福祉ネイリストとは、高齢者や障害を持っている方にネイルを施す職業です。家事や育児の間の時間でも働けるため人気が高まっていますが、詳しく知らない方も多いですよね。福祉ネイリストは、老人ホームや介護施設に出向いて利用者にネイルを行います。
色は人にさまざまな効果をもたらすといわれています。常に目に入る爪におしゃれなデザインを施してもらえたら、実際に明るい気持ちになるでしょう。普段おしゃれをする機会の少ない高齢者の方と接して、心身ともに明るい気持ちになってもらえるやりがいのある仕事です。また、体を動かすのが困難であり、ネイルサロンに行くことが難しい方でも施術を受けられるので需要も増えています。
本記事では、福祉ネイリストの仕事内容や給料などについて解説しています。福祉ネイリストは、ネイリストの技術と福祉業界のスキルを活かせるので、副業としても人気が高まっている職業です。気になっている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
1.福祉ネイルとは?
福祉ネイルは、主に高齢者や障害を抱えている方に対して行うネイルです。自宅療養中の方や移動が困難でネイルサロンに行くのが難しい方も対象であり、老人ホームや利用者の自宅に訪問してネイルを行います。
近年では、自力での移動が困難な方に向けて、理容師や美容師、スタイリストなどの美容サービスを提供している事業者が直接お客様の元に行って施術をする「訪問美容」と呼ばれる出張サービスが流行しています。福祉ネイルも訪問美容の1つであり、需要が広がってきています。
常に目に入る手の爪にネイルをすることで、自然と自身の手を眺めて毎日が楽しみになるという高齢者の方が多いです。ネイルを施している間のコミュニケーションが楽しみという方もいます。
高齢者の美容意識が高まりつつあるなか、福祉ネイルは高齢者の生活の質を上げるのに役立っているといえるでしょう。
2.福祉ネイルと普通のネイルの違い
福祉ネイルは普通のネイルと違い、高齢者などの体を動かすことが難しい方を対象に施術していきます。そのため、対象者に合わせてネイルの目的や場所、時間や施術内容を考えなければなりません。以下では、普通のネイルとの違いについて解説していきます。
2-1.対象者の違い
福祉ネイルの対象者は、主に高齢者や障害を持っている方になります。歩行が難しい高齢者や脳卒中によるマヒなどで体を動かすことができない方、精神疾患を持っている方が多いです。まれに、震災などの被災者が対象になることもあります。普通のネイルの場合はネイルサロンに来た方を施術しますが、福祉ネイルはネイルサロンまで出かけることが困難な方を対象に施術しています。
高齢化社会である現在の日本では、今後も需要が高まっていく仕事であるといえます。
2-2.目的の違い
通常のネイルは、普段から美容意識の高い方や人と接する機会の多い方が爪に色や装飾を施したり、爪のケアをすることを目的としています。福祉ネイルの場合は、単なる美容目的だけではなく、施術中のコミュニケーションなどによって、施設でのストレス発散や心のケアをすることも目的に含まれています。
高齢者の中には、外出する機会が少なくても自身の気分を上げたい方や家族や友人にきれいになった爪を見せたい方などがいます。福祉ネイルは、お客様の爪だけではなく、メンタルのケアも必要な仕事といえるでしょう。
2-3.施術場所・施術時間の違い
通常のネイルはネイルサロンで施術することが多く、幅広いメニューの中からお客様の希望に合わせて施術するので、1〜2時間程度の時間がかかります。
福祉ネイルは出張サービスなので施術場所は多岐にわたり、老人ホームやデイサービスなどの介護施設に出向いたり、お客様の自宅を直接訪問することもあります。お客様の障害の度合いや体力を考慮し、施術時間は10〜20分程度に留めることが多いです。
2-4.施術内容の違い
通常のネイルの場合、主にネイルサロンに来た方にマニキュアやジェルネイルを行います。通常のネイルでは、仕上がりや利用者の希望に沿ったネイルを施す技術が重要視されます。凝ったデザインのネイルを行う場合は長時間同じ姿勢でいなければなりません。
一方、福祉ネイルは対象となる高齢者の体の状態を見ながら、一人ひとりに合わせた施術を行います。さらに、福祉ネイルでは誤飲を防ぐために小さいパーツは付けない場合が多いです。剥がす際に大きな負担がかかるジェルネイルではなく、短時間で行えるシールやマニキュアタイプのネイルを使います。
3.福祉ネイルの魅力とやりがい
福祉ネイリストは、美容に関する支援をするだけでなく、高齢者とのふれあいの中で生活に彩りを与えられるため、福祉への意義を感じながら仕事ができます。単なる美容を追求するだけの仕事ではなく、社会貢献の側面も持っています。高齢化の進む日本社会において、高齢者を美容の領域から支えることができる職業といえます。
福祉ネイリストの一番のやりがいは、利用者の笑顔を見られることと「ありがとう」の言葉をもらえることでしょう。定期的に訪問してネイルをしているときのふれあいや会話を楽しみにしてくれている方も多いです。
特に寝たきりの方はなかなかおしゃれをするのが難しいですが、爪に行うネイルやハンドマッサージなら起き上がらなくても受けられます。ネイルを通して楽しみや感動を与えられるので、とてもやりがいを感じられる仕事です。
4.福祉ネイリストに資格は必要?
福祉ネイリストとして働くのに、特に資格は必要ありません。認定資格として定められているものもありますが、取得は必須ではないので、無資格でも福祉ネイリストになることが可能です。
しかし、認定資格があると安心感などを感じてもらいやすく、信頼性も生まれるので持っておくことをおすすめします。施設などに営業をする際、資格を持っておくことで自身のバックグラウンドが証明しやすくなります。
日本保健福祉ネイリスト協会の認定校に通って講習と研修を受けるのもおすすめです。1週間の講習を受け、卒業試験に合格したら実際の施設で実地研修を行います。実地研修では講師が同行し実際の現場での仕事ぶりをチェックしてもらえるため、すぐに働きたい方も安心です。
講習に通う時間が取れない方は、ネイルに関する通信講座を利用しても良いでしょう。通信講座なら、テキストだけでなくネイル用品が付いてくるので効率的に学習できます。また、自身のペースで学習できるので、仕事をしながら学ぶことが可能です。
福祉ネイリストとして働いている方の多くは、普段は通常のネイリストとして活躍している方が多いです。ネイリストとして働いた経験がない人は、ネイリスト技能検定など、通常のネイリスト関連で信頼度の高い資格の取得を目指しても良いでしょう。また、ネイリストの資格を取得しておけば、認定校で講習を受ける場合に実技の一部が免除されます。
また、福祉ネイリストは介護施設で働くことの多い仕事です。ネイルに関する知識だけでなく、介護に関する知識も身に付けておくと良いでしょう。資格以外の部分でもコミュニケーションスキルや病気に関する知識があると、施術の際に役立ちます。
5.福祉ネイリストの働き方と給与
福祉ネイリストは、ネイルサロンで働く普通のネイリストと異なり、特定の場所で働くわけではありません。そのため、働く場所や雇用形態、給与体系も福祉ネイリスト独自のものになります。自身の希望している働き方と照らし合わせて、以下を参考にしてください。
5-1.訪問先は入所・通所施設
福祉ネイリストの主な訪問先は、老人ホームやデイサービス、サービス付き高齢者向け住宅などです。基本的に福祉ネイリスト側がネイルセットを持参して訪問します。また、依頼によっては個人の家に訪問する場合もあります。
また、ネイルサロンでの施術経験がないと応募できない訪問先もあります。そのため、できるだけネイルサロンでの実務経験を積んでから応募すると良いでしょう。働く場合はネイリスト保険への加入が義務付けられているので、必ず加入してください。
5-2.業務委託契約が一般的
福祉ネイリストは正社員ではなく、基本的に施設や事業者からの業務委託を受けて働く方が多いです。
福祉ネイリストの資格を持っているからといって充分な仕事が得られるわけではないので、本業ではなく副業として働いている方もいます。日本保健福祉ネイリスト協会などの団体に所属すれば、訪問施設を紹介してもらえる場合もあるのでおすすめです。
5-3.福祉ネイリストの給与
福祉ネイリストは、一人当たり1,000~3,000円なので通常のネイルサロンでの仕事より単価は安いです。しかし、1人にかかる施術時間が約20分と通常のネイルより短いので、1つの施設で何人も担当すれば多くの収入を得られます。
中には病院やネイルサロンで働きながら、副業で福祉ネイリストをしている方もいます。普段は主婦でありながら、子育てや家事の合間に福祉ネイリストをする方も増えています。副業でも多くの施設の契約をもらえれば、月に100,000円以上の収入を得られます。
より給与を上げたい場合は、マッサージをセットで行ったり高齢者が悩まされることの多い巻き爪などの爪のトラブルに関するアドバイスをしたりなど、付加価値を付けるようにして単価を上げる努力をしましょう。また、経済的に余裕のあるグループ施設などを狙って営業をするのもおすすめです。
おわりに
今回は、福祉ネイルを行う福祉ネイリストの仕事内容や給料について解説しました。福祉ネイルは、高齢者や障害を抱えている方におしゃれを楽しんでもらうために行うネイルです。美容だけでなく介護やメンタルケアの側面も強いので、ボランティアのような社会貢献的な意義も持ち合わせています。
これから先、超高齢化社会になるといわれている日本では、福祉ネイリストは需要がますます高まっていく職業の1つです。今は世間的な認知度こそ低いものの、今後は介護業界とともに労働環境も整備されていくと考えられます。最近は副業として福祉ネイリストを行っている方も多いので、興味がある方はぜひ挑戦してみましょう。