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「健康に良くない」は誤解!身体を変える油の選び方と、おすすめの摂り方

「健康に良くない」は誤解!身体を変える油の選び方と、おすすめの摂り方
地曳 直子

監修者

日本リポニュートリション協会代表理事

地曳 直子

日本リポニュートリション協会代表理事、日本インナービューティーダイエット協会顧問、日本オイル美容協会顧問、国際食学協会理事。「オイリスト」としてセミナーの開催や、脂質栄養の情報サイト「リポラボ~あぶらの研究所~」の主宰、メーカーの商品開発に携わり、健康と美容のための脂質の重要性を広める活動をしている。

「太るから体によくない」と避けられてきた油も、近年の健康意識の高まりとともに、見方が変化してきました。良質な油は、私たちの体にとって欠かすことのできない栄養素です。大切なのは、油の種類を学んで、目的に合った使い方、摂り方を知ること。本記事では、日本リポニュートリション協会代表理事である地曳さんにインタビューを行い、油の種類ごとの特徴や、油の選び方について分かりやすく解説していきます。

「油は体に良くない」は本当?

「油は体に良くない」は本当?

「油は体に良くない」という言葉をよく耳にしますが、油は私たちの体にとって重要な栄養素です。油にはさまざまな種類があり、それぞれが体に異なる影響を与えます。

油は体に入ると、エネルギー源や細胞膜の構成要素、体を整えるホルモンのような物質として働きます。どんな油を摂るかによって、体に及ぼす影響は大きく異なります。過剰摂取やバランスの悪い摂取は健康リスクを高めることもあるため、どの油をどのように摂るかが大切です。

脂質の分類:飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

脂質の主成分である脂肪酸は、大きく分けて飽和脂肪酸不飽和脂肪酸に分類されます。飽和脂肪酸は、肉や乳製品に多く含まれ、摂り過ぎると心臓病のリスクが高まると言われていますが、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸は逆に体に良い働きがあります。

一方、不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸)は植物油や魚に多く含まれ、健康に良い影響を与えることで知られています。

脂肪酸の種類主な脂肪酸主に含まれる食品
飽和脂肪酸ステアリン酸
パルミチン酸
ラウリン酸
カプリル酸
肉、乳製品(牛乳、バター)
卵黄、チョコレート
ココナッツ油、パーム油    
不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸)オレイン酸オリーブオイル、菜種油
アボカド、米油  
不飽和脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)リノール酸(n-6系)
アラキドン酸
α-リノレン酸(n-3系)
EPA、DHA(n-3系)
植物油(トウモロコシ油、大豆油、サラダ油)
クルミ、エゴマ
魚油(※青魚に限らず魚ならO K)    

不飽和脂肪酸の中でも、特に注目されるのがオメガ3(n-3系)オメガ6(n-6系)です。オメガ3は、主に青魚やアマニ油、チアシードに含まれ、心血管の健康を保つ効果があります。一方、オメガ6は、サラダ油やトウモロコシ油などに多く含まれており、適度な摂取が望まれますが、摂り過ぎると体に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらは体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。しかし、オメガ6は洋食の多い現代の食生活では過剰に摂取されがちで、逆に古来の魚を主食とする日本人の食事で多く摂取できていたオメガ3は不足しがちです。このバランスが崩れると、体内で炎症反応が強まり、さまざまな健康問題につながる可能性があります。

”油=体に悪い”というイメージがあるかもしれませんが、実際は体に必要な栄養素であり、種類やバランスに気を付ければ健康的な生活をサポートしてくれます。特に、現代人に不足しがちなオメガ3を意識的に摂取し、オメガ6とのバランスを整えることが大切です。

体の中での油の主な働き

油は、私たちの体にとってなくてはならない栄養素の一つです。単なるエネルギー源としてだけでなく、体のさまざまな機能を支える上で重要な役割を果たしています。体の中でどのような働きをするのか、詳しく見ていきましょう。日本人は脂質の約8割を「見えない油」、残りの2割を「見える油」から摂取していると言われてます。「見える油」は、料理に使われる植物油やバターなどが挙げられます。一方、「見えない油」は肉、魚、乳製品、加工食品に含まれる油のことです。油の働きについて詳しく見ていきましょう。

油は体に欠かせないエネルギー源

油は、私たちの体を動かすためのパワフルなエネルギー源です。1gあたり約9kcalという高いエネルギーを持っています。これは、まるで小さなガソリンタンクのようなもので、私たちの体を長時間動かし続けるための燃料となります。エンジンに良質なオイルを注ぐように、油は私たちの体をスムーズに動かし、疲れを軽減する効果があるのです。余った脂質は、体脂肪として効率的に蓄えられます。飢餓状態や、十分な食事が摂れない状況になったとき、この体脂肪が貴重なエネルギー源となり、私たちの生命を維持する上で大きな役割を果たします。

脳や細胞の機能をサポート

私たちの体は、無数の小さな部屋が集まってできているようなものです。その部屋の一つ一つが細胞です。そして、この細胞の壁にあたる部分が、細胞膜です。この細胞膜の主な成分こそが、油なのです。

油は、細胞膜に柔軟性を与え、様々な物質の出入りをコントロールする役割を果たしています。細胞のガードマンのようなものです。この働きがスムーズに行われることで、細胞は正常に機能し、私たちの体は健康を保つことができるのです。特に、脳は油を大量に含んでいます。この油は、脳の神経細胞同士の信号伝達を円滑にし、学習能力や記憶力、思考力といった高次の脳機能を支える上で重要な役割を果たしています。

ビタミンの吸収を助ける

私たちの身体づくりに欠かせないビタミンには、水に溶ける水溶性ビタミンと、油に溶ける脂溶性ビタミンがあります。ビタミンA、D、E、Kは脂溶性ビタミンにあたり、油と一緒に摂取することで、体内に吸収されやすくなります。たとえば、ビタミンAは目の健康維持、皮膚の再生、免疫力の向上に役立ちます。また、ビタミンKは、血液の凝固に関与し、出血を防ぐ働きがあります。このように、油は単にエネルギー源としてだけでなく、私たちの体のすみずみで活躍しています。

知っておきたい!摂るべき油と避けるべき油

知っておきたい!摂るべき油と避けるべき油

体にとって不可欠な栄養源である油には、健康を促進するものと、健康に悪影響を及ぼすものがあるため、正しい知識を持ち、選ぶことが大切です。体に良い油と避けるべき油の違いとはどのようなものなのでしょうか?

体に良質な摂るべき油

体に良い油」は、個人の体質や食習慣によって異なります。特に体に良いとされる油の代表的なものには、オメガ3やオメガ9、中鎖脂肪酸が含まれる油があります。また、油の品質は、健康に良い油を選ぶ上での重要なポイントです。酸化が進んでいる油は、体に悪影響を及ぼす可能性があるため、新鮮な油を選ぶように心がけましょう。

オメガ3は主に魚や亜麻仁油などに多く含まれ、炎症を抑えたり心血管系の健康をサポートする働きがあり、オリーブオイルに豊富なオメガ9はLDLコレステロールを低下させる働きがあるとされています。またココナッツオイルやMCTオイルの中鎖脂肪酸はエネルギー代謝を高めて痩せやすい体を作るなどの効果が期待できます。

できれば避けたい油

反対に、トランス脂肪酸や加工油は、できるだけ摂取を控えるべきといわれています。トランス脂肪酸は、加工食品や高温で処理された油に多く含まれ、心血管疾患のリスクを高める可能性が指摘されています。

近年、日本の食生活では加工食品や外食の増加により、見えない油の摂取が増えています。このため、肥満や生活習慣病のリスクが高まる可能性があり、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取に注意が必要です。

オイリスト推奨!身体にいい油の種類

オイリスト推奨!身体にいい油の種類

では、どんな油がおすすめなの?というあなたへ。ここでは、オイリスト・地曳さんがおすすめする、身体に良いとされる油を紹介します。日常の食事に上手に取り入れながら、健康維持に役立てましょう。

MCTオイル

地曳さんの一番のおすすめは、MCTオイルです。

MCTオイルは、ココナッツオイルやパーム核油などから抽出した中鎖脂肪酸という成分を主成分とする油です。一般的な植物油に含まれる脂肪酸と比べて消化吸収・代謝が非常に早いという特徴があります。

MCTオイルが注目される理由は、エネルギー効率の良さです。中鎖脂肪酸は一般的な植物油に含まれる脂肪酸と比べて、消化・吸収・代謝が非常に早く、すぐにエネルギー源になるという特徴があります。また、一部がケトン体と呼ばれる物質になり、脳を活発にして集中力を高める効果や脂肪燃焼を促進してダイエットに役立つことも期待できます。

エゴマ油

エゴマ油は、α-リノレン酸というオメガ3系の脂肪酸を豊富に含む植物油です。α-リノレン酸は体内で一部がEPAやDHAに変換され、強力な抗炎症作用を発揮することが期待されています。そのため、心臓病や動脈硬化などの生活習慣病予防に役立つと言われています。

また、脳の働きをサポートし、肌の健康維持にも貢献します。エゴマ油は、熱に弱く酸化しやすいという特徴があるため、生食がおすすめです。サラダやドレッシングに加えることで、手軽に摂取できます。ただし、酸化を防ぐために、冷暗所で保存し、開封後は早めに使い切るようにしましょう。

アマニ油

アマニ油も、エゴマ油と同様にオメガ3系脂肪酸を豊富に含む植物油です。特にα-リノレン酸という成分が豊富で、抗炎症作用が高く評価されています。この抗炎症作用は、血管の健康維持に繋がり、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病予防に役立つと考えられています。

また、血流改善効果も期待でき、冷え性や肌荒れの改善にも良い影響を与える可能性があります。アマニ油は、熱に弱く酸化しやすいという特徴があるため、生食がおすすめです。サラダやスープ、味噌汁など、さまざまな料理に手軽にプラスできます。

米油

米油は、米ぬかから抽出した植物油です。他の油に比べて酸化しにくく、高温調理にも強いという特徴があります。そのため、揚げ物や炒め物など、熱を加える料理に最適です。また、スーパービタミンEと呼ばれるトコトリエノールやγ-オリザノールなどの抗酸化成分を豊富に含んでおり、酸化による体のダメージを防ぐ働きがあります。

さらに、オレイン酸という不飽和脂肪酸も豊富で、コレステロール値を改善する効果も期待できます。米油は、クセが少なく、どんな料理にも合わせやすいという点も魅力です。炒め物だけでなく、ドレッシングや揚げ物にも活用できます。

日常の調理におすすめなのが米油です。特に圧力をかけて油を絞り出す「圧搾法」で丁寧に作られた米油は、ビタミンEやγ-オリザノールなどの栄養素が豊富で、抗酸化作用が高く、体のサビつきを防ぐ効果が期待できます。また、高温で加熱しても酸化しにくいため、揚げ物や炒め物など、幅広い調理法に適しています。クセが少ないため、素材の味を邪魔せず、どんな料理にも合わせやすいのも魅力です。

目的別おすすめの油

目的別おすすめの油

油は、単なる調味料ではなく、私たちの健康を左右する重要な栄養素です。あなたの目的に合わせて、おすすめの油をご紹介します。

ダイエットにおすすめな油

ダイエット中だからといって、油を全く摂らないのはNGです。むしろ、適切な油を選ぶことで、効率的に脂肪を燃焼させることができます。たとえば、MCTオイルは中鎖脂肪酸が豊富で、すぐにエネルギーに変換されるため、脂肪燃焼を促進します。また、エゴマ油もオメガ3脂肪酸が豊富な油で、ダイエットに適しています。

美肌を目指す人におすすめの油

美肌作りには、油の摂取が欠かせません。エゴマ油やアマニ油は、オメガ3脂肪酸が豊富で、肌の炎症を抑え、ターンオーバーを促進します。また、オリーブオイルも豊富なファイトケミカルやスクワレンを含み、肌の老化予防に役立ちます。

運動後のリカバリーに効果的な油

激しい運動の後には、筋肉の修復や疲労回復が大切です。MCTオイルは運動後に必要なエネルギーを素早く供給し、回復をサポートしてくれます。また、亜麻仁油やエゴマ油のα-リノレン酸は体内でEPA・DHAに変換され、筋肉の修復や疲労回復の促進が期待できます。

身体にいい油についてのFAQ

身体にいい油についてのFAQ

ここからは、油に関するよくある質問にお答えし、あなたの疑問を解消します。

どのくらいの量を摂るべき?

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、脂質の摂取量目安は1日の総エネルギー摂取量の20%以上30%未満とされています。つまり、1日の摂取カロリーが2000kcalの場合:脂質からのエネルギー:400~600kcal(20%~30%)、脂質の重量は、約44~67g(脂質1gあたり9kcalとして計算)という事になります。これは液体としての油だけでなく、食物から得られる脂質を含んだすべての総量です。個人の状況に応じて、バランスの取れた脂質摂取を心がけることが大切です。過剰摂取は肥満や生活習慣病のリスクを高める可能性があるため、適量を守ることが重要です。

油の1日の適量は、大人は大さじ約4杯分が目安になります。魚や肉など、食べ物にも脂質は含まれていますので、摂りすぎには注意しましょう。

油は加熱しても大丈夫?

油の種類によって、加熱に適しているものとそうでないものがあります。たとえば、加熱に強い油である米油は、酸化しにくく、高温調理に適しています。揚げ物や炒め物におすすめです。一方、エゴマ油や、アマニ油は、酸化しやすいオメガ3脂肪酸が豊富なため、熱に弱く、加熱調理には不向きです。

油は高温で長時間加熱すると、酸化が進み、体に悪影響を与える可能性があります。揚げ油は、一度加熱すると酸化が進んでいるため、再利用は避けましょう。

油を上手に摂るコツ

油を上手に摂るコツ

油は、私たちの体に欠かせない栄養素のひとつです。毎日適量を摂取するためには、どんなコツがあるのでしょうか?最後に、健康をサポートするための油の効果的な摂り方と、日常生活に無理なく取り入れるヒントをご紹介します。

サラダやドレッシングに取り入れる

新鮮な野菜をたっぷり食べられるサラダは、油と合わせることで更に栄養の吸収が良くなります。作りドレッシングなら、好みの味にアレンジでき、油の質も自分でコントロールできます

たとえば、オリーブオイル、バルサミコ酢、塩コショウをベースに、ハチミツ、マスタード、レモン汁などを加えて、自分好みの味に。エゴマ油やアマニ油をプラスすれば、オメガ3脂肪酸を補給できます。

ドレッシングは、食べる直前に作ることで、油の酸化を防ぎ、風味も損ないません。

スムージーや料理にプラスする

スムージーや料理に油を加えれば、栄養価がアップし、風味も豊かになります。たとえば、緑葉野菜のスムージーにエゴマ油やアマニ油を加えて、栄養バランスをアップ。また、スープにオリーブオイルを垂らせば、さらに豊かな風味に仕上がります。

油の種類によって加熱に適しているものとそうでないものがあります。摂取量を守り、バランスの取れた食事を心がけましょう。

まとめ 最適な油を選んで、美味しく健康的に食べよう

油は私たちの体に必要不可欠な栄養素ですが、その種類や摂取量によって健康への影響が変わります。目的に応じて油を使い分け、加熱方法にも注意しましょう。バランスの取れた食事を心がけながら、油を上手に活用して、美味しく健康的な食生活を楽しみましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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