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再就職手当をもらうとデメリットがある?損をしないための基礎知識から受給条件まで解説

再就職手当をもらうとデメリットがある?損をしないための基礎知識から受給条件まで解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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退職して転職活動をするときに気になるのが、失業手当です。年齢や雇用保険加入年数に応じて、離職前の給与の何割かが支給されるため、生活費などに充てることができます。実は、失業手当以外にも再就職を支援するための手当てがあります。それが、再就職手当です。この記事では再就職手当の受給条件やメリット、デメリットについて紹介します。退職後、再就職を考えている方はぜひ参考にしてください。

再就職手当は、失業手当を受給している方が早期に就職できた場合に支給されます。雇用形態に関わらず、パート・アルバイトの場合や起業の場合でも条件を満たせば受給可能です。ただし、失業手当の支給残日数や継続的な雇用が見込めるかなど、いくつかの支給条件を満たす必要があるため確認が必要です。

失業手当を満額受け取ることと比較して、再就職手当の受給はデメリットがあるのではと考える方もいます。しかし早期に再就職を目指すことで生活の安定が図りやすいなど、メリットは多いといえるでしょう。

1.再就職手当の概要

再就職手当の概要

離職前に雇用保険の被保険者期間が12ヵ月以上あれば、失業手当が受け取れることはよく知られているでしょう。この失業手当は失業保険と呼ばれることもありますが、正式には雇用保険の基本手当といいます。

実は失業手当の受給資格をもつ方が、受け取れる就職促進給付があります。それが「再就職手当」「就業促進定着手当」「就業手当」の3種類です。

再就職手当は、失業手当の所定給付日数を3分の1以上残して再就職し、一定の条件を満たす場合に受け取れます。

就業促進定着手当は、再就職手当の受給者が対象です。再就職先で6ヵ月以上雇用され、かつ1日当たりの賃金が離職前より低い場合に支給対象となります。

就業手当は再就職手当の受給対象にならなかった方に対して、一定の条件を満たした場合に受給できます。2022年11月現在、支給上限金額は1,857円、60歳以上65歳未満の場合は1,501円ですが、毎年8月をめどに変更されることがあります。

今回はこの中でも再就職手当について詳しく解説します。

1-1.再就職手当とは

再就職手当とは、できるだけ早く安定した職業に就くことを目的とした制度です。基本手当受給資格者は、就職日の前日まで失業手当を受け取ることができます。そのため早く就職すると失業手当を満額受け取ることはできません。

かといって、失業手当をもらうために就職活動を遅らせてしまうと、休職期間が長引き転職が不利になる可能性が高いです。再就職手当は、早期に就職へのモチベーションを上げ、安定した生活が送れるように導入されています。

1-2.再就職手当の計算方法

では再就職手当はどのように計算されるでしょうか。前提として、基本手当の所定支給残日数が3分の1以上であることが必要です。残り日数の割合に合わせて計算式は次のように異なります。

  • 基本手当の支給残日数が所定の給付日数の3分の2以上残っている場合
    支給残日数×70%×基本手当日額(一部上限あり)
  • 基本手当の支給残日数が所定の給付日数の3分の1以上残っている場合
    支給残日数×60%×基本手当日額(一部上限あり)

つまり、就職が早ければ早いほど、再就職手当の額は高くなります。なお、基本手当日額の上限は例年8月をめどに変更されることがあります。

2.再就職手当を受給するための条件

再就職手当をもらうとデメリットがある?損をしないための基礎知識から受給条件まで解説

再就職手当は、早期に再就職ができたすべての方が対象ではありません。再就職手当が受給できる条件は次の通りです。

2-1.7日間の待期期間終了

再就職手当は、待期期間を満了した方が対象です。

待期期間とは、受給資格が決定した日から7日間、失業状態であることを証明するための期間です。この期間失業手当は支給されず、期間内に就職が決まった場合には再就職手当を受け取ることができません。再就職手当を受け取るためには、受給資格決定日から8日目以降に就職が決定する必要があります。

2-2.支給日数の残りが3分の1以上

再就職手当は、就職がいつ決まってももらえるわけではありません。失業手当の支給日数が就職日の前日までに、3分の1以上残っている必要があります。例えば、失業手当の支給日数が90日である方は、就職日以後の残り支給日数が30日以上ある場合が対象です。

2-3.再就職先が離職した会社と関わりがない

再就職先が離職した会社と関わりがない

離職した企業や関連企業へ就職した場合は、再就職手当は受け取れません。これは、再就職手当を目的とした退職や就職を防ぐためです。たまたま関連企業であった場合も同様に対象外となります。再就職手当の受給手続きでは、就職先の資本関係について証明する必要があるので、再就職手当の受給を考えている方は注意してください。

2-4.給付制限がある場合、ハローワークおよび人材紹介会社からの紹介先のみ

給付制限がある場合は、就職企業の紹介元がハローワークや人材紹介企業の場合のみ再就職手当の対象になります。給付制限とは、失業手当がもらえない期間のことで、離職理由が自己都合による退職などの場合に設けられます。解雇や倒産などの企業都合での離職の場合は、給付制限はありません。

給付制限は2ヵ月ありますが、そのうち最初の1ヵ月間はハローワークや人材紹介企業からの紹介で就職した場合のみ再就職手当の対象となります。給付制限2ヵ月目以降は、知人からの紹介や求人広告への応募による就職も対象です。自営業など起業する際は、給付制限の1ヵ月を過ぎた場合であれば、再就職手当の支給対象です。

2-5.1年以上の勤務

再就職手当制度は、安定した職業に就くことが目的です。そのため、1年以上働き続けることが確実である就職に対して支給されます。例えば、雇用期間が1年以下の派遣社員での採用や、雇用契約の更新に目標達成などの条件がある場合は、受給対象外です。

2-6.雇用保険の被保険者

雇用保険の被保険者

再就職先で雇用保険の被保険者になることも、再就職手当受給の条件です。

雇用保険とは、常勤やパートなど雇用形態に関わらず、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇う見込みがある場合に自動的に適用される保険です。例外を除いて学生ではないことも条件となります。

パートやアルバイトでは就業条件によっては雇用保険が適用されないため注意してください。一方で、個人事業主となり開業した場合、雇用保険は適用されないためこの条件を満たす必要はありません。

2-7.過去3年以内に別手当の支給を受けていない

再就職手当の受給は、再就職手当や常用就職支度手当を過去3年以内に受け取っていないことが条件です。つまり、再就職手当を1度受給するとその後3年間は受け取れません。これは、短期間による離職で繰り返し手当を受給するのを防ぐためです。

2-8.受給資格決定前から採用されていない

再就職手当は、受給資格決定前に内定をもらった場合は支給されません。前述の通り、再就職手当の対象者は、失業手当の受給資格があり、3分の1以上の支給日数を残した方です。退職時すでに新しい就職先が見つかっている場合などは、そもそも失業手当の受給資格もないのです。

2-9.再就職手当支給決定日までに退職しない

再就職手当は、就職日が決まったらすぐに受け取れるわけではありません。就職日から1ヵ月以内に手続きを行い、受給対象かどうか審査されます。支給決定までは申請からおよそ1ヵ月です。もし、支給確定前に退職した場合は受け取れない可能性があります。その代わり、残っている失業手当が支給される可能性があります。

3.再就職手当をもらうメリット、デメリット

再就職手当をもらうメリット、デメリット

再就職手当をもらった場合、どのようなメリットやデメリットがあるでしょうか?それぞれ紹介します。

3-1.メリット

失業手当は就職日の前日までしか受給できないため、早く就職すると満額もらえず損をしたと感じる方もいるでしょう。しかし、早期就職によって再就職手当が支給されれば、もらえなかったはずの失業手当に値するお金が一括で受け取れます。そのため、生活費の足しや再就職で必要になったものの購入資金に充てることができます。また、早期就職を目標にすることで、求職時間が長引かず、モチベーションを維持できるのも大きいでしょう。

そもそも失業手当で受け取れる金額は、離職前の給与の5~8割ほどです。離職前よりも確実にひと月の収入は減るため、生活に不安を感じる方は早期就職がおすすめです。早く就職先を見つけることで生活費を確保し、再就職手当が受け取れるので安心できるでしょう。再就職する時期が早いほど、給付率も高くなります。また、仕事をする上でもブランクが少なくて済む点もメリットでしょう。

さらに、再就職手当の受給者は、6ヵ月以上雇用された時点で条件を満たせば「就業促進定着手当」を受け取ることもできます。

3-2.デメリット

再就職手当を受け取るデメリットは、失業手当が満額もらえない点です。しかし、離職理由が自己都合退職などであれば2ヵ月の給付制限があり、その間失業手当は支給されません。

貯金と3ヵ月目からの失業手当で生活することは精神的なプレッシャーになることが予想されます。また、休職活動が長引くほどモチベーションの低下や不安感も強まる恐れがあるため、再就職手当を受給することを念頭に置いて早期就職を目指す方が良いでしょう。

注意したいのは、再就職手当は失業手当の支給残日数が3分の1未満になった場合、申請できないことです。また、支給残日数に応じて計算式も変わるため、再就職手当を最大限に受給するならできるだけ早い就職を目指す必要があります。

4.再就職手当についてよくある疑問

再就職手当についてよくある疑問

ここでは、再就職手当についてよくある質問をまとめました。

4-1.失業保険と再就職手当、どちらをもらうのが得?

失業保険である失業手当と再就職手当の金額だけで見た場合、失業手当を満額受給する方が受け取れる合計額は多いです。しかし、失業手当は離職前の給与に比べて低いため、生活を考えると充分とはいえません。もし、失業手当を満額もらうタイミングで再就職先が決まったとしても、給与が振り込まれるのは1ヵ月後ですので、貯金などが充分でないと安心できないでしょう。

その点、就職が早く決まれば、収入が少ない期間は短く済み、初月給与と近いタイミングで再就職手当が支給されます。失業中のマイナス部分を埋められ、就職準備費用にも充てられるでしょう。また、毎月安定的な収入が見込める安心感も早く得られます。

ただし、経済状況は一人ひとり異なりますし、中には新しい業界や職種にチャレンジするために、就職活動中に時間をかけて勉強したいという方もいるでしょう。ご自身の生活や就職活動内容に合わせ、総合的に考える必要があります。

4-2.再就職手当の給付タイミングは?

再就職手当の給付は申請から約1ヵ月掛かります。

再就職手当の支給申請書は、就職日の翌日から1ヵ月以内に提出しなければなりません。その際に、就職先の事業主より採用を証明する書類が必要です。その他、ハローワークに求められた書類を提出します。申請後、ハローワークが書類の不備や勤務の継続などを確認するため、支給まで時間がかかることを覚えておいてください。

4-3.再就職手当を満額もらう方法は?

再就職手当を満額受け取る方法は、失業手当を一度も受給せずに就職することです。再就職手当の受給条件として、失業状態である7日間の待期期間を満了している必要があります。つまり、最大限受け取るためには、受給資格決定日から8日目以降の早いうちに就職先を決める必要があります。

4-4.独立や起業した場合は再就職手当をもらえる?

一般企業への就職ではなく、個人事業主など起業した場合でも、再就職手当はもらえます。もちろん、前述の9つの条件を満たしていることが必要です。起業した場合は、開業届を税務署に提出しましょう。ただし、失業手当を受け取る前に開業届を提出すると対象外となるので注意してください。

4-5.再就職手当の申請を忘れた場合は?

再就職手当の申請を忘れた場合は?

再就職手当は原則として就職して1ヵ月以内に申請します。ただし、申請期限が過ぎてしまった場合は雇用保険の有効期限である2年の間に申請を行うことが可能です。ただし、1ヵ月の期限を過ぎての申請は、支給が通常より遅くなる場合があるので注意してください。

なかなかハローワークまで出向いて書類を提出するのが難しいという方は、郵送で提出しましょう。その際、郵送トラブルに備えて簡易書留の利用がおすすめです。

4-6.非正規雇用の場合は再就職手当をもらえない?

派遣社員やパート、アルバイトで採用された場合でも、9つの条件を満たしていれば再就職手当は受給できます。特に、派遣社員や契約社員の場合は1年以上の契約期間で、「更新の可能性あり」などの記載があれば、認定される可能性は充分あります。

おわりに 

再就職手当の概要と、受給するメリット・デメリットを解説しました。再就職手当は受給条件に当てはまれば、経済面での手助けになります。金額だけで考えると失業手当を満額もらえないデメリットを感じるかもしれませんが、早期に就職することで安定した仕事と同時に再就職手当がもらえるのは大きなメリットといえるでしょう。

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