地球温暖化は、自然環境そして私たちの人間社会にさまざまな影響を及ぼすといわれています。しかし、世界中でどのような変化が起きているのか、私たちの生活にどのような事象が起き得るのか、理解している方は意外にも少ないのではないでしょうか。
そこでこのコラムでは、地球温暖化による影響についてご紹介します。日本への影響予測や地球温暖化対策として私たちができる取り組みもまとめました。環境問題に関心のある方は必見です。
この記事のまとめ
世界中の人間が考えるべき重要な環境問題として地球温暖化が挙げられます。なぜなら、人間が生活するうえで発生させている温室効果ガスが、地球温暖化の原因のひとつとなっているためです。
地球温暖化は気温や水位の上昇を引き起こし、それらによって自然環境や人間社会にあらゆる影響を及ぼしています。例えば、種の絶滅などの生態系の変化、食糧や農作物の打撃といった深刻な問題が多いです。
地球温暖化の対策としては、国際協議や法整備が進められるなど、世界中そして日本でもさまざまな取り組みが行われています。取り組みのなかには、一人ひとりが実行できる節電や節水といった身近なものも多いです。
1.地球温暖化の原因
地球温暖化は、自然環境そして私たちの人間社会にもさまざまな影響を及ぼしています。まずは、地球温暖化の原因について見ていきましょう。
地球温暖化は、人間が生活するなかで発生させている「温室効果ガス」が原因である可能性が高いといわれています。温室効果ガスとは、大気中の熱を吸収する性質をもつガスのことです。温室効果ガスの主な種類としては、二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素、フロンなどが挙げられます。
人間が経済を発展させたり、生活したりするうえで欠かせないのが石炭・石油、化石燃料です。しかし、それらが燃えることで大気中の二酸化炭素などが急速に増加し、地球上の温室効果ガスが増え過ぎてしまいました。その結果、地球温暖化へとつながってしまっていると考えられているのです。
1-1.地球温暖化のメカニズム
もう少し詳しく、地球温暖化のメカニズムについて見ていきます。地球温暖化が起こるメカニズムは下記のとおりです。
- 太陽の光で、地球上の地面が温められる
- 地球の地表の熱は、赤外線として宇宙空間に放出される
- 赤外線などの熱を吸収または放出する性質をもつ温室効果ガスが大気を温める
- 温室効果ガスが増えてしまい、濃度があがる
- 温室効果が強まり、地表の温度が上昇する(地球温暖化)
温室効果ガスがなければ、地球の平均温度は-19度になってしまうといわれており、地球の温度を保つために大切な役割を果たしています。しかし、温室効果ガスが増え過ぎてしまい、地表の熱が宇宙空間へ放出されにくくなると、地球温暖化問題へとつながってしまうのです。
参照元:地球温暖化の原因と予測
2.地球温暖化の現状は?
では、地球温暖化の現状を見ていきましょう。現在も、地球上の世界平均気温は上昇し続けており、大気中の二酸化炭素濃度も増加し続けている状況です。
2021年「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」における第6次報告書では、世界の平均気温は、2011年から2020年にかけて約1.09度も上昇していると発表されました。大気中にある二酸化炭素、一酸化二窒素、メタンなどは、過去類を見ないレベルまで増加していると報告されています。工業化前と比べると、2019年の大気中にある二酸化炭素の濃度は約47%も高くなっているのです。
参照元:温室効果ガスとは? 種類や原因、環境への影響、減らす方法を解説|朝日新聞デジタル
2-1.日本への影響予測
では、地球温暖化は私たちの暮らす日本の未来にどのような影響を及ぼすのでしょうか。全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)の影響予測データをもとに、日本に起きる事象を見ていきましょう。
最初に、JCCCAが発表した「2100年末に予測される日本への影響」に記載されている、気候変化や気温上昇、災害についてのご紹介です。日本は21世紀末にかけて平均気温が上昇し、いたる地域で猛暑日や熱帯夜の日が増加し、寒い冬日が減少すると予測されています。
また、雨の降る日は減少する見込みですが、降水量は増えて大雨や短時間に強い雨が降るようになる傾向が強いです。加えて、強い台風となる割合が増え、台風による雨風も強まっていくと予測されています。
上記のような気候変化に伴い、生態系の変化や健康被害などが生じるともいわれていますが、具体的にはブナやハイマツなどの生育可能な地域の減少や、米の品質低下の恐れがあるということです。
健康被害でいうと熱中症による死者や緊急搬送者数が増加、ヒトスジシマカなどの分布域が国土の約40%から75~96%に増えるなどが予測されています。ウイルスを保有したヒトスジシマカに刺されると、ジカウイルス感染症やデング熱を発症する可能性があるのです。
参照元:地球温暖化の影響予測(日本)|JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
3.地球温暖化が引き起こす現象
地球温暖化による影響で、どのような変化が起きているのでしょうか。地球温暖化が引き起こす、気温と水位(海面)の上昇について詳しくご紹介します。
3-1.気温の上昇
地球温暖化の現状でもお伝えしたとおり、2011年から2020年にかけての期間、世界の平均温度は約1.09度も上昇しました。このまま地球温暖化対策がなされなかった場合、世界の平均気温はさらに上昇し続けることになるでしょう。
気温の上昇は、植物など他の生態系にも大きな影響を及ぼします。桜の開花時期が早まったり、紅葉が遅れたりすることもあるでしょう。人間が生きるうえでの問題点としては、食糧となる米や穀物をはじめ、野菜や果物などが育成できなくなってしまう可能性が挙げられます。
3-2.水位の上昇
気温の上昇と合わせて、水位(海面)も上昇している点も見逃せません。海面が上昇すると、海抜の低い島国の土地(陸地)が減ってしまう、氷河の崩壊が起きるなどのさまざまな問題があります。南極やグリーンランドなどの氷河が溶けてしまうと、さらなる水位の上昇も招いてしまうでしょう。
海抜の低いフィジー諸島共和国やツバルなどは、国が水没の危機にさらされている現状にあります。もちろん、日本においても高潮の被害が増えたり、海岸の侵食や砂浜の消失が起こったりするなど、さまざまな悪影響が想定されています。
4.自然環境に与える影響は?
ここからは、自然環境にはどのような影響があるのか具体的な例を見ていきましょう。
4-1.種の絶滅など、自然生態系の変化
地球温暖化は、生物の多様性、自然生態系にも大きな影響を与えています。国際自然保護連合(IUCN)が発表した絶滅の恐れがある種の「レッドリスト」によると「絶滅危機種」に指定される野生生物は4万1,459種(2022年10月時点)。
レッドリスト上にも「地球温暖化は野生生物を絶滅の危機に追いつめる大きな要因」として記載されているほど、脅威になっているのです。
これまでにない気候変動や異常気象は、自然環境の変化を引き起こし、さまざまな野生生物や自然生態系に影響を及ぼしています。
参照元:絶滅の危機に瀕している世界の野生生物のリスト「レッドリスト」について |WWFジャパン
4-2.沿岸侵食など、沿岸域の変化
自然環境への影響のひとつとして、沿岸域の変化も深刻です。水位(海面)が上昇することで、陸地が水没したり、海岸が浸食され砂浜が消失したりするなど、さまざまな影響が出ています。また、沿岸地域では高潮の被害なども増えているのも最近の傾向です。
4-3. 雨量増加、砂漠化などの気象の変化
地球温暖化の影響は、あらゆる気象の変化にも表れています。例えば、豪雨、台風やハリケーンなどの「異常気象」と呼ばれる現象です。これまでの気候とは大きく異なる現象が世界各地で起きています。
また、砂漠化の進行も著しいです。砂漠化の理由はさまざまありますが、そのひとつとして地球温暖化が挙げられます。地球上で起きている異常気象が大きく影響しているのです。温度が上昇し続けていることで、異常少雨や干ばつする地域が増えています。大地の水分が失われてひび割れしたり、土地の劣化が起きたりするなど、砂漠化は深刻です。
5.人間社会に与える影響は?
地球温暖化の影響は自然だけでなく、人間社会にもさまざまな被害をもたらす可能性があるでしょう。具体的な例をご紹介していきます。
5-1.食糧・農作物の打撃
地球の平均気温が上昇して猛暑日が増える他、砂漠化が進行し続けると穀物・農作物の生産量が減少し、食糧需要に供給が追いつかなくなる事態が起きる可能性が高いです。他にも、海水の温度が上昇すると、漁獲量が減少してしまうことも懸念されています。
さらに、これらの影響を受けて食糧価格が上がっていくことが考えられるでしょう。農業の担い手不足で農作物の自給率が低い日本では、食糧の確保が難しくなってしまう可能性も考えられます。
5-2.健康面への影響
人間の健康面への影響も大きな問題です。健康面への影響の表れ方はさまざまで、直接的に死亡率などに直結する場合と、病気などを介して間接的に影響が及ぶ場合があります。
直接的な影響としては、熱中症や日射病、熱波などによる死亡などです。間接的な影響としては、デング熱や日本脳炎などを媒介する生物の生息域が拡大することにより、感染症のリスクが高まることなどが挙げられます。
5-3.産業やエネルギーへの影響
私たちの暮らしに欠かすことのできない産業やエネルギーへの影響も大きいです。例えば、異常気象によりインフラ機能が停止してしまう危険性があります。
また、異常気象や生態系の変化の影響が巡りめぐって、人間社会に及ぼす可能性もあるでしょう。例えば、沿岸域や森林、湿地などの観光資源が減少していくことで、さまざまなサービスに被害が出ることなどが考えられます。
5-4.国土保全の危機
地球温暖化は人命と直結する国土保全の危機にもつながる可能性が高いです。世界各国で起きる大雨、洪水、台風などの異常気象により、自然災害が頻繁に起こることが考えられます。また、それによる直接的な被害だけでなく、二次災害として森林火災などが発生してしまう問題も懸念されるでしょう。
また、地球温暖化は強い熱帯低気圧の発生にもつながるといわれています。ハリケーン、サイクロンが増えることで、人間の暮らす街などに大きな被害を及ぼすのです。今後も自然災害の規模は大きくなる可能性があり、被害が拡大していくと予測されるでしょう。
6.地球温暖化対策の取り組み
地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出量を削減するために、日本ではどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
6-1.法整備や国際協議への参加
世界中で問題視されている地球温暖化は、各国を交えた議論や各国での対策が行われています。世界における取り組みとしては、2015年に国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)でパリ協定が採択、2016年に発効されました。
パリ協定とは、2020年以降における気候変動問題について国際的な枠組みが示されているものです。世界共通で「世界の平均気温上昇を1.5度に抑える努力をすること」や「温室効果ガス排出量のピークアウト、吸収量とのバランスを取ること」などが目標として掲げられています。
私たちの住む日本でも、国際協議への参加や法整備などが進められており、温暖化防止会議(COP)に参加して意見交換やルール策定を行ったり「地球温暖化対策推進法」を制定したりするなど、地球温暖化対策に積極的です。
また、日本では「2050年カーボンニュートラル」が宣言され、2030年度には温室効果ガス排出量を46%削減すること(2013年度比)を目標に掲げています。それらを受けて、日本政府は「地球温暖化対策計画」を2021年10月に改定しました。
他にも、環境基本法による環境保全、資源の再利用(リサイクル推進)の取り組みにも積極的です。経済産業省主体で、温室効果ガスの原因となる二酸化炭素を再利用した製品開発(カーボンリサイクルの研究開発)の推進も行っています。
7.私たちが取り組める身近な温暖化対策とは
地球温暖化を進行させないためには、世界中の国があらゆる目標を掲げ、さまざまな取り組みを行うことが重要です。それだけでなく、個人が意識を変えることや小さな努力の積み重ねも必要となります。ここからは、私たち一人ひとりができる地球温暖化対策をご紹介しましょう。
7-1.省エネを意識した生活
地球温暖化対策には、省エネを意識した生活をすることが大切です。具体的な取り組み内容をご紹介します。
- 電化製品の使用を控えて、節電に取り組む
- 水道使用量を減らし、節水に取り組む
- 自動車ではなく公共交通機関を利用する
- リサイクルや廃棄に配慮されたエコマーク製品を購入する
- グリーンカーテン、屋上の緑化などに取り組む
どれも今すぐに取り組める省エネ活動ばかりです。ぜひ、生活に取り入れてみてください。
7-2.なるべくゴミを出さない
ゴミを増やさないように意識することも地球温暖化の防止につながります。紙くずやビニール袋、生ゴミなど、家庭から出るゴミは清掃センターなどで焼却されますが、そのときに大量の二酸化炭素が発生してしまうのです。つまり、ゴミの量を減らすことが温室効果ガス削減につながります。
ゴミを増やさない工夫として挙げられることは、ゴミの分別をしっかりと行い、牛乳パックやトレーなどは回収ボックスに出す、不用品はリサイクルショップで引き取ってもらう、マイバッグやマイ箸などを活用するなどです。なるべくゴミを出さない生活を意識しましょう。
7-3.水を大切に使う
水を大切に使うことも、地球温暖化対策のひとつです。家庭に届く水道水は、洗浄場を経由するなど多くのエネルギーを使っています。つまり、水を無駄遣いせずに使用量を減らすことが、エネルギー消費を抑えることにつながるのです。
また、生活のなかでできる工夫としては、入浴時や歯磨きをする時に水を出しっぱなしにしない、皿洗いをする前に油汚れを拭き取っておくなども効果的です。少し意識するだけで、節水に取り組むことができます。
おわりに
地球温暖化が世界や日本、そして私たちの暮らしに与える影響についてご紹介しました。地球温暖化は、全世界が考えるべき大きな問題ですが、問題解決のためには一人ひとりの小さな行動が大切です。身近のできることから取り組んで、省エネを意識した生活を始めましょう。