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「血糖値スパイク」とは?健康寿命を脅かす意外なリスクとその対策

「血糖値スパイク」とは?健康寿命を脅かす意外なリスクとその対策
赤松 るみ

監修者

管理栄養士 

赤松 るみ

健康食育シニアマスター/食育ライター。36歳まで不健康な会社員として過ごした結果、心と体に不調を感じて退職。人と自分自身を健康にしようと、36歳で栄養専門学校に入学。41歳で管理栄養士免許を取得し、42歳より食事コンサルティングの仕事を開始。現在までに3,000名以上のメタボリックシンドロームの方に食事指導を実施している。食事を変えて心も体も変わった経験をもとに、3食しっかり食べて、体型と健康を維持する食事法をInstagramやYouTubeで発信中。2024年「管理栄養士の3食『米』でもやせるコツ」を出版。食育セミナーや講演、コラム執筆などの活動も行っている。◆YouTubeチャンネル「人生を変える食事の学校」https://www.youtube.com/@rumiaka

食後、いつも眠気に襲われる、だるくてしょうがない…そんな経験はありませんか?

それはもしかしたら、「血糖値スパイク」という現象が起きているのかもしれません。血糖値スパイクが続くと、血管に負担が蓄積し、健康寿命を脅かすリスクが高まることがわかっています。しかし、正しい知識と日々の工夫で、血糖値スパイクを防ぐことは可能です。

この記事では、血糖値スパイクが体に与える影響や、その原因、そして具体的な予防策について詳しく解説します。

食後の倦怠感や、眠気、イライラ。それって「血糖値」スパイクかも?

食後の倦怠感や、眠気、イライラ。それって「血糖値」スパイクかも?

血糖値スパイクとは、健康診断などでは正常値であっても、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急降下する現象です。通常、食後2時間以内に血糖値が140mg/dL以上に上昇すると、糖尿病のリスクが高まるとされています。しかし、血糖値スパイクの場合、この急激な上昇・下降が繰り返されるため、血管や臓器に大きな負担をかけ、さまざまな不調を引き起こす可能性があります。

<血糖値スパイク>

<血糖値スパイク>
(図版参照:厚生労働省

血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急激に下降する現象のこと。ジェットコースターのように血糖値が乱高下することで、血管や臓器に大きな負担がかかり、さまざまな不調を引き起こす可能性があります。血糖値スパイクは糖尿病の予兆とされており、放置すると糖尿病に進行するリスクが高まります。

こんな症状に当てはまる人は要注意

血糖値スパイクの怖いところは、目立った自覚症状が少ないことが多いことです。健康診断では空腹時の血糖値しか測定されないため、見逃されやすいのが現状です。

しかし、以下のような症状がある場合は、血糖値スパイクを疑ってみる必要があります。

  • 食後に強い眠気やだるさを感じる
  • 頭痛や口の渇きがある
  • イライラしやすくなった
  • 集中力が続かない
  • 食べた後なのに急にお腹が空く

これらの症状に心当たりのある方は、一度血糖値の検査を受けてみることをおすすめします。

食後の眠気が強い場合、それは血糖値スパイクが原因かもしれません。食事をすると血糖値が急上昇し、それに対処するために体はインスリンを大量に分泌します。しかし、その結果として血糖値が必要以上に下がり、低血糖の状態になってしまうことがあります。特に食後に強い眠気を感じる場合、低血糖が関係している可能性が高いです。また、低血糖になると脳が糖分不足を感知し、甘いものを欲したり、強い空腹感を感じたりすることがあります。「さっき食べたばかりなのに、もうお腹がすいた」「無性に甘いものが食べたい」と感じる場合は、血糖値スパイクが起きているかもしれません。

血糖値スパイクがもたらすリスク

血糖値スパイクがもたらすリスク

血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急降下する現象です。これが繰り返されると、私たちの身体にどのような影響を与えるのでしょうか。

血管へのダメージと動脈硬化

血糖値が急上昇すると、活性酸素が発生し、血管の内壁を傷つけます。これが繰り返されることで血管の柔軟性が失われ、動脈硬化が進行します。動脈硬化が進むと、高血圧や糖尿病のリスクが高まり、さらに心筋梗塞や脳梗塞、狭心症などの深刻な疾患を引き起こす可能性があります。

肥満と脂肪の蓄積

血糖値が急上昇すると、インスリンというホルモンが大量に分泌され、血糖値を急激に下げようとします。しかし、その過程で余分な糖が脂肪として蓄えられ、結果的に肥満や内臓脂肪の増加につながります。これが続くと、メタボリックシンドロームや生活習慣病のリスクが高まります。

イライラや集中力の低下、うつ病のリスク増加

血糖値スパイクを繰り返すと、インスリンが過剰に分泌される状態が続き、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が生じるリスクが上がります。この状態が進行すると、膵臓が疲弊し、十分なインスリンを分泌できなくなり、血糖値を下げる能力が下がり、最終的には2型糖尿病の発症につながることがあります。

老化の促進

血糖値が高い状態が続くと、「糖化」と呼ばれる現象が起こります。これは、血糖が体内のタンパク質と結びつき、「終末糖化産物(AGEs)」という有害物質を生成する反応です。AGEsが増えると、肌のシミやしわ、関節の劣化など、体の老化が加速することが分かっています。

近年の研究では、血糖値スパイクが認知症のリスクを高める可能性があるともいわれています。また、高血糖状態は免疫力も低下させ、感染症にかかりやすくなることも指摘されています。血糖値スパイクの自覚症状がある方は、早期に対策を行うことが大切です。

血糖値スパイクになりやすい人の特徴

血糖値スパイクになりやすい人の特徴

血糖値スパイクは、特定の生活習慣や体質を持つ方により起こりやすい傾向があります。

なりやすい方の主な特徴を見ていきましょう。

朝食を抜く

朝食を抜くことで、体の血糖コントロールが乱れやすくなります。特に昼食で多くの炭水化物を摂取すると、急激な血糖値の上昇を引き起こす可能性があります。

早食い

よく噛まずに食べると、血糖値が急激に上昇します。食べ物をゆっくりとよく噛んで食べることで、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。

炭水化物中心の食事

白米やパン、麺類など、精製された炭水化物中心の食事は血糖値を急激に上げる原因になります。炭水化物、タンパク質、脂質をバランス良く摂取し、食物繊維を積極的に摂るようにしましょう。

睡眠不足

睡眠不足は血糖値を上昇させる原因のひとつです。質の高い睡眠を確保するために、寝る前にカフェインを摂取しない、寝室の環境を整えるなどの工夫をしましょう。

運動不足

定期的な運動は血糖値の管理に重要です。運動不足は筋肉量の減少につながり、血糖値の調整機能が低下する可能性があります。運動不足を解消し、インスリンの働きを高めるために、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を行いましょう。また、スクワットなど、筋肉を鍛える運動も大切です。

遺伝的要因

糖尿病の家族歴がある方は、血糖値スパイクが起こりやすい傾向があります。健康診断などで、空腹時血糖値やHbA1cの数値を定期的に確認しましょう。

血糖値スパイクの傾向には個人差があり、すべての方が同じようにリスクを抱えているわけではありません。しかし、健康的な生活習慣を心がけることで、血糖値スパイクのリスクを低減することができます。

血糖値スパイクを防ぐための5つの対策

血糖値スパイクを防ぐための5つの対策

もしかしたら、自分は血糖値スパイクに当てはまるかもしれない…とお悩みの方も、今日から生活習慣を変えることで、血糖値スパイクの進行を防ぎ、症状を改善することができます。

ここからは、管理栄養士の赤松さんに、血糖値スパイクを防ぐための5つの対策について解説していただきます。

食事間隔を守る

朝食を抜いたり、食事の間隔が空きすぎると、次の食事で血糖値が急激に上昇しやすくなります。朝食は必ず摂取することが重要です。特に、仕事などで夕食が遅くなり、昼食から8時間以上経過して食べるような方は、間に補食(補う食事)を取り入れることをお勧めします。

小さめのおにぎりや、食べる数を調整しやすい天津甘栗など炭水化物を含む軽い食事を摂り、食べた分の炭水化物を夕食から減らすことで、夜遅くに食べる時の血糖値スパイクを抑制できます。

「間食」ではなく「補食(補う食事)」という考え方で、適切な食事を挟むことが重要です。補食を行うことで、夜遅い食事による血糖値スパイクを防ぎ、より健康的な食生活を送ることができます。

バランスの取れた食事を心掛ける

食事の際は、糖質の摂取量に気を配り、一回の食事で糖質を摂りすぎないようにしましょう。 ご飯やパン、麺類などの糖質は適量を意識し、バランスよく食べることが大切です。食物繊維は糖質の吸収を緩やかにし、タンパク質は満腹感を持続させる効果があります。また、おかずを先に食べることで、糖質の急激な吸収を抑制することができます。

炭水化物も身体を動かす必須エネルギーです。炭水化物は極端に減らしたり抜いたりするのではなく、適量を守ることが大切です。目安として、ご飯はしっかり茶碗1杯分を意識すると、無理なく続けられます。味噌汁は具沢山にして、よく噛んで食べましょう。 野菜や豆腐、きのこなどをたっぷり入れることで、満足感が得られ、血糖値の急上昇を防ぎやすくなります。

適度な運動を取り入れる

運動は、血糖値を安定させるために非常に有効です。食後30分以内に10~15分程度のウォーキングをすると、血糖値の急激な上昇を防げます。エレベーターではなく階段を使う、こまめに立ち上がるなどの工夫も効果的です。

スクワットなどの軽い筋力トレーニングを行うのもおすすめです。筋肉量が増えると食後の高血糖を抑えられるので、血糖値のコントロールがしやすくなります。

間食や飲み物の選び方

ジュースや砂糖入りのコーヒー・紅茶は血糖値を急上昇させるため、水やお茶、無糖の炭酸水などを選びましょう。また、菓子パンやスナック菓子は血糖値スパイクを引き起こしやすいため、できるだけ避けるようにしましょう。

オフィスワーカーに多い「チョコレートなどの甘い間食」には注意が必要です。砂糖は吸収スピードが早く、血糖値スパイクを招きやすいため、エネルギーとして長続きしません。すぐに空腹感が戻り、帰宅後の過食につながりかねないため、空腹な時は甘い間食ではなく「補食」を意識しましょう。

ストレス管理と睡眠の質向上

ストレスや睡眠不足も血糖値スパイクを引き起こす原因となるため、日々の生活習慣を見直すことが大切です。深呼吸やストレッチ、趣味の時間を持つことで、ストレスを軽減できます。入浴や軽い運動を習慣にすることで、自律神経が安定し、血糖値の乱高下を防げます。睡眠不足は血糖値を上昇させやすくするため、寝る前のスマホ使用を控え、規則正しい生活を心掛けましょう。

ストレスコントロールは自力では難しいですが、食事を1日3回、よく噛んで食べることで、心をリラックスさせる自律神経がよく働くようになります。また、なるべく決まった時間に食事から栄養をとると、脳が空腹によるストレスから解放され、心も満たされてストレス軽減に繋がります。睡眠不足もストレスを溜める大きな要因となるため、しっかりと睡眠をとることも重要です。

まとめ:健康寿命を守るために、今からできること

まとめ:健康寿命を守るために、今からできること

血糖値スパイクを防ぐことは、単に食後の体調を整えるだけでなく、将来の健康を守るためにも非常に重要です。血糖値スパイク対策は、未来の自分の健康への投資です。日々の小さな積み重ねが、10年後、20年後の健康を大きく左右します。無理のない範囲でできることから始め、健康的な生活を続けていきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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