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登山初心者にもぴったり。気軽に楽しめる「低山登山」の魅力とおすすめの服装や装備とは?

登山初心者にもぴったり。気軽に楽しめる「低山登山」の魅力とおすすめの服装や装備とは?
設楽 文昭

監修者

設楽 文昭

1975年創業の人気アウトドアブランド「モンベル」広報部。製品の魅力を伝えるのはもちろん、自社が開催する登山やスキー、カヤックなどのイベントではインストラクターなども務め、アウトドアの楽しさを日々発信している。高校、大学と山岳部に所属していたこともある登山好き。

低山登山は、初心者でも挑戦しやすいアウトドアアクティビティとして人気を集めています。標高が低めの山々は体力に自信がない方でも無理なく楽しめるだけでなく、登山の魅力を気軽に味わえる点が魅力です。

本記事では、低山登山の魅力や、おすすめの服装、そして関東近郊で初心者向けの低山をいくつかご紹介します。美しい自然の中で、心身のリフレッシュをしてみませんか?

低山登山の魅力

低山登山の魅力

「低山」というとその名の通り「標高の低い山」をイメージする方が多いかもしれませんが、実は明確な定義はありません。一般的には、雪があまり積もらない程度で標高1,000m以下の山を指すことが多いようです。初心者でも比較的安全に登ることができる低山ならではの魅力を深堀りします。

初心者でもチャレンジしやすい

低山登山は、初心者でも気軽に楽しめるアウトドアとして人気を集めていますが、その魅力の一つは、標高が比較的低いため体力に自信がない方でも挑戦しやすい点です。多くの低山はアクセスが良好で、公共交通機関を利用して簡単に登山口まで行ける場所が多いのも特徴です。

また、険しい山道は比較的少なく、整備されたルートが多いため、特別な装備がなくても楽しむことができます。四季折々の自然を近距離で満喫でき、疲労感よりも達成感を感じられるのが低山登山の魅力です。

日帰りで楽しめる

標高が高くルートが長い山では、登山泊が必要になることが多く、スケジュール調整やしっかりとした計画が求められます。一方、標高の低い山であれば、テントやシュラフ、調理器具といった装備を準備する必要がなく、比較的身軽な装備で気軽に挑戦できるのがメリットです。

また、都市部からのアクセスが良く、移動時間を短縮できるため、仕事や家事で忙しい人でも週末や休日を利用して楽しむことが可能です。

文化や歴史に触れられる

多くの低山には、古くから人々が生活し、信仰の対象となってきた歴史があります。単に“山を登る楽しみ”だけでなく、地域の歴史や文化に触れることができる素晴らしい体験ができるのです。

生活との距離が近く、歴史や文化と深く結びついている点も低山ならではの魅力ではないでしょうか。低山にはかつて神社や山城があった場所が多く、山を訪れることで、そうした歴史や文化に触れることができます。その背景やストーリーを知ることで、登山が単なる運動ではなく、学びや発見の場にもなります。
特に、近場の低山を訪れる場合には、昔の人々の生活や里山の暮らしの痕跡が残されていることが多く、初めて知る地域の歴史や風景に出会える楽しみがあります。低山登山は、自然の美しさを味わうだけでなく、そこに刻まれた人々の営みを知る機会を提供してくれるものだといえます。

植物や動物の生態系を知ることができる

身近な自然や植生の変化を観察できる点も低山ならではの楽しみ方です。

斜面を見ると針葉樹と広葉樹が入れ替わるような植生の変化があったり、自然の多様性を感じられます。また、低山では高山に比べて動物が多く生息しており、鳥や昆虫などを観察する楽しみもありますね。こうした自然の発見は子どもたちの興味を引きやすく、家族で訪れるのにも最適です。低山ならではの豊かな自然が、登山をより魅力的な体験にしてくれるはずです。

低山登山で気をつけるべきこととは?

低山登山は、手軽に自然を楽しめる素晴らしいアクティビティですが、標高が低いからといって油断は禁物です。どんな山にも危険は潜んでいます。安全に低山登山を楽しむためには、いくつかの点に注意する必要があります。

スタート地点の“標高”に注意を

低山登山では、標高そのものだけでなく、登山口の高さと実際に登る標高差を確認することが重要です。たとえば、標高900メートルの山に登る場合、登山口が標高20メートル地点であれば、実際には880メートルも登る必要があります。

山の高さだけに注目するのではなく、スタート地点の標高とそこからの登りの距離をしっかり把握することで、適切な計画を立てることができます。

低山でも下調べは念入りに

初心者が低山登山に挑戦する際は、まずは情報量が多く、登山者が多く訪れる場所を選ぶのが安心です。情報が少ない山では道に迷うリスクが高く、山道だけでなく登山口へのアプローチが分からず、誤って私有地に入ってしまうこともあります。また、低山であっても岩場や鎖場といった険しい箇所が含まれる場合があり、事前に調べずに行くと事故につながる危険性も。低山だからといって油断せず、事前にルートや環境をしっかりと下調べすることが大切です。

アウトドア時のアクシデントに備えた保険を提供している保険会社も多数あります。モンベルでも、アウトドアを楽しむ人向けの傷害保険を取り扱っています。低山での登山であっても、万が一に備えて加入しておくと安心ですね。

危険生物との遭遇に注意

低山登山では、ヘビや虫、触るとかぶれる植物に注意が必要です。特に、春から秋にかけて活発になるヘビは、山道の脇に潜んでいることが多いため、注意深く歩くことが大切です。また、マダニやヤマビルといった吸血性の虫も存在し、これらは感染症のリスクを伴うことがあるので、登山後には体をチェックしましょう。

さらに、ウルシやイラクサなど、触れるとかぶれてしまう植物も多いため、葉や茎に触れないよう注意が必要です。これらの生物や植物に遭遇しないためにも、登山前に十分な情報を収集し、適切な服装を選ぶことが安全な登山には不可欠です。

携帯電話の電波のチェックを

低山登山を楽しむ上で、携帯電話の電波状況は安全確保に大きく関わってきます。道に迷った時、怪我や体調不良など、万が一の際に連絡を取れるよう、事前に電波状況をしっかりと確認しておくことが大切です。

各キャリアのウェブサイトで、登山予定のエリアの電波状況を確認したり、登山アプリの中には登山ルート上の電波状況が可視化されているものもあります。

夏は熱中症対策を

標高が低いため、夏は市街地並に気温や湿度が高くなることがあります。高温多湿の環境で歩き続けると、体力を消耗し、熱中症になるリスクが高まります。こまめな水分補給を心がけたり、できるだけ午前中の涼しい時間帯に登山をするのが望ましいです。

低山登山は冬がベスト?

関東地方において、低山登山におすすめの時期はずばり「冬」です。冬は危険生物が少なく、安心して登山を楽しめます。また、冬の空気は澄んでいて、視界が広がり、落葉するため、普段は見られない景色を楽しむことができます。しかし、冬登山の注意点として、日照時間が短いため、夕方になると薄暗くなります。したがって、早めに出発し、午後2時や3時頃には下山を終えるように計画しましょう。

冬は寒さで体が温まりにくいですが、適度に動けば汗をそこまでかくことなく快適に登山できます。さらに、冬は室内にこもりがちな季節なので、体を動かす良い機会にもなるでしょう。

プロが厳選!低山登山に最適な装備とは

プロが厳選!低山登山に最適な装備とは

「低山登山を始めるには、どんな装備が必要でどんなものを選んだらよい?」という疑問に答えるべく、登山用品を知り尽くすプロ・設楽さんが厳選した、低山登山にぴったりの装備をご紹介します。初心者の方へ安心安全で快適な登山をサポートするアイテムを詳しく解説します。

まずは必須の装備をチェック

まずはじめに買い揃えておきたい「リュック」「登山靴」「レインウェア」「ヘッドランプ」について、設楽さんにおすすめをお伺いしました。

  • リュック

季節に応じて持ち物の量に変動はありますが、容量が20~25リットルほどあれば必要なアイテムを余裕をもって入れることができます。「モンベル」では、ポケットが多く多機能仕様の「ガレナパック20」や、シンプルなデザインで防水仕様の「ルルイパック23」がおすすめです。

  • 登山靴

固くて重さがあり、足首をしっかりホールドするような高山に適した靴は必要ありません。普段から運動している方であれば、ローカットタイプの軽量シューズ「トレールウォーカー」、運動面に自信がなく、ある程度の足首のサポートが欲しいという方には「マウンテンクルーザー200」というタイプもあります。

  • レインウェア

山の天気は変わりやすいため、レインウェアは必ず持っていくようにしてください。また、急に気温が下がることもあるので、羽織物として活躍してくれるシーンもあります。
モンベルのフラッグシップの雨具で、軽さと防水性、透湿性などすべてを備えている「ストームクルーザージャケットスーパードライテックレインパンツ」や、動きやすく軽快な着心地のエントリーモデル「サンダーパスジャケットパンツ」がおすすめです。

  • ヘッドランプ

天候の変化や思わぬアクシデントに備えて、ヘッドライトは必須の装備です。日没後や天候悪化時など、さまざまなシーンで役立ちます。手元を見やすくする、歩行時や近距離の範囲を照らす、遠方を照らす、の3種類の照射パターンがある「マルチパワーヘッドランプ」や、よりコンパクトな「コンパクトヘッドランプ」といったタイプがあります。

体温調節をしっかりと

低山登山では、体温調節が快適さと安全性を左右するといっても過言ではありません。

薄手のインナーを重ねよう

登山をしていると、動いているうちに体が温まり、汗をかきすぎてしまうことがあります。例えば、インナー1枚の上にシャツ、その上に厚手のアウターを着ると、アウターを脱いだ際に一気に寒くなってしまうのです。そのため、厚手のアウターよりも、薄手のインナーを何枚か重ね着して、気温や体温に応じて調整できる服装をするのが理想的です。その際、インナーは速乾性に優れたものを選んでください。また、小さく折り畳めるインナーダウンも用意しておくと、体温調整がしやすく便利ですよ。

夏場は暑さに応じて判断を

夏でも基本的には長袖・長ズボンがおすすめですが、最近の暑さを考慮すると、半袖を選ぶのも問題ありません。特に熱中症のリスクを避けるためには、無理をせず快適な服装を心がけましょう。ただし、その場合は日焼け対策や虫よけ対策をしっかり行うことが大切です。帽子や日焼け止め、虫よけスプレーなどを活用してください。

あると便利なグッズ

サングラス

サングラスを使用することで、目を紫外線から守りつつ快適に登山を楽しむことができます。また、風やほこり、虫などが目に入るのを防ぐ役割も果たしてくれます。

ホイッスル

万が一、道に迷ったり、怪我をして動けなくなった場合、ホイッスルを吹くことで遠くにいる人に自分の居場所を知らせることができます。声を出し続けると体力を消耗してしまいますが、ホイッスルなら少ない力で音を響かせられるため、効率的に助けを求めることが可能です。

折りたたみ椅子

山道では、座れる場所が限られていたり、地面が湿っていることもありますが、折りたたみ椅子があれば場所を選ばずゆったりと休むことができます。また、最近の折りたたみ椅子は軽量でコンパクトに収納できるものが多く、リュックの中でも邪魔になりません。

携帯トイレ

「O.D.トイレキット」

低山の登山道や休憩所にはトイレが設置されていないことが多く、急な用足しに困ることも。特に長時間の登山や水分補給が必要な夏場には心強いアイテムです。

トレッキングポール

「アルパインポール カムロック ドライグリップ」

特に登りでは推進力を高め、下りでは膝や足への負担を軽減する効果があります。滑りやすい道や不安定な地面でもバランスを取りやすくなり、安全性が向上します。人によって1本でいいのか、2本必要なのかは異なりますので、店頭で相談して購入すると良いでしょう。

飲料用としてはもちろん、汚れた装備を洗い流すときや、熱中症予防のために頭や首にかけて体を冷やすのにも使えます。用途に応じて使い分けられるようにしましょう。

初心者におすすめ。関東近郊の低山5選

初心者におすすめ。関東近郊の低山5選

設楽さんがおすすめする、初心者でも安心して登れる関東近郊の低山を5か所ご紹介します。

ぜひ場所選びの参考にしてみてください。

高尾山(東京都八王子市)

高尾山(標高599m)は、東京都八王子市に位置し、都心から約50kmという好アクセスが魅力の山です。ケーブルカーの運行もあり、気軽に観光気分で登れることから人気が高く、ミシュランガイド3つ星に認定され、年間約300万人が訪れる世界一の登山者数を誇るスポットです。代表的な登山コースは7つあり、舗装道や本格的な山道などバリエーション豊かで、山頂に向かうコースと周回コースを組み合わせることで何度でも楽しめるのが魅力です。

弘法山(神奈川秦野市)

神奈川県秦野市の弘法山は、丹沢山地の東端に位置し、標高は約235メートルです。周辺の権現山や浅間山を含む「弘法山公園」として整備されており、春には約2,000本の桜が咲き誇り、「かながわの花の名所100選」にも選ばれる桜の名所でもあります。頂上の展望台からは富士山や相模湾を一望でき、四季折々の自然が楽しめます。山の名は弘法大師(空海)が訪れたという伝説に由来し、頂上付近には大師を祀る祠が残っています。

宝登山(埼玉県長瀞市)

埼玉県長瀞町にある宝登山(ほどさん)は、標高497メートルで、自然と四季の花々を楽しめる人気の観光スポットです。山頂へはロープウェイを利用するか、ハイキングコースを歩いて登ることができ、頂上からは関東平野や秩父連山の美しい景色を一望できます。特に冬の「ロウバイ園」では、約3,000本のロウバイが咲き、甘い香りと黄金色の花が訪れる人々を魅了します。また、春には梅や桜が咲き誇り、花の名所としても有名です。山頂付近には日本武尊(やまとたけるのみこと)を祀る「宝登山神社」があり、山全体が信仰の対象として親しまれています。

鋸山(千葉県鋸南町)

千葉県鋸南町にある鋸山(のこぎりやま)は、標高329メートルの山で、その名の通り鋸の歯のようなギザギザとした稜線が特徴的です。山頂には日本最大級の石仏「大仏(薬師瑠璃光如来)」や、スリル満点の展望スポット「地獄のぞき」があり、東京湾や富士山を望む絶景を楽しめます。また、山全体が「日本寺」の境内として整備されており、1,500体以上の石仏や磨崖仏が点在する歴史的な見どころも満載です。登山だけでなく、ロープウェイで気軽にアクセスできるため、家族連れにも人気です。

筑波山(茨城県つくば市)

茨城県つくば市にある筑波山は、標高877メートルで、男体山と女体山の二峰を持つ日本百名山の一つです。「西の富士、東の筑波」と称されるほど美しい山容(山のかたち)で、古くから信仰の対象としても親しまれています。山頂へはロープウェイやケーブルカーを利用するか、複数のハイキングコースを歩いて登ることができ、頂上からは関東平野を一望できる絶景が広がります。春の梅や秋の紅葉、冬の霧氷など、四季折々の自然が魅力です。また、山麓に位置する筑波山神社は約3,000年の歴史を持ち、縁結びや夫婦和合のご利益で知られています。

まとめ:お気に入りのアイテムを手に入れて、低山登山にチャレンジしてみよう

まとめ:お気に入りのアイテムを手に入れて、低山登山にチャレンジしてみよう

低山登山は、気軽に楽しめるアウトドアで、初心者が高山に挑戦する前の準備にも最適です。ただし、標高が低くても油断せず、必要な装備をしっかり整えましょう。

登山は本当におもしろいアクティビティです!気持ちよさはもちろんのこと、山を通じてその土地の歴史や文化に触れることもできます。また、下山後に地元のおいしいものを味わったり、温泉でリフレッシュするのも魅力のひとつです。
ただし、低山であってもある程度の情報収集が大切です。わからないことがあれば、「モンベル」をはじめ、アウトドアショップや地元の専門店に足を運び、アドバイスをもらうのがおすすめです。地元ならではの情報や、「この山ならどのくらいで行ける」といった具体的なアドバイスを教えてくれるかもしれません。また、周囲に経験者がいれば、一緒に連れて行ってもらうのも良い方法です。
さらに、登山を通じて同じ目標を持つ仲間と出会えることもあります。一緒に山を楽しむことで、登山の楽しさがさらに広がると思います。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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