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【医師解説】冬場に発熱や関節痛などを感じたら、それはインフルエンザウイルスかも?

【徹底解説】冬場に発熱や関節痛などを自覚した際には、インフルエンザウイルス感染症を疑いましょう。インフルエンザウイルス感染症の主な特徴、症状、検査、治療などを紹介します!
甲斐沼 孟 医師

執筆者
甲斐沼 孟 医師

私は医師として15年以上キャリアを積んできました。これまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。全国学会での学術発表や論文執筆などの多角的な視点で医療活動を積極的に実践しています。さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門的知識を活かして誠心誠意対応します。

気温が下がってくると気になるのが、インフルエンザウイルスへの感染です。世間一般的に表現するインフルエンザ(英語表記:influenza)とは、子どもから大人まで感染する恐れがあり、インフルエンザウイルスによって特に冬場を中心に発熱や関節痛などの症状を引き起こすウイルス感染症のことを指しています。 

現代においても人類にとって最大級に注意を払う必要がある疫病であり、インフルエンザが流行した場合は特に、高齢者層を中心としてインフルエンザウイルス感染症による死亡者数や肺炎に伴う死亡者数が増加することが指摘されています。今回は、インフルエンザウイルス感染症の主な特徴、症状、検査、治療などを含めて解説していきます。 

インフルエンザ ウイルスの3つのタイプ

インフルエンザ ウイルスの3つのタイプ

毎年冬場のシーズンになると、今年は「〇〇タイプのインフルエンザが流行する」だろうとニュース番組でも紹介されているので、インフルエンザには数種類のタイプがあることをご存知の方も多いでしょう。

インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする感染症であり、A型、B型ウイルスは、ヒトインフルエンザの原因となり、毎年冬場の時期を中心に流行すると伝えられています1)。 

インフルエンザウイルスは主にA型、B型、C型の3種類に大別されており、人同士で感染しやすく流行的な広がりを起こすタイプはA型とB型のウイルスであると考えられています。 

特に、A型のインフルエンザは、歴史的にも数年から数十年ごとに繰り返して世界的なパンデミックが認められてきましたが、この背景には突如としてスパイク蛋白の抗原が変異して従来のウイルスタイプから別の亜型ウイルスが出現することで引き起こされます。 

過去には、1918年にスペインかぜが出現、1957年にアジアかぜが流行、1968年には香港型、その次には1977年にソ連型が感染拡大を引き起こした歴史的経緯があります。 

C型インフルエンザに関しては、A型やB型と同様にインフルエンザウイルスに感染することで症状を起きますが、基本的には日本では概ね6歳前後までにほぼ全員が罹患しており、感染しても軽度の症状で終焉して実際の診療現場では大きな問題になりません。

インフルエンザウイルスの構造

インフルエンザウイルスの構造

インフルエンザウイルスは、基本的に宿主細胞から由来する脂質二重膜、およびウイルス糖タンパク質から構成されるエンベロープと呼ばれる部位で包まれるように存在しています。 

インフルエンザウイルスは直径80-120nmサイズのエンベロープと呼ばれる突起物に覆われた球形のウイルスであることが知られています。 

通常では、インフルエンザウイルスの表面には、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼという2種類のスパイク蛋白が存在し、これらの抗原蛋白がウイルス感染を起こす重要な役割をしています。 

ヘマグルチニンは、咽頭や気管支にウイルスが結合して感染を引き起こしてウイルスを細胞内に取り込む役割をする糖蛋白であり、ノイラミニダーゼは、ヘマグルチニンと感染細胞の結合を切離してウイルスを細胞から放出させる働きを担っている糖蛋白と考えられます。 

インフルエンザウイルス感染症に関連する知識

インフルエンザウイルス感染症に関連する知識

 症状

インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染したことで発症することが知られており、その感染する経路としてはインフルエンザ感染者のくしゃみや咳から発出される飛沫内容物に含まれているウイルスを吸い込むことでうつる飛沫感染です。 

また、ウイルスが付着している方の手指や物体に触れることで感染が伝播する接触感染によっても、インフルエンザウイルス感染症を発症すると考えられています。 

インフルエンザウイルス感染症による症状としては、38度以上の発熱、悪寒、頭痛、咳嗽、関節痛、全身倦怠感、食欲不振などの全身症状に加えて、鼻水やのどの痛みなどが知られており、一般的には発熱症状は3日間から5日間程度継続して1週間前後で治癒します。 

時に、成人では気管支炎や肺炎を合併して、子どもでも中耳炎や熱性けいれんなどを併発し、重症化することがありますので十分に注意する必要があります。 

特に、高齢者や呼吸器疾患など慢性の基礎疾患を有する場合には、インフルエンザそのもの、あるいはもともとの持病が悪化して死に至る可能性も否定できません。

症状に関するチェックリスト

インフルエンザが流行している冬場などの時期に、急に発熱や関節痛、咳、のどの痛みなどの症状を自覚して、鼻汁や鼻閉、頭痛などの症状を随伴している際には、インフルエンザウイルスに感染している可能性があります。 

また、インフルエンザウイルス感染症と診断されている方と濃厚に接触するような場合には、自らも同様に罹患するリスクが高まることを認識しておく必要があります。 

受診目安   

発熱や関節痛症状を呈して、できるだけ安静を保ちながら休養を確保しても、症状が改善せずに具合が悪ければ速やかに内科など専門医療機関を受診して相談するようにしましょう。 

特に、小児や高齢者、基礎疾患をお持ちの方は、症状が重篤になる危険性が通常よりも高いと考えられるために、早めに最寄りのかかりつけの先生や内科医に問い合わせをしてください。 

検査

検査

ウイルス検査には抗原ELISAA法、PCR法、ウイルス分離法などがありますが、迅速診断キットによるインフルエンザウイルスの抗原検査を実施するのが一般的です。 

インフルエンザの検査はウイルスの抗原検査と抗体検査に大別されており、前者はインフルエンザウイルスを検出し、後者では感染者体内のインフルエンザウイルスに対する特異抗体を検出することを目的とした検査方法です。 

治療 

治療

タミフルなどの抗インフルエンザ薬を症状が出現してから、48時間以内(2日以内)に服用すると効果的であると考えられています。 

また、対症療法としてできるだけ安静を保って、十分な睡眠と栄養バランスが優れた食品を摂取して、脱水症状を予防するために積極的に水分補給を行うことが重要です。 

無理をせず、仕事や学校も休んで、自宅で安静を保ち、休養を十分に確保するようにしましょう。またお茶やスープなどの水分をこまめに摂取して、同居家族などは、患者からなるべく感染しないように手をこまめに洗ってうがいを励行しましょう。 

自宅でできる改善方法 

我々は毎日色々なものに触れて生活していますが、そうした行為で自分の手や指にもインフルエンザウイルスが付着していることが懸念されますので、こまめにウイルスの体内侵入を回避するために手洗いやうがいなどを心掛けましょう。 

例えば、外出先から自宅に帰ってきた時、料理を作る前後、あるいは食事を摂取する前などにはウイルス自体は石鹸に弱いと考えられていますので、適切な方法で手を洗うように努めることが重要です。 

また、このウイルスは特に免疫力が弱っている場合には感染しやすいと伝えられていますので、普段から睡眠を良好に保つ、バランスがとれた栄養のある食事を規則正しく摂取して自分自身の免疫力を高い水準に維持するように努めましょう。

インフルエンザワクチン接種の効果

インフルエンザワクチン接種の効果

インフルエンザワクチンは、不活化ワクチンであり、まずインフルエンザA型株やB型株のウイルスを鶏卵で培養したのち、増殖したウイルスを含む液を不活化処理してウイルス粒子を分解します。 

そして、ウイルスの膜蛋白で感染免疫防御となるHA蛋白を含んだ液を採取して精製したものが、一般的に流通しているインフルエンザウイルス感染症に対するHAワクチンです。 

インフルエンザウイルス感染症においては、特に基礎疾患を有する患者さんや高齢者では通常よりも症状が重篤化する可能性が高いと考えられており、インフルエンザワクチンを接種する最も大きな効果は、「重症化」を予防することが挙げられます。 

国内の研究によると、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者についてはインフルエンザワクチンを接種することで約半数程度のインフルエンザウイルス感染症の発病を阻止して、およそ8割前後の死亡を予防する効果があったといわれています。

改善しない場合は最寄りの内科クリニックへ相談しましょう 

改善しない場合は最寄りの内科クリニックへ相談しましょう 

通常では、季節性に流行するインフルエンザウイルス感染症は毎年だいたい12月から3月頃の冬場に感染が広がって、発熱や関節痛など風邪に類似した症状が出現することが多いです。

発熱や関節痛などの症状が出現して、場合によって重症化する恐れを有したインフルエンザウイルス感染症を予防するためには、普段から免疫力を高めて原因ウイルスを体内に侵入させず、個々が他人に感染させない対策を工夫して実践することが重要です。 

症状が比較的軽く、常備薬や市販薬で対応できる際には、診療所や病院にすぐに受診する必要はありませんが、しばらく経過しても症状が改善しない、あるいは高齢者やもともと持病のある方など重症化するリスクを有する場合には最寄りの内科クリニックに相談しましょう。 

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

引用文献

1)今井 由美子, 椎森 仁美, 市田 悠:インフルエンザウイルス感染症の病態. ファルマシア. 2019 年 55 巻 12 号 p. 1105-1110

DOI https://doi.org/10.14894/faruawpsj.55.12_1105

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