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聴力の老化を遅らせるために気を付けたいこと〜身体や耳に優しい習慣とは

聴力の老化を遅らせるために気を付けたいこと〜身体や耳に優しい習慣とは
神尾 敬子 声楽・ピアノ・音読講師

執筆者
神尾 敬子 声楽・ピアノ・音読講師

東京音楽大学音楽学部声楽科卒業。イタリアオペラ、フランス及びドイツ歌曲を学ぶ。
虎ノ門病院、東大医科研附属病院、日本音楽療法学会全国大会、アジア・太平洋地域国際エイズ会議にて招待演奏。アレキサンダー・テクニーク、加藤メソッド(呼吸法)等々を習得、音楽講師、ヴォイストレーナーとして活躍中。
また、ナレーションの神様、矢島正明氏にドラマティックリーディングを師事。朗読会開催の要請にも応じている。

「寒くなると聞こえ(聴力)が悪くなる」とおっしゃる方がいらっしゃいます。私はそんな時、思い出すことがあります。今から20年以上前、東京都内の病院で聴覚に障がいのある方々のためにコンサートをさせていただいたことがありました。私は何曲かの日本の歌を歌わせていただきましたが、その中に武満徹作曲のものが数曲ありました。偶然にもこの作曲家はその病院の耳鼻咽喉科で聴力検査を受けていらしたらしく、その検査を担当した医師が声を掛けて下さいました。当時60代であった作曲家の聴力は、加齢性の衰えが全く見られず、また左右差の全くない素晴らしい耳だったとの事で、その医師も大変に驚かれたご様子でした。

この作曲家は、なぜそんなに素晴らしい聴力を維持することができたのか、どれほど気を付け管理しながら日々を過ごされていたのかと推察します。私たちも聴力低下を予防するためにできることを考えてみましょう。

1.  聴力低下によって起こるさまざまな影響

聴力低下によって起こるさまざまな影響

1-1.聴力低下による生活への影響

耳は自分と社会をつなぐためのコミュニケーションツールです。人間らしく、快適な社会生活を送るためには耳から得られる情報が欠かせません。聴力が衰えると次第に会話も困難になっていきます。聞き間違える頻度が増えたり、何度も聞き返したり、よく聞き取れないまま反応してしまうこともあるでしょう。

1-2.聴力低下による危険を察知する能力の低下

背後から近寄ってくるものや人、車などを察知する能力にも影響を与えます。危険を知らせてくれる人の声やサインなどもキャッチしづらくなることがあります。気付いたときには、タイミングが遅く驚いてしまい転倒してしまうなど、生活環境におけるリスクも増えます。

1-3.聴力低下によるコミニュケーション力の低下

聞く事はコミュニケーションの第一歩です。聞こえの悪さは、特にコミニュケーションに置いて、その困難さが顕著に現れます。充分に聞き取れないまま返事をして行き違いが生じたり、会話に参加できずに孤立感を感じている方も少なくないのではないでしょうか。また聞き間違いが多くなり、会話に参加しにくくなるということもあるでしょう。引きこもってしまう原因にもなりかねません。

1-4.聴力低下により自信がなくなる

難聴は精神的健康にも影響を及ぼします。聞こえが悪くなることで不安を感じたり、悲しくなることがある、惨めな感じがするという方も少なくないようです。「同じことをもう一度尋ねるのが恥ずかしい」や、「よく聞き取れない自分にもどかしさを感じる」という方もいらっしゃいますし、聞こえが悪いことを他人から指摘されて腹が立つことがあるとか、聞こえが悪くなってからひとりでいたいと思うようになったという方もいらっしゃり、人との会話に疲れを感じる方も少なくありません。

参照元:難聴高齢者の聴力低下が精神的健康に及ぼす影響

1-5.聴力低下による認知症発症への影響

聴力低下による認知症発症への影響

いろいろな音情報が届くということ自体が、脳の機能にとって重要です。会話の頻度や新たな環境に遭遇する機会が減ると、耳から入る情報量が減ってきて、脳の老化を招きます。実際難聴は認知症の危険因子であることが分かっています。耳からの情報が脳全体を活性化しているということをぜひ理解しておいていただきたいと思います。最近では「難聴と認知症」との関連性も指摘されていて、難聴を予防することで、認知症を回避できる可能性も報告されています。

参照:国立長寿医療研究センター

2.  難聴予防〜身体に優しい生活習慣

難聴予防〜身体に優しい生活習慣

2-1.生活習慣病の予防

糖尿病も難聴のリスクを高めることが分かっています。糖尿病があると動脈硬化、血流障害、代謝障害などによって神経の機能が低下します。聴力に関わる神経も衰えるため、難聴につながると考えられます。また血流が悪くなると、耳の聞こえも悪くなってきます。聞こえのためにも、生活習慣病の自己管理は大切です。

2-2.適度な運動と規則正しい睡眠

生活習慣病の予防として、食事や運動に気を付けることが重要です。それが難聴の予防にもなります。血流を良くするための運動としては、ウォーキングなどの有酸素運動がお勧めです。ゆっくりと深い呼吸を心がけましょう。身体全体の血流を促す深呼吸は耳の聞こえにも良い影響を与えてくれます。

2-3.栄養バランスの取れた食事

ダイエットから、難聴を引き起こしてしまうことがあります。これは「耳管開放症(じかんかいほうしょう)」と呼ばれる病気によって引き起こされる難聴です。普段は閉じている「耳管(じかん)」と呼ばれる管が開きっぱなしになる病気で、この病気になると、耳が塞がった感じがしたり、自分の声が響いて不快に感じるようになるほか、めまいや軽い難聴を引き起こしたりもします。この病気の原因は、疲労や睡眠不足、ストレスなど多岐に渡りますが、その中でも急激な体重減少といわれています。耳管部分にある脂肪が減少し、耳管が開いてしまうためこの病気を引き起こしてしまいます。適正な体重管理のためにも、栄養バランスのとれた食事を摂る事は重要です。

2-4.気温差や気圧差の調整

お風呂上がりは聞こえが良くなる、という方がいらっしゃいます。血流の問題は聞こえに影響するのです。寒い時は特に耳のマッサージを習慣にすると良いでしょう。

両手で両耳たぶを軽くつかみ、真横に優しく10〜20回、真上に優しく10〜20回引っ張ります。

●両手で両耳たぶを軽くつかみ、真横に優しく10〜20回、真上に優しく10〜20回引っ張ります。

両方の耳を両手で軽く覆い、その手をゆっくりとくるくる回します。逆回りも同様に回します。

●両方の耳を両手で軽く覆い、その手をゆっくりとくるくる回します。逆回りも同様に回します。

また、気圧の変化にも耳は敏感ですので、耳鳴りが起こる方も少なくありません。「明日は気圧変化が激しいようだ」と自分の中で予測理解ができると精神的に楽ですので、アプリなどを使って気圧変化を予想してみて下さい。

おすすめアプリ:気圧予報で体調管理「頭痛ーるアプリ」

2-5.音読

音読

感音性難聴(内耳やそれより奥の中枢神経系に障害がある場合に起こる難聴)の70代の方が、6ヵ月の音読トレーニングにより、聞き取りがうまくいくようになった症例があります。 近年は難聴が脳機能と関連することが着目され、脳の活性化を促すためのトレーニングも重要視されているのです。音読は、自己の発した声を聴覚で捉え、脳で確認、理解する良いトレーニングとなります。

参照元:いわゆる「脳トレーニング」によって語音明瞭度の改善した感音声難聴症例

3.難聴の予防〜耳にやさしい生活習慣

難聴の予防〜耳にやさしい生活習慣

3-1.テレビの見方

ご家庭の中でテレビを見る場合、多くはリビングや自分の部屋が多いでしょう。環境によっては極端に聞き取りづらくなってしまうケースがあります。テレビは画面サイズの大きさによって視聴するのに最適な距離があります。その推奨されている距離から離れた場所で見ていると、テレビの音がよく聞こえません。音量をあげれば良いのではないかと思われるかもしれませんが、基本的にテレビはそのように設計されてはいません。テレビからの距離が離れすぎると、テレビの音は質が悪くなるため、言葉が全体的に聞き取りづらくなります。現在の横長のテレビでは、画面の高さのおよそ3〜4倍程度が最適な視聴距離です。テレビは液晶となり画質も良くなりましたが、その反面、スピーカーを内蔵するスペースが減ったため、昔と同じ値段で比べると音質的には厳しくなっているようです。もし今リビングでテレビを見ていて、その音が聞こえにくいようでしたら、自分のいる場所や、テレビを置く場所を変えることを検討してみてください。

3-2.音楽の聴き方

イヤホンやヘッドホンを使うことは、耳へのストレスを多くします。内耳の有毛細胞が壊れてしまう「イヤホン難聴」の増加も問題となっています。加齢にプラスして、こうした環境要因が加わることにより早くから難聴を発症する可能性も考えられますので注意が必要です。環境が許すならなるべくこれらは使わないようにする方が良いでしょう。しかしイヤホンを使う場合は、ノイズキャンセリング機能のあるものを使うと音量を大きくしなくても聞こえやすくなります。また、大音量で音楽を提供するライブなども、耳の健康にはあまり良くありません。耳栓を使うのもひとつの方法です。

3-3.耳を休ませる時間

耳を休ませる時間

日本は、特に都会は生活の中で音が多すぎるようです。駅ホームのアナウンス、電車やバスなどの交通機関内でのアナウンス、スーパーの店内放送、病院のBGM(これは痛みを和らげるための工夫かも知れませんが、音楽は個人の嗜好がありますので不愉快な時も少なからずあります)。これらを私たちは、聞くともなく聞いており、その時も耳は働いているし、聴くことは脳も働いています。静かな環境で耳を休ませることも必要です。

おわりに

聴力の老化(加齢性難聴)は、耳と脳の老化が複合して発症します。このうち耳の老化に関しては、有毛細胞がいちど壊れてしまうと、現代の医療では再生ができませんし、この機会に日々、耳に優しい生活を心がけてみてはいかがでしょう。

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