「運動不足解消にランニングを始めたいけど、なかなか続かない…」 「ランニングをしても痩せないのはなぜ?」こんな風に悩んだ経験がある方も多いのではないでしょうか?ランニングは、手軽に始められて全身運動になるだけでなく、ダイエットにも効果的な有酸素運動です。しかし、闇雲に走っても効果は期待できません。
今回は、効率的に痩せるためのランニング方法や、注意すべき点などを、アメリカンスポーツ医学会認定運動生理学士P・中野ジェームズ修一さんのアドバイスを交えながら詳しく解説していきます。
ランニングで痩せるメカニズムとは

ランニングがダイエットに効果的だというメカニズムはどういったものなのでしょうか?ランニングは有酸素運動の代表格で、脂肪燃焼効果が高い運動として知られていますが、ただやみくもに走るだけではなく、仕組みを理解して取り組むことで、脂肪燃焼の効果を最大限に引き出せます。正しい知識を持って始めることで、より効果的なダイエットが可能になるはずです。
消費カロリーが高いから
まず、ダイエットをしようと考えた時に重要になるのが、「摂取カロリー」と「消費カロリー」のバランスだといいます。
手っ取り早く痩せるために、食事制限をして摂取カロリーを大幅に減らせばいいと思う方もいるでしょう。しかし、何十年も習慣化した食事スタイルを変えることは結構なストレスになるため、食事によるダイエットはなかなか続かない方が多いのです。
ランニングの最大のメリットは、短い時間で多くのカロリーを消費できること。体重によって違いますが、100キロカロリー消費するのに、ウォーキングだと1時間ぐらいかかるところを、ランニングなら15分ぐらいです。ランニングの時間が増えれば増えるほどカロリーの消費を狙うことができるというわけです。そうすると、摂取カロリーを大幅に減らさなくても済むことになり、食事面でのストレスも軽減されます。
筋肉量が増えるから
「筋肉量を増やすこと」と「ダイエット」、一見矛盾するように思えますが、実は深い関係があります。
筋肉量が増えなければ基礎代謝量が上がらず、運動に必要な持久力もなかなか向上しません。筋肉を増やすためには、普段以上に筋肉に強い刺激を与えることが重要ですが、ジョギングを続けることで筋肉が鍛えられ、基礎代謝量が向上します。また、持久力も向上するので、生活での活動量も自然と上がります。結果的に太りにくい体を作ることができるのです。
食欲が抑えられる?
「激しい運動をした後は余計にお腹が空きそう…」と思い、運動を避けてしまう方も多いと思いますが、実はこの考え方は間違いなのだそうです。
筋肉量が増えなければ基礎代謝量が上がらず、運動に必要な持久力もなかなか向上しません。筋肉を増やすためには、普段以上に筋肉に強い刺激を与えることが重要ですが、ジョギングを続けることで筋肉が鍛えられ、基礎代謝量が向上します。また、持久力も向上するので、生活での活動量も自然と上がります。結果的に太りにくい体を作ることができるので運動を行うことで、食欲を抑えるホルモンが分泌されることがあります。その一つが「レプチン」で、これは脂肪細胞から分泌されるホルモンです。レプチンは体内の脂肪量を調節し、脂肪燃焼を促進するとともに、体重の増加を抑える役割を担っています。
しかし、運動不足や肥満の状態では、レプチンの働きが鈍くなる「レプチン抵抗性」という現象が起こります。すると、レプチンが多く分泌されていても、その機能が十分に発揮されず、体重の管理が難しくなってしまうのです。
レプチンが本来の役割を果たすためにランニングに代表される有酸素運動を行うことで、レプチンに対する体の感受性を高める効果が期待できます。つまり、ランニングを行うことによって同じ量のレプチンでも、より効果的に食欲を抑え、エネルギー消費を促進できるようになるのです。
ウォーキングよりランニングの方が痩せやすい理由

ウォーキングとランニング、どちらも人気の有酸素運動ですが、ダイエット効果が高いのはどちらなのでしょうか?ダイエットのためにまずはウォーキングから始めよう、と考える方もいると思いますが、一般的にランニングの方がウォーキングよりも痩せやすいといわれています。
ウォーキングを何十年も続けている方の脚の筋肉量を測定すると、意外にも筋肉量が減少していることがあります。また、体脂肪率が大きく下がるわけではないという研究結果もあります。その理由として、ウォーキングによる消費カロリーが比較的少ないことや、運動強度が筋肉に負荷をかけるほど高くないことが挙げられます。
先ほどもお話したように、ダイエットを成功させるためには、
・消費カロリーを上げる
・摂取カロリーのコントロール
・筋肉量を増やす
この3つが重要です。
やはりランニングはウォーキングよりも高い負荷を筋肉に与えるため、筋肉量の増加につながるので、ダイエットにも効果的であるといえます。
一方で、近年の研究によると、ウォーキングには脳の機能を回復させたり、認知症やアルツハイマーの予防に効果があるとされています。なので、健康で走ることが可能なうちは、ウォーキングだけでなく、より高負荷のランニングなども取り入れることが望ましいですね。
ダイエット効果が期待できるランニングの取り入れ方とは?
「ランニングで痩せるために何から始めればいいの?」とお悩みの方は、ランニングを正しい方法で始めることが何より重要です。運動不足の方でも安心して取り組めるランニングの始め方や適切な頻度、シューズやウェアについて詳しく解説します。
歩いてもOK。自分なりのペースで続ける
ランニングというと「ずっと走り続けなければならない」と思われがちですが、実はそうではありません。走ることと歩くことを交互に繰り返す方法でも十分効果を得られます。例えば、「この信号まで走ったから次の信号までは歩こう」といった形で、自分のペースに合わせて取り組むのが大切です。
ずっと走り続けるのと、走ると歩くを繰り返すのでは、効果に大きな違いはありません。むしろ、無理をせず自分に合ったペースで続けることで、徐々に走れる距離が伸びていきます。例えば、最初は100メートルだけ走れればそれで十分です。その後に歩けば良いのです。そして、少しずつ走る時間や距離を増やしていけば、自然と体力がついてきます。
私自身も何十年もランニングを続けていますが、体が重い日や調子が悪い日は無理せず、走ると歩くを繰り返しています。これは一般のランナーだけでなく、トップランナーにも共通する方法です。また、坂道や階段に差し掛かった時も歩いてOKです。階段や坂道を歩くことはランニングしている時と同じカロリーを消費していることになります。
少しきついと感じたら歩きながら体をリカバリーし、その後また走り出せば良いのです。無理をせず、楽しみながら続けることが大切です。
まずは週2、3回を目標に
WHOが定めたガイドラインでは、「1週間で約150分以上の運動」という指針が、健康を維持するための基本的な運動量として示されています。この数値を聞いて「少し多いな」と感じる方もいるかもしれませんが、これは現代の社会環境を考慮したうえで設定されたものです。
150分という数値を1週間に分けると、例えば平日5日間運動して週末を休む場合、1日あたり約30分になります。これを毎日行うのは最初は難しいと感じるかもしれません。そのため、まずは週2~3日、1回30分程度から始めるのがおすすめです。慣れてきたら少しずつ頻度や時間を増やし、最終的には毎日20分程度の運動を目標にしていくと良いでしょう。
自分のレベルに合ったシューズ&快適なウェアを選ぶ
ランニングシューズを選ぶ際に重要なポイントは2つあります。
1つ目は、正しいサイズを選ぶことです。 普段履いている革靴やスニーカーとはサイズ感が異なるため、ネットでの購入は避け、専門店で計測してもらい、自分の足にフィットするシューズを選びましょう。サイズが合っていないと、靴擦れやケガの原因になりかねません。
2つ目は、自分のランニングレベルに合ったシューズを選ぶことです。 ランニングシューズには初心者用から上級者用までさまざまな種類があります。上級者用のシューズはかなり軽量化されていますが、その分、足を保護するためのクッションやサポート機能が少ない場合があります。筋力が十分でない初心者の方がそのようなシューズを選ぶと、足を痛めるリスクが高まります。
初心者の方は、まずお店のスタッフに自分のランニング経験やレベルを伝えることが重要です。そうすることで、「この範囲のシューズが適している」といった具体的なアドバイスをもらえます。自分に合ったレベルのシューズを選ぶことが、ケガを防ぎ、快適にランニングを続けるための第一歩です。
また、ランニング時のウェア選びにもポイントがあります。
ランニングで脂肪を燃焼させるには、汗をたくさんかけば良いというわけではありません。サウナスーツのように体温を過剰に上げる服装は、逆に脂肪燃焼を助ける酵素の働きを妨げることがあります。そのため、体温が過度に上がらないよう注意し、心地よく走れるウェアを選ぶことが重要です。ランニング用ウェアは、吸湿速乾性や通気性に優れた機能的な素材で作られており、汗をかいても体が冷えにくい設計になっています。このようなアイテムを使えば、快適に運動できるだけでなく、モチベーションも向上しますよ。
ランニングダイエットを成功させるコツ

ランニングを活用したダイエットは、道具を使わず、誰でも取り入れられるシンプルで効果的な方法の一つですが、確実に効果を実感するためには、いくつかのコツを押さえておくことが大切です。ランニングダイエットを成功させるためのポイントを、取り組む意識やモチベーションの維持方法、食事管理などを交えながら実践的にご紹介します。
結果よりもプロセスを大切に
モチベーションを保つためには、結果ではなくプロセスに意識を向けることがポイントです。体重が減った、筋肉が増えたなどの変化を追い求めるのではなく、「この日はランニングをする」とスケジュールを決め、それを確実に実行することに集中しましょう。たとえば、仕事のスケジュールを立てるのと同じように、ランニングや休息の日をあらかじめカレンダーに組み込むと良いでしょう。
毎回体重計に乗って結果ばかり気にしていると、少しの増減に一喜一憂してしまい、モチベーションが下がる原因になります。「スケジュール通りに運動を続けられている」という達成感を大切にしましょう。
目標設定も短期間ではなく、半年後や1年後といった長期的な視点で考えることがおすすめです。これにより、無理なく継続しやすくなり、結果として大きな成果を得られるはずです。
「頻度」と「強度」が大切
「運動を始めるなら、週に1~2日でもいいですよ」と言いたいところですが、私自身、トレーナーとしてお客様の指導をしている中で週に1回だけの運動で明確に変化を実感できた方はほとんど見たことがありません。
運動で効果を出すために最も重要な要素は「頻度」と「強度」の2つです。どんな運動であれ、適切な頻度で取り組むことが大切です。ランニングだけでなく、運動全般においても、頻度が少ないと効果は出にくい傾向があります。
「強度」というのは、運動が体にどれだけ負荷を与えるかを指します。例えば、ウォーキングのように負荷が軽い運動では、ダイエット効果を見込むのは難しく、より強度の高い運動を取り入れることで、効率よく体を変化させることができます。
運動の効果が出ている方とそうでない方の大きな違いは、この「頻度」と「強度」をどれだけ意識しているかです。どれだけ優れた方法を選んでも、この2つが揃わないと大きな変化は期待できません。少しずつで良いので、適切な頻度と強度で運動を取り入れてみてください。
生活の中でルーティン化する
基本的に運動を行う時間帯はいつでも構いません。スポーツ科学的には、特定の時間帯に運動効果が高いとされるデータがありますが、これは主にトップアスリートが限界まで追い込むトレーニングを行う場合の話です。一般の方にとっては、そのデータを気にするよりも、「自分が運動を習慣化しやすい時間帯」を見つけることが最も重要です。
運動を習慣にするためには、生活の中でルーティン化することが大切です。たとえば、朝起きたら歯を磨いて顔を洗うように、長年続けてきた習慣が崩れるとストレスを感じますよね。同じように、日常生活の中に運動するタイミングを決めることで、それが自然な流れとなり、習慣化しやすくなります。
具体的には、「起きたらすぐにランニングをする」「会社から帰宅後に着替える前に運動をする」「ランチを早めに食べてその後運動をする」といった、自分に合ったパターンを決めることがポイントです。そして、それを繰り返しているうちに、「これをやらないと気持ち悪い」と感じるようになり、生活の一部となります。そうなれば、続けることが格段に楽になります。
習慣化するためには、まず2週間を目標に取り組むのが良いとされています。この期間を意識して継続すれば、自然とランニングが生活に溶け込み、快適に続けられるようになるでしょう。
カロリー制限に注意。栄養バランスの取れた食事を
「運動するとお腹が空いて食べすぎてしまう」と考える方もいますが、重要なのは摂取カロリーの多さではなく、栄養バランスが整っているかどうかです。たとえ摂取カロリーが多くても栄養バランスが良ければ痩せることが可能です。一方で、摂取カロリーが少なくても、栄養バランスが悪い場合は太ってしまうことも。
例えば、1日に900キロカロリーに抑えた極端なダイエットでは、体重は減っても筋肉量が減少し、基礎代謝が低下する可能性があります。さらに、栄養不足が続くと体は「脂肪を溜め込もう」とする防御反応を起こし、体脂肪率が高くなることがあります。実際、低カロリーの食事でも体脂肪率が30%を超えるケースもあります。
逆に、適切な栄養バランスを保ちながら1日2000キロカロリーを摂取する場合、体脂肪率が減少することも十分にあり得ます。健康的にダイエットを成功させるには、摂取カロリーの数字にとらわれず、栄養バランスを重視することが何より大切です。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。