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加齢とともに気になる口の中の病気とは?

加齢とともに気になる口の中の病気とは?
猪股 美菜 歯科医師・歯学博士

執筆者

歯科医師・歯学博士

猪股 美菜

1983年生まれ。2007年歯学部卒業後、臨床研修医として大学病院に在籍。その後大学院歯学研究科(口腔病理学講座)に所属。大学院では口腔内病変の病理診断を学ぶとともにレーザー治療の研究に邁進。卒業後は勤務医として働く。「週に5時間」を自分の勉強時間と課し、より良い治療や研究を探索している。一児の母。

加齢とともに増える口の中の病気の代表格は歯周病です。歯を磨くと血が出る、歯がグラグラして痛みを感じる、などが主な症状です。実は、歯周病以外にも、加齢とともに増えてくる口の中の病気があります。今回は、加齢による口の中の変化をふまえ、加齢とともに気になる口の中の病気をお伝えします。

加齢に伴う口の中の変化

加齢に伴う口の中の変化

他の臓器と同じように、口の中も加齢に伴いさまざまな変化が見られます。歯がすり減って短くなったりひびが入ったりします。そして歯周病により歯ぐきは下がり、歯と歯の間にものが詰まりやすくなります。

唾液腺も萎縮してくるので唾液の分泌が低下します。これにより、自浄作用が低下するので、口の中の汚れが溜まりやすくなります。また、舌の表面には甘味、苦味などを感知する味蕾という組織が存在します。これらも加齢とともに萎縮してくるので、味の濃淡がわかりづらくなります。

このように、個人差はあるものの、加齢に伴う口の中の変化は誰にでも起こります。それが病気を発症する一端となることも珍しくありません。

加齢とともに見られる口の中の病気の症状

加齢とともに見られる口の中の病気の症状

口臭症

生理的な口臭は誰にでもあります。特に、起床時や空腹時には唾液の分泌が減るため、口の中の浄化作用が衰えて口臭が強くなります。

また、においの強い食品の摂取や、飲酒、喫煙、薬剤の服用などによって口臭が起こることがあります。しかし、他人にも感じられるような強い口臭が常にある場合は、口の中の清掃が不十分であったり、口の中以外の病気が原因のこともあります。例えば、糖尿病では口の中が乾きやすくなるため、唾液の分泌量も低下し口の中が汚れやすくなって口臭がきつくなります。

味覚障害

味覚障害として、食べ物の味がわからなくなったり、味が薄く感じられるようになったりするケースが多いです。人によっては、口の中に何もないのに苦みや渋みを感じたり、特定の味だけに鈍感になったり、本来とは違う味を感じたりすることもあります。味覚障害の原因はさまざまです。全身性の病気が原因の場合や口腔乾燥から起こる場合もあります。

口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)

軽度の場合は口の中の乾燥感を覚える程度ですが、重度になると灼熱感や痛みが起こります。これは加齢に伴い、唾液腺の老化で唾液分泌が減るのが主な原因です。しかし、口腔乾燥症は糖尿病や鉄欠乏性貧血などの疾患でも起こります。

三叉神経痛(さんさしんけいつう)

電気が走るような激しい痛みが数秒から数分間続きます。これは顔の片側に突然起こり、あくびやくしゃみ、会話の時、顔を洗った時などに突然起こります。三叉神経は、歯の知覚も支配しているので、ごくまれに、歯の痛みを訴える方もいます。

顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)

主に顔の片側に麻痺があらわれます。顔の筋肉がまひを起こすため、たとえば目を閉じようとしてもまひしている側のまぶたが完全に閉じることができなかったりします。その他、頬や口角が反対側に引っ張られたり、まひ側の口角からよだれが垂れるなどの症状が見られたりします。

加齢とともに気になる口の中の病気の治療法について

加齢とともに気になる口の中の病気の治療法について

口臭・味覚障害・口腔乾燥症

口臭はプラークや歯石などが溜まっていたり、虫歯を放置したままにしておくことで発生することがほとんどです。例えば糖尿病など全身疾患性と見られる口臭も、虫歯の治療、歯石プラークの除去を行い、口の中を清潔に保つことで口臭はかなり軽減されます。

加齢とともに起こる味覚障害は味蕾の萎縮が主な原因ですが、ミネラルの「亜鉛」を食事から積極的に摂ることで改善することができます。亜鉛は牡蠣、数の子、煮干などに含まれます。サプリメントで摂取してもいいでしょう。

口腔乾燥症に有効なのは、唾液腺の活動を高める細かな作業を日常生活に取り入れることです。よく噛んで食べ、唾液分泌を促す・酸味のある食べ物を時々摂って、唾液分泌を促す、などです。その他、唾液腺のマッサージや口まわりの筋肉のマッサージ、こまめにうがいをすることも効果があります。また、口が渇く他に、目や鼻の乾燥も気になる場合、シェーグレン症候群という自己免疫疾患の場合もあります。このような症状があれば受診の際に伝えてください。

三叉神経痛

薬物治療や外科的治療があります。薬物治療では特にカルバマゼピンという抗けいれん薬が有効です。薬物治療が奏功しない場合は麻酔薬などを注射し、神経をまひさせる治療法もありますが、効果が持続する時間は人によってまちまちです。治療効果があがらず、生活に支障をきたすようであれば、手術による根本的な治療も選択肢としてあります。

顔面神経麻痺

顔面神経麻痺の多くはウィルス性の麻痺なので、顔面神経の炎症を取るステロイドと抗ウイルス剤による治療が行われます。軽症の麻痺の場合は2週間から4週間程度で回復しますが、症状が緩解しない場合検査を追加し、外科的治療を行う場合もあります。

加齢とともに気になる口の中の病気についてみんなのお悩みに答えるQ&A

加齢とともに気になる口の中の病気についてみんなのお悩みに答えるQ&A

Q 口臭が気になる場合は何科に行けばいいの?

歯科医院を受診してください。まずはじめに口の中の衛生状態をチェックしてもらいましょう。

Q 口の中や舌を噛むことが増えた気がするのですが、加齢のせいですか?

加齢とともに歯周病で歯を失ったり、歯がすり減ってくることで口の中や舌を噛んでしまうことはあります。一度歯科医院を受診され、相談するといいでしょう。

Q 最近口の中が乾いていることが多いのですが、病気でしょうか?

病気が関連して起きる口の中の乾燥もあります。生活に支障があったり、気になるようならかかりつけの医師や歯科医師に相談してみてください。

Q 歯がぐらぐらしているのですが、虫歯ですか?

歯がぐらつくのは歯周病菌により歯を支える骨が壊された可能性が高いです。歯科医院で定期検診を受けることをおすすめします。

加齢とともに気になる口の中の病気の治療後について

治療を受けたあとも気になる症状があればきちんと医師に伝えてください。加齢とともに気になる口の中の病気は症状により治療法が変わってきます。

歯科医からのメッセージ

口の中も加齢とともに変化していくのが自然の流れです。全身性疾患から症状が出ている場合や、服用している薬の副作用から症状が出ている場合もあるので、歯科を受診する際も、おくすり手帳をお忘れなく持ってきてください。

参照:日本口腔外科学会

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