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「お正月のいけばな」新年の祈りと願いを込めては花木を生ける
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「お正月のいけばな」新年の祈りと願いを込めて花木を生ける

今年も残りわずかになりました。皆さまにとってどのような1年でしたか?良いことがあっても、つらいことがあっても、来年は健康に、幸せに暮らしたいと願う気持ちは同じです。新しい年を迎えるに当たり、「良い年になりますように」という願いを込めて、花を生けてみませんか?

 この記事では、お正月のいけばなの意味や、生ける前の準備、生け方などについてご紹介します。新年は、いけばなのある、いつもとひと味違うお正月になります。

1.お正月のいけばなの意味

お正月にいけばなを飾るのは、部屋を美しく華やかにするだけではありません。家に神様をお迎えするという意味があります。お正月の三が日、神様はいけばなに宿ります。その神様に、今年も無事に過ごせるようにと家族と共にお祈りするのがもともとの由来です。

1月1日には、初詣に出かけて新年の祈願をする方も多いかもしれません。いけばなを飾れば、家に神様が訪れて願いを込めることができます。新しい1年の始まりに、家に家族が集まり、いけばなと共にお祝いをします。

お正月飾りとの違い

「飾る」と言えば、門松やしめ縄などのお正月飾りが思い浮かぶかもしれません。玄関や門など家の外に飾るのが一般的です。

これらのお正月飾りは、神様が家にたどり着くための目印になります。家の入り口がどこなのかを示す印なので、神様が宿るお正月のいけばなとは意味が異なります。

2.お正月のいけばなの準備

お正月のいけばなの準備

「お正月にいけばなを飾ってみようかな」と思っても、どのような準備が必要なのか、分からないことも多いかもしれません。まずは、そんな疑問を解決しておきましょう。

生ける時期は?

お正月のいけばなは、元旦までには飾っておきます。そのため、年内には生けておきましょう。お正月飾りの場合、29日は縁起が悪いといわれますが、いけばなではあまり気にしないことが多いようです。ただし、一夜飾りといわれる31日は、避けた方が良いでしょう。

飾る場所は?

お正月のいけばなを飾る場所は、次の問いに対する答えを考えてみると分かりやすいでしょう。「神様が家にいらっしゃったら、どこにご案内しますか?」本来、お正月のいけばなは床の間に飾ります。床の間は、「身分の高い人が座るところ」が由来になっているので、神様をお迎えする場所としてふさわしいと考えられているからです。

とはいえ、床の間のある家も少なくなっています。家の中で一番良い部屋といえば、洋室のリビングという家もあるでしょう。大切なお客様に快適に過ごしていただきたいという気持ちさえあれば、場所はどこでも良いと思います。

花の種類や花器は?

お正月のいけばなに使う花や木は、縁起の良い植物を選びます。1年の無事息災を願う気持ちを込めて、好きな花材を取り合わせてみましょう。クリスマスが終わるころになると、お正月の花がフラワーショップに並び始めます。お正月花がセットになって販売されている場合もあるので、組み合わせを見て参考にするのも良いかもしれません。お正月のいけばなで使われる一般的な花材は次のとおりです。

お正月のいけばなの主な花材

  • マツ(松)
  • バラ(薔薇)
  • センリョウ(千両)・マンリョウ(万両)
  • ナンテン(南天)
  • キク(菊)
  • ユリ(百合)
  • ハボタン(葉牡丹)
  • ウメ(梅)
  • ラン(ラン)
  • ヤナギ(柳)など

マツ(松)は、1年を通じて緑が絶えることがないので、「不老」の意味があります。新年にはあちらこちらで見かけるので、お正月のイメージを持っている方も多いかもしれません。もし迷ったら、マツ(松)を中心にその他の花を選ぶと、合わせやすいですよ。

花器は、平たいお皿のような水盤に花留を使っても、花瓶に挿しても良いでしょう。特に決まりはないので自由です。

花器の色も好きなように選ぶことができますが、「黒色」は、お正月の重厚な雰囲気が出るので気に入っています。よろしかったら参考にしてみてください。

金銀の水引とあわじ結び
お正月を連想させる小物

いけばなは、花木だけで美しいものですが、お正月の雰囲気をより出したいときには、小物を利用するのも一つの手です。金銀の水引を使ってあわじ結びを作り、花に添える使い方もできます。

ここまで、お正月のいけばなの準備について解説してきました。次に、実際に生けた花を見てイメージを膨らませてみましょう。

3.お正月のいけばなの生け方

マツ(松)、バラ(薔薇)、ユリ(百合)、センリョウ(千両)※11月に撮影を行ったため代わりにウメモドキを使っています。

準備が整ったら、実際にお花を生けてみましょう。花器と花材を用意して、それぞれの花や木が生き生きと映える位置を選んで挿します。バランスを見ながら、配置していきます。

お正月のいけばなには、神様をお迎えして1年の健康や幸せを願うためにあります。上手下手よりも、心を込めて生けることが大切です。

上の写真では、水盤に花留を使っています。花瓶でも構いません。その際、花や木の重みで倒れないように注意してください。

生け方のポイント

お正月花を生ける際には、次の2つのポイントを踏まえて取り組むと良いでしょう。

1.飾る場所に合わせて、いけばなの大きさを決める

飾る部屋や場所が広ければ、それに合わせた大きいいけばなが映えます。反対に、狭い場所には小さく生ければ良いので「飾る場所がない」と諦める必要はありません。手に収まるような小さないけばなでも、気持ちを込めて生ければ立派なお正月花です。

2.マツ(松)を使う場合、主役にすると生けやすい

マツ(松)の木は、大きく勢いよく枝を伸ばしているのが特徴です。もともとは花に比べて寸法が大きいので、主役にすると収まりやすくなります。もちろん、脇役でもマツは活躍します。迷った際には参考にしてください。

【一口メモ】小物を使ってお正月の雰囲気を

いけばなでは、若松を生ける際に、根元の枝を水引でまとめます。結び方にはさまざまな種類がありますが、下の写真は「稚児結び」です。

ワカマツ(若松)
水引は稚児結び 

いけばなに金銀が入るとお正月らしさがぐっと出るので、「物足りないな」と感じたら使ってみるのも良いかもしれません。

花の持つ意味を取り入れるとお正月らしく

上の写真で使用している花材は、マツ(松)、バラ(薔薇)、ユリ(百合)、センリョウ(千両)(実際はウメモドキを使用)です。これらの花材には、それぞれ意味があります。

マツ(松)とバラ(薔薇)は「不老長春」

バラの花が咲くのは春ですが、環境を整えれば冬でも咲く四季咲きです。そのため、春が長い「長春」という意味で使われます。マツは、前にお話ししたように「不老」の意味があるので、バラと組み合わせると「不老長春」を表し、おめでたい組み合わせです。

黄色い花と朱色の実は縁起が良い

黄色い花と朱色の実の取り合わせは「黄花朱実」と言い、縁起が良いとされています。センリョウ(千両)も同じく縁起が良く、お正月に好まれる花材です。

ユリ(百合)の意味は「たくさんの出会い」

ユリは漢字で「百合」と書きます。「百」には、「万(よろず)」のように、「たくさん」「すべて」の意味があり、「人とたくさん(百)出会(合)う」という縁起を持つ花です。

花木やその組み合わせには、さまざまな意味や由来があります。諸説ある場合もありますが、調べてみるといけばながより楽しめますよ。

おわりに

お正月のいけばなには、「この1年、健康で幸せに過ごせますように」という願いが込められています。今年は良いことがなかったという方も、来年はお正月のいけばなで神様をお迎えして願いを伝えてみませんか? 

来年が皆さまにとって良い年となりますことをお祈りしています。