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【医師監修】歯ぎしりをしてしまう原因とは?症状の種類や予防・改善・治療法について紹介!

【医師監修】歯ぎしりをしてしまう原因とは?症状の種類や予防・改善・治療法について紹介!
大西 正嗣 歯科医師

監修者
大西 正嗣 歯科医師

医療法人正翔会 理事長。東海地区で4店舗展開(岡崎エルエル歯科・矯正歯科、葵デンタルデザインオフィス、名古屋みなみ歯科・矯正歯科、加納歯科医院)。一般歯科、小児歯科、歯科口腔外科、矯正歯科などの全ての分野での治療に対応。

歯ぎしりはその不快な音だけでなく、身体のさまざまな場所へ支障が出てしまいます。歯ぎしりをすることにより歯にかなりの圧がかかり、さらには削れてしまうこともあります。それが、知覚過敏を引き起こしたり、肩こりや頭痛になったりすることにもつながります。

ただ、歯ぎしりは就寝中にしていることが多く、なかなかご自身で気が付けません。しかし、朝起きた時に顎が疲れている、歯がすり減っているなど気になることがあれば、寝ている間に歯ぎしりをしている可能性が高いといえるでしょう。

起きている間も、歯と歯を強く噛み締めている、カチカチ小刻みに噛んでいるなどのことがないか注意しておきましょう。歯ぎしりをそのままにしておくと、お口の中のトラブルだけでなく、その他のところが痛くなったり、病気が隠れていたりすることもあります。歯医者の診察を受け、ご自身に合った改善方法を試してみましょう。このコラムでは、歯ぎしりの原因や影響、治療法について解説します。

歯ぎしりをしてしまう原因は?

1.歯ぎしりをしてしまう原因は?

歯ぎしりの原因はいくつかあります。しかし、なぜ歯ぎしりしてしまうのかなど、詳しいメカニズムはあまりわかっていません。

ストレス

歯ぎしりの原因で明確に判明しているケースは少ないとされていますが、ほとんどの場合ストレスが原因で起こるとされています。ストレスを感じると、歯を噛み締めたり、音が出るくらい歯と歯を擦り合わせたりすることで発散しようとするためです。

しかし、歯への負担を考えると歯ぎしりは改善した方が良いでしょう。歯ぎしりは歯や歯茎にかなりの力が加わって負担になっているからです。しかしストレスを溜めないことはなかなか難しいことです。ストレスが溜まったら、運動やご自身なりのストレス発散方法を見つけて解消していくようにしましょう。

噛み合わせや骨格

上下の歯のバランスや噛み合わせが悪いと普段からお口周りに知らず知らずにストレスが溜まり歯ぎしりが起こることがあります。顎の骨格が原因となって歯ぎしりをしている場合は、歯科で相談してみましょう。また、歯の治療でつめものをしたことが原因で歯ぎしりすることもあります。つめものが取れたり、かけたりした場合は治療が必要となるでしょう。

飲酒・喫煙

歯ぎしりには、飲酒や喫煙が原因と考えられる場合もあります。直接的な原因ではありませんが、アルコールやニコチンの摂取は、そもそも睡眠の質が低下することにつながるので問題です。そのため眠りが浅くなり、歯ぎしりを悪化させてしまいます。過度な飲酒やタバコの吸いすぎには注意が必要です。

薬の副作用

歯ぎしりの原因には、服用中の薬の副作用によって起こる可能性が考えられます。例えばうつ病の薬を服用している方に見られることがあります。

病気によるもの

歯ぎしりの原因として考えられるものの中に、病気によるものがあります。まずひとつは「逆流性食道炎」です。逆流性食道炎は、胃酸が逆流するといった症状が出ます。そのため口の中が酸性になり、それを中和しようとして唾液を出そうと唾液腺を刺激するのです。唾液が増えることで無意識に歯ぎしりをするということが最近の研究でわかってきました。

さらにもうひとつは「睡眠時無呼吸症候群」です。こちらも歯ぎしりを起こしやすいとされています。睡眠時無呼吸症候群は就寝中に呼吸が止まったり、酸素量が少なくなったりするといった症状が出る病気です。そのため酸素を補おうと身体が目覚めてしまい、質の良い睡眠がとれなくなってしまいます。睡眠の質が低下することで、歯ぎしりをする状況になっていると考えられています。

歯の生え変わりによるもの

子どもの歯ぎしりは歯の生え変わりの際に見られる一時的なものがほとんどです。歯が生え変わる時のムズムズした不快感を和らげようとしている場合が多く、永久歯が生えてしまえば歯ぎしりが落ち着いてきたり、歯ぎしりや食いしばりの形も大人と同様に変化していくようです。子どもの歯ぎしりは少し様子を見てみましょう。

歯ぎしりは寝ている時に起きる?

歯ぎしりは寝ている時に起きる?

歯ぎしりは寝ている間にだけ起きていると思われがちですが、実は起きている間にもしていることがあります。何かに集中していたり、重いものを持ったりしたときに、歯を食いしばることも歯ぎしりのひとつです。歯と歯を噛み締めてしまうことはよくあるのではないでしょうか。

日中に起こしてしまう歯ぎしりは、寝ている時と違ってご自身でも気をつけるように注意できます。意識的に止めるように心掛けていきましょう。

3種類の歯ぎしり

3種類の歯ぎしり

歯ぎしりには3つの種類があります。音が出るだけでなく、見た目ではわからないような歯を噛み締めてしまう行為も歯ぎしりの一種です。

グラインディング

グラインディングはギリギリと音を立てて、上下の歯を擦り合わせる種類の歯ぎしりです。歯ぎしりする方の中では一番多いのがこのタイプです。さらに歯に一番ダメージを与えている歯ぎしりでもあります。主に眠っている時にするグラインディングですが、起きている時にすることもあります。歯に負担が掛かりすぎるため、歯がすり減って平らになるのもグラインディングの特徴です。

クレンチング

クレンチングは歯に強い力を込めて噛み締める歯ぎしりです。重い荷物を持ち上げるときなどに歯を食いしばることがありますが、就寝中にも同じように力が入っている状態のことです。音が出るわけではないので、ご自身も周りもなかなか気が付きません。エラ部分に痛みがあったり、歯が削れていたり細かい歯のヒビがあったりする場合は、日中に無意識にクレンチングしている可能性があります。

タッピング

寒い時に歯をカチカチとしてしまうのと同じような、細かな動きをする歯ぎしりをタッピングといいます。大きな音が鳴るグラインディングと違って、小さな音を出す歯ぎしりなので、音の正体が何なのかわからない場合も多いようです。そのため歯ぎしりをしていると気付かれにくいという特徴があります。また、このタイプの歯ぎしりをする方の割合はあまり多くありません。

歯ぎしりの影響

歯ぎしりの影響

歯ぎしりをすることで、歯はもちろんのこと他の部分にも影響を及ぼします。口の中だけに留まらず、肩や頭に痛みを伴うことがあるので注意が必要です。

歯ぎしりで一番影響を受けるのが「歯」です。強い力が加わることで、削れたりかけたりします。また、損傷した歯が痛んだりしみたりする場合もあります。もしも歯につめものをしている場合は、割れたり取れてしまったりすることにもなるので、注意が必要です。

歯茎

歯ぎしりは、歯を支えている歯茎にも大きな負担をかけます。歯茎にある歯周組織に影響が出た場合、歯周病や歯槽膿漏などの症状が出やすくなってしまうようです。歯の土台となる歯茎に影響がでると、歯茎自体が痩せてしまい、色々な症状を引き起こします。また、歯並びにも影響することが挙げられます。

歯ぎしりをすることで負担がかかっているのは、歯や歯茎だけではありません。顎にも同じようにかなりの負担が掛かっています。特にクレンチングと呼ばれるグッと強い力で噛み締める歯ぎしりは、顎への負担が大きいものです。顎に負担が掛かると顎関節症などを引き起こし、大きく口を開けることが難しくなります。また、歯ぎしりの力が弱いものであっても、長期間続くようであれば顎への負担も大きくなるでしょう。

その他の部位

歯ぎしりによって影響が出るのは口腔内だけではありません。歯ぎしりによって大きな力が加わることで、頭痛や肩こりなどの症状が出ることがあります。さらに睡眠時無呼吸症候群や心筋梗塞などを引き起こす要因にもなるので、歯ぎしりはそのままにせず、早めに歯医者さんに相談することを心掛けましょう。

歯ぎしりを予防・改善する方法

歯ぎしりを予防・改善する方法

歯ぎしりを予防・改善する方法はいくつかあります。歯ぎしりの予防や改善だけに留まらず、健康的な生活にもつながります。すぐに実践していきましょう。

太陽を浴びて体内時計を整える

しっかりと眠れなければ、歯ぎしりを予防することはできません。睡眠の質を向上させることが歯ぎしりの予防と改善につながります。質の良い睡眠をとるためには、体内時計を整えることが重要です。毎朝、しっかりと太陽の光を浴びましょう。

朝に太陽を浴びることで体内時計をリセットできます。またセロトニンというホルモンも分泌されます。セロトニンはストレスを減らす効果もあるので非常に大切なホルモンです。

適度な運動をする

適度な運動をすることで、夜もぐっすり眠れ、ストレスの解消になります。そうすれば、歯ぎしりの原因となる、睡眠の質の低下やストレスを改善でき、歯ぎしりを抑える効果が期待できます。

ストレスを解消する

歯ぎしりについては分かっていないことも多いです。しかし、一番の原因はストレスであるとされています。ストレスを溜めないようにすることは難しいですが、先に述べたように、体内時計を整えたり、適度な運動をしたりすることがストレス解消につながります。その他、好きなことをする時間を設けるなどご自身に合ったストレス解消法を見つけてみてください。

歯医者での歯ぎしりの治療

歯医者での歯ぎしりの治療

歯ぎしりをしていることがわかったら、まずは歯科医院でしっかりと診てもらいましょう。見ただけではわからない、歯並びや歯の欠損などをきちんと確認してもらうことが重要です。そして、ご自身に合った改善方法で治療をしていきましょう。

ナイトガード(マウスピース)

歯ぎしりの治療で一般的なものが、ナイトガードと呼ばれるマウスピースです。夜、寝るときに着用します。市販で購入できるものもありますが、病院でしっかりと型を取ってオーダーメイドのものを作ると装着時の違和感を抑えられます。市販のものよりは高価ですが、保険適用になるのでそれほど高額ではありません。5,000円程度で作れるでしょう。また就寝時や、他にはパソコンをする時や筋トレをする時など集中して歯に力がかかりやすい時などに使用するので、周りの目を気にすることなく歯ぎしりの予防ができるのでおすすめです。歯や歯茎だけでなく、顎への負担もかなり抑えられます。

歯列矯正

歯ぎしりの原因が歯並びによるものの場合には、歯列矯正を行うことがあります。噛み合わせが改善されると、歯ぎしりも改善されます。しかしほとんどが保険適用外です。矯正にも種類がある上に、矯正する部分がどれくらいかにより費用は変わってきますがかなり高額なことは踏まえておきましょう。

また病院によっても費用は異なります。大人で約60〜100万円程度費用がかかるようです。さらに費用が高額なだけではなく、治療期間も数年単位と長期間です。病院でよく相談の上、矯正するようにしましょう。

薬物療法

薬物療法も、歯ぎしりの原因によって服用するお薬が変わります。口腔内や顎に痛みがある場合は消炎鎮痛剤などを服用します。また、漢方薬が処方されるのはストレスなどでイライラしていることが歯ぎしりの原因になっている場合です。もしも薬が必要となった場合、基本は保険適用です。お薬によって費用は変わりますが、保険適用であればそれほど高額になることはありません。

認知行動療法(リマインダー法)

リマインダー法は就寝時ではなく日中の起きている時に行う治療法です。まずは、無意識に行っている歯ぎしりに気付くことが必要です。どんな時にどのような歯ぎしりをしているのかを細かく観察してメモなどをします。これを繰り返すことで、歯ぎしりをしているタイミングを自覚して、止めるように意識を向けることが目的です。繰り返すことで少しずつ歯ぎしりを改善していけます。

ボトックス注射

ボトックス注射と聞くと美容目的の注射のイメージがありますが、歯ぎしりの治療にも使用されています。ボトックス注射には、ボツリヌス菌を無毒化したものが含まれていますが、ボツリヌス菌には筋肉の緊張を緩める効果があり、歯ぎしりの強い力が加わることで緊張した筋肉を和らげます。

また、歯ぎしりで骨が大きく成長してしまい、咬筋(こうきん)と呼ばれるものができてしまうことがあるようです。咬筋が大きくなるとエラとして目立つようになるので気になる方も多くいるでしょう。ボトックス注射をすることで咬筋を小さくし、小顔効果が期待できます。

ボトックス注射は保険適用外です。費用は打つ回数や病院によって異なりますが、30,000〜60,000円前後になるでしょう。

歯の治療における医療費控除

歯の治療における医療費控除

歯ぎしりの治療では先にも述べたように、マウスピースや歯列矯正などがあります。費用においては治療法によって異なりますが、かなり高額になってしまう場合があります。歯ぎしりの原因が噛み合わせによるもので、改善するために矯正治療をした場合は医療費控除の対象です。しかし保険適用外の治療に関しては、特殊な場合は対象にはなりません。控除の対象にならなければかなりの出費となってしまいますので、治療の際はしっかり確認するようにしましょう。

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おわりに

歯ぎしりは、ご自身で気付くことはなかなか難しいものです。しかし、周りからいわれたり、起きている時に歯に力が入っていたりすることがあれば、改善したり予防に努めたりしなければなりません。なぜなら、そのまま放っておくと、歯がかけたり他の疾患につながったりする可能性もあるからです。予防や改善方法は、歯科への治療をはじめとして、生活習慣を整えることでもできることがあります。ご自身の歯ぎしりのタイプを把握して、それに合った予防や改善方法を試してみましょう。

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