因にもなりますが、さらに連鎖して他の病気を引き起こす可能性も高くなるため、注意が必要です。
肩こりや疲れやすくなることも
酸化によってお肌の老化が進むことをご紹介しましたが、もちろん身体の老化も進みます。寝ても疲れが取れない、身体がだるい、肩こり、ちょっとした動作ですぐに疲れてしまうといった症状も活性酸素による酸化が原因となっているかもしれません。
身体の酸化を防ぐ方法は?
加齢とともに抗酸化作用が低下し、活性酸素が増加することを考えると、意識的に活性酸素を減らす行動をとる必要があるでしょう。ここでは、身体が酸化することを防ぐ方法についてご紹介します。
アルコールやたばこを控える
活性酸素を生み出す主な要因となっているアルコールやたばこを控えましょう。飲酒した際、肝臓でアルコールを分解しますが、肝臓は若さを生み出す工場ともいわれ、老化との関係が深い臓器です。その肝臓が酸化してしまうと、身体の酸化が加速していきます。
肝臓は臓器の中でも酸化によるダメージが大きいため、身体の酸化を防ぎたいのであれば、できるだけ肝臓へのダメージを減らす必要があるでしょう。
たばこに関しては、たばこの煙に活性酸素を発生させる有害物質を多く含んでいるため、血液中に入ると動脈硬化を引き起こすこともあります。自分がたばこを吸わない方でも、たばこの煙を吸うことで同じことが起きるため注意しましょう。
ストレスを溜め込まないようにする
ストレスは心にも影響しますが、活性酸素を増加させる原因になることも。強いストレスを受けると、一時的に血流が悪くなることが分かっています。一時的に悪くなった血流が元通りになる際に活性酸素が作られ、これを繰り返すことで活性酸素が増えていく仕組みです。
ストレスを溜め込まないようにして、活性酸素をできるだけつくらないようにしましょう。
できるだけ紫外線を避ける・ケアする
紫外線は活性酸素をつくって、主に皮膚に悪影響を与えます。シミやしわ、乾燥などの原因となるため、できるだけ紫外線を避け、紫外線を浴びた場合はアフターケアを徹底しましょう。
外出する際は紫外線に当たらないように、日焼け止めを塗ったり、日傘や帽子で紫外線をカットしたりするのがおすすめです。紫外線対策をしたものの日焼けした場合や、対策を忘れていた場合は、すぐにお肌のケアをしましょう。
日焼けが気になる際は、まずはしっかりお肌を冷やすことが大切です。濡らしたタオルや保冷剤などでクールダウンしましょう。その後にたっぷり保湿することがポイントです。お肌が乾燥したままでは、外的刺激を受けやすくなるためです。
その他の方法としては、美白成分や抗酸化物質が配合されている基礎化粧品でケアするのもおすすめです。
適度な運動が大切
運動は身体に良いイメージですが、激しい運動によって活性酸素が増える可能性があります。なぜなら呼吸量が増えるためです。運動をする際は激しい運動ではなく、軽めの運動を定期的に行いましょう。
軽めの運動を定期的に行うことで、活性酸素を無毒化してくれる酵素の働きを高めることができます。
食べ物や食生活にも配慮する
食生活が乱れると免疫機能の低下が懸念され、活性酸素を取り除く機能も低下する恐れがあります。そのため、栄養バランスのとれた食事を3食決まった時間に摂ることがおすすめです。
また、食事の際には抗酸化物質を含む食べ物を取り入れるのも良いでしょう。抗酸化力に長けた栄養素や具体的にどのような食べ物があるのかについては、次で詳しくご紹介します。
抗酸化力が高い栄養素と具体的な食品
年齢とともに抗酸化力は低下しますが、抗酸化力を持つ栄養素を摂取することで補うことが可能です。ここでは抗酸化力が高い栄養素や具体的な食品について詳しくご紹介します。抗酸化力に長けた食品が分かれば、意識的に摂取することで自身の抗酸化力を高めることもできるでしょう。
ビタミンC
抗酸化力が非常に高いといわれており、野菜や果物、芋類に多く含まれています。ビタミンCは水溶性のため「きれいに洗おう」と洗いすぎると、ビタミンCの量を減らしてしまう可能性が高いです。
ビタミンCの身体への吸収率は高いのですが、一度にたくさん摂取しても尿と一緒に出てきてしまいます。そのため、適量を毎日摂取することがおすすめです。
具体的な食品は、パプリカやブロッコリー、キウイ、いちご、レモン、じゃがいも、さつまいもなどです。
ビタミンE
若返りビタミンとも呼ばれるビタミンEは、細胞膜の酸化を防ぐ役割があり、老化や病気になる可能性を抑制してくれる可能性があります。先ほど紹介したビタミンCや同じく抗酸化力が高いビタミンAとともに摂ることで、相乗効果が期待できるでしょう。
アーモンドやヘーゼルナッツなどのナッツ類、ひまわり油やべに花油などの植物油、モロヘイヤ、かぼちゃ、しそ、ほうれん草、大豆、豆乳、ツナ缶、めかじき、卵黄、はまちなどに多く含まれています。
コエンザイムQ10
体内に存在する物質で、心臓や肝臓などの臓器で多く検出されます。以前はビタミンQと呼ばれることもありました。人間が活動するために必要なエネルギー作りや酸化を抑制してくれる役割があります。
厚生労働省の海外情報では、コエンザイムQ10が研究者の間で注目されていることが記載されています。がん治療の有効性は認められないものの、がんの化学療法時に引き起こされる心疾患のリスクを減らす可能性があるようです。
コエンザイムQ10を多く含む食品には、いわしやさばなどの青魚、牛肉、豚肉、くるみ、ほうれん草などがあります。
ミネラル類
ミネラルは身体を構成する主要4元素以外のことを指し、身体の機能を保ったり調整したりするために必要な栄養素のひとつです。人間に欠かせないミネラルは16種類あり、必須ミネラルと呼ばれています。
必須ミネラルのうちひとつでも不足すると、不足しているミネラルの種類によって、頭痛や脱力感などさまざまな症状を引き起こします。逆に過剰摂取してしまうと、高血圧などの病気を発症したり、吐き気や腹痛を起こしたりすることもあります。
ミネラルの種類によって多く含まれる食品は異なりますが、一般的には、小魚類や牛乳、ほうれん草、ひじき、牡蠣、牛肉、昆布、レバー、卵黄などが挙げられます。
カロテノイド
動植物が持つ赤色や黄色の色素のことで、強力な抗酸化力を持っているといわれています。人間の身体にも存在しており、肝臓や肺、皮膚、眼組織などにありますが、カロテノイドをつくることはできません。
カロテノイドにはいくつか種類があり、種類によって性質や作用が異なる点が特徴的です。そのため、さまざまなカロテノイドを摂る必要があります。
カロテノイドを含む食品は、にんじん、ほうれん草、トマト、スイカ、パプリカ、卵黄、いくら、えび、みかんの皮、とうもろこし、赤とうがらし、昆布、わかめなどです。
ポリフェノール類
植物にある苦味や色素に含まれ、さまざまなものに存在しています。強い抗酸化作用があり、水に溶けやすい点が特徴です。ポリフェノール類を摂取しても長期間作用が継続しないため、毎日摂取することをおすすめです。
ポリフェノール類が多く含まれる食品は、赤ワインやブルーベリー、カシス、緑茶、紅茶、コーヒー、ココア、チョコレート、そば、玉ねぎ、ごぼう、豆類、しょうがなどがあります。
美容と健康にうれしいおすすめ抗酸化メニュー
最後に、抗酸化をサポートするおすすめのレシピを簡単にご紹介します。どのような食品を使って作るのかがわかると、他の料理でもアレンジできるため知っておくと便利ですよ。ぜひ参考にして作ってみてください。
やさしい甘みが嬉しいアレンジシチュー
いつものクリームシチューにアーモンドミルクなどでちょっとアレンジを加えるだけで、抗酸化力を高めたシチューに早変わり。使う材料や作り方は以下のとおりです。
<材料>
市販のシチューのルー、アーモンドミルク、鶏肉、玉ねぎ、にんじん、ブロッコリー、しめじ、水、サラダ油
<作り方>
ブロッコリーはあらかじめ下茹でしておきましょう。鍋にサラダ油を入れて熱したら鶏肉や玉ねぎ、にんじん、しめじを加えて炒めます。火が通ったら、さらに水とアーモンドミルクを加えて煮込みましょう。具材がやわらかくなったら、火を止め市販のルーを加えてください。最後にブロッコリーを加えて少し煮込んだら完成です。
野菜たっぷりキーマカレー
いろいろな野菜を加えることで、抗酸化力が高いキーマカレーを作ることができます。キーマカレーは野菜をみじん切りにして加えるため、たくさんの野菜が摂れるメリットも。材料や作り方は以下のとおりです。
<材料>
市販のカレールー、玉ねぎ、にんじん、ひき肉、パプリカ、かぼちゃ、なす、水、にんにく、しょうが、塩こしょう、オリーブオイル、ご飯、ゆで卵
<作り方>
にんにくやしょうが、玉ねぎ、にんじんをみじん切りにして、ひき肉と炒めます。水を加えて煮込んだら火を止めてルーを入れましょう。パプリカ、かぼちゃ、なすは好きな大きさに切り、塩こしょうとオリーブオイルをかけて焼きます。お皿にご飯とキーマカレー、焼き野菜をのせて最後にゆで卵をトッピングしたら完成です。
おわりに
抗酸化作用とは、人間の身体を守るためにとても重要な働きをしてくれることが分かったかと思います。老化を防ぎ、美容や健康を保ちたい方は、積極的に抗酸化作用のある食品を摂って、食生活や生活習慣を改善していきましょう。どの食品も身近なものばかりなので、意識するだけで簡単に摂ることができます。ただし、食品が偏らないように、バランス良く取り入れましょう。