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【医師監修】鼻血が止まらない時の対処方法|鼻血の止め方と原因になる病気を解説

【医師監修】鼻血が止まらない時の対処方法|鼻血の止め方と原因になる病気を解説
久高 将太 医師

監修者
久高 将太 医師

日本内科学会・日本内分泌学会・日本糖尿病学会所属の総合内科・内分泌代謝・糖尿病内科医師です。日々最新かつエビデンスに基づいた医学情報を取り入れ、理解するように努力しております。また生活習慣病の予防因子について研究しており、職域での活動を視野に入れ産業医資格も取得しております。大学病院・市中病院での勤務経験に基づき、現場の医師目線で皆様に分かりやすく情報をお伝えできればと思います。

民間療法では「鼻血を止めるときは、鼻の付け根をおさえて上を向く」といわれています。他にもさまざまな方法が広く流布されているものの、実際に誤った対処をしている症例が数多く見られます。そもそも鼻血がなぜ出るのか。場合によっては深刻な病気の可能性もあります。

今回は、鼻血を止めるときにやってはいけないことや正しい止血方法、病院受診時に報告すべき症状を詳しく解説します。予防方法についても解説しているので、ぜひ覚えておきましょう。

鼻血を止めるためにやってはいけないこと

1.鼻血を止めるためにやってはいけないこと

鼻血の止血方法は民間療法では「上を向く」と良いとされています。確かに物理的に滴ってくる鼻血を抑えるためには有効な方法のように思えます。

しかし、実際は鼻血が出た時に上を向いてはいけません。出血が喉や気管に入り込むと、誤嚥・窒息の原因になったりします。また、ティッシュを鼻に詰める方法も有効ではありません。ついついやりがちですが、これらの方法はしないようにしてください。

鼻血を止める方法

2.鼻血を止める方法

鼻血を止める正しい方法は「鼻翼圧迫法(Trotter法)」と呼ばれる方法です。鼻血の原因の9割は鼻中隔前方のキーゼルバッハ部位と呼ばれる部分からのもので、その部分を圧迫すれば出血はおさまります。

やり方は小鼻(鼻の横のふくらみ部分)を約20分ほど、座って前かがみの状態で圧迫します。もし、これで止まらなかった場合は2回同じ動作を行い、それでもだめなら病院を受診しましょう。

キーゼルバッハ部位以外の場所から出血している可能性があります。またキーゼルバッハ部位から出血している場合でも、上記処置で止血しない場合には耳鼻科による外科的処置が必要となりますので受診が必要です。

病院に行くべき症状

鼻翼圧迫法を2回試しても鼻血が止まらない場合、通常の鼻血とは異なる原因で出血している可能性があります。また、次のような状態の場合も病院を受診してください。

  • 出血量が多い
  • 出血時間が長い
  • 頻度が多過ぎる

鼻血であっても1~2時間が経過すると貧血を起こす可能性があります。顔色が青白くなったり、ふらつく場合は、止血できていても病院を受診してください。

鼻血の原因

3.鼻血の原因

鼻血の原因の9割はキーゼルバッハ部位からの出血です。鼻いじりや乾燥が原因で出血することが多いため、この部位からの出血であれば大きな心配はなく、鼻翼圧迫法を行えば止血できます。

稀に鼻腔内の奥にある動脈から出血することもあります。この場合の出血は止血が困難で、なかなか止まることがありません。ご自身で完璧に止血するのは難しいため、病院で受診するようにしましょう。

また、それ以外にも次のような原因が考えられます。

  • 外的な要因
  • 病的な要因

病的な要因はさらに細かく分類できるため、これらも詳しく解説します。

外的な要因

外的な要因としては、鼻いじりや冬場の乾燥があります。物理的な刺激で鼻粘膜が傷付くことによって出血し、それが鼻血となって表れるのです。鼻は乾燥や気温の変化に弱いため、冬場や乾燥した場所にいるときは注意しましょう。

また、何かに思い切り鼻をぶつけた際も、外傷の大きさは違えど鼻の中の血管が傷付くことで起こる出血であるため、ほぼ同じです。鼻を強くかんだり、くしゃみを連発したりしても同様のことが起きます。

病的な要因

病的な要因で鼻血が止まらない場合もあります。鼻血が止まらないことから病院を受診した結果、背景に出血傾向をきたす疾患が隠れていることが少なくありません。代表的な病気には次の4つがあります。

  • 高血圧や動脈硬化
  • 肝臓・腎臓・血管の病気
  • 薬の作用
  • オスラー病

高血圧や動脈硬化

高血圧や動脈硬化が進行し、血管がもろくなることによって鼻血が出ることがあります。予兆はなく、ある時突然大量の出血が発生します。量がかなり多いため、喉や気管に入り込んで誤嚥や窒息につながる可能性もあります。速やかに救急車を呼ぶなどして病院を受診しましょう。

肝臓・腎臓・血管の病気

血液の凝固成分を生成する肝臓の働きが肝硬変などで衰えることによって、鼻血が止まらなくなることがあります。腎臓病を発症している場合や、血友病や白血病といった血液が何らかの疾患が併存している場合も、鼻血が出やすい、もしくは止まりにくくなることがあります。出血が白血病などの重篤な疾患の初期症状であることも多いため、繰り返す、あるいは大量出血になった場合には一度受診を検討ください。

薬の作用

心筋梗塞・脳梗塞などで使われる「ワーファリン、アスピリン、クロピドグレル」といった抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)が原因の場合もあります。血栓をできにくくするために処方されている薬で、患者の判断で薬を止めるのは非常に危険です。

このケースは近年増加傾向にあるため、該当する薬を服用している場合は注意を払っておきましょう。また不適切に過剰に抗血栓薬が使用されている場合もあるため、使用している抗血栓薬が適正かどうかを主治医へ相談しましょう。

オスラー病

オスラー病とは、身体のあちこちで出血を起こす遺伝性の病気です。血管がもろくなってしまうことで発生する病気で、鼻血で初めて気が付く人が多いといわれています。

オスラー病は手足はもちろん、肺や脳などの生命維持に必要な部位でも出血を起こします。通常と異なる量の鼻血が出たり、出血が止まりにくかったりする場合は、病院を受診してください。

鼻血の予防方法

4.鼻血の予防方法

鼻血の予防方法は、ズバリ鼻を触らないことです。完全に触らないことが無理だったとしても、極力触らなければ外傷による鼻血が出る可能性は低くなります。病気によるものは仕方がないとしても、鼻血の頻度を下げることができるでしょう。

もし花粉症や鼻炎などの疾患があったとしても、耳鼻咽喉科などで薬を処方してもらったり治療を受けたりすることで制御できる場合もあります。一度かかりつけ医師に相談してみると良いでしょう。

おわりに

鼻血と侮っていると、大きな病気が隠れている可能性があります。正しい止血法を試みて、止まらなければ速やかに病院を受診しましょう。大きな病気が見つかることもあるため、1回当たりが少量であっても繰り返すようであれば自己判断で放置せずに、病院を受診し精査を検討することをおすすめします。

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