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【解説】歯の着色の予防と対策

歯の着色の予防と対策
猪股 美菜 歯科医師・歯学博士

執筆者

歯科医師・歯学博士

猪股 美菜

1983年生まれ。2007年歯学部卒業後、臨床研修医として大学病院に在籍。その後大学院歯学研究科(口腔病理学講座)に所属。大学院では口腔内病変の病理診断を学ぶとともにレーザー治療の研究に邁進。卒業後は勤務医として働く。「週に5時間」を自分の勉強時間と課し、より良い治療や研究を探索している。一児の母。

「最近歯の黄ばみが気になる」「コーヒーやワインをよく飲むので着色してしまっているかも・・・」など、歯の着色に関する悩みを抱える方もいらっしゃるでしょう。

歯の着色の原因には、飲食物や嗜好品などが関係して起こる外因性の着色と、歯の外傷などが原因となって起こる内因性の着色の2つに分けられます。今回は、この外因性と内因性の原因を細かく分けてお伝えし、予防と対策についてご紹介いたします。

1.外因性の歯の着色

外因性の歯の着色

歯の着色には、歯の表面に色がつく外因性の着色と、歯そのものの色調が変化する内因性の着色があります。

外因性の着色では、紅茶、緑茶、コーヒーなどの飲み物によるもの、またたばこが原因の場合が多いです。また、金属のつめ物をした歯は、経時的に金属イオンが溶け出し、つめ物のまわりが黒く変色して見える場合があります。

むし歯を治療した際に埋めた白い修復物が変色する場合もあります。初期のむし歯でも白く見えることがあります。(歯の一番外側をおおっているエナメル質が溶かされ、白く見えます。)

口呼吸をする人も、着色しやすいです。ロ呼吸により口の中が乾燥しやすく、歯に汚れがつきやすくなるためです。歯並びが悪くブラッシングの際歯ブラシが行き届いてない方も注意が必要です。磨きにくい部分に着色汚れがひそんでいるかもしれません。

2.内因性の歯の着色

内因性の歯の着色

歯の外側は透明なエナメル質で覆われ、その内側には少し黄色い象牙質(ぞうげしつ)があります。この象牙質の色が透明なエナメル質から透けて見えるのでやや黄色味を帯びて見えます。内因性の着色とは、歯そのものの色調が変化するので、「変色」とも呼ばれます。

①加齢による変色

加齢によって透明なエナメル質は少しずつすり減っていく反面、内側の象牙質は厚みを増すため黄色味が強くなります。

②歯の外傷や歯の神経による変色

歯に外傷を受けて、歯の神経を取る治療をした場合、神経の近くを走る血管からの出血を伴います。それにより象牙質のなかの有機質に血液が回らなくなり、経時的に変色してしまいます。また、むし歯が大きく、神経を取る治療をほどこさなければならない場合も、同様に変色することがあります。

③薬物による変色

テトラサイクリン系の抗菌剤を、胎児期、授乳期に母親が服用したり、本人が6歳頃までに長期間服用すると、象牙質が変色することがあります。現在、テトラサイクリン系抗菌剤は、歯に対する副作用が1962年に初めて報告されてから、最近では妊婦や幼児への使用が控えられています。

歯が生えてから服用するには着色への影響はなく、現在でも呼吸器疾患や、にきびなどの皮膚疾患にテトラサイクリン系の抗菌剤が使用されることがあります。

④エナメル質の形成不全

妊娠中にホルモン異常やビタミン不足などが起こったり、あるいは遺伝性の疾患が原因でエナメル質の形成に異常が起こり、歯の色が変わることがあります。また乳歯のむし歯が原因で、根の先まで病変が広がると、永久歯のエナメル質の形成が不完全に終わり、変色してしまいます。

3.歯の着色の対応について

歯の着色の対応について

①外因性の歯の着色に対する対応

まずは歯科医院にてクリーニングをすることをおすすめします。外因性の着色を歯科医院専用のブラシやカップなどで時間をかけて除去していきます。初期のむし歯はフッ化物の応用などで削るなどの治療をせず、再石灰化により治る場合もあります。むし歯の治療後の着色は、再度治療すべきか否か、歯科医師に相談してみてください。

②内因性の歯の着色に対する対応

エナメル質の形成不全の歯以外は、ホワイトニングが選択されることが多いです。ホワイトニングにはオフィスホワイトニング、ホームホワイトニング、ウォーキングブリーチ法があります。

ホワイトニングは歯を削ったりしないので、歯へのダメージは少ないですが、最終的な色の調整が難しいという欠点があります。ホワイトニングで希望の色調が出ない場合、またエナメル質形成不全の歯には、修復処置、すなわち歯を削ってかぶせものをするなどの治療をすることも可能です。歯の表面を一層だけ削って白いセラミックの板を貼り付ける「ラミネートベニア」という治療法を実施している歯科医院もあります。

4.歯の着色についてみんなのお悩みに答えるQ&A

歯の着色についてみんなのお悩みに答えるQ&A

①私の歯は元々白くないのですが、白くなりますか?

歯の色は、他の身体の部位と一緒で個人差があります。ただ歯科医院で相談をし、適切な治療を受ければ白くなる可能性は高いです。相談の際には、「どの歯を白くさせたいか」「いつまでに白くさせたいか」など、細かに希望を伝えると、治療はスムーズに進むと思います。

②歯医者でのホワイトニングは高額な印象がありますが、自宅ケアでも白くなりますか?おすすめの研磨剤があれば教えてください。

自宅で行えるホームホワイトニングは、歯科医院で行うオフィスホワイトニングよりも安価です。歯科医院で歯型をとって作成したマウスピースに、過酸化尿素を主成分とする薬剤を入れてはめ、ホワイトニングができます。また、研磨剤が入っていない歯磨き粉でも、歯ブラシの機械的な力で着色を防ぐ効果が期待できます。

③無意識に口呼吸をしてしまうのですが、直す方法はありますか?

鼻で呼吸することを意識し、鼻呼吸のクセをつけてください。難しいですが、この意識を頭に置くことで、鼻の粘膜も強化され、鼻呼吸の割合が多くなってきます。

④歯科医院でホワイトニングの治療後はどうすればいいですか?

1ヵ月に1回、少なくとも3ヵ月に1回は歯科医院で専門的なクリーニングを受け、着色汚れを取ることをおすすめします。

5.歯科医からのメッセージ

着色を防ぎ、自然な歯の色を維持するためには、スマートフォンなどと同様、歯ブラシをいつも身につけておくことです。「何かを口にしたら必ずブラッシングをしている」という方の歯は、ホワイトニングをしているかのように美しいです。日々の努力で美しい歯は手に入れられます。これからホワイトニングをされる方は、注意点をしっかり守り、美しい歯を手に入れてください。

参照元:e-ヘルスネット > 歯・口腔の健康

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