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気を付けたい便秘の症状と対策

気を付けたい便秘の症状と対策
小田木 勲

監修者

新宿高田馬場駅前おだぎ内視鏡・消化器内科クリニック・消化器内科 院長

小田木 勲

“胃がん・大腸がんで亡くなる方をゼロにする!”をスローガンに掲げ、国内外の最先端医療現場で培った臨床試験などをもとに、かかりつけ医として丁寧な治療を行う。眠っている間に行う内視鏡検査などを提供する。

「便秘」は身近な健康問題のひとつです。対策が適切でなければ健康を冒す可能性があり、また放っておくと生活の質も低下します。便秘に対して正しい理解を持ち、適切な対策を講じることで健康を守りましょう。

便秘とは?

便秘とは?

便秘が続くと、さまざまな病気のリスクが高まり、命に関わるケースに発展する場合があります。“たかが便秘”と軽視しないようにしましょう。

便秘の定義

日本消化器病学会のガイドラインによると、『本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排便できない状態』というのが、便秘の定義とされています。

曖昧な定義ですが、簡単に言うと、数日間にわたって便が排出されない状態、または毎日排便があっても、便が硬く、排便時に力みが必要だったり、残便感がある場合を示します。

注意したい便秘症状

便秘の自覚症状を感じている方は、男性約162万人、女性は約277万人※います。

ただし、この数値はあくまで目安です。便秘による不快の感じ方は個人差が大きく、1日排便がないだけで不快を募らせる方もいれば、1週間に1、2回の排便でも不快を感じず過ごしている“隠れ便秘”の方もいます。

以下の項目に当てはまる方は、二次的症状を引き起こさないように便秘への対策が必要です。 

  • 3日以上排便がない
  • 強い腹痛がある
  • 排便時に血が混じっている
  • 市販の下剤を使っても便が出ない
  • 便秘が続いて吐き気がする
  • 排便時に肛門が切れて出血する
  • 排便後も不快な残便感がある

※参照元:「国民生活基礎調査」(2022年)

便秘を誘発する原因は?

便秘を誘発する原因は?

まずは、便秘になるきっかけを見直しておきましょう。

不健康な食生活

食べすぎや過剰なアルコール摂取など、腸内環境に負担をかける食生活は便秘を引き起こす原因です。ダイエットや、高脂肪で低繊維のいわゆる欧米型の食事など、食物繊維が不足した食生活も便通を乱す一因となります。

カフェインの過剰摂取

便が硬くなる原因に水分不足があげられますが、コーヒーや紅茶を飲んでも便秘が解消される水分補給になるとは限りません。逆にカフェインの利尿作用で身体の水分が奪われやすくなり、硬い便をつくる原因になってしまう可能性もあります。

運動不足、筋力がない

運動不足になると腸管の緊張がゆるんで蠕動運動が十分に行われず、便秘になりやすくなります。また、腹筋が弱い女性や高齢者の方も便秘になりやすいといわれています。

ストレスを抱えている

ストレスの増加によって脳がコントロールしている自律神経が乱れると、腸は緊張状態に陥ります。そうなると蠕動運動が停滞し、便通のリズムも崩れます。

また腸と脳には密接な関係があるといわれていますが、実際に便秘が改善されるとうつ病が治り、うつ病が治ると便秘が治るという報告もあります。

女性ホルモンの乱れ

女性ホルモンには腸の動きを抑制しようとする働きがあります。女性はそのホルモンの影響で便が硬くなりやすいため、便秘を訴える方が男性に比べて多い傾向です。ちなみに女性の死因の第1位は大腸がんです。そのリスクを高める要因が便秘といわれています。

冷えや寒さ

腸は寒さに弱い部位で、冷えは便意に大きな影響を与えます。冷え性の方はもちろん、室内外の温度差がある冬は誰でも自律神経が乱れやすくなり、腸の動きが低下しがちになります。また寒いとトイレに行くことを避けてしまい、気が付かないうちに便意を我慢していることがあります。

長時間の座りっぱなし

PC作業など座りっぱなしは腸に負担をかけ、腸管の運動を滞らせる場合があります。

機能性便秘と器質性便秘

機能性便秘と器質性便秘

便秘には種類があります。自分がどういった便秘に陥りやすいか、またどんな便秘症状かを理解しておきましょう。

腸に問題はないものの、腸の機能低下によって起こる便秘を“機能性便秘”といいます機能性便秘は、「弛緩性」「痙攣性」「直腸性」の3種類があります。病気による臓器の異常が原因で起こる便秘は“器質性便秘”と呼ばれています

弛緩性便秘

蠕動運動が低下し、大腸内に便が長く留まる状態の便秘です。 

  • 主な誘発要因…運動不足、無理なダイエット、刺激性下剤の長期的服用など
  • 便の形状…腸内に長く留まっている便は水分を吸収するため、硬い便になる
  • その他症状…腹部が張る、残便感、食欲低下、肩こり、肌荒れ、イライラ

痙攣性便秘

大腸の一部が痙攣のように収縮し、便が動きにくくなる状態の便秘です。 

  • 主な誘発要因…ストレス、環境の変化、過敏性腸症候群の方など
  • 便の形状…兎糞状のコロコロと硬い便になる
  • その他症状…下腹部痛、残便感、1週間程度排便がない、便秘と下痢を交互に繰り返すことも多い

直腸性便秘

便が直腸に到達しても排便反射が起こらず、排出されにくい状態の便秘です。 

  • 主な誘発原因…加齢、痔、便意の我慢、骨盤底筋の衰えなど
  • 便の形状…硬い便
  • その他症状…排便時に痛みがある、残便感、便意に鈍感になる

器質性便秘

大腸内の物理的な理由によって、便が通過できない状態の便秘です。 

  • 主な誘発原因…イレウスと呼ばれる腸管内腔の閉塞、大腸がん、腸管癒着など
  • 便の形状…血便や便が細いなど、通常の便と異なる色や形が見られる
  • その他症状…激しい腹痛、膨満感、嘔吐

下剤を使用すると腸管穿孔につながる可能性があります。医師による診察を受け、治療を急ぎましょう。

一過性便秘の対処法

一過性便秘の対処法

普段は便通が良好な方でも、旅行など生活パターンが変わることで、便秘を引き起こすことがあります。環境要因による一時的な症状ですから、便通が改善されれば問題はありません。

ただし、急に便通のリズムが変わった場合は注意が必要です。

便秘の検査を受ける

急な便秘や下痢など、便通リズムの乱れが気になる方は、医師の診察を受けてみましょう。腹部レントゲンで観察すると、便秘の程度が一目瞭然です。毎日快便という方でも、腹部のレントゲンを見てみると、便や腸内のガスが溜まっている方がいます

反対に、お腹が張っている気がしても大腸の中は“空っぽ”状態で、便秘の対策が必要のない方もいます。

慢性的便秘の解消法

慢性的便秘の解消法

「慢性的な便秘体質を何とかしたい」という方は、規則正しい生活や適度な運動を基本に、便秘の解消法を生活の中に取り入れましょう。

3食をしっかり食べる

食べる量が少なければ、便の量を確保することができません。朝昼晩3食をきちんと摂取することで、すっきりする量を出せるようになります。特に便意を促すきっかけとなる朝食はなるべく摂取しましょう。

水分補給を意識する

水分摂取は便秘解消の基本です。飲むだけで蠕動運動を活発にします。定期的な水分補給を心がけ、1日1.5~2リットルの水を摂るようにしましょう。朝の目覚めに冷たいお水か牛乳を1杯飲むと、その日の排便が自然と促されます。

酪酸菌を摂る

慢性的な便秘の解決には、腸内環境の見直しが必須です。腸内細菌のバランスを整えるために、善玉菌を増やすようにしましょう。特に健やかな大腸を維持するには、善玉菌「酪酸菌」の摂取が重要です。酪酸菌は整腸剤や、納豆などの食材から摂取することができます。

腹部マッサージをする

腹部マッサージは腸の蠕動運動を刺激するので、排便を促すのに有効です。気づいたときに腹部マッサージを行って、便通が滞らないようにしましょう。便が溜まっている部位はお腹の上から触ると硬くなっています。その部分を中心に軽くもみ込むようにマッサージするのがおすすめです。

弛緩性便秘は筋力の低下が原因となるので、便を自力で押し出せるように腹筋運動などで腹部の筋肉を鍛えるようにしましょう。

便秘に関連する疾患

便秘に関連する疾患

便秘によって引き起こされる疾患も覚えておきましょう。 

便秘による排便時の力みが原因です。
さらに過度に力むと肛門から直腸が脱出する「直腸脱」を引き起こすこともあります。
大腸憩室(けいしつ)性加齢とともに粘膜の弱い大腸壁にへこみができ、その部位に便が溜まる疾患です。
細菌に感染すると、腹痛や出血を伴う大腸憩室炎を合併する場合があります。
宿便直腸と大腸の間で便が硬くなり、排泄を妨げる疾患です。
排便時に力んでも便が引っかかって出ないことがあります。

便秘薬について

便秘薬について

便秘が解消されない場合は、薬の使用も検討できます。昨今はさまざまな便秘薬が登場しています。

便秘薬の種類

刺激性下剤や浸透圧性下剤、漢方薬は、病院で処方される薬ですが、薬局でも手に入ります。

〈下剤の主な種類〉

刺激性下剤腸内を空っぽにするために飲む薬品。
クリニックでは大腸カメラ検査の前に服用する。
浸透圧性下剤塩類下剤、糖類下剤、浸潤性下剤に分けられる。
刺激が少なく便秘薬の入門といわれるのが、マグネシウムを含む塩類下剤。
水分量を増やして便を柔らかくする作用がある
漢方薬便秘に効く漢方はさまざま。
「大黄(だいおう)」は大腸を刺激、「麻子仁丸(ましにんがん)」は腸を潤し、排便をサポートする。

その他にも、上皮機能受容薬、坐薬、浣腸、膨張性下剤、消化管運動賦活薬、胆汁酸トランスポーター阻害薬などがあります。

便秘薬の使い分け方法

刺激性下剤は便秘改善が期待できますが、毎日飲むのは不適切です。依存状態が進んで効かなくなる事例も少なくありません。また、刺激性下剤や漢方薬を1年以上服用していると、腸内が黒く色素沈着することがあります。長期的に飲む場合は、非刺激性の便秘薬から選ぶようにしましょう。

症状に合わせて自分で市販薬を選択することもできますが、より快適な便通を目指したい場合は医師と相談して摂取するのがおすすめです。

  • 弛緩性便秘…刺激性下剤を服用後徐々に減らし、浸透圧性下剤など便を柔らかくする薬や整腸剤のような腸の動きを整える薬を使用する
  • 痙攣性便秘…便を柔らかくする浸透圧性やわらかい下剤などの薬が有効。便がやわらかい場合は浣腸や刺激性下剤を一時的に使用する
  • 直腸性便秘…直腸を効果的に刺激する座薬や浣腸を使用する

まとめ:自分の腸内を見てみよう

まとめ:自分の腸内を見てみよう

便秘は放置してはいけない症状です。不快を感じていないとなかなか便秘対策を実践するのは面倒かもしれませんが、1週間に1、2回の便通が日常になっている“隠れ便秘”の方は、間違いなく大腸に負担がかかっています。特にシニア世代は便秘傾向になりやすいです。一度、クリニックで診察し、腹部レントゲンで自分の腸内を観察しておくと安心です。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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