「偏頭痛」は頭の血管が拡張することによって起こる痛みのことを指し、こめかみから目の周辺にかけて発作的に痛みが発生することが多い特徴を持ちます。頭の片側で痛みが発生することもあれば、両側が痛むこともあります。吐き気や嘔吐などの症状を伴うこともあり、20代〜40代の女性に多く見られることも特徴です。
偏頭痛による痛みは数時間〜数日間続くこともあり、生活に大きな支障をきたす例も少なくありません。本記事では、偏頭痛の症状と原因となる行動、痛みの対処方法と、偏頭痛と混同されやすい「緊張型頭痛」について解説もしていきます。
偏頭痛(片頭痛)とは?代表的な症状
偏頭痛とは、頭の血管が拡張することにより、痛みをつかさどる三叉神経(さんさしんけい)が刺激されて引き起こされる頭痛と考えられています。一般的な頭痛とは異なり、発作的に痛みが発生し、数時間〜数日にわたって痛みが持続する点が大きな特徴となっています。偏頭痛が発生すると、音・光・臭いなどの刺激に敏感になることも特徴です。
日常生活に支障が出るほどの発作が続く
頭痛以外にも吐き気・嘔吐、下痢などの症状を伴うことがあり、身体を動かして頭の位置が変わると痛みが悪化するため、日常生活にも支障をきたしやすい傾向にあります。「片頭痛」と表記されることもありますが、必ずしも頭の片側が痛むというわけではなく、両側に痛みを感じることも少なくありません。
閃輝暗点を伴うケースも
また、人によっては偏頭痛の前兆として「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれるチカチカした光が見えることもあります。この光が数分〜数十分ほど続き、光が収まった後から偏頭痛の症状が起こるケースが多く、偏頭痛の前兆として知られています。
20~40代の女性に多く見られる
20代〜40代の女性に偏頭痛持ちの方が多く、月経周期との関連を自覚している方も少なくありません。これは、偏頭痛の原因として女性ホルモンとの関連が挙げられることに由来します。もちろん男性でも偏頭痛が起こるケースはあります。
偏頭痛の原因として考えられる5つの行動
偏頭痛の原因は医学的に明らかにされているわけではありませんが、痛みを誘発しやすい行動があると考えられています。具体的には、以下の5つのような行動が挙げられます。
- ストレスの多い生活
- 飲酒・喫煙
- 女性ホルモンの変化
- 音・光・臭いなどの強い刺激を受ける
- 頭痛を引き起こす食品を食べる
それぞれ詳しくご紹介しましょう。
ストレスの多い生活
偏頭痛は、強いストレスにさらされている状況よりも、そのストレスから解放された時に発症しやすい特徴があります。脳の血管は、ストレスを受けている時は収縮し、ストレスから解放されると拡張される性質を持っています。そのためストレスがなくなり脳の血管が拡張されるタイミングで、偏頭痛が発生するというメカニズムです。仕事のストレスが軽減される週末に偏頭痛が起こりやすいのも、ストレスが関係しているとされています。
飲酒・喫煙
お酒を飲むとアルコールが肝臓で分解され、アセトアルデヒドと呼ばれる有害成分へと変わります。このアセトアルデヒドには血管を拡張させる作用があり、飲酒後の頭痛や二日酔いの頭痛の原因と考えられています。そのため偏頭痛持ちの方の中には、飲酒によって偏頭痛が誘発される例も少なくありません。
喫煙習慣がある方の中には、タバコを吸うと頭痛が治まるという経験を持つ方もいらっしゃるかもしれません。これはタバコに含まれるニコチンに、血管の収縮作用があるためです。しかしニコチンが身体から抜けると急激に血管が元に戻るため、偏頭痛が悪化しやすい点に注意が必要です。
女性ホルモンの変化
偏頭痛の原因として、女性ホルモンとの関連も指摘されています。偏頭痛持ちの方の中には、生理前から生理中のタイミングで頭痛が発生すると自覚されている方も多いようです。また、出産や更年期を経験する時期に偏頭痛の痛みが表れることもあります。
音・光・臭いなどの強い刺激を受ける
偏頭痛を引き起こす要因として、音・光・臭いなどの外部の刺激を受けることも挙げられます。ほかにも気温や気圧の変化、人混みにさらされるなどの強い刺激が原因となって、偏頭痛が起こる例もあります。人によっては、春先や秋口などの季節の変わり目に痛みが発生することも多く、梅雨や台風の時期には痛みが悪化する傾向にあります。
頭痛を引き起こす食品を食べる
食品の中には、脳の血管を収縮・拡張させる作用を持った栄養素を含むものがあります。代表的な食品として、ワイン・チーズ・チョコレート・オリーブオイルなどが挙げられます。これらの食品に含まれるポリフェノールなどの成分が、脳の血管に作用して偏頭痛を引き起こします。
偏頭痛と緊張型頭痛との違いとは?
偏頭痛と混同されやすい症状に「緊張型頭痛」があります。緊張型頭痛は、頭や肩・首の筋肉が緊張し、血流が悪くなることで引き起こされる頭痛です。頭が締め付けられるような痛みが特徴ですが、偏頭痛のように痛みが長時間続くことは少なく、吐き気などの症状も少ない傾向にあります。そのため日常生活に支障をきたすケースは多くありませんが、緊張が慢性化することで長期間にわたり頭痛が続くこともあります。
緊張型頭痛の原因は、主に身体的・精神的なストレスであるとされています。特に同じ姿勢でずっとパソコン操作を行うなど、デスクワーク中心の生活スタイルの方に多く見られます。なお、中にはうつ病などの精神疾患を原因とする緊張型頭痛も存在します。偏頭痛と緊張型頭痛の両方を持つ方もいます。
緊張型頭痛の予防方法
緊張型頭痛は、身体の緊張が原因で起こる頭痛のため、姿勢改善・ストレッチなどの方法で予防することが可能です。できるだけ長時間同じ姿勢でいることを避け、デスクワークの際にも休憩のたびに立ち上がってこりをほぐすことを心掛けてみると良いでしょう。また、肩や首を軽く動かしてストレッチしたり、前屈して身体の緊張を解いてあげることにより、緊張型頭痛が緩和されます。
緊張型頭痛への対処方法
緊張型頭痛の痛みがひどい時には、首や肩をマッサージして血流を改善させることが効果的です。冷却シートなどで冷やすよりも、蒸しタオルや半身浴などで筋肉を温めて緊張をほぐすことがポイントです。プレッシャーを伴う作業をされている場合にも、こまめに休憩をとってストレスを解消し、身体の緊張を解いてあげることが緊張型頭痛の改善につながります。
偏頭痛が起こった時の対処方法
最後に、辛い偏頭痛の痛みに対する対処法について解説しましょう。ここでは以下の3つについて紹介します。
- 保冷剤などを痛む箇所に当てる
- 静かで暗い場所で休む
- カフェイン・痛み止めを飲む
緊張型頭痛と偏頭痛は頭痛のタイプが異なるため、対処方法を混同しないようにご注意ください。例えば、緊張性頭痛では身体を温めて緊張をほぐすことが効果的ですが、偏頭痛の場合に身体を温めると、脳の血管の拡張を促し、痛みが悪化することがあります。それぞれの対処法を正しく使うことが大切です。
保冷剤などを痛む箇所に当てる
前述のとおり、偏頭痛は脳の血管が拡張することが原因であると考えられているため、温めるのではなく、冷やすことが効果的です。脳の血管を冷やして収縮させることにより、痛みが軽減されます。そのため冷却シートや保冷剤、氷枕などを痛む箇所に当てて、安静にすると良いでしょう。マッサージや入浴も痛みの悪化の原因となるため、できるだけ控えるようにしてください。
静かで暗い場所で休む
偏頭痛では頭を動かすと痛みが悪化することから、できるだけ安静にして過ごすのが大切です。可能であれば横になって睡眠をとると良いでしょう。また、偏頭痛では光や音の刺激が痛みを悪化させてしまうため、静かで暗い場所で休むことも大切です。場合によってはアイマスクや耳栓なども活用しましょう。
カフェイン・痛み止めを飲む
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインは、血管を収縮させて偏頭痛をやわらげる効果が期待できます。飲み過ぎやカフェイン中毒には注意が必要ですが、偏頭痛の予兆が見られたらカフェイン入りの飲料を飲んでみることをおすすめします。痛みが軽度であれば、市販の頭痛薬で痛みを抑えることもできます。
なお、偏頭痛専門の治療薬として「トリプタン」と呼ばれる薬があります。偏頭痛の痛みが起こった際にすぐ服用することで、偏頭痛の症状を抑えられるとされています。慢性的に偏頭痛の症状が起こる場合には、一度医療機関を受診してみると良いでしょう。
偏頭痛が長く続く場合は医療機関の受診を
これまで経験したことのないような痛みを伴う頭痛や、突発的な頭痛などは、病気のサインであることも考えられます。そのため異常な頭痛を感じたら、すぐに医師の診断を受けることが大切です。また、日常生活に支障をきたすレベルの偏頭痛が続く場合にも、医療機関への相談をおすすめします。その際には、痛みの程度や頻度などをメモしておき、できるだけ正確に症状を伝えられるように準備しておきましょう。
おわりに
偏頭痛は脳の血管が拡張することによって発症する頭痛のことを指し、吐き気や嘔吐などの症状を伴うことがあることも特徴です。日常生活に影響が出るほどの強い痛みが発生し、数時間〜数日にわたって痛みが続くことも偏頭痛の特性です。
偏頭痛の原因として考えられているのは、ストレスの多い生活や飲酒・喫煙、女性ホルモンの変化などです。混同されやすい「緊張型頭痛」とは、頭痛の発生メカニズムも対処方法も異なるため、違いを充分に理解しておくことが大切です。
辛い痛みが続くようであれば、患部を冷やしたり頭痛薬を飲んだりして、静かで暗い環境で休むようにしてください。場合によっては医療機関で薬の処方を受け、偏頭痛の痛みを緩和しましょう。