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現役歯科医師に聞いた歯科医院の選び方

現役歯科医師に聞いた歯科医院の選び方
猪股 美菜 歯科医師・歯学博士

執筆者
猪股 美菜 歯科医師・歯学博士

1983年生まれ。2007年歯学部卒業後、臨床研修医として大学病院に在籍。その後大学院歯学研究科(口腔病理学講座)に所属。大学院では口腔内病変の病理診断を学ぶとともにレーザー治療の研究に邁進。卒業後は勤務医として働く。「週に5時間」を自分の勉強時間と課し、より良い治療や研究を探索している。一児の母。

「歯周病が気になる。予防を兼ねて、歯のお掃除をきちんとしてもらいたい」「子どもに治療を受けさせたいので、子どもの治療経験が豊富な歯医者さんに診てもらいたい」などみなさんの要望はさまざまです。引っ越し先などでどの歯科医院を選択すれば良いのか、選ぶだけでも大変でしょう。

実は、通院する歯科医院を選択する際、いくつかのポイントをつかんでおけば、そう難しくはありません。

今回はご自身に合った歯科医院を見つける上で、外せないポイントを、歯科医師の立場からいくつかご紹介します。ぜひご参考になさってみてください。 

歯科医院への通いやすさ

歯科医院への通いやすさ

歯科治療の場合、一回の通院で治療が終わることは、ごくまれといっても過言ではありません。複数回治療がかかることがほとんどです。また定期検診の場合でも、期間を空け、定期的に通院することで口内の健康が守られます。そのため通いやすさが一番の重要ポイントです。

医院の所在地、診療時間、診療している曜日をホームページなどで調べ、通院が日常生活にうまく取り込めるように通いやすい医院を選択してください。

お住まいの近辺ならず通勤の途中や、職場周辺の歯科医院も利用しやすいと思います。所在地が習い事の往復の道にある、よく行くスーパーマーケットの近くにある、などの理由で選択しても良いでしょう。

また、日曜や祝日に診療をしている診療所もあります。「21時」「22時」など、夜に重点をおいて診療しているところもあります。医院までの距離が遠い場合には曜日や時間帯に重点をおいて通うのもいいと思います。歯科医院が疎遠にならないよう、ご自身でよく考えながら選択してみてください。

ちなみに、定期検診で歯科医院にかかる頻度は口内の中の状態によります。

  • ブラッシングの状態
  • 歯石の堆積具合
  • 歯ぐきの腫れ
  • 歯周ポケットの数値

などを検査で調べ、定期検診をどれくらいの頻度で行っていくかを歯科医師が決めます。数週間、あるいは数ヵ月に一度は口内の確認をしてもらい、メンテナンスを行うのがベストな治療の流れです。

定期検診の際、万が一お口の中に異常が見つかっても、早期発見・早期治療につながります。

歯科医師の専門性

歯科医師の専門性

歯科医師は、ある一定の基準を満たせば、認定医や専門医として学会から認定されます。専門医は認定医よりも高いレベルの知識教養が求められます。具体的な専門医には、歯周病専門医、小児歯科専門医、口腔外科専門医などがあります。

せっかく歯科医院に通うのだから、専門性の高い歯科医師にかかってみるのもひとつの案だと思います。それはご自身の希望に沿って決めてください。学会のホームページで認定医・専門医を検索することが可能です。または歯科医院のホームページでも検索が可能な場合もあります。

もちろん、認定医・専門医の認定がない歯科医師でも、学問・卒業後の臨床研修・経験を積んでいるので、どの分野でも安心して治療を受けることができます。

話をしっかり聞いてくれる・説明がわかりやすい

話をしっかり聞いてくれる・説明が分かりやすい

まずは主訴(患者さまが訴えている症状)をしっかり聞いてくれることが重要なポイントです。患者さまの話を打ち切らず、「傾聴」の身構えで対応してくれる歯科医院がいいでしょう。

歯科医師をはじめ歯科衛生士や歯科助手もしっかりと話を聞いてくれる歯科医院はとても通いやすいと思います。そして検査などの理由にのっとって、治療内容をわかりやすく説明してくれることも大事です。話の際、質問にも丁寧に応じてくれれば安心して治療を受けることができるでしょう。

そのため、疑問点があれば積極的に質問するようにしましょう。今は昔とは大きく違い、一方通行では治療は成り立ちません。医師の立場としても、インフォームドコンセント(説明と同意)の理念に基づき、患者さまに納得を得られた上で治療をすすめていかなければならないからです。

歯科治療の内容が自分の希望に合っているか

現役歯科医師に聞いた歯科医院の選び方

通いやすい歯科医院が見つかり、話をしっかり聞いてくれて説明もわかりやすい――そしていざ治療が始まります。

その治療過程で、例えば理由もなく症状のない健全な歯も治療を執拗にすすめてくる。こういった歯科医院は少し疑問を持たれるかもしれません。

今は審美性(見た目の美しさ)を求めて治療に来られる患者さまもたくさんいらっしゃいます。それに合わせて治療が必要な歯以外にも治療をすすめてくる歯科医院も多いです。しかし審美性のボーダーラインは人それぞれです。歯科医師や歯科衛生士が審美性に欠けるため、治療をしましょうと声かけをされたたとします。

そこでご自身が治療の必要がないと思っている歯は、促されても治療する必要はありません。その治療を断るか、一旦様子をみる、と歯科医師あるいは歯科衛生士に伝えてください。言われるがまま治療に走るのではなく、一旦は間をおいて一週間程度経って、治療するかしないかを決めて、再度相談に行っても問題はありません。

ただし、審美的なこと以外にも治療をしなくてはいけない理由があれば話は別です。治療しなくてはいけない理由をしっかりと確認し、納得した上で治療を受けるか否か判断してください。

また、自由診療(保険外診療)を脇目も振らずすすめる歯科医院もあります。このような歯科医院も注意するようにしてください。

診療には「保険診療」と「保険外診療」があります。保険診療では、患者さまが負担するのは治療費の1〜3割で、残りは国や地方自治体が負担しています。

自由診療(保険外診療)とは、その名の通り健康保険がきかない治療なので、治療費がとても高いです。材料費や、補綴物(かぶせ物や入れ歯)を作ってもらう技工士さんの技術量も関係し高額な医療費になることが多いです。

他にも歯列矯正やホワイトニング、インプラント治療などが自由診療の主な項目です。ここで自由診療の説明を聞く際のポイントがあります。自由診療をすすめる際、歯科医師あるいは歯科衛生士が、自由診療のデメリットもきちんとお伝えしているかどうかということです。しきりに保険診療を見下げる歯科医院は論外です。保険診療であっても一定水準の治療は受けられます。それを踏まえた上で自由診療の説明を聞いてみてもいいと思います。

おわりに

ここまで、歯科医院を選択するとき頭に置いておいてほしい4つのポイントについてお話ししました。同時にコロナ禍におかれている現在、新型コロナウイルスに対する対策がしっかりなされているかもホームページなどで確認されるといいでしょう。

昔は歯が痛ければ抜く、といったような充分な根拠のない大掛かりな治療がたくさんされてきました。その面では歯科業界もきちんと反省し、今現在は自分の歯をできるだけ残す予防歯科を念頭に、「説明と同意」をきちんと心掛けて治療にあたっています。

治療を受けていて少しでも疑問点が残ったり、説明が不十分に感じる場合もあるかもしれません。その際は、ぜひ、診療を受けた歯科医師に疑問を投げかけたり、説明を求めたりしてください。患者さまから求められることでスムーズな問題解決につながります。

[参考文献]日本歯周病学会

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