「パワーナップ」という言葉を聞いたことがありますか?パワーナップとは15〜20分程度の睡眠、つまりは短時間の昼寝のことです。昼寝は夜の睡眠時間が満足に取れていないと感じる時、正しく取ることによって、心身のリフレッシュに効果的とされています。本記事では、午後に眠くなる原因をはじめ、正しい昼寝の取り方や注意点などを解説します。
日中の眠気はまず睡眠不足を疑うべき?
日中の眠気の原因として最も可能性が高いのは、夜の睡眠時間が不足していることです。1日で眠気を感じやすい時間があったり、食後に空腹が満たされることで眠気を感じやすくなったりすることもありますが、夜間に十分な睡眠が取れていれば強い眠気を感じることはあまりありません。
睡眠不足は自覚できない方も多いので、日中に眠気を感じたり、居眠りをしてしまったりするようなら、まずは睡眠時間を伸ばす、見直すといった対策を考えましょう。夜中に思うように眠れないことで睡眠が不足している方は、カフェインやアルコールの摂り方や、スマホの使い方に気をつけるなど、眠れなくなる要因を日常生活の中から排除することも大切です。
また、明らかに十分な睡眠を取っていても急激な眠気に襲われる場合にも注意が必要です。眠っている間に口や鼻から肺へと続く空気の通り道が狭くなることで、呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」や、昼間に突然我慢できないほどの強い眠気に襲われて眠ってしまう「ナルコレプシー」といった睡眠障害も疑われますので、不安がある方は医師への相談も視野に入れてみてください。
その他で考えられるもの
アレルギーや持病の関係で日常的に薬を服用している場合、その副作用によって眠くなることはよくみられる光景です。
中でも花粉症などのアレルギー治療に使われる抗ヒスタミン薬は、眠気を誘発させる作用があることで知られています。また、強力な鎮痛薬、血圧を下げる薬などに含まれる成分にも眠気を引き起こす可能性があります。
眠くなりにくい配合のものを選ぶなど、可能な範囲で工夫をしてみてください。
短時間の昼寝(パワーナップ)とは?
「パワーナップ」とは、昼間にとる短時間の仮眠のことをいい、昼寝を表す「nap」と「パワーアップ(poower up)」を掛け合わせた造語です。1998年にアメリカ・コーネル大学の社会心理学者ジェームス・マース氏によって広められました。
ここからは年間200名以上の睡眠改善に携わる「株式会社S’UIMIN」の、睡眠ウェルネスアドバイザー・谷明洋さんに教えていただいた、正しい仮眠の取り方や注意点などを交えながら見ていきます。
日中に眠気がある場合には、まずは睡眠不足を疑い、夜間の睡眠時間を延ばす工夫をしましょう。ただ、仕事や生活などの都合で、十分な睡眠時間が確保できない場合は、“パワーナップ”で眠気やパフォーマンスの低下を抑えることを考えるのも良いでしょう。
また、昼寝をしたからといって、決して夜の睡眠をないがしろにしていいということではありません。あくまでも、短時間の昼寝は睡眠を伸ばすことが難しいときの応急処置と考え、並行して夜の睡眠の見直しも忘れずに行うようにしましょう。
「パワーナップ」でパフォーマンスの低下を抑える
睡眠には“ノンレム睡眠”と“レム睡眠”の2つがあり、さらにノンレム睡眠は浅い~深いの3段階に分けられます。短時間の仮眠では、最も深い睡眠に入る前の、中レベルくらいの深さのノンレム睡眠で目を覚まします。この段階で目覚めると寝起きがそれほど辛くなく、脳の疲労感がクリアになるなどの効果が期待できます。それによって、午後にありがちなパフォーマンスの低下をパワーナップで抑えることができるかもしれません。
スムーズに寝起きできる、上手なパワーナップの取り方とは?
自宅だけでなく、オフィスや外出先、移動中など、短時間の仮眠をとれる場所は置かれている状況によってさまざまです。パワーナップを取り入れる時は、すっきりした状態で起きることができ、夜の睡眠に影響しないためのより良い環境づくりを知っておくことが重要です。
短時間の昼寝を上手に取るための工夫を谷さんに教えてもらいました。
場所と環境
昼寝に適した場所や環境はありますか?
自宅やオフィス、電車内など、昼寝ができる環境は人それぞれですよね。本来は暗く静かな場所の方が適していますが、状況として難しい場合はアイマスクや耳栓をするなどして、眠りに入りやすい環境を作ってみてください。
姿勢
昼寝をする際の体勢について気を付けることはありますか?
どんな体勢で昼寝するかも重要なポイントです。ベッドやソファに横たわると起きられなくなる可能性があります。自宅やオフィスであれば、椅子に座り、机に突っ伏した姿勢で眠るのもよいでしょう。最近では昼寝専用の枕が販売されているので、座ったままでもそういったものを取り入れると、より楽な姿勢を保つことができそうです。
特に、首がグラグラしてしまうと昼寝の効果が正しく得られず、肩こりや頭痛を引き起こす心配もあります。仮眠がかえって逆効果になってしまわないように、首を上手に固定することを考えましょう。
時間内に目覚める工夫を
昼寝の長さに決まりはありますか?
昼寝で30分以上眠ってしまうのは禁物です。30分を過ぎると最も深い睡眠に入るため、目を覚ますのが辛くなります。また、目覚めた後も頭がボーっとしてしまい、かえってパフォーマンスが悪くなってしまいます。寝過ごさないためにもアラームを設定し、時間内に目覚められるようにしましょう。
仮眠前にカフェインを摂取
昼寝前にカフェインを摂取すると良いというのは本当ですか?
カフェインを摂取すると眠れなくなってしまうのでは?と心配になりますよね。
確かに、コーヒーに含まれるカフェインは脳を覚醒させる作用があります。しかし、その効果が表れるのは飲んでから20~30分程度後といわれています。昼寝する直前にカフェインを含む飲み物を飲むと、ちょうど良いタイミングで効果が発揮され、スッキリ目覚められるというわけです。
コーヒーが苦手な方は紅茶や緑茶など、カフェインが含まれているものでご自分が飲みやすいものを選んでみましょう。
起きたら軽くストレッチ
昼寝後に取り入れた方が良い習慣はありますか?
目を覚ました直後に体を伸ばすストレッチをするのを習慣にするのも良いでしょう。
全身の背伸び、足首と手首を回す、もも裏側を伸ばすなど、その場で座ったままできるものを実践してみてください。
パワーナップを取るときに注意すべきこと
短時間の昼寝の基本となるルールを厳守してこそ、その効果が発揮されます。気持ちよくなってついつい長い時間眠ってしまうと、後々の生活に支障をきたしてくるかもしれません。
“取る時間”と“時間帯”に注意する
昼寝を取ることで夜に眠れなくなってしまい、翌朝を睡眠不足で迎えるようなことになっては本末転倒です。そうならないように、昼寝の長さと時間に注意しましょう。
- 昼寝の時間は15~20分まで。30分以上寝らないこと
浅いノンレム睡眠だけでは仮眠の効果をあまり感じることができないので、中程度の深さのノンレム睡眠がとれるよう、少なくとも10分は眠ると良いでしょう。
- 遅くとも午後2時までに済ませること
さらに、前途した昼寝する環境や姿勢、直前のカフェイン摂取などを実践して、夜の睡眠への影響を最小限に抑えましょう。
デメリットにも注意を
とはいえ、疲れている時はどうしても昼寝の時間を長く取ってゆっくりしたいと思うこともあるでしょう。
しかし、仮眠をとることで肥満や高血圧、認知症のリスクが高くなるという報告もあり、夜の睡眠へ影響を与えるだけでなく、健康へのリスクを高めてしまう可能性があります。健康維持のためにも昼寝に頼りすぎない意識が大切です。
パワーナップで睡眠を見直すきっかけに
日中のパフォーマンスの向上や疲労感を取りたいという方はもちろんですが、仕事の都合上、毎日同じ時間に睡眠を取れなかったり、睡眠時間が変則的になってしまう方、十分に睡眠時間を確保できない方も多いと思います。そんな方にとって、短時間の昼寝は有効な対処法です。
どんな場所でも昼寝はできますが、ポイントは取る時間と時間帯です。‟長い時間熟睡しない環境”を作り出すことが大切です。そして、日中に仮眠をたくさんとりたいと感じるようであれば、夜間の睡眠に問題がある可能性もあります。仮眠は応急処置のようなものだと考え、メインとなる夜に深い睡眠を得られるようなライフスタイルを心掛けましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。