公開日:2022.08.05 最終更新日:2022.08.08

新宿ゴールデン街の人気店主に聞く、ゴールデン街初心者の楽しみ方

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新宿・歌舞伎町の一角、約2000坪の区画に295店舗ほどの飲み屋が密集する、世界有数の飲み屋街「新宿ゴールデン街」。興味はあるけれど、「敷居が高そうで初めてだと入りづらそう」「どのお店に行ったら良いか分からない」など、尻込みする人も多いのではないでしょうか。

そこで、ゴールデン街に通っていたことで有名な直木賞作家・田中小実昌の孫であり、今年4月に祖父との思い出や酒場の楽しみ方を綴ったエッセイ『酔っ払いは二度お会計する』を発表した、ゴールデン街「OPEN BOOK」の人気店主・田中開さんに、初心者におすすめのゴールデン街の楽しみ方や心得を伺いました。

田中開(たなか・かい)さん

田中開(たなか・かい)さん

1991年、ドイツ生まれ、東京育ち。早稲田大学基幹理工学部卒。祖父である直木賞作家・田中小実昌が通っていた影響で10代の頃からゴールデン街を知り、2016年、同地に祖父の蔵書を並べたレモンサワー店「OPEN BOOK」(あかるい花園5番街)をオープン。新宿一丁目「OPEN BOOK 破」、日本橋のホテルK5内「Bar Ao」も経営。

田中開著『酔っ払いは二度お会計する』(産業編集センター、1760円)
田中開著『酔っ払いは二度お会計する』(産業編集センター、1760円)

1.ゴールデン街の歴史は戦後から

田中さんに話を伺う前に、まずはゴールデン街の歴史を説明します。ゴールデン街は、終戦後の1949年、新宿駅の東側にあった闇市と、新宿二丁目の赤線(売春が黙認されていた地帯)で露店を営んでいた人たちによって形成されたことが始まりといわれています。

1958年に売春防止法が施行されるまでは、青線(非合法売春地帯)とも呼ばれ、施行後は、飲み屋が増加。作家やジャーナリスト、編集者、演劇・映画関係者ら文化人が訪れる街と知られ、新宿文化の中心地となりました。その昭和の名残もあり、街は今も文化的な匂いが漂い、ノスタルジックでディープな雰囲気を醸し出しています。

そして、区画内には、「G1通り」「G2通り」「あかるい花園1番街」「あかるい花園3番街」「あかるい花園5番街」「あかるい花園8番街」「まねき通り」といった7本のメインの通りといくつかの抜け道があり、それぞれの通りには建物と看板がズラリ。どこのお店に入ろうか、目移りしてしまいます。

ということで、まずはお店の選び方から田中さんに伺っていきます。

2.自分の趣味趣向に合うお店を探そう

1.ゴールデン街の歴史は戦後から

――ゴールデン街には、音楽、演劇、小説などのカルチャーが反映された店や、こだわりの酒や料理が楽しめる店、日替わりママがいる店など、それぞれ内観外観も違えば、店主やスタッフのカラーも個性的な店が溢れています。その中から初めての一軒はどのように選ぶのが良いですか?

ゴールデン街には扉を開けて営業している店も多いので、外から店内を覗いた時に、「照明の雰囲気が良いな」「好きな音楽がかかっているな」「自分と同世代がいるな」といった、自分の趣味趣向に合っていたり、「このお店の人やお客さんたちと話してみたい」と思える共通項があると一番良いですね。

僕がこの前、ゴールデン街に初めて来たという人と一緒に飲んだ時は、「嗅覚で選ぶ」ことにして、その人が「聴いたことがある」と言う、店内からレゲエが聴こえてくる店に入りました。結局、その人はその曲しか知らなくてレゲエに詳しくなかったんですけど、それでも店の人も気さくで楽しく飲みました(笑)。ゴールデン街と聞くと狭い店で喧々諤々のイメージがあると思いますが、意外とそうでもないですし、大人数で入れる店もいくつかあるので、気軽に探してほしいです。

――「嗅覚で選ぶ」って良いですね。

それでも、初めて行ったお店で「期待していたのと違った」と思うこともあるかもしれません。今はぼったくりもなく安心ですが、「過度な期待はせず、失敗するつもりで行くこと」をおすすめします。例え失敗しても、その日がたまたまそうだっただけかもしれないし、何軒か経験を積むことで最終的にはちゃんと自分に合う店が見つかるかもしれない。そうやって行きつけを作ってほしい。

――行きつけはあった方が良いですか?

同じ店に何回も通った方が、お店の方やお客さんとのコミュニケーションがとりやすくなって距離感が近くなるし、安心してくつろげますね。良い意味で、ぬるま湯に浸かっている感じ(笑)。お店に迷惑がかかるような下手な飲み方もできないので、責任感も出てきますよ。あと、1軒行きつけができれば、そのお店のネットワークでだいたい10軒分の情報は得られると思います。気になれば2軒目、3軒目と行くのもありですが、やはり期待せず気張らず行くスタンスで良いと思います。

――初心者向けでいうと、ゴールデン街の2つの組合がそれぞれ主催する、『桜まつり』(4月に開催、新宿三光商店街振興組合)と、『納涼感謝祭』(8月最終日曜日に開催、新宿ゴールデン街商店街振興組合)もきっかけとしては良いかもしれませんね。どちらも参加店はノーチャージ、1杯500円。スタンプラリーも楽しめるので、気軽にハシゴ酒できるイベントとして人気です。(※2020年、2021年はコロナ禍で中止)

僕もお客さんとしてよく行って、何人かと一緒に10軒ハシゴしてましたね(笑)。初めてのゴールデン街はそういったイベントに参加するのも良いかもしれません。

3.敷居のまたぎ方で分かる客の良し悪し

3.敷居のまたぎ方で分かる客の良し悪し

――お店で飲む時に気を付けること、心得も教えてください。

敷居のまたぎ方は大事。お店が混んでいてもそうでなくても、扉を開けてこちらが席を案内する前にズカズカ中に入ってくる人は横柄で印象が悪いですし、往々にして飲み方も悪いです。逆に、扉を開けて店員さんと目が合ったり、案内してくれるまで待ってくれる人は好印象です。

――敷居のまたぎ方が荒いと、他のお客さんにも迷惑になりかねないですね。

そうですね。あと、お気に入りのお店ができても、自分で自分のことを「常連」とは名乗らない方が良いですよ。お店側の立場からすると、常連と名乗る人に限って知らない人が多いし、共通の知り合いもいないことが多々あって困惑します。常連かどうかはお店側が決めることなので。

――初心者からすると、チャージの有り無しや1杯あたりの値段も気になるところ。私の肌感覚では、チャージ無しのお店もあれば、有ってもチャージは300〜1,000円ほど、1杯500、600円からのお店が多いと思います。お店には事前に金額感を聞いて良いものですか?

聞いても良いですが、ゴールデン街はある種の花町というか男が格好つけられる場所なので、個人的には何も聞かず飲むのが粋かなと思います。多少、自分もお客さんの立場としてゴールデン街の風景を作っていると思うと、個人的にはあまり無粋なことはしたくない気持ちはあります。

――どうしても不安な方は、店前の看板や黒板、ホワイトボードに料金体系を書いているお店もありますし、そこで判断しても良いかもしれませんね。

4.おすすめの曜日とよく行く3店舗

4.おすすめの曜日とよく行く3店舗

――初めてゴールデン街に行くのに、おすすめの曜日はありますか?

賑わいや刺激を求めるなら金土、のんびり飲みたいなら平日でしょうか。個人的には、平日にひとりで来て2、3軒、スマホをテーブルに置いてボーッと飲んでから帰るのがちょうど良い時間の過ごし方。コロナ前は平日も外国人観光客がたくさんいる街だったのですが、僕が10年以上前に飲みに来ていた時は、24時を過ぎると人もまばらで穏やかだった。そういう雰囲気が居心地が良いというのもありますね。あと、日曜の夜も面白いですよ。平日や週末とは違う客層、例えば、夜の歌舞伎町で働いている人たちに遭遇する時もあったりして、街や店の違う一面が見られます。

――最後に、田中さんがよく行くお店も教えてください。

仕事終わりによく行く場所というところで選びますね。居心地でいうと、僕が初めてゴールデン街でアルバイトをした店でもある「呑家 しの」(あかるい花園1番街)です。最古参の店のひとつ(1974年創業)で、建物に年季が入っていてその歴史も感じられるのですが、今は若いスタッフやお客さんもいて、常に新しいカルチャーにも触れられるイメージです。あとは、クラフトビールを扱うバー「Beer&Whisky SKAVLA(スカブラ)」(あかるい花園5番街)と、ナチュールワイン(自然派ワイン)を扱うバー「Bar Pitou(ピトゥ)」(あかるい花園5番街)。仕事終わりに美味しいお酒が飲みたい時は、この2軒に行きます。

シーンや一緒に行く人によって店を使い分けられるのもゴールデン街の良いところ。初めての方は肩の力を抜いて、期待しすぎず、ふらっと飲みに来てください。

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赤木一之(あかぎいっし) 編集者

新宿タウン誌や新宿ゴールデン街ガイドブックの編集長を経て、フリーランスに。グルメやビューティー系、スポーツの取材から著名人のインタビューまで幅広いジャンルで活動。現在はアイドルWEBマガジンで女性アイドルの記事も執筆。

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