自身の卵子を凍結保管できる「卵子凍結」は、いつかパートナーと一緒に妊娠・出産を望んだときにできる限り成功させたいと考える方におすすめの方法です。20〜30歳代の卵子を保管しておくことで、自身のキャリアや趣味など、今最も優先させたいことに集中することもできます。
この記事では、卵子凍結のやり方やメリット・デメリットなどを解説します。卵子凍結のことを知らずに踏み出せず、後になって後悔することのないように、ぜひ最後まで読んでみてください。
- 卵子凍結をすることで、年齢による妊娠率の低下や流産、赤ちゃんの疾患のリスクを減らせる
- 卵子凍結は、排卵誘発や採卵をするために通院が必要。
- 卵子凍結は、今パートナーがいない女性が行うことが多い。自治体によっては助成金が支給される場合がある。
- 必ず妊娠できるわけではなく、副作用などのデメリットもある。
そもそも卵子凍結とは?
卵子凍結とは、自分の卵子を液体窒素で凍結して一定期間保管することです。若いときの卵子を多く凍結保管しておき、妊娠・出産を望んだタイミングで体外受精を行うことで妊娠率を上げることができます。
というのも、年齢を重ねると女性の卵巣機能は低下してしまうことがわかっています。卵巣機能の低下とともに卵子の質も低下し、妊娠率の低下や卵子の染色体異常のリスク上昇が考えられるのです。卵子の染色体異常が起きると、流産の可能性やダウン症のような疾患をもつ赤ちゃんが産まれる可能性が高まります。
また、卵子のもとになる卵母細胞は胎児の頃に全て作られるため、その後増えることはありません。年齢を重ねることで正常な卵子が減少していくリスクがあるため、いつか妊娠・出産をしたいという女性の選択肢の一つとして、卵子凍結を検討してみると良いでしょう。
現在、日本生殖医学会が出しているガイドラインによると、40歳以上の卵子凍結や45歳以上での凍結卵子の使用は推奨できないとされています。また、卵子凍結は現在パートナーがいない女性が行うことが多く、婚姻関係もしくは事実婚のパートナーがいる場合には、卵子凍結よりも受精卵凍結が推奨されています。
卵子凍結のやり方
気になる卵子凍結のやり方を見ていきましょう。卵子凍結では、大きく分けると①採卵②凍結保管③受精④胚移植の4つのステップを行います。
- 採卵
卵子凍結を考えたタイミングで、専門の医療機関やクリニックを受診します。最初の受診では事前説明やホルモン値・卵巣機能などの検査を行うでしょう。
検査結果に問題がなければ、排卵誘発剤を使用して卵巣を刺激し、卵子を1〜複数個成熟させていきます。
卵子が成熟したら膣から細い針を刺して卵子を吸い出す採卵を行います。 - 凍結保管
基本的に、採卵した医療機関で卵子を凍結保管します。マイナス196℃の液体窒素を使って卵子を凍結していきます。凍結する卵子は1個ではなく、個人差があるため1-30個とさまざまです。採卵数は主にAMH 値というホルモン値によって決まってきてしまいます。
卵子の凍結保管する期間は医療機関により決まっており、場合によっては期間を延長しながら保管していきます。 - 受精
パートナーとの妊娠を望むタイミングになったら凍結していた卵子を融解し、体外受精へと進みます。
顕微授精を行い無事に受精卵となったら、「胚」という段階になるまで細胞分裂をくり返します。
凍結した卵子は、融解する時点でダメージを受けることもあり、卵子や精子の状態によっては必ずしも受精卵・胚にならないということも認識しておきましょう。 - 胚移植
無事に受精卵が胚になったら、子宮に胚移植を行い着床・妊娠のステップへと進みます。
卵子凍結が選ばれる理由
ここでは、女性が卵子凍結を選択する理由について解説します。
まだパートナーがいない・結婚していないから
女性から採卵をして凍結保管する方法には、卵子凍結の他にも受精卵(胚)凍結もあります。受精卵凍結は、女性の卵子と男性パートナーの精子を体外受精させた受精卵を細胞分裂させ、胚の状態で凍結保管する方法です。
受精卵凍結と卵子凍結の成功率には差がありますが、1つの受精卵を凍結するまでに卵子は3-4個程度必要になるため、一概には比較できません。
そのため、現在パートナーがいない女性は卵子凍結を、すでにパートナーがいる場合には受精卵凍結をすることが推奨されています。実際に、卵子凍結を選択した女性の場合、未婚の方が約90%を占めていることがわかっています。
自分の仕事が多忙で妊娠に向けた活動できないから
卵子凍結を選択する人の中には、現在は職場で責任ある立場にあったり、自分のキャリアに集中したかったりして、数年間は出産が厳しいという方もいます。
東京都の資料によると、卵子凍結をする方のうち90%以上が働いていて、そのうち74%の方が正社員であるというデータが出ています。
自分のキャリアに集中するためにプライベートの悩みをなるべく減らしたいという女性の方に、卵子凍結は選ばれているのかもしれません。
パートナーの職場環境による影響を受けてタイミングがないから
卵子凍結は、場合によってはパートナーのいる女性が選択することもあります。パートナーと離れて暮らしていることにより、受精卵凍結ができない場合があてはまるでしょう。
例えば、パートナーの勤務先の影響で単身赴任や別居婚をしている場合には、受精卵凍結や不妊治療が思うようにできません。このような場合では、パートナーと一緒に住めるようになるタイミングやパートナーの精子を使って受精ができるタイミングまで、質の良い卵子を保管し、将来の妊娠率を高めておけるのです。
【番外編】自治体で助成が受けられることがきっかけで卵子凍結を選ぶ方も
卵子凍結の助成制度がある自治体があることを知り、卵子凍結を選ぶ方もいます。2024年9月現在では東京都や大阪府池田市ですでに制度を開始しています。さらに、山梨県では、卵子凍結の助成制度を開始するための最終調整を行いながら、プレコンセプションケア(妊娠へ向けた健康づくり)のセミナーを行なっています。
東京都の助成制度の場合、対象となるのは東京都に住む女性の中で、以下の内容を満たす方です。
- 採卵をした時の年齢が18〜39歳
- 自由診療による「加齢等による妊娠機能を懸念する場合に行う卵子凍結」を行った
一方で、保険や別の助成制度が適用される次の卵子凍結は助成対象外です。
- 不妊治療のための卵子凍結
- がん治療のために妊孕性(にんようせい:妊娠するためのはたらき)を温存するための卵子凍結
不妊治療の保険適用については、下記の関連記事をご覧ください。
また、東京都の場合には、凍結保存した卵子を使用して体外受精を行う場合にも、生殖補助医療への助成制度を設けています。体外受精を行うときの女性が43歳未満の場合、助成を受けられます。
卵子凍結する3つのメリット
それでは、ここからは卵子凍結によって得られるメリットを見ていきましょう。
病気の治療をしても妊娠する可能性を残せる
卵子凍結をすると、将来妊娠する可能性を残しながら病気の治療をすることができます。
20〜40歳代の女性は、子宮頸がんや卵巣がんなどの婦人科系の病気にかかりやすく、治療法によっては将来妊娠できる機能(妊孕性:にんようせい)が失われてしまう可能性もあります。そのような場合に卵子凍結を行うこともあります。こうすることで、病気の治療が終わった後でも妊娠する可能性を残すことができます。
スキルアップ・キャリアアップのチャンスが得られる
仕事や趣味が充実しているとき「将来は妊娠したいけれど今は違う」と考えることでしょう。ですが、妊娠しやすい年齢にはリミットがあるため「結婚して妊娠も考えなくては」と焦ってしまう方もいるのではないでしょうか。
このような方にとって、卵子凍結をして妊娠の可能性を残しておくことは、ライフプランの選択肢を広げることにつながるでしょう。卵子凍結をすれば必ず妊娠できるとは限りませんが、将来への不安を減らす手助けになります。
卵子凍結により将来妊娠する確率を高められる
若いうちに卵子凍結をすれば、将来妊娠する確率を上げられるかもしれません。健康な女性であっても、妊娠率は30歳から徐々に下がり、35歳や40歳のタイミングで急激に低下します。
この記事を読んでいる今が、卵子凍結ができる最も若いタイミングです。いつか妊娠したいという方は、選択肢のひとつとして卵子凍結を検討してみることもおすすめです。
卵子凍結する3つのデメリット
卵子凍結はメリットばかりではありません。デメリットも把握した上で、卵子凍結の検討をしてみてください。
副作用・合併症のリスクがある
採卵するために使用する排卵誘発剤は医薬品のため、使用中に副作用が発生することがあります。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、排卵誘発剤によって卵巣が過剰に刺激されてしまい、卵巣が膨れ上がりお腹や胸に水がたまってしまう副作用です。軽症の症状として、お腹のはり・腹痛・吐き気・体重の増加などが発生し、その頻度は6-8%といわれています。重症になると血栓症のリスクとなるため入院管理が必要ですが、その頻度は1%未満です。
そのほか、採卵時に出血や感染などのリスクはそれぞれ0.1%以下ですが、もあるため、体調の異変を感じたら医師に相談しましょう。
必ずしも妊娠することは保証されない
卵子凍結をすれば必ず妊娠・出産できるわけではありません。日本産科婦人科学会の2023年の報告では、凍結保管をした卵子を用いた場合の出産の確率は、卵子1個あたり4.5~12%と報告されています。この確率は採卵したときの年齢にもよるため、卵子凍結を早めに行うと妊娠率を上げることにつながるでしょう。
また、凍結した卵子を融解する段階でダメージを受けてしまうこともあるため、多めに採卵して凍結保管することも考えておくと良いでしょう。
費用にがかかる
卵子凍結の費用は、現状では全額自由診療です。さらに凍結卵子を保管する費用もかかります。これらの費用は医療機関によって異なりますが、東京都の調査では平均30~60万円かかると報告されています。
また、卵子凍結施行は妊娠の計画に寄与するといわれており、今後の備えとして行うことを第一に考える方が多いです。
卵子凍結は「万が一の場合に備えて」行う、保険的な役割であることを意識しておくと良いでしょう。
卵子凍結で後悔しない!クリニックを選ぶときのポイント
卵子凍結を考える方の中には、クリニック選びに悩む方も多いでしょう。ここでは、卵子凍結を行うクリニックを選ぶポイントを3つご紹介します。
クリニックへの通いやすさ
最も大切にしたいポイントとして、クリニックへの通いやすさがあります。卵子凍結をする際には、検査や排卵誘発剤の効果が出ているか、そして採卵のために平均4~5回の通院が必要です。
また、通院のタイミングは自分で選ぶことが難しく、1~,2回は仕事を休んだり遅刻・早退したりする必要が出てくるかもしれません。そのため、自宅や職場から通いやすいクリニックを選ぶと良いでしょう。
治療にかかる費用(料金プランなど)
卵子凍結をする際にかかる費用は保険適用にはなりません。そのため全額自己負担になる点には注意しましょう。
費用はクリニックや卵子凍結のプランによって異なりますが、30〜60万円前後かかると言われています。さらに、凍結卵子の保管期間を延長することでも費用がかかるでしょう。
自治体によっては卵子凍結の助成制度がありますが、基本的に卵子凍結が終了してから申請するものです。初めはご自身で費用を負担する必要があり、助成される金額も決まっているため、卵子凍結にかかる費用は前もって確認する必要があります。
これまでの実績
卵子凍結をする方にとって一番気になるのは「妊娠することができるのか」という点ではないでしょうか。凍結した卵子は融解してパートナーの精子と受精させ、受精卵(胚)の状態でご自身の体に着床させる必要があります。
また、クリニックによっては受精成功率や妊娠率を実績として公表しています。クリニックが開催するセミナーやクリニックのホームページで判断することもできるため、クリニック選びの参考にしてみましょう。
カウンセリング
卵子凍結を行って後悔をした人はほとんどいないといわれていますが、一部、後悔をしたかどうかに関わっているといわれているのが卵子凍結前に十分なカウンセリングを行ったかどうかです。
カウンセリングをしっかり行い、卵子凍結を行うかどうかの意思決定をサポートしてもらったかどうかは重要なポイントになります。
Grace Bank(グレイスバンク)提携クリニックから探すのもひとつの手!
「たくさんあるクリニックから自分に合った場所を選ぶのは難しい」と感じている方は、専門のサービスが提携しているクリニックを基準に選んでみることもおすすめです。
例えば、凍結卵子の保管専門サービスを行っている「卵子凍結保管サービス グレイスバンク」では、全国のクリニックと提携しています。一般的には採卵・凍結卵子の保管・受精は全て一つのクリニックで行いますが、「グレイスバンク」を利用すると全国の提携クリニックから体外受精するクリニックを選べます。
グレイスバンクでは、23年間無事故の管理体制がある大型タンクで凍結卵子を保管できます。自然災害や保管状況の心配がある方には特におすすめのサービスです。全国から選べる厳選された「グレイスバンク」の提携クリニックを一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
卵子凍結も行っているグレイス杉山クリニックSHIBUYAの岡田院長へのインタビュー記事も参考にしてみてください。
おわりに
将来に備えて質の良い卵子を少しでも残しておきたいなら、卵子凍結を検討してみると良いでしょう。採卵には手間や費用もかかりますが、卵子凍結をして将来への不安を少しでも減らすことで「今やりたいこと」に集中できるかもしれません。
心配事がある方は、卵子凍結保管サービス「グレイスバンク」のオンライン個別相談や、近隣のクリニックで相談・診察を受けてみると良いでしょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。